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1 弟の提案
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「なにをするのよ! 私たちは実の姉と弟なのよ。全く何を考えているのよ?」
このとても美しい弟は私をいつもこうして混乱させるのが大好きみたいなの。
私が幼い頃、この弟が生まれてあまりの可愛さに見とれていたことがある。
「なんてかわいいの? 私がこの子を守ってあげるわ。とてもきれいな瞳。吸い込まれちゃいそう」
まるでおとぎ話の王子様のようにきれいな私の自慢の弟。でもこの弟は私が嫌いみたい。今だって私がこんなに辛い思いでいるのに、人の気も知らないで悪ふざけばかりする。
「マックス、あなたは本当に私が嫌いなのね?私はね、マックスを弟としてとっても愛してるのよ。それなのにいつもふざけてばかり……ひどいと思う」
涙がこみあげ出す私にマックスは慌ててハンカチを押し付けた。
「姉さんお願い! 泣いちゃダメだよ! 僕が姉さんを嫌いなわけないじゃないか。僕はいつも姉さん思ってるよ。何があったか詳しく話してくれないか? 」
私は事の詳細をマックスに話すと、マックスの綺麗な口元は徐々に不機嫌に歪んでいくのだった。
「そうか。あのジョージのやつはそんなこと言っていたんだね? しかも姉さんの親友と唇を重ねあわせるなんて! 婚約者のふりをしたこそ泥と親友のふりをした裏切り者め! 姉さんは冴えない女性ではないよ。とっても綺麗だ。いいことを考えたよ。僕と姉さんで恋人のふりをするんだ。ジョージのやつを悔しがらせてやろうよ」
「弟と恋人ごっこなんて無理じゃない?笑われてしまうわ」
「弟じゃないさ。僕たちに血のつながりは無い。」
マックスはまた私をからかう。マックスは昔からそんな悪い冗談を言うのよ。
あれはいつ頃だったかなぁ?
「僕と姉さんは血が繋がっていないんだよ。だから結婚できるんだ」
マックスは得意げに私に言ってきたことがあった。
私はとてもハーバート公爵夫妻つまり私の両親が大好きだった。だから私はショックで泣きそうになった。
「マックスから聞いたの。私とマックスは血が繋がっていないって本当なの? どちらかが養子っていうことになるでしょう? まさか私はお母様たちとは血が繋がっていないの?それだったらどうしよう……お母様たちが大好きなのに」
そう言って泣きじゃくる私にお母様は優しくおっしゃった。
「マックスが冗談を言ったんですよ。気にしてはいけません。あなたは私たちの娘なのだから」
お母様にそうおっしゃっていただけて私の世界はまた輝きを取り戻した。それからマックスは両親から叱られ、あまりそのような意地悪を口にしなくなった。
それでも何かあると血が繋がっていないと言い出す。私は弟の考えてることがわからない。私を嫌いなはずはないのになぜそんな嫌がらせを言うのかしら? 私は弟がとても好きなのに。
思わず弟の顔をじっと見つめて、私はこのような物思いにふけってしまう。複雑な気持ちでいる私に反して弟はとびっきりの笑顔を見せた。
「姉さん、そんなに見つめないでよ。嬉しくなって今日は眠れないよ」
弟にこんな風に言われて頰を赤らめる私はバカみたい。悔しいな……
私は弟にこのようにいつもからかわれちゃう。でも不思議、弟に愚痴を聞いてもらったらジョージの浮気現場を見たショックは少しだけ薄らいだ気がしてきた。
もちろんすぐにこの悲しみは消えないけれど、ちょっぴり落ち着きを取り戻す。真夏の太陽の強い日差しで感じるヒリヒリするような肌の痛みが失恋の痛みだとすれば、私はその間に薄いレースのカーテンを1、2枚引けたような気がする。
翌日ジョージは何食わぬ顔でハーバード公爵家訪れた。
「昨日はいつの間にか帰ってしまったんだね。ひどいじゃないか? 1人で帰ってしまうなんて。僕は愛する婚約者に置いていかれた惨めな男になってしまったよ。みんなに笑われたじゃないか。ところでハーバード公爵家からの援助の資金が今月はまだなんだけど?」おどけた表情でいながらもジョージは目の奥に責めるような色を浮かべていたのだった。
