【完結】魔王を倒す前に俺が倒れます!

ゆい

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番外編2

ジェイドの話

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番外編2は単話です。
登場人物は毎回変わります。
本編、番外編で、きちんと名前を出していない方々の話です。

ーーーーーーーーーー

息子が無事に戻ってきてくれた。
それだけで嬉しいのに、可愛い嫁と娘まで連れて帰ってきた。まあ、おまけもついてきたが、これは仕方ない。
なんせ、幼い頃より息子に執着していたから。今更引き剥がせないだろう。
でも関係性は変わったようだった。
息子に執着していたおまけだが、今は嫁にべったりだ。息子とは気安い親友の立ち位置に変わっている。
こうまで変わるとは、本当に驚いた。

嫁は、男だったが可愛らしかった。次男の1歳上には見えなかった。
平民と聞いていたが、所作は荒っぽくもないし、相手が貴族だからと媚びへつらうこともなかった。ただ口は悪かった。口は悪いが、嫌味とかでなく、平民特有の気安さかと思っていた。

次男が公爵を継ぐから、息子に今後はどこに住むか聞いてみたら、皇都の郊外に家を建てたいと言ってきた。
息子は人が多いところを苦手としているし、他国に移り住むより近くにいるのならと、私が持っている土地で気にいった場所に家を建てることにした。
嫁はきちんと働いてお金は返しますと言ってくれたが、息子の財産になるものだったものを渡すだけだからと答えた。
金銭面もしっかりとしていて良かった。
よく聞く話だが、平民が嫁に来ると、貴族は金持ちというイメージがあるらしく、散財で家が傾いたなんて笑い話にもならない。
嫁には、貴族になっても驕らない人物でいて欲しい。
籍はまだだが、当分は息子家族と住むことになり、妻と喜んだ。

一応無事に帰還したので、報告の為に登城しなくてはいけない。
しかしおまけがシブる。
お前は皇子だろうが!と言いたいが、口に出さないでおく。

「エル、さっさと面倒なことは済ましちゃいなよ。」

嫁の援護射撃により、明日登城が決まった。決まったならと、使いを出しておく。

「ジークのパパさん、明日厨房借りてもいい?パパさんとママさんにも俺の料理食べてもらいたいな。」

嫁の可愛らしいお願いはすぐに妻と承諾した。
次男と剣術以外は、あまり興味を持てなかった息子が絶賛した料理は食べてみたかった。

「それより、呼び方はパパさん、ママさんなの?」

「だめ?だって2人ともカッコよくて、綺麗だから、お義父さん、お義母さんよりはパパ、ママの方が似合うから。それにジークのご両親だから、仲良くなりたいし。」

なんて可愛いことを言う。妻は次男の婚約者マリアンヌにはお義母様と呼ばせているが、ここはどうするんだろうと見守る。

「なら、普通にママでいいわ。さんはいらないわよ。」

「ありがとう、ママ!あっ、でもエルのご両親と被るから、ジークのパパ、ママだから、ジークパパ、ジークママって呼ぶね。」

嬉しそうにそう答える嫁。妻も裏表のなさそうな嫁の言動は許すらしい。
しかし、皇帝、皇后をパパ、ママ呼びにする気でいるとは、見かけと違い豪胆だな。


旅の疲れからか、夕方には嫁と娘は寝てしまった。2人同じベッドで眠ったと聞き、それでも男女なんだからと余計な心配をしてしまう。
ジークからは、娘は嫁と一緒じゃないと、初めての場所は怖くて寝れないんだと、説明をされた。
仲良くなれば、母上と寝てくれると思うって言うし。
息子はちゃんと娘を見ているんだなと安心した。
もう少し幼かったら、妻と3人で寝れたかもな、なんて夢の想像をしてしまう。

「あと、ユーリが必要な食材ってメモを書いてくれたから、揃えて欲しい。」

執事がメモを預かる。
執事は息子に聞いてくる。

「いつまでに必要でしょうか?」

「多分、明日の朝から作り始める。料理長に伝えて、2人ほどユーリについてやって欲しい。あと、料理の手順を記す係を手配して欲しい。」

「……それほどですか?」

「ああ、期待してくれ。」

ニヤリと笑いながら息子は答える。
後から料理長から聞いた話だが、工程が複雑過ぎて覚えきれなかったらしい。だから、レシピを書く係が必要だったのかと、納得した。
野菜の皮剥きから、熟練の料理人のような包丁使いを見せたらしい。
ブイヨンと呼ばれる出汁から始まり、流れるように次々と料理を何種類も並行して作っていく。焼き係やスープ係など一種類を何人かで作りあげていくのを、全て一人でやってのけたと聞いた。
息子達と同じ前世持ちなんだろう。
でなければ、18歳にここまでの料理は作り上げられないだろう。

