【完結】魔王を倒す前に俺が倒れます!

ゆい

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本編

俺が不機嫌な話

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翌日、俺は機嫌が悪かった。両手に包丁を持ち、塊肉をこれでもかと叩いて、叩いて、ミンチ肉にしていた。
そんな俺を他の料理人達は遠巻きにして見ていた。

ハンバーグを作る予定はあったが、今日する予定でなかった。でも、この怒りを発散させたい。そして発散させるために叩きまくったミンチ肉は、美味しいハンバーグに変身することになった。


ことの発端はその日の朝のこと。
朝ごはんを食べ終わり、ジークがキスを強請ってきた。これも『仕事』と言われた俺は、仕方なしにジークに応えた。
ジークのキスの時間が長い。日を追うごとに長くなっている。
息も絶え絶えとなった頃、漸く離してもらえて、ソファでぐったりする俺。
そこにエルがキスをしてきた。まだ解禁してないのに!
俺は力の限り抵抗を試みたが、力の差は歴然で。
エルはジークと違って激しくないが、体を火照らすようなテクニックを持っている。つまり、エロい。それは高級娼婦のようなテクニックで……って、俺は知らんけど。例えるならの話だけど。
俺の俺も元気になってしまうから、エルとのキスは朝だけは避けていたのに。
涙目になりながらも怒ったけど、どこ吹く風でエルはジークと出掛けて行った。


そして今、俺はダンダンと肉を叩いているわけで。
肉の前に玉ネギをみじん切りにして炒めておいたので、もう冷めただろう。
ミンチ肉をボールに入れ、炒めた玉ネギ、玉子、牛乳に浸したパン粉、ナツメグやクローブ、ブラックペッパーなどを入れてひたすら捏ねる。
少し粘り気が出てきたところで、1食分の大きさに成型していく。
タネを掌に交互に叩きつける。べしべしと空気を抜く。遊んではいない。きちんと大事な工程だ。
ただ機嫌が悪いから、音がすごいだけで。音がすごいから、みんながなんだなんだと寄ってくるけど、俺の不機嫌さを出している顔を見て、さっといなくなる。

ハンバーグは両面をフライパンで焼いたら、浅型の中鍋に入れていく。
デミグラスソースとブイヨンを入れて、オーブンに入れる。
煮込みハンバーグにしたら、確実に中まで火が通る。
頃合いをみて、チーズを散らそう。中に入れたほうがよかったかな?

中濃ソースが作れたから、デミグラスソースができた。
中濃ソース、マジ優秀!でも、ものすごく大変。コンソメスープと並行して作っておいてよかった。
玉ねぎ、にんじんなどの材料とローリエや砂糖・酢など入れてとことん煮込んで、濾して、また煮込めばウスターソースができるのだけど、煮込んだ材料を潰して潰してピューレ状にしたらまた鍋に戻して、とろみがつくまで煮込んでできるのが、中濃ソース。とにかく焦げないように付きっきりに鍋をかき混ぜないといけない。
だから料理長に頼んで2人ほど応援に来てもらった。明日彼らの腕が上がらないかも。高いところにあるものは誰かに取ってもらってね。
そんな彼らの頑張りを糧にできた中濃ソース。
これで『目玉焼きに何をかけるか論争』が過熱するだろう。
フライを覚えたら最後。中濃ソースに魅入られ、立派なお腹になること間違いなしだな。クックックッ。

時間ができたので、下っ端の子達とジャガイモやニンジンの皮むきをする。
するすると剥く俺。皮が厚くならないように慎重に剥く下っ端の子達。

「ユーリさん、何でもできるね。」

「…ぼくたちより少し年上なのに。」

まあ前世の記憶のおかげで、今こうして何でもできる。こうして言えばズルかもしれない。
でも今世もきちんと練習を積み重ねたから、そのように身体を動かせるわけで。

「誰も最初はできないことだらけだよ。俺だってたくさん皮むきを練習した。夜遅くまで厨房の片づけ、掃除も毎日欠かさずにやっていた。でもそれって、他の料理人や料理長だって初めの頃はやっていたはずだ。みんな通る道だ。そして基本となることだ。料理は努力した分だけ報われるぞ!」

にんまり笑いながら言ってやれば、みんな、キリっとした顔つきになった。





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