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指輪は、時計屋では何も話してこなかった。
多分だけど、時計に関することは、作ってはいけないモノに繋がるから、何も言わないと思う。
時計屋にいると、指輪が喋ってこないので、分解に没頭して、また門限ギリギリに帰ることになってしまった。
時計屋で何もしゃべらなかった指輪だけど、魔法具部にいる時は、修理品に持ち込まれた品物を視て、どこが故障かを的確に教えてくれる。
私は指輪に頼るつもりがないのに、教えてくれるから、つい頼ってしまう。
まずい。一人で仕事できなくなりそう。
それにそのうち、指輪に語るつもりで、一人言を言いそうで怖い。
頼むから、魔法具部にいる時も、静かにしてもらいたい。
『無理です』
そっかぁ、無理かぁ。……もう、真面目に泣いていいかなぁ。
私、アレの部類に入りたくないんだよ。
贋金判別装置DXくんの修理が終わる頃、フェリックス様から夕食会のお誘いの手紙が魔法具部に届いた。
交流会が中止となってしまったお詫びに、夕食を一緒に取らないか、ということだった。
部長は、私に手紙の内容を聞いてくる。
何気に私の心配をしてくれている部長。
でも、魔法具部に届いた手紙だから、内容の確認だけかもしれないけど。
「行ってきなさい。…僕にちゃんと結婚式のスピーチをさせて!」
なんて、少し涙目で怒ったように言われた。
部長、そんなに結婚式のスピーチしたかったんだ。だから、心配してくれているのかな?
でも、夕食会かぁ、どうしよう?と、悩む私だった。
休憩時間、リストは空き部屋に私を連れていき、こっそりと言ってくれた。
「ノイリス、お前がミレイスター様の婚約者なんだから、な」
と、リストは後押しをしてくる。
私は、夕食会の席に、エミールがいるかもしれないことを、恐れていたんだと思う。
リストは、自分のことなのに気付かない私より、私の心情を読めるのかもしれない。
「お前さ、普段無表情で、何を考えているのか分からないけど、仕事の時は目を輝かせているし、食堂のランチで嫌いなものが出てくると、口がへの字になるんだよ。長い付き合いだから、わかんの。でも、それってミレイスター様もあてはまるんだからな。多分お前のことを一番に観察しているのは、ミレイスター様なんだから、ここら辺で、自分の気持ちをぶつけて来いよ」
リストの最後のほうの言い方は、決着をつけてこい、という言い方だった。
「……もしかして、今年の叙爵・昇爵の発表に、フェリックス様の名前が?」
「ほぼ騎士爵確定だって。叙爵したら、結婚するんだろ?」
「……うん。でも、25歳前での叙爵は、早いね」
「まぁ、少ないけど例がないわけではないらしいから、特に反発はなかったらしいよ。」
「……そっかぁ。時計屋か魔法具部か、どちらかを選択しないと、だよね」
「心配はそっちかよ。でも、魔法具部と時計屋と家庭の3つの持ち回りは、流石にキツいって。……その前に、いい加減、自分の気持ちを、ミレイスター様に伝えることをしよう?弟くんが来ることを、きちんと拒否しよう?」
「…うん、わかっているけど、でも、エミールに私が言っても聞く耳を持たないし」
「だから、弟くんじゃなくて、ミレイスター様にきちんと伝えろって言ってんの!ノイリスは、ミレイスター様が好きなんだろ?交流会で何も話さなくても、陰で努力している姿とか見て、いちいち俺に報告してくるくらいに、好きなんだろ?」
「好きだよ!お見合い相手がフェリックス様って、わかった時には舞い上がったよ!でも、……でも、話すの下手だから、変なことを言ってしまって、フェリックス様が呆れたり、嫌われてしまうんじゃないかと思ったら、怖いんだよ。好きな人に嫌われたくないんだもん!」
私は少し涙目になってしまった。
そんな私をみて、リストはハンカチを差し出してきた。
私は有難くリストのハンカチを受け取り、涙を拭い、鼻を思いっきりかんで、そのまま返してやった。
リストは、ハンカチをつまみながら受け取ると、速攻ゴミ箱に捨てていた。勿体ない!!
