（完結）婚約破棄されたら弟が恋人になりました

３ 私は誰の子なの？

「たかが養女とは聞き捨てならないな！ 詳細を調べもしないでそのような口を聞いて後で後悔することになっても知らないよ？」
マックスはクスクスと笑いながらジョージに言葉をかけた。

「うるさいなぁ！ 偉そうな口をきくな。お前は見たことがない顔じゃないか。高位貴族の顔は全て知っている。だからお前は身分の低い貴族なんだろう？ その女は公爵令嬢とはいえ平民の子供だと父上が言っていた」

「なるほどディッシュ公爵は軽率な人で有名だ。あやふやな情報でそんなバカな判断をしていたなんて愚かな奴だな」
マックスは美しい顔を少しだけ歪ませながら吐き捨てるようにそう言った。

「身分が低いくせに失礼な奴だな！ 僕はディッシュ侯爵家の嫡男だぞ！その女は平民だけれど一応ハーバート公爵令嬢だから持参金があると思って付き合ってやったんだ！まぁいい、アメリアは浮気者の平民なんだから僕にそれなりの礼を尽せよ！慰謝料は通常よりもたくさんもらうからな！」

「はぁー、姉さん！ こんな奴はダメだと以前から言ったでしょう？ 姉さんが初恋の男だと言ったこの男はこのような馬鹿なんですよ？ なぜこんな男がよかったんですか？姉さんがこの男が好きだと言うから、父上がこいつを婚約者にしたけれど僕はずっと反対していましたよね?」
そう言いながらカツラを脱いで色付きのレンズを目から取り出したマックス。

そう、このジョージは私の初恋の人だった。……なぜこのジョージが好きだと思ったのか。今この瞬間じっくり考えてみると自分でもよくわからなかった。

ーーなんで好きだと思ったんだろう? 

私はジョージの顔とマックスの顔を交互に見比べた。そしてあることに気がついた。
ジョージの目元はマックスにとても似ていたのよ。もちろん目元だけで他は全く似ていなかったけれど。

「これはハーバート公爵家のマックス様とはわからずに大変申し訳ありませんでした。だけどあなたも人が悪い。変装までするなんてこれではマックス様だとわかるわけがない。そうでしょう？」
ジョージは開き直ったかのようにふてぶてしい様子でそう言った。

「僕はあなたに口の利き方に気を付けろと言ったはずだ。君は姉さんを侮辱しただろう？この世で最も身分の高い女性の1人を」

「は? この女は平民でしょう? 平民の子供を養女にしたと父上が言っていたし、そのような噂が社交界でも流れていました」

「あー、その噂は作り話ですよ。姉さんの身の安全のためだ。ジョージはこの世で最も身分の高い女性の1人を実は婚約者にしていたんですよ？ そしてその身分は今夜明かされるはずだった」

「マックス、どういうことなの？」
私はマックスに質問を投げかけたが、マックスは魅惑的に微笑んで私の頰にそっと手を添えた。

「今にわかりますよ。僕の大事な愛しい人。あなたはハーバート公爵家の子供ではない。でも平民でもない。あなたは……」
マックスが私に言おうとしていた言葉は国王陛下の言葉に遮られて宙に浮いた。

「さてここで重大な発表がある。皆の者、よく聞いて欲しい」
国王陛下と王妃殿下がお出ましになり貴族全員に向かって声を張り上げたのだった。