116 / 120
番外編
俺に弟子ができる話
しおりを挟む
「お願いします!弟子にしてください!」
俺は八百屋で買い物をしていたら、いきなり若い男にそう言われた。
周りは何事かと騒つく。
「良かったね、おっちゃん。最近重いのを持つと腰が痛いって言っていたから、若いのが入ってきたら、少しは楽になるね。」
「えっ、いや、違います。八百屋でなく、」
「はい、お金。じゃ、あとよろしく!」
「ユーリちゃん?!」
と、俺はダッシュでその場から立ち去った。三十六計逃げるに如かずだ。
市場から出て馬停めまで走り、魔馬に跨がりすぐに家に帰った。
今日の買い物は八百屋だけだったから良かった。他の店もあったら付き纏われただろう。
弟子志願者は結構な人数がきていた。
大体がエルとジーク狙い。料理を真剣に教えて欲しいと来たのは数人。その数人はまず公爵邸にお願いして、下っ端から始めさせている。料理長が人格等を判断して大丈夫とお墨付きをもらってから、俺のところに来れる。まだいないけど。
いきなり俺の城に知らない奴を入れたくない。俺専用魔道具もあるし。盗まれはしないけど、気持ちがいいものではないしな。
皇都に来て3年が経つ。
俺は21歳。エル達は…そう言えば年齢聞いたことがなかった。25、6くらい?もっと上?気にしたことなかったよ。
リリーはもうすぐ14歳。綺麗な女性に変身中だ。
13歳の時に学園に入学したが、色々あって1ヶ月で辞めた。あの後エルパパは、貴族には平民の有り難みを学園で教えるように指導していた。俺はリリーの意思に従うだけ。でもすぐに相談はして欲しかった。
今はエルと共に魔法士団で働いている。女性初だそうで、一時は騒がれた。
まだ男性を苦手にしているが、エルの助手として入ったから、エルが牽制してくれるだろう。
エルパパもリリーを大事にしてくれているから、リリーに嫌がらせしたら即クビになってしまうだろうし。
ジークもそれなりに昇進はしている。ただ協調性の無さが心配だ。
エルは特別枠だから、…昇進も何もないけど、仕事をしてくれればいいや。
俺は相変わらず一人で店をしている。
アルス達に子供が出来たので、今は別の人が給仕係に来てくれている。なんと公爵邸の執事長サイラスとメイド長イリシャのご夫婦だ。
50も過ぎたし後継も育ったので、若手に譲ったけど、身体はまだまだ元気だからって、アルス達に子供が出来たのを機に、こっちで働きたいと言ってくれた。
俺としては有り難い。ジークパパもうちの店なら良いと言ってくれて、夕方から夜の短時間だけ働いてもらっている。
夜の通いも大変だろうからと、近所の空き家を買い取り、そこで2人は住んでいる。
子供達も独立しているから、余生はここで過ごすと言っていた。
たまにジークやレオの子供の時の話をしてくれるので、俺の楽しみが一つ増えた。
翌日八百屋に買い出しに行けば、昨日の人が働いていた。なんだ、やっぱり八百屋志望だったみたいだ。
「おっちゃんおはよう。」
「ユーリちゃん、おはよう。昨日はよくも逃げたね。」
あらおっちゃんおこ?
「いやぁ、この歳で弟子ってまだ早いよ。」
「まだ早いかも知れんが、話だけでも聞いてやって欲しいな。彼、南の国からわざわざユーリちゃんを訪ねて来たんだよ。話を聞いてあげなよ。」
「ふぇ?」
南の国?ラインハルトの国?