私が10歳で学園に入学してから、色々と話題に上がる2歳上のフェリックス様。
周りと一緒に、私も自然とフェリックス様を目で追っていた。
淡い憧れから淡い恋心に変わるのは、すぐだった。
でも、侯爵家と子爵家。しかも2歳上。
接点は何もなく、話すことより、認識してもらうことさえないと思っていた。
それが、まさかの婚約者になるとは思わなかった。
学園に入学してから、隣の席で、将来魔法具師になりたいと、お互いに似たような夢を持っていたリストと親友になるにはそう時間が掛からなかった。
だから、リストには私の環境も心情もよく知っている。
私もリストの環境は知っているが、リストの心情までは、いつまで経っても読み取れない。
そんな私でも、リストは親友でいてくれてる。
リストに恩返ししたいけど、一生出来ない気がする。
「ありがとう。夕食会に行って、きちんと話してみるよ」
私の涙が止まった頃、リストに言う。
「うん、頑張れよ。で、反応が悪かったら、婚約解消しろよ?俺と一緒に独身貴族楽しもうぜ?」
「……独身貴族って。貴族でなくなるのに」
「言葉遊びだって」
リストが応援してくれるから、頑張ってみることにした。
多分だけど、時計に関することは、作ってはいけないモノに繋がるから、何も言わないと思う。
時計屋にいると、指輪が喋ってこないので、分解に没頭して、また門限ギリギリに帰ることになってしまった。
時計屋で何もしゃべらなかった指輪だけど、魔法具部にいる時は、修理品に持ち込まれた品物を視て、どこが故障かを的確に教えてくれる。
私は指輪に頼るつもりがないのに、教えてくれるから、つい頼ってしまう。
まずい。一人で仕事できなくなりそう。
それにそのうち、指輪に語るつもりで、一人言を言いそうで怖い。
頼むから、魔法具部にいる時も、静かにしてもらいたい。
『無理です』
そっかぁ、無理かぁ。……もう、真面目に泣いていいかなぁ。
私、アレの部類に入りたくないんだよ。
贋金判別装置DXくんの修理が終わる頃、フェリックス様から夕食会のお誘いの手紙が魔法具部に届いた。
交流会が中止となってしまったお詫びに、夕食を一緒に取らないか、ということだった。
部長は、私に手紙の内容を聞いてくる。
何気に私の心配をしてくれている部長。
でも、魔法具部に届いた手紙だから、内容の確認だけかもしれないけど。
「行ってきなさい。…僕にちゃんと結婚式のスピーチをさせて!」
なんて、少し涙目で怒ったように言われた。
部長、そんなに結婚式のスピーチしたかったんだ。だから、心配してくれているのかな?
でも、夕食会かぁ、どうしよう?と、悩む私だった。
休憩時間、リストは空き部屋に私を連れていき、こっそりと言ってくれた。
「ノイリス、お前がミレイスター様の婚約者なんだから、な」
と、リストは後押しをしてくる。
私は、夕食会の席に、エミールがいるかもしれないことを、恐れていたんだと思う。
リストは、自分のことなのに気付かない私より、私の心情を読めるのかもしれない。
「お前さ、普段無表情で、何を考えているのか分からないけど、仕事の時は目を輝かせているし、食堂のランチで嫌いなものが出てくると、口がへの字になるんだよ。長い付き合いだから、わかんの。でも、それってミレイスター様もあてはまるんだからな。多分お前のことを一番に観察しているのは、ミレイスター様なんだから、ここら辺で、自分の気持ちをぶつけて来いよ」
リストの最後のほうの言い方は、決着をつけてこい、という言い方だった。
「……もしかして、今年の叙爵・昇爵の発表に、フェリックス様の名前が?」
「ほぼ騎士爵確定だって。叙爵したら、結婚するんだろ?」
「……うん。でも、25歳前での叙爵は、早いね」
「まぁ、少ないけど例がないわけではないらしいから、特に反発はなかったらしいよ。」
「……そっかぁ。時計屋か魔法具部か、どちらかを選択しないと、だよね」
「心配はそっちかよ。でも、魔法具部と時計屋と家庭の3つの持ち回りは、流石にキツいって。……その前に、いい加減、自分の気持ちを、ミレイスター様に伝えることをしよう?弟くんが来ることを、きちんと拒否しよう?」
「…うん、わかっているけど、でも、エミールに私が言っても聞く耳を持たないし」
「だから、弟くんじゃなくて、ミレイスター様にきちんと伝えろって言ってんの!ノイリスは、ミレイスター様が好きなんだろ?交流会で何も話さなくても、陰で努力している姿とか見て、いちいち俺に報告してくるくらいに、好きなんだろ?」
「好きだよ!お見合い相手がフェリックス様って、わかった時には舞い上がったよ!でも、……でも、話すの下手だから、変なことを言ってしまって、フェリックス様が呆れたり、嫌われてしまうんじゃないかと思ったら、怖いんだよ。好きな人に嫌われたくないんだもん!」
私は少し涙目になってしまった。
そんな私をみて、リストはハンカチを差し出してきた。
私は有難くリストのハンカチを受け取り、涙を拭い、鼻を思いっきりかんで、そのまま返してやった。
リストは、ハンカチをつまみながら受け取ると、速攻ゴミ箱に捨てていた。勿体ない!!
私が10歳で学園に入学してから、色々と話題に上がる2歳上のフェリックス様。
周りと一緒に、私も自然とフェリックス様を目で追っていた。
淡い憧れから淡い恋心に変わるのは、すぐだった。
でも、侯爵家と子爵家。しかも2歳上。
接点は何もなく、話すことより、認識してもらうことさえないと思っていた。
それが、まさかの婚約者になるとは思わなかった。
学園に入学してから、隣の席で、将来魔法具師になりたいと、お互いに似たような夢を持っていたリストと親友になるにはそう時間が掛からなかった。
だから、リストには私の環境も心情もよく知っている。
私もリストの環境は知っているが、リストの心情までは、いつまで経っても読み取れない。
そんな私でも、リストは親友でいてくれてる。
リストに恩返ししたいけど、一生出来ない気がする。
「ありがとう。夕食会に行って、きちんと話してみるよ」
私の涙が止まった頃、リストに言う。
「うん、頑張れよ。で、反応が悪かったら、婚約解消しろよ?俺と一緒に独身貴族楽しもうぜ?」
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「言葉遊びだって」
リストが応援してくれるから、頑張ってみることにした。
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