【完結】魔王を倒す前に俺が倒れます!

ゆい

文字の大きさ
112 / 120
番外編

エルと首脳会談の話2

しおりを挟む
夕食を食べ終わり、ロドリー達と別れた。
部屋に戻っても暇だから、父上でも揶揄いに行こうかと部屋を訪ねようとしたら、知らない騎士達に声をかけられる。

「ねぇ、さっきの話って本当?」

一瞬立ち止まり、ニヤニヤしている騎士達の顔を見て、また何事もなかったかのように歩き出す。
さっきの話とは?初めて見る君達と話したこともないのに。

「ちょっ、待てよ!」

とその中の一人が無視する僕の肩を掴もうとする。肩を触ろうとしたら、バチっと雷が走ったかのように手を弾く。
皇族という身分で生まれた以上は、気安に触れないようにと普段から自己防衛をしている。僕に触っていいのは、僕の家族、仲間と認めた人以外は発動するようになっている。
実はこの魔法、ユーリのピアスにも仕込んである。ユーリの感情が最大限に恐怖した時に発動するものだったから、改良の余地はまだまだある。

「いってぇ!!」

と、騎士は弾かれた手を押さえる。

「汚い手で触らないでくれる?」

僕は触られていないのにも関わらず、肩に付いた埃をパッパッと払う仕草をする。

「てめぇ、よくもやってくれたな!」

「自己防衛しただけなのに?」

「てめぇ!」

「もう、用事ないなら行くよ?これでも忙しいんだから。」

父上を揶揄いに行くのに忙しいんだから、と心の声は漏らさない。
その場から立ち去ろうとした時、別の方向から声をかけられる。

「何をしているんだ!」

この国の騎士達だった。警備のために城を巡回していたのだろう。

「コイツが私達にいきなり魔法を使い、彼は怪我をしたので、問いただしていたところです。」

どうして小物は事実と違うことを、事実として言えるのか、僕は不思議に思う。

「突っかかってきたのはそちらでしょう?私は何もしてませんよ。」

「何もしなくて、うちのが怪我をしたって言うのか?!」

「勝手に私に触ろうとしたから、怪我をしただけの話ではありませんか?」

「あのう、ここで言い合いしても仕方ないので、別室にてそれぞれからお話を聞きたいと思います。」

と言われた。この国の騎士は、きちんと仕事をしているなぁ、と目の前の騎士達と比べてしまう。比べたら、この国の騎士に失礼だけど。

「エル、何しているんだ?」

と、また別の人物から声をかけられる。いや、愛称で言う時点でこの国には2人しかいない。

「パパ!」

父上と騎士団長はギョッと驚いた顔をした。パパ呼びなんて初めてだからね。父上はその後デレたけど。

「聞いてよ、パパ。あの人達が僕に絡んできたの!僕、一応皇族だから、簡単に触らせないように自己防衛したのに、攻撃したって言われたのぉ。」

泣きマネをしながら、父上にそう言う。
ジークが見ていたら、『お前誰?』状態だっただろう。騎士団長もそんな顔をしている。

「なんだって?」

と、父上から不穏な雰囲気が漂う。団長も怒りの表情に変わっていく。
僕を知らなくても、皇帝の顔は知っている騎士達は青褪めていく。巡回中の騎士達もどうしていいかわからない状態だ。
そしたら、父上と一緒にいたこの国の王様が、巡回中の騎士に話を聞き、

「あれを調べてこい。」

と言って、騎士の1人が急いでどこかに行った。王様が、

「エルンスト、久しぶりだのぉ。今どちらの言い分が正しいか調べさせている。…まぁ、調べるまでも無さそうだが。」

チラッと騎士達の表情を見てそう言う。
偉い人ばっかり登場して、皇帝を『パパ』と呼び、この国の王様と顔見知りだとわかれば、自ずと僕の身分もわかるだろう。

「お久しぶりです。紹介してもらった宿は快適でしたよ。」

「おお、それは良かった。」

「伴侶とも出会えましたし。」

「そうかそうか。伴侶は噂に聞くと、ラインハルトやエルファスを虜にしたという料理人か。いやぁ、大事な人材を取られてしまったなぁ。」

言葉では悔しそうだが、にこやかに言う。僕が結婚したことに祝いの言葉を真っ先に送ってくれた王様だ。
きちんと周りをみれば、僕達を心配してくれていた人は、他にもいることを初めて知った。