嫁と娘がいないので、娘を引き取る経緯を聞いた。
こんな酷い話が本当にあるのかと久しぶりに怒りが込み上げてきた。
妻は泣いた。同じ女性としては辛い話だったが、家族になるなら聞かない訳にはいかない。話の途中で部屋を出て行きたかっただろうけど、我慢して最後まで聞いてくれた。妻は頑張って聞いてくれた。
嫁の懐、愛情の深さに感謝した。
娘が男そのものを嫌い、憎んでいない状態までに持っていけた嫁はすごいと思う。
もう既に母と娘なんだと思った。
だから、息子もおまけも2人が同じベッドで寝ても、なんら心配をしていないのかと思った。

妻は『良い嫁で良かったわ。内緒だけど、私ママって呼ばれたかったの』と教えてくれた。公爵夫人になれば、平民みたいな呼び方は周りから馬鹿にされてしまうが、憧れはあったようだった。
そんな可愛いことを憧れていたなんて知らなかった。結婚して何十年も経つが、妻の可愛いところはまだまだありそうだ。



私は嫁が調理をしている時は、息子達と城にいた。
無事に帰還した報告をしに登城していた。

謁見の間で、皇帝陛下はおまけ…第二皇子の帰還を喜んでいた。周りも魔物被害が減ると喜んでいた。
褒美の話になった時に第二皇子は、

「今後もジークハロルド達と共にいることをお許しください。」

「…それはジークハロルドと結婚をするということか?」

2人は陛下の前で盛大に顔を顰める。
変なことを言われても顔に出すな。

「いえ、結婚したい相手は別におります。私とジークハロルドが大事に思っている人がいます。」

「……どういうことだ?」

そこで私が説明をした。

「陛下、帰還の際にこの2人と恋仲になった者を連れ帰りました。彼は平民ですので、今回の登城に連れて来れませんでした。」

「…彼?男か?しかも平民か。で、其奴は仲間だったのか?」

「いえ、仲間ではなく、一介の料理人です。」

「なんと?!」

広間がざわつく。
平民で料理人の男が、皇子と公爵子息を虜にしたのだ。
娘のいる家なら、何としてもこの2人に嫁がせたかったのだろう。
その計画もすぐに破算となったな。

「…公爵は許したのか?」

「許すも許さないも、私も妻も息子のすることに間違いはないと信じております。それに公爵家は、次男が跡取りとして貴族院に報告はしてあります。それは何ら変わりはありません。」

息子が無事に戻ってきたから、跡取りが交代するかと思ったのか、また周りがざわついた。
旅に出る前に色々話し合って決めたことを今更変えることはしない。それは息子にも次男にも失礼だ。
おまけもついでとばかりに言う。

「それに、私は子供が為せません。父上はお分かりかと思いますが。女性と結婚しても、子が為せない誹りはどうしても女性にいきます。私はそんな不幸な女性を作りたくありません。」

皇子が側妃の毒で子が為せなくなったことは、息子の手紙に書いてあった。
私は陛下に上奏して調査をした。その結果、息子の手紙通りであったとわかり、息子達の帰還より前に、側妃は皇族殺害未遂で極刑が下され、実家の侯爵家も貴族名鑑から名前が消えた。

「…わかった。ただ他国との兼ね合いもあるから、皇族から籍を外せない。良いか?」

「かしこまりました。」

「して、ジークハロルド、其方の褒美は如何しよう?」

「…なら、騎士団に就職させていただきたいです。」

「それでいいのか?」

「そうでなければ、冒険者を続けます。」

「それなら騎士団に入れ。其方のような人材を外野に流す訳にはいかぬ。」

「有り難き幸せ。」

息子よ、私は知っておるぞ。嫁に『働かざる者食うべからず』なんて言われていたのを。本当に良い嫁だ。
家でこんな大きいのが、ゴロゴロされても困るしな。

「エルンスト、其方は魔法士団に入れ。今更皇族の仕事なぞ、する気はなかろう。」

「はっ。」

皇子、頭を下げる瞬間ニヤついていたぞ。すぐに感情を表情に出すな!