「ユーリさん、おはようございます。お久しぶりです。」
「…誰?」
「宿で働いていたリュークです。タハル料理長の。」
「タハルのところ?……あっ、レシピを書いてくれていたリューか?」
「そうです!」
「うわあ、全然変わってわからなかったよ。」
「だから昨日逃げたんですね。」
リュークはガクッと肩を落とす。
レシピを一生懸命書いて、俺の後をちょこちょこ付いてきて、母さんにスープを飲ませたいって言っていたリューク。
身長も伸び、精悍な顔立ちに変わったら、もう別人にしか見えなかった。
「ごめんね。こんないい男になったなんて思わなかったよ。…で、弟子になりたいの?」
「はい。タハル料理長から推薦状を書いてもらいました。ユーリさんから教わった料理は作れます。」
「…じゃ、試験をしよう。今日は店も丁度休みでスープを作るから。おっちゃん、野菜は今日は多めで。」
「あいよ。にいちゃん良かったな。ユーリちゃん厳しいから、頑張れよ!」
「はい、ありがとうございます。あの宿代払います。」
「いいよ。店手伝ってくれたし、昨夜と今朝、ごはんを作ってくれたんだ。それで十分だ。かみさんのごはんより美味かったしな。」
おっちゃんはおかみさんに頭をバシっと叩かれた。
「料理下手で悪かったね。でも本当に美味しかったよ。ユーリちゃんの料理は食べたことないけど、あれ以上に美味しいなら、平民の手には届かないのも納得だわ。」
「いや、俺がやる気がないだけ。他に就職したら、エルパパが怒りそうだし。」
「でも一度くらいは食べてみたいわねぇ。」
「食べてみたいなぁ。」
「…ん~、考えておくよ。」
と、八百屋を後にする。買い物を次々に済ませて、八百屋に戻り、リュークを引き取り家に帰る。
リュークを魔馬に乗せられないので、帰りは2人と1頭で歩いて帰った。
「でっかい店ですね。」
「いや、自宅だよ。」
「ふぇ?!」
「店はあっちの建物。」
「えっ?お客様がそんなに入らないんじゃないですか?」
「1日1組限定、要予約。一人でやるから、これが精一杯なの。」
厨房に直接外と出入りするドアから入る。ここは主に給仕係用に作ったドアだ。
「ここが俺の厨房だ。あっちに更衣室があるから、コックコートに着替えてこい。試験をしよう。」
「はい!」
着替えてきたリュークから、推薦状を受け取り、まずはオムレツを作ってもらった。
手順も完璧で流れるように作った。
何十回、何百回と練習したのだろう。
出来たのを試食する。
形も良く、色も綺麗だ。ナイフを入れれば、中はトロトロだが、じゅわぁと卵液が出てくることはない。
一口食べれば、俺の作るのと遜色はなかった。
「次、自分の得意な料理を作ってみろ。材料はあっちに入っている。ないものがあったら教えて。」
「はい!」
俺はブイヨンを作る。煮込んでいる合間に推薦状を読む。
『リュークはユーリを目指して毎日努力をしていた。腕も若手の中では一番だ。このまま宿で修行するよりは、ユーリのところで修行させた方が、もっと伸びるから頼みたい』と書かれてあった。
タハルは俺から見ても、料理には真摯な料理長だ。そのタハルがここまで言うから、リュークは相当努力したんだろう。
オムレツの時点で合格だよ。でも、自分だけの得意料理ってあるじゃない。料理人なら、リュークの得意な料理がどんなか食べてみたい。
ブイヨンが出来上がる頃に、リュークの料理ができた。慣れない厨房だから、調理器具に手間取ったが、包丁使いも上達していた。
出てきたのは、鳥肉のバロティーヌだった。多分名前は知らないだろうと思う。
