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2 実は性格がとても悪かったジョージ
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「こんにちは! ジョージ。あなたの家への資金援助は月末にするはずだよ。これまでもいつも月末にお金を送金していたはずだ」
マックスがゆっくりと私たちのほうにやってきて穏やかな声で話し始めた。
「それはそうなのですが、実は少し困った状況になりましてお金が急遽必要になったのです。だからアメリア様にはなるべく早く支援してくれるようにお願いしていたのですよ」
ジョージはハーバート公爵家を継ぐことになっている弟のマックスの登場に急に敬語を使いだす。
「ディッシュ侯爵家が権利ばかり主張してくるのは気のせいかな? ところであなたは姉さんにいつもさっきのような口のききかたをしているのかな? 我が家は筆頭公爵家ですよ? そちらは侯爵家で爵位も家格も当家とは雲泥の差だ。明らかに言葉遣いが間違っていないか?」
周囲の気温がぐっと下がるような冷気を含んだその声色はジョージを青ざめさせた。
「申し訳ありません。つい、アメリア様が優しいので家格の差や爵位の差を失念しておりました。重ねてお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」
「今後は気をつけて欲しい。私の大事な姉だ。泣かせるような事は絶対に許さない!」
強い口調でマックスにそう言われたジョージは気まずそうな顔をしながら慌てて帰っていった。
☾.˖٭𓂃꙳⋆.˖٭
それから1週間後、王家主催の舞踏会に私はマックスと出席することになった。
「マックス、せっかくのそのきれいなプラチナブロンドと紫の瞳を隠してしまうのはもったいないわね」
「そうですかね? 姉さんに綺麗と言われて嬉しいですよ。ですが今日は無難なブラウンの髪と瞳で変装しておきましょう。人は髪の色と目の色を変えるだけでも印象が違うからね」
弟は背が高くすらりとしていて目鼻立ちがとても整っている。どんなに変装しても顔の美しさは変わらないから人目も引くわけで、私たちは一斉に注目を浴びたのだった。
「んもう、マックスがあんまり格好良すぎて注目を浴びちゃうわ。恥ずかしいったらないわ」
私はつい文句を言ってしまい頰を膨らませた。
「やはりそのドレスは似合いますね。姉さんにぴったりだ。少し胸が空きすぎているのが悔しいけれど、まぁ今日は僕が横にいるのでいいでしょう」
マックスはまぶしそうに私を見つめた。まるで私がとっても美しい女性になったみたいだ。
今日の私はキャラメルブロンドの髪を優雅に結い上げて、オレンジ色の鮮やかなドレスを着ていた。胸元はいつもよりずっと空いていて背中も深くえぐれている。今の流行はこのようなドレスで、私は初めて流行のドレスを着ることになったのだった。
お化粧もいつもとは違う。いつもは弟が言うようにするけれど、今日のところは美容研究家の異名を持つ侍女につきっきりでメイクをしてもらったの。
「姉さんがすごく美人だからみんなが見ているよ。姉さんの美しさがわからないような男は馬鹿だからね。今までだって隠していても美しさがにじみ出ていたものね」
マックスはとても褒めるのが上手で私は思わず信じ込みそうになる。私がそれほど綺麗では無い事はジョージがいつも私に言う言葉で自覚はしていたけれど……でもこうしてマックスが褒めてくれるのはとても嬉しくて私はにっこりと微笑んだ。
マックスにエスコートされて楽しくダンスを踊っていると私に、激しく責める声が背後から聞こえてきた。
「もしかしてアメリアなのかい? ずいぶんとあか抜けたじゃないか? そんなに美人だったなんて知らなかったよ。ははぁーーん、なるほど。そっちのイケメンさんのおかげなのかな? 君がそんなに浮気者だなんて知らなかったよ。王家主催の舞踏会で婚約者以外の男と踊るなんて人をバカにするのもいい加減にしろよ! そんな女とは婚約破棄だ。 慰謝料はたっぷり払ってもらうからな! だいたいハーバート公爵家の娘だといってもたかが養女じゃないか! 」