その後は謁見の間から、陛下の執務室へと移動になる。
息子達はすぐに帰れないことに文句を言っている。
皇子、公爵邸は貴方の実家ではございません。

「嫁はいつ紹介するのだ。」

と陛下が問う。

「連れてくる訳ないでしょ、こんな魔窟に。顔の厳つい皇帝を見たら、怖がって泣くでしょ。」

皇子、今は身内だけだからといってもプライベートエリアではないから、言葉使いには気をつけてほしい。

「泣かないとは思うが。」

息子も、以下同文だ。

「なんだ、会わす気がないのか。」

「もう帰っていい?ユーリがフルコース作るって滅多にないから、帰りたい!」

「っバカ!」

息子は慌てて皇子の口を塞ぐ。
しかし、出た言葉は取り消せない。
皇帝の耳にしっかり入ったようで。

「儂も公爵邸に行くぞ!ハーマン、支度せぇ!」

と、結局皇帝自ら嫁に会いに行くことになった。いや、料理食べたさだなとは思っても言わないが。




いきなり1人増えてしまったが、嫁はイヤな顔をせずに、

「エルもジークもいっぱい食べるから、大丈夫。」

って答えてくれた。
こうして、嫁の料理の晩餐会が始まった。
オードブルという前菜から始まり、スープ、魚料理、肉料理と一皿ずつ出される。
どれも美味い。他に言葉を知らないかのように、これしか言えなかった。
うちの料理長と盛り付け方が違うところから、料理長が作っていないとわかる。
オードブルのローストビーフは、肉の柔らかさに驚いたが、味がしっかりしていて、葉物野菜と合う。
スープは時間がなかったからとポタージュとやらを出されたが、じゃがいもが潰されてとろみがあり、今まで飲んでいたスープとコクがまるで違う。
魚料理は初めて食べた。海は南の国に行かないとないので、食べたことはなかった。
身が柔らかくあっさりとしていて、でも肉とは違う旨味があって、美味かった。
肉料理は赤ワイン煮と言っていたが、肉はナイフがスーッと入っていくほど柔らかくて、赤ワインのコクがまた濃厚でいい。
娘だけハンバーグと言っていたが、私もあちらを食べてみたかった。そしたら、

「ユーリ、俺もハンバーグ食べたい。」

と息子が言う。

「ん?足りなかった?でもそう言うと思って用意してあるよ。」

「ユーリ、僕も!」

「はいはい。ジークパパもいる?」

「いいのか?」

「うん。リリーの気にしていたみたいだから欲しいのかなって。すぐに持って来るね。」

と、厨房に戻って行った。
確かに息子と皇子の分だけ明らかに量が違う。私の若い時でも、あれほどは食べれなかっただろう。しかし、これだけ美味しければ、いけたのかもしれない。
しかも嫁は周りをよく見ている。
妻も息子もあまり野菜が好きでないが、オードブルの時に『カトラリーでこう野菜を肉で巻いて食べるとあっさりして食べやすくなるよ』って、娘のオードブルで実践してくれた。それはそのまま娘の口に入っていったが。
まだカトラリーの使い方に慣れていない娘と、野菜嫌いな妻と息子のために教えてくれたのだろう。

運ばれてきたハンバーグも美味かった。
肉汁が溢れ出てきたのに驚いたが、肉の柔らかさにも驚いた。
陛下、羨ましそうに見るな。欲しければ、自分で言え。嫁は陛下だって気付いているけど、敢えて無視しているんだから。

デセールと言う甘味も美味かった。作る工程が華やかだったし、香りがお腹いっぱいなのに刺激されたのか、まだまだ食べれると言ってくる。
ただの薄皮がもちもちしていて、甘味と酸味、苦味が一体となって美味しかった。
こんなに食で満たされたことはなかった。
息子の言う通り、最高の料理人には間違いがないだろう。

その後の陛下と嫁のやり取りは実に面白かった。
陛下とわかってもきちんと自分の意見を言う。しかもワガママでなく、息子達のことも考えた上で。
その上、娘を連れてさっさと引き上げていく。去り際も心得たものだ。

晩餐会の後は、男4人でサロンで色々と話をした。陛下は酒に弱いから、酒は出さない。明日も公務があるから。
この親子の意思疎通の無さが、私や息子を巻き込んだのだから、今日はとことん話し合ってもらいたい。

……と付き合ったら、明け方近くまでかかった。息子はもう完全に熟睡しているし。私も寝たいぞ。
それにしても、言いたいことを溜め過ぎだ。嫁が言うように実にバカバカしい!
あまりにもくだらない言い合いなので、内容は割愛する。聞いている方が、何でこんなことを聞かないといけない?と思う内容であることは間違いない。
朝方漸く陛下が城に戻り、その後は寝た。
妻と嫁は話を聞いて呆れていた。


家ができるまで陛下は時間があればうちに来て、嫁の料理を食べて帰って行った。
材料費くらい請求してもいいか?食い逃げに近いぞ?と思っていたら、ハーマンから陛下の私財から出すようにしますと言ってくれたので、材料費等を引いた額を嫁に渡した。
嫁は『家族だから貰えない』と言ってくれたが、『陛下からの迷惑料として貰っておきなさい』と伝えたら素直に受け取った。
やっぱり迷惑なのか、と少し笑えたけど。



家が出来て、息子達が引っ越していなくなって淋しかったが、次男も学園を卒業して戻ってきた。息子、次男と結婚して、次男に子供が産まれたら、息子が戻って来た頃の賑やかさが公爵邸に戻って来た。
息子達夫婦は年数が経っても、仲が良い。
孫も4人に増えた。
庭を駆け回る孫達を見て、妻と幸せだなと今日も伝え合う。






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