【完結】魔王を倒す前に俺が倒れます!

ゆい

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番外編

リリーが大人になったら?の話2

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翌昼過ぎまで、俺は久しぶりにベッドから起き上がれなかった。
本当に3人でなんて久しぶりだから、体力、魔力を根こそぎ持っていかれた。おかげで昼になるまで眠ったままだった。
今日はエルもジークも休みだったらしい。だから、朝方まで俺を抱いていたのか。
あまり人の予定を把握していない俺は、予定表になるホワイトボードが欲しいと切実に思った。
リリーも来年から学校に行くし、エルに早速お願いをしよう。

エル達は朝普通に起きて、俺の代わりに朝ごはんを作ったり、魔馬の世話をしたり。
ホワイトボードも欲しいが、体力も欲しい。
朝ごはんの時、リリーからジト目で2人は見られていたらしい。居心地が悪かったと聞いて笑ってしまった。
リリーも俺が好きだもんね。俺も大好きだ!



昼前に昨日の件で騎士達が来て説明してくれた。
なんでも他国の大商人で、貴族家で店の話を聞いたらしい。
まだその貴族家はうちに来たことはない。
貴族家も噂でしか知らなかったらしい。
だから予約を入れることすら知らなかった。
うちは予約をする際に紹介状をお願いしている。一応皇族と公爵家の人間がいるから、万が一があっては困る。
最初はジークママの紹介だけだったけど、美味しいと評判になるのは、あっという間だった。
皇帝もお忍びで通うって噂まである。
お忍びというか、息子の嫁の飯を食べに来ているだけだけど。
騎士達も警備上のこともあるから、騎士団では知れ渡っているし。
騎士団が知っているから、貴族家も知っているかと思っていたけど、そこまで話は回ってなかったようだ。

大商人は騎士団から注意を受けて保釈されたらしい。二度目は、即刻牢屋行きと言われた。でも、あまり反省の色は見えなかったらしい。
多分北の国に近い商人なんだろう。
あそこら辺は、本当に料理人をバカにしていたから。



俺が寝室から出れるようになったのでリビングに行ったら、ジークはリリーに勉強を教えていて、エルは何かの本を読んでいた。

「おそよう。」

「ふふ、おそよう。ママ大丈夫?」

「ん、なんとか。」

「もう、イヤならイヤと言わなきゃダメだよ。」

「リリー、やめて!娘にそんなことを言われると恥ずか死ぬ!」

俺は思わず顔を両手で隠して床に蹲る。

「ユーリ、生きろ。」

「いや、元凶の一人が何言ってんのさ。」

ジークとリリー、いやリンクの漫才が始まる。

「仕方ないだろ。リリーも可愛いが、ユーリはもっと可愛い!…リンクは可愛くないが。」

「僕とリリーは同じなの!」

「いや違う。リリーから『パパ』と呼ばれるのは嬉しいが、リンクから『パパ』と呼ばれたら悪寒が走る。」

「ひっどーい!差別だ差別!」

ジーク、何かリンクに恨みでもあんのかな?
2人の掛け合いは放っておくに限る。
エルは、蹲る俺をひょいと持ち上げ、ソファに座らせる。

「もう大丈夫なの?」

「誰かさんのおかげで。」

暗にエルのポーションのことを言えば、苦笑いで返される。

「エルは何読んでいるの?ん、『呪いの大全集』?なんか、不穏だね。」

「いや、夢のリリーの結婚相手は、ユーリが嫌いな人なんでしょ?だったら、直接何かできなくても、呪いなら犯人もわからないし、罪には問えないじゃない。」

「……こええよ。そっちの方が精神的に怖いよ。」

「で、夢の相手は誰?僕が呪いを習得したら、リリーの結婚相手にはならないでしょ?」

「いや、怖いって。……パン屋の倅。」

「パン屋って、ユーリの店にも卸していたけど、ユーリの店が噂になると、値上したり、卸さなくなったあのパン屋?」

「そう、倅は15、6だったけど、俺とそんなに年齢は違わないだろ?かたや遊び歩いてあまり家業を手伝わないし、かたや貴族と結婚して道楽で稼いでいるって、あの親父はそう思い込んでいたみたい。倅も俺の話を聞いて面白くなくて、嫌がらせの値上を始めたみたいなんだよね。差引き分は倅の懐へって寸法で。まあ、八百屋の親父情報だけど。」