私はジョージの言葉に心底びっくりして気を失いそうになった。マックスは私を抱きかかえて耳元でささやいた。
「大丈夫だよ、姉さん。僕が守ってあげるからね」
マックスがゆっくりと私たちのほうにやってきて穏やかな声で話し始めた。
「それはそうなのですが、実は少し困った状況になりましてお金が急遽必要になったのです。だからアメリア様にはなるべく早く支援してくれるようにお願いしていたのですよ」
ジョージはハーバート公爵家を継ぐことになっている弟のマックスの登場に急に敬語を使いだす。
「ディッシュ侯爵家が権利ばかり主張してくるのは気のせいかな? ところであなたは姉さんにいつもさっきのような口のききかたをしているのかな? 我が家は筆頭公爵家ですよ? そちらは侯爵家で爵位も家格も当家とは雲泥の差だ。明らかに言葉遣いが間違っていないか?」
周囲の気温がぐっと下がるような冷気を含んだその声色はジョージを青ざめさせた。
「申し訳ありません。つい、アメリア様が優しいので家格の差や爵位の差を失念しておりました。重ねてお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」
「今後は気をつけて欲しい。私の大事な姉だ。泣かせるような事は絶対に許さない!」
強い口調でマックスにそう言われたジョージは気まずそうな顔をしながら慌てて帰っていった。
☾.˖٭𓂃꙳⋆.˖٭
それから1週間後、王家主催の舞踏会に私はマックスと出席することになった。
「マックス、せっかくのそのきれいなプラチナブロンドと紫の瞳を隠してしまうのはもったいないわね」
「そうですかね? 姉さんに綺麗と言われて嬉しいですよ。ですが今日は無難なブラウンの髪と瞳で変装しておきましょう。人は髪の色と目の色を変えるだけでも印象が違うからね」
弟は背が高くすらりとしていて目鼻立ちがとても整っている。どんなに変装しても顔の美しさは変わらないから人目も引くわけで、私たちは一斉に注目を浴びたのだった。
「んもう、マックスがあんまり格好良すぎて注目を浴びちゃうわ。恥ずかしいったらないわ」
私はつい文句を言ってしまい頰を膨らませた。
「やはりそのドレスは似合いますね。姉さんにぴったりだ。少し胸が空きすぎているのが悔しいけれど、まぁ今日は僕が横にいるのでいいでしょう」
マックスはまぶしそうに私を見つめた。まるで私がとっても美しい女性になったみたいだ。
今日の私はキャラメルブロンドの髪を優雅に結い上げて、オレンジ色の鮮やかなドレスを着ていた。胸元はいつもよりずっと空いていて背中も深くえぐれている。今の流行はこのようなドレスで、私は初めて流行のドレスを着ることになったのだった。
お化粧もいつもとは違う。いつもは弟が言うようにするけれど、今日のところは美容研究家の異名を持つ侍女につきっきりでメイクをしてもらったの。
「姉さんがすごく美人だからみんなが見ているよ。姉さんの美しさがわからないような男は馬鹿だからね。今までだって隠していても美しさがにじみ出ていたものね」
マックスはとても褒めるのが上手で私は思わず信じ込みそうになる。私がそれほど綺麗では無い事はジョージがいつも私に言う言葉で自覚はしていたけれど……でもこうしてマックスが褒めてくれるのはとても嬉しくて私はにっこりと微笑んだ。
マックスにエスコートされて楽しくダンスを踊っていると私に、激しく責める声が背後から聞こえてきた。
「もしかしてアメリアなのかい? ずいぶんとあか抜けたじゃないか? そんなに美人だったなんて知らなかったよ。ははぁーーん、なるほど。そっちのイケメンさんのおかげなのかな? 君がそんなに浮気者だなんて知らなかったよ。王家主催の舞踏会で婚約者以外の男と踊るなんて人をバカにするのもいい加減にしろよ! そんな女とは婚約破棄だ。 慰謝料はたっぷり払ってもらうからな! だいたいハーバート公爵家の娘だといってもたかが養女じゃないか! 」
私はジョージの言葉に心底びっくりして気を失いそうになった。マックスは私を抱きかかえて耳元でささやいた。
「大丈夫だよ、姉さん。僕が守ってあげるからね」
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