鳥肉で野菜、チーズを包み、油紙で水が入らないようにしっかり包み、20分ほど茹でた後に、フライパンで表面をカリカリに焼く。ソースはトリュフソースを使いたいところだけど、この世界にトリュフなんて見たことがないから、どんなソースか気になる。
一口大に切り食べる。肉はしっとりしているが、表面のカリカリで食感を二通り楽しめる。味もしっかりついているが、ソースには生クリーム、チーズ、香りが強いきのこを使っている。皇国にはないきのこだ。
中の野菜もしっとりした肉と合っていて美味い。
「はぁ、すごいな。ここまで自分で考えたのか。」
「はい。タハル料理長に相談しながらですけど。」
「いや、相談できる相手がいるのはいいことだよ。じゃあ、今日からよろしくね。」
「っ、はい!よろしくお願いします!」
と、リュークは涙ぐんで頭を下げた。
よっぽど嬉しかったのか、その後は泣いちゃったけど。
さて、今後の下宿先とかを考えないといけない。
うちでもいいんだけど、リリーがいるし、エルとジークが絶対許さないだろう。リュークがそんな子ではなくても、一日中一緒にいることになるから、面白くないだろうし。
なら、執事長達に相談しようか。
と、コックコートを脱ぎ、2人で執事長達の家を訪ねる。
「サイラスさん、イリシャさん、いますか?」
声を掛けながら玄関の扉をノックする。
ガチャと扉が開き、サイラスさんが出てきた。
「ユーリ様どうしましたか?」
「実は相談がありまして。」
と、中に入れてもらい、2人にリュークの下宿先の相談をする。
「なるほど。でしたら一緒に住みませんか?この通り2人暮らしですし。」
「でも、折角の夫婦水入らずなのに。」
「いえいえ、2人して仕事をしていないと落ち着かないタチで。家で磨くところはもうないくらいですよ。」
「誰かのお世話をするって、やりがいがありますし。」
「リューは?」
「お邪魔でなければ、お世話になりたいです。」
「決まりだね。」
「では、旦那様にも連絡をしておきます。」
「ありがとう。夕食は2人もこっちに来て。リューの歓迎会をやろう。」
「「はい、ありがとうございます。」」
夕方、帰って来たエル達にリュークを紹介した。エルとジークは、リュークを覚えていたらしく『大きくなったなぁ』とか親戚のおじさんが言うセリフを言っていたので笑えた。
リュークには事前にリリーのことを伝えておいたから、紹介の時はなるべく優しく接しようと頑張っていた。
でも、リリーは怖がることがなかった。
年齢も近いのもあり、すぐに打ち解けていった。
サイラス達が来たところで歓迎会を開始した。和気藹々と食べる。今日は人数が多いからビュッフェ形式にした。
ジーク、野菜もきちんと食べろ。
リュークの作った料理は好評だった。
ジークは何回もおかわりをしていた。
で、相変わらずエルパパが突撃してくる。
みんなが溜息を吐くなか、リュークだけはびっくりしていた。
エルの父で、夕食には突撃してくる迷惑なおじさんと紹介した。
リュークがエルパパと会話する。
「そうか、南の国から来たのか。ラインハルトは元気か?」
「ラインハルトさん?」
「南の国の王様だ。」
「えっ?」
「ちなみに儂はこの国で皇帝をしている。ここでの扱いは迷惑なおじさんらしいがな。」
こっちに聞こえるように言う辺り、自覚はしているがやめる気はないということか。
「ええ!…え、エルさんて皇子様?ジークさんは?」
「伯爵だな。元は公爵子息で、サイラス達は公爵邸の執事長とメイド長だったぞ。」
「ええ!!!情報が多すぎる!!」
