婚約者の心の声を聴きたくない【改稿版】

ゆい

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今までの話の一つ一つを繋ぎ合わせていけば、ノイリスの祖父が所有していた懐中時計は、実は王家の所有するものであった。なんで王家の懐中時計を祖父が持っていたんだ?
そこで浮上したのが、前王弟殿下。身分違いからか祖父とは両片思いのまま、それぞれの道を歩む。前王弟殿下は、ガドヴィン公爵家へと嫁いだ。祖父も政略結婚で子爵子息と結婚をしたと、父から調査内容を聞いた。信ぴょう性は高い話だけど、昔のこと過ぎて、事実確認はできていない。
そして、この指輪の術式の調査を依頼したのが、現ガドウィン公爵の子息だし。
その前王弟殿下が懐中時計の鍵であった指輪を持っていたから、前王弟殿下から祖父へと懐中時計が渡ったと考えるのが普通だろう。真意はわからないけど。

指輪と懐中時計を手にしてみたけど、隆が作ったモノは何かまでわからない。指輪も絶対に言わないだろうし。
隠し場所と考えれば、必然的に王宮にあるってわかるんだけど、おいそれと王宮の中を勝手に探索なんてできないし。
まぁ、鍵は私の手の中にある。ゆっくりと探させてもらおう。


「隆は、王宮に住んでいた?」

『別宮の一棟をお借りして、色々とされていたようです』

「リューは一緒ではなかった?」

『その頃の私は、賢者に然程興味がなかったので、王宮の書庫で本を読んで知識を蓄えていました』

「…指輪がどうやって本を読むんだ?」

『企業秘密です』

「…良い言葉覚えたね?」

『非常に使い勝手の良い言葉を教えていただき、ありがとうございます』

「……ノイリスもいらんことを教えたな。さて、やっぱり、王族とお話し合いかな?公爵も交えてだな」

『応援しています』

「ありがとよっ!!」

他人事のように言うな!リューも当事者なんだからな!




考えてみたら、この世界の文字が書けない私は、手紙を書くことすらできない。指輪のおかげで文字は読めるけど、書けない。王族に会おうと思っても、家を通してだと色々と面倒だ。
ノイリスと交代できたのなら、魔法具部を通しても良かったんだけど、ノイリスは未だ心の奥深くにいる。一筋の光のない場所に。
私は、そんなノイリスをどうにか引っ張り揚げようとしたけど、拒否をされてしまった。
無理強いは良くないので、基本放置で、時々ノイリスに語り掛けるようにしている。返しはないので、独り言のようになっている感は否めない。

私は、療養中で心はアレだけど、身体は完全に元気だから、家中の魔法具のメンテナンスをして回っていた。
まぁ、ただの暇潰しなんだけど、使用人たちには喜ばれるので、気分は良い。
しかもまだノイリスは21歳!肉体が若いって素晴らしい!年寄りの癖で朝は早いけど、夜も遅くまで起きていられるのが素晴らしい。睡眠時間が足りないって?昼寝をするに決まっているだろ!!
しかし一週間も経てば、粗方の魔法具のメンテナンスは終わってしまう。そして、ぐーたら生活も飽きてきた。



暇だ。じつに暇だ。

『療養の意味とは?』

「手先が鈍らないようにするためだ。復帰したらすぐに仕事ができるんだから、ある意味療養だろ?」

『…あなたは社畜の部類でしたか』

「いや、ただの時計オタクだ」

リューと会話をしながら、ノイリスの祖父が大枚をはたいて買った、1階の廊下に置いてある柱時計を弄っている。
脚立にのぼり、ムーブメントの点検をしていた。
私が父から譲られた柱時計はねじ巻きが必要だったけど、この世界の動力は魔力を持つ魔石によって動いている。
仕組みからいけば、前の世界とほぼ変わらない。
前の世界の時計職人がこの世界に来て、時計を作ったんだろうか?なんて、考えるほど構造は似通っていた。
振り子の角度といい、歯車の形といい、基本に忠実なお手本のような柱時計だった。
やっぱり、時計はいい。
そういえば、私の父から譲られた柱時計はどうしたんだろう?捨てはしていないと思うけど、売られたかな?まぁ、大事にしてくれる人の手に渡っていればそれでいい。あれはまだ動いていたんだから。



「ノイリス様、面会の方が見えられておられます。」

執事に呼ばれたので下を見たら、執事の後ろに中々お目にかかれない美形の青年がいた。
だけど、

「ん、もうちょい待っていて。」

と、私は素っ気なく答えた。

今は時計の方が大事だから。この家の時間だから、きちんとメンテナンスをしたい。

そんな私に執事は慌てて、

「ノイリス様、婚約者のフェリックス様ですよ!」

と教えてくれた。それでも私は時計に掛かりきりだ。

「え~っ、アポなしで来る方が悪い。私は忙しいんだ」

『さっきまで暇だと言っていましたけど』

黙れ、うるさいよ。

「ノイリス様、【あぽなし】とは?」

「……応接室にお通しして」

「いや、ノイリスの仕事振りを見ているからここでいい。」

と、フェリックス様が言う。
私は、小学校高学年の授業参観の時の子供の気分だ。『もう、来なくていいよ』なんて言う生意気盛りの歳の頃の子供だ。しかも、婚約者であって、親ではない。『仕事振り』なんて言い方、上から目線で言わないでもらいたい。

「見ても面白くありませんよ?」

「面白いかどうかは私が決める」
『あれ?ノイたん、機嫌悪い?こんな冷たいノイたん、初めてだ(ぴえん)』

「ぶっ!!」

私は思わず吹いてしまった。

「!!どうした、急に?!大丈夫か?!」

「っごほっ、な、なんでも、ないです」

「…そうか」
『この前も急に咽せていたから、風邪かな?まだ治っていなかったのか、心配だな。この前は看病し損なったけど、今回はさせてもらえるかな?ノイたんの寝顔、見れるかな(ドキドキ)』

「~~~っ」

あかん!これはあかんわ!リュー、これはお節介の範囲を超えている!悪意しか感じられんわ!!

『悪意ではありません。善意です。』

これは余計なお世話っていうものだ!しかもノイたんって。こんな無表情なのに、心の中でノイたんって言われても、信じられんわ!

『私に人間の表情は読み取れません』

ですよねぇ。できたら、心の声をノイリスに聴かせようとしないよなぁ。その斜め上をいく発想、やっぱり隆が創り出したんだと実感できるわぁ。

『そうなると、あなたもアキさんも私の育ての親になりますよ?』

…アキの名前を出すな。私はアキには弱いんだから。しかもAIのくせに人情に訴えてきやがったよ、コイツ。

『……(ニヤリ)』

ホント、この指輪にいらん知恵をつけさせたの誰だぁぁぁ!!私か!!





リューと頭の中で会話をしつつ、手と目を動かして、柱時計のメンテナンスは無事終了した。






私との会話で、リューが日に策略家として力をつけてきているように思えるのは、私だけだろうか?


『そのような事実はありません』


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