「はぁ、道楽でここまでの料理なんて作れないでしょ。きちんと厳しい修行したのにね。」

「ね。でも、食べたことがない人に好き勝手言われても気にしないけど。」

「ま、とりあえず簡単なものからしておくから。」

「いや、やめて。勇者の呪いなんて、誰にも解けないから。それにリリーも俺に嫌がらせした相手と結婚することはないってわかっているから。」

「そう?そこまで言うならやめておくよ。」

エルが思い止まってくれて助かった。
下手したら、エルが魔王になる可能性もあるから、そちらの方面は極力させないようにしておく。




旅からの癖で、毎日できるだけリリーを寝かしつけていたが、12歳になる前頃に『わたしはもう大人なんだから』って、寝かしつけを断られた。
でも今夜は俺と一緒に寝たいと言ってくれた。
エルが文句を言ってこないあたり、3人で決めたらしい。
他人から見たら、19歳の俺と12歳のリリー。勘繰る人もいると思う。でもリリーは大事な娘だ。そういう目で見てくる奴らの気がしれない。
久しぶりにリリーと一緒に寝れると喜ぶ俺を、エルとジークは微笑ましく見ている。




「ママ、わたしね、お嫁にいかないよ。いけないかも。」

「なんで?」

「だってわたし……。」

その後の言葉は多分、『汚れている』からかな。

「でもね、好きな人ってね、そんな過去のことなんか気にしないよ。寧ろ、辛かっただろうって一緒に泣いてくれるよ。今はジークの義娘だから貴族令嬢だけど、結婚相手は貴族でも平民でも構わないよ。リリーを一番に考えて大事にしてくれる人なら、それでいいんだ。」

「ママ。」

「貴族相手だと、しきたりとか色々あって大変かもしれないけど、リリーがいつも笑って過ごせる相手なら許す。ただ、パン屋の倅はないよ。本当にない。」

「大丈夫だよ。私もあの人好きじゃないもん。私もママの笑顔が大好きだし。」

「ああ、リリーが可愛い。このまま4人でずっと暮らしたいわぁ。」

思わずむぎゅっとリリーを抱きしめる。

「ママの方が子離れできなそうだね。」

「する気ないから!」

「ママ開き直ったね。」

「うん。俺じゃ、エルとジークの子供を産んであげられないし。リリーがいなかったら、エルとジークと結婚しなかったと思う。」

「……しなかったの?」

「エルもジークもマークもヴォルフもリンクも家族に憧れていたから。ジークなんて今世は良い家族に恵まれたけど、悲しませるのがイヤで、わざと突き放していたところがあったし。でも、結婚して、自分の子供が欲しかったと思うんだ。何回転生しても、子育てはしたことなかったよね。だから、憧れが強かったと思うんだ。俺じゃ産めないから、夫婦になってその先を考えた時に、破綻しか見えなかった。でも、リリーが『ママ』って呼んでくれたから、リリーのママになる覚悟ができた。そしたら、エルとジークと結婚しても大丈夫って思えたんだ。だから、リリーが娘になってくれて嬉しいんだ。ありがとう。」

「わたしもママ離れしたくない。」

リリーも俺をぎゅっと抱きしめてくる。
ああもう本当にリリーは可愛いなぁ。
お互いをぎゅむぎゅむと抱きしめ合いながら眠った。



その夜は、リリーとドライブをする夢を見た。
真っ赤なオープンカーで隣に大人のリリーを乗せて、海辺を走らせる。
立ち寄ったパーキングエリアでソフトクリームを食べさせあったり、お土産を買ったり。
あれ?これって恋人デート?しかも場所は日本だし。車なんてないし。
しかも俺、前世の俺だし。絵面的に北欧系美女と冴えないおっさんのカップルって、犯罪臭しかしないよな?周りも胡乱気に俺達を見てくる。主に俺を見てくる。
俺、リリーに貢いでいるの?それともリリーが美人局?それとも何も知らない外国人のリリーを俺が騙している?
いやぁ、通報案件になるぅ!

と、夢で叫んだところで目が覚めた。
俺は、この時やっと夢は夢でしかないと認識できた。


リリーは可愛いけど、夢のリリーの事柄は可愛くないことばっかりで、当分は夢を見ないくらい深く眠りたい。
そう思うほど、今回は精神的に参っていた。








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