困惑したリューク。その後は自分でも何を喋っていたのか思い返せないほど、緊張したらしい。
「ユーリ様、伝えてなかったのですか?」
とサイラスに言われる。
「いや、忘れていた。そう言えば俺、伯爵夫人だったね。」
と笑って誤魔化す。
本当に忘れていたんだよ。
俺もエルの言えないなと、少し反省をした。
この日、店に新しい仲間が増えた。
俺は八百屋で買い物をしていたら、いきなり若い男にそう言われた。
周りは何事かと騒つく。
「良かったね、おっちゃん。最近重いのを持つと腰が痛いって言っていたから、若いのが入ってきたら、少しは楽になるね。」
「えっ、いや、違います。八百屋でなく、」
「はい、お金。じゃ、あとよろしく!」
「ユーリちゃん?!」
と、俺はダッシュでその場から立ち去った。三十六計逃げるに如かずだ。
市場から出て馬停めまで走り、魔馬に跨がりすぐに家に帰った。
今日の買い物は八百屋だけだったから良かった。他の店もあったら付き纏われただろう。
弟子志願者は結構な人数がきていた。
大体がエルとジーク狙い。料理を真剣に教えて欲しいと来たのは数人。その数人はまず公爵邸にお願いして、下っ端から始めさせている。料理長が人格等を判断して大丈夫とお墨付きをもらってから、俺のところに来れる。まだいないけど。
いきなり俺の城に知らない奴を入れたくない。俺専用魔道具もあるし。盗まれはしないけど、気持ちがいいものではないしな。
皇都に来て3年が経つ。
俺は21歳。エル達は…そう言えば年齢聞いたことがなかった。25、6くらい?もっと上?気にしたことなかったよ。
リリーはもうすぐ14歳。綺麗な女性に変身中だ。
13歳の時に学園に入学したが、色々あって1ヶ月で辞めた。あの後エルパパは、貴族には平民の有り難みを学園で教えるように指導していた。俺はリリーの意思に従うだけ。でもすぐに相談はして欲しかった。
今はエルと共に魔法士団で働いている。女性初だそうで、一時は騒がれた。
まだ男性を苦手にしているが、エルの助手として入ったから、エルが牽制してくれるだろう。
エルパパもリリーを大事にしてくれているから、リリーに嫌がらせしたら即クビになってしまうだろうし。
ジークもそれなりに昇進はしている。ただ協調性の無さが心配だ。
エルは特別枠だから、…昇進も何もないけど、仕事をしてくれればいいや。
俺は相変わらず一人で店をしている。
アルス達に子供が出来たので、今は別の人が給仕係に来てくれている。なんと公爵邸の執事長サイラスとメイド長イリシャのご夫婦だ。
50も過ぎたし後継も育ったので、若手に譲ったけど、身体はまだまだ元気だからって、アルス達に子供が出来たのを機に、こっちで働きたいと言ってくれた。
俺としては有り難い。ジークパパもうちの店なら良いと言ってくれて、夕方から夜の短時間だけ働いてもらっている。
夜の通いも大変だろうからと、近所の空き家を買い取り、そこで2人は住んでいる。
子供達も独立しているから、余生はここで過ごすと言っていた。
たまにジークやレオの子供の時の話をしてくれるので、俺の楽しみが一つ増えた。
翌日八百屋に買い出しに行けば、昨日の人が働いていた。なんだ、やっぱり八百屋志望だったみたいだ。
「おっちゃんおはよう。」
「ユーリちゃん、おはよう。昨日はよくも逃げたね。」
あらおっちゃんおこ?
「いやぁ、この歳で弟子ってまだ早いよ。」
「まだ早いかも知れんが、話だけでも聞いてやって欲しいな。彼、南の国からわざわざユーリちゃんを訪ねて来たんだよ。話を聞いてあげなよ。」
「ふぇ?」
南の国?ラインハルトの国?