「ユーリのメシは本当に美味いぞ。ラインハルトのところで料理人に指導したから、ラインハルトのところも美味いらしいぞ。」

何故父上が自慢する。僕の嫁だぞ。

「次の会議の開催は、ラインハルトのところだから、楽しみだのぉ。」

おっさん達は会議そっちのけで、食べることしかしなさそうだ。

「そうだ、エルンスト。アマリリス商会だけにドラゴンの魔石を卸しているって聞いたが、本当か?」

うん、と僕は頷く。
アマリリス商会とは、ユーリ家族が営む商会だ。『電話』の発明、販売から、急成長中なのだ。

「明日の議題に『電話』があるんだが、多くの良質な魔石がいるから、どこから融通しようかと悩んでいるのだ。ちと、うちに分けてくれんかの?」

「ええ、ダメだよ。ドラゴンの魔石を優先的に卸すことで、結婚を認めてもらったのに。直接アマリリス商会に交渉してよ。」

「…あそこはどうもな。」

「いや、わかるけど。……義姉さんに頼んでみたら?嫁に行ったけど、ロザリーさんて言う長女がまとめ役になってくれるから、そっちから攻めたら。」

「うむ、ロザリーはしっかりした女性だ。」

「パパ、叱られていたもんね。」

「エルファスは何をしてんだか。わかった、そちらから話を進めてみよう。」

話がまとまったところで、騎士が戻ってきた。一人の年嵩の騎士を連れて。

「状況を確認しました。音声がないので話の内容はわかりませんが、確かにこちらの方に、あちらの方達が手を触ろうとしたところ、火花が散って怪我をされたようです。それと、どの国も王族、皇族の許可のない接触は、暗殺にあたるとして、禁止されております。今回はこれに抵触するかと思われます。」

と、騎士がきちんと説明してくれた。
てか、どうやって確認したんだろう?
あとで王様に聞こう。

「うむ、わかった。さて、其方達は…中津の国か。騎士団長、中津の王にそ奴らを連れて説明に行ってくれ。」

王様は騎士服で判別したらしい。僕にはどこも同じに見えるけど。

「はっ!」

年嵩の騎士はこの国の騎士団長だった。
警備の責任者だから、大変だなぁ。

「で、父上達はこれから内緒話なの?」 

「なんだ、パパはやめたのか。残念だ。」

このおっさんは本当にウザいな。

「いや、久しぶり呑むところだ。エルンストも来るか?」

「行く!」

と、おっさん2人と呑み会が始まった。
ただ酒ひゃっほい!!
酒のお礼にユーリの料理、つまみ用のカナッペを出したら、王様は喜んでくれた。父上に半分食われたけどね。
そう言えば、父上と盃を交わすのは初めてだったが、僕は父上似ではなかったらしい。僕はザルだが、父は下戸までいかなくても3杯目あたりから、へべれけになって呂律が回っていない。
しかも笑い上戸で、ずっと笑っている。

「これ、煩くない?ただでさえ顔が煩いのに。」

「これが楽しみで呑ませているんだ。明日は腹筋が筋肉痛で動きが面白いぞ。」

「策士だねぇ。」

「会議の中に楽しみなことがないと、やってられんからのぉ。」

本当に王様稼業はやりたくないなと、心に誓う。
ちなみにどうやって確認したのか聞いたけど、教えてもらえなかった。ケチん坊め。



会議が終わるまで、あの騎士達に会うことはなかった。謹慎になって先に国に返されたようだ。護衛騎士が他国の魔法士に喧嘩を売るのは、国の恥だからね。
ロドリー情報だと、ドラゴンを単騎で狩ったとホラを吹いているから、正体を暴こうとして、突っかかってきたらしい。
暴いたら、もっと大変なことになってしまったけど。
翌日の会議前に中津の国の王様が謝罪をしてくれた。律儀だなぁ。
そう言えばとついでに、旅で城に寄ったけど、門番が取り継いでくれなかった話をしておいた。短剣も見せたんだけど、偽物扱いされた話は伝えておく。
あの時は本当に頭にキタからね。
更に王様に深く謝られた。
王様の護衛の騎士団長も謝ってきた。
これからは徹底的に指導をすることになったらしい。人材育成を頑張って欲しい。



歩く姿がぎこちない父上の姿をみて、この国の王様とこっそり笑い合ってしまったことは、内緒の話だよ。




しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

処理中です...