このとても美しい弟は私をいつもこうして混乱させるのが大好きみたいなの。
私が幼い頃、この弟が生まれてあまりの可愛さに見とれていたことがある。
「なんてかわいいの? 私がこの子を守ってあげるわ。とてもきれいな瞳。吸い込まれちゃいそう」
まるでおとぎ話の王子様のようにきれいな私の自慢の弟。でもこの弟は私が嫌いみたい。今だって私がこんなに辛い思いでいるのに、人の気も知らないで悪ふざけばかりする。
「マックス、あなたは本当に私が嫌いなのね?私はね、マックスを弟としてとっても愛してるのよ。それなのにいつもふざけてばかり……ひどいと思う」
涙がこみあげ出す私にマックスは慌ててハンカチを押し付けた。
「姉さんお願い! 泣いちゃダメだよ! 僕が姉さんを嫌いなわけないじゃないか。僕はいつも姉さん思ってるよ。何があったか詳しく話してくれないか? 」
私は事の詳細をマックスに話すと、マックスの綺麗な口元は徐々に不機嫌に歪んでいくのだった。
「そうか。あのジョージのやつはそんなこと言っていたんだね? しかも姉さんの親友と唇を重ねあわせるなんて! 婚約者のふりをしたこそ泥と親友のふりをした裏切り者め! 姉さんは冴えない女性ではないよ。とっても綺麗だ。いいことを考えたよ。僕と姉さんで恋人のふりをするんだ。ジョージのやつを悔しがらせてやろうよ」
「弟と恋人ごっこなんて無理じゃない?笑われてしまうわ」
「弟じゃないさ。僕たちに血のつながりは無い。」
マックスはまた私をからかう。マックスは昔からそんな悪い冗談を言うのよ。
あれはいつ頃だったかなぁ?
「僕と姉さんは血が繋がっていないんだよ。だから結婚できるんだ」
マックスは得意げに私に言ってきたことがあった。
私はとてもハーバート公爵夫妻つまり私の両親が大好きだった。だから私はショックで泣きそうになった。
「マックスから聞いたの。私とマックスは血が繋がっていないって本当なの? どちらかが養子っていうことになるでしょう? まさか私はお母様たちとは血が繋がっていないの?それだったらどうしよう……お母様たちが大好きなのに」
そう言って泣きじゃくる私にお母様は優しくおっしゃった。
「マックスが冗談を言ったんですよ。気にしてはいけません。あなたは私たちの娘なのだから」
お母様にそうおっしゃっていただけて私の世界はまた輝きを取り戻した。それからマックスは両親から叱られ、あまりそのような意地悪を口にしなくなった。
それでも何かあると血が繋がっていないと言い出す。私は弟の考えてることがわからない。私を嫌いなはずはないのになぜそんな嫌がらせを言うのかしら? 私は弟がとても好きなのに。
思わず弟の顔をじっと見つめて、私はこのような物思いにふけってしまう。複雑な気持ちでいる私に反して弟はとびっきりの笑顔を見せた。
「姉さん、そんなに見つめないでよ。嬉しくなって今日は眠れないよ」
弟にこんな風に言われて頰を赤らめる私はバカみたい。悔しいな……
私は弟にこのようにいつもからかわれちゃう。でも不思議、弟に愚痴を聞いてもらったらジョージの浮気現場を見たショックは少しだけ薄らいだ気がしてきた。
もちろんすぐにこの悲しみは消えないけれど、ちょっぴり落ち着きを取り戻す。真夏の太陽の強い日差しで感じるヒリヒリするような肌の痛みが失恋の痛みだとすれば、私はその間に薄いレースのカーテンを1、2枚引けたような気がする。
翌日ジョージは何食わぬ顔でハーバード公爵家訪れた。
「昨日はいつの間にか帰ってしまったんだね。ひどいじゃないか? 1人で帰ってしまうなんて。僕は愛する婚約者に置いていかれた惨めな男になってしまったよ。みんなに笑われたじゃないか。ところでハーバード公爵家からの援助の資金が今月はまだなんだけど?」おどけた表情でいながらもジョージは目の奥に責めるような色を浮かべていたのだった。
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