「ユーリさん、おはようございます。お久しぶりです。」
「…誰?」
「宿で働いていたリュークです。タハル料理長の。」
「タハルのところ?……あっ、レシピを書いてくれていたリューか?」
「そうです!」
「うわあ、全然変わってわからなかったよ。」
「だから昨日逃げたんですね。」
リュークはガクッと肩を落とす。
レシピを一生懸命書いて、俺の後をちょこちょこ付いてきて、母さんにスープを飲ませたいって言っていたリューク。
身長も伸び、精悍な顔立ちに変わったら、もう別人にしか見えなかった。
「ごめんね。こんないい男になったなんて思わなかったよ。…で、弟子になりたいの?」
「はい。タハル料理長から推薦状を書いてもらいました。ユーリさんから教わった料理は作れます。」
「…じゃ、試験をしよう。今日は店も丁度休みでスープを作るから。おっちゃん、野菜は今日は多めで。」
「あいよ。にいちゃん良かったな。ユーリちゃん厳しいから、頑張れよ!」
「はい、ありがとうございます。あの宿代払います。」
「いいよ。店手伝ってくれたし、昨夜と今朝、ごはんを作ってくれたんだ。それで十分だ。かみさんのごはんより美味かったしな。」
おっちゃんはおかみさんに頭をバシっと叩かれた。
「料理下手で悪かったね。でも本当に美味しかったよ。ユーリちゃんの料理は食べたことないけど、あれ以上に美味しいなら、平民の手には届かないのも納得だわ。」
「いや、俺がやる気がないだけ。他に就職したら、エルパパが怒りそうだし。」
「でも一度くらいは食べてみたいわねぇ。」
「食べてみたいなぁ。」
「…ん~、考えておくよ。」
と、八百屋を後にする。買い物を次々に済ませて、八百屋に戻り、リュークを引き取り家に帰る。
リュークを魔馬に乗せられないので、帰りは2人と1頭で歩いて帰った。
「でっかい店ですね。」
「いや、自宅だよ。」
「ふぇ?!」
「店はあっちの建物。」
「えっ?お客様がそんなに入らないんじゃないですか?」
「1日1組限定、要予約。一人でやるから、これが精一杯なの。」
厨房に直接外と出入りするドアから入る。ここは主に給仕係用に作ったドアだ。
「ここが俺の厨房だ。あっちに更衣室があるから、コックコートに着替えてこい。試験をしよう。」
「はい!」
着替えてきたリュークから、推薦状を受け取り、まずはオムレツを作ってもらった。
手順も完璧で流れるように作った。
何十回、何百回と練習したのだろう。
出来たのを試食する。
形も良く、色も綺麗だ。ナイフを入れれば、中はトロトロだが、じゅわぁと卵液が出てくることはない。
一口食べれば、俺の作るのと遜色はなかった。
「次、自分の得意な料理を作ってみろ。材料はあっちに入っている。ないものがあったら教えて。」
「はい!」
俺はブイヨンを作る。煮込んでいる合間に推薦状を読む。
『リュークはユーリを目指して毎日努力をしていた。腕も若手の中では一番だ。このまま宿で修行するよりは、ユーリのところで修行させた方が、もっと伸びるから頼みたい』と書かれてあった。
タハルは俺から見ても、料理には真摯な料理長だ。そのタハルがここまで言うから、リュークは相当努力したんだろう。
オムレツの時点で合格だよ。でも、自分だけの得意料理ってあるじゃない。料理人なら、リュークの得意な料理がどんなか食べてみたい。
ブイヨンが出来上がる頃に、リュークの料理ができた。慣れない厨房だから、調理器具に手間取ったが、包丁使いも上達していた。
出てきたのは、鳥肉のバロティーヌだった。多分名前は知らないだろうと思う。
鳥肉で野菜、チーズを包み、油紙で水が入らないようにしっかり包み、20分ほど茹でた後に、フライパンで表面をカリカリに焼く。ソースはトリュフソースを使いたいところだけど、この世界にトリュフなんて見たことがないから、どんなソースか気になる。
一口大に切り食べる。肉はしっとりしているが、表面のカリカリで食感を二通り楽しめる。味もしっかりついているが、ソースには生クリーム、チーズ、香りが強いきのこを使っている。皇国にはないきのこだ。
中の野菜もしっとりした肉と合っていて美味い。
「はぁ、すごいな。ここまで自分で考えたのか。」
「はい。タハル料理長に相談しながらですけど。」
「いや、相談できる相手がいるのはいいことだよ。じゃあ、今日からよろしくね。」
「っ、はい!よろしくお願いします!」
と、リュークは涙ぐんで頭を下げた。
よっぽど嬉しかったのか、その後は泣いちゃったけど。
さて、今後の下宿先とかを考えないといけない。
うちでもいいんだけど、リリーがいるし、エルとジークが絶対許さないだろう。リュークがそんな子ではなくても、一日中一緒にいることになるから、面白くないだろうし。
なら、執事長達に相談しようか。
と、コックコートを脱ぎ、2人で執事長達の家を訪ねる。
「サイラスさん、イリシャさん、いますか?」
声を掛けながら玄関の扉をノックする。
ガチャと扉が開き、サイラスさんが出てきた。
「ユーリ様どうしましたか?」
「実は相談がありまして。」
と、中に入れてもらい、2人にリュークの下宿先の相談をする。
「なるほど。でしたら一緒に住みませんか?この通り2人暮らしですし。」
「でも、折角の夫婦水入らずなのに。」
「いえいえ、2人して仕事をしていないと落ち着かないタチで。家で磨くところはもうないくらいですよ。」
「誰かのお世話をするって、やりがいがありますし。」
「リューは?」
「お邪魔でなければ、お世話になりたいです。」
「決まりだね。」
「では、旦那様にも連絡をしておきます。」
「ありがとう。夕食は2人もこっちに来て。リューの歓迎会をやろう。」
「「はい、ありがとうございます。」」
夕方、帰って来たエル達にリュークを紹介した。エルとジークは、リュークを覚えていたらしく『大きくなったなぁ』とか親戚のおじさんが言うセリフを言っていたので笑えた。
リュークには事前にリリーのことを伝えておいたから、紹介の時はなるべく優しく接しようと頑張っていた。
でも、リリーは怖がることがなかった。
年齢も近いのもあり、すぐに打ち解けていった。
サイラス達が来たところで歓迎会を開始した。和気藹々と食べる。今日は人数が多いからビュッフェ形式にした。
ジーク、野菜もきちんと食べろ。
リュークの作った料理は好評だった。
ジークは何回もおかわりをしていた。
で、相変わらずエルパパが突撃してくる。
みんなが溜息を吐くなか、リュークだけはびっくりしていた。
エルの父で、夕食には突撃してくる迷惑なおじさんと紹介した。
リュークがエルパパと会話する。
「そうか、南の国から来たのか。ラインハルトは元気か?」
「ラインハルトさん?」
「南の国の王様だ。」
「えっ?」
「ちなみに儂はこの国で皇帝をしている。ここでの扱いは迷惑なおじさんらしいがな。」
こっちに聞こえるように言う辺り、自覚はしているがやめる気はないということか。
「ええ!…え、エルさんて皇子様?ジークさんは?」
「伯爵だな。元は公爵子息で、サイラス達は公爵邸の執事長とメイド長だったぞ。」
「ええ!!!情報が多すぎる!!」
困惑したリューク。その後は自分でも何を喋っていたのか思い返せないほど、緊張したらしい。
「ユーリ様、伝えてなかったのですか?」
とサイラスに言われる。
「いや、忘れていた。そう言えば俺、伯爵夫人だったね。」
と笑って誤魔化す。
本当に忘れていたんだよ。
俺もエルの言えないなと、少し反省をした。
この日、店に新しい仲間が増えた。
174
あなたにおすすめの小説
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました
すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。
第二話「兄と呼べない理由」
セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。
第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。
躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。
そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。
第四話「誘惑」
セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。
愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。
第五話「月夜の口づけ」
セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!
迷路を跳ぶ狐
BL
悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。
その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。
ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。
出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。
しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。
あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。
嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。
そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。
は? 一方的にも程がある。
その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。
舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。
貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。
腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。
だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。
僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。
手始めに……
王族など、僕が追い返してやろう!
そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる