19 / 26
19
しおりを挟む
父と兄の話し合いも終わり、部屋に戻ろうとした時に、執務室のドアがノックもなしにバァァンと開く。
「父上!どういうことですか!」
怒り心頭に入ってきたのは、青年だった。いや、少年なのかな?
父に『父上』と言うから、この家の子だ。となれば、兄と私がこの場にいるのだから、自動的にこの青年は弟となる。
弟はこんな顔なんだなと、呑気に思った。19歳のわりに幼く見える。【若く見える】でない、【幼く見える】だ。
「ノックぐらいしなさい」
「それより、どういうことですか!宝飾店の入店お断りって!」
『それより』って。礼儀は大事だよ?
あと、なんで宝飾店なんかに行きたがるんだろう?
『多分、夜会への為か、俳優への貢物の調達でしょう』
ああ、そうか。宝飾店の出禁を食らえば、夜会には宝飾なしでは出れない(宝飾付けなくても出席はできるけど、下種の勘繰りを貰うだけだ)し、俳優への貢物が用意できないから、会ってはもらえないって、ことか。
俳優に会えないことに対しての怒りなのか、散財ができないことに対しての怒りなのか、私にはわからないけど。
『おそらく、両方でしょう』
今日はずっと話さなかったのに、解説とツッコミだけは通常運転だな、リューさんよぉ。
弟はいつもツケで買い物をしていたみたいだから、現金なんて持っていないだろうし。父も現金を渡してはいないだろうし。
まぁ、リュー情報では、この世界の貴族の買い物は、ツケ払いが当たり前みたいだし。
「当たり前だ。婚約者でもない者に、宝飾品を貢ぐなど、愚か者のする行為だ」
「婚約者にするために、贈り物をしていたんです」
「相手は俳優だぞ?平民だぞ?お前は平民になるとでも言うのか?それに俳優のパトロンはお前だけでないんだぞ?」
「ぐっっ!!」
父の言葉で詰まるエミール。
もしエミールが、彼と結婚が出来たとしても、他にもパトロンがいる状態なら、不貞行為をし続けられるだろう。
それを許せる人なんて、極稀だろう。
「貢ぎたいなら、自分で稼ぎなさい」
その言い方だと、エミールは稼業の手伝いもしていないみたい。
何か言い訳をしないと、と考えているだろうエミールは、父と対面に座っている私に気がついたようで。
「あっ!ノイリス!なんで家にいるの!この前、喫茶店に行ったけど、フェリックス様も来ないんだもん!僕がお茶代を払う羽目になったじゃない!」
いや、自分で注文したものは自分で払おうよ。
エミールの発言を聞いた父は、頭を抱え、深い溜息を吐く。
「兄上、コレが私の弟ですか?品がなくて、私の兄弟だとは思えません」
と、隣に座る兄に、にっこりと笑いながら私は言う。
「残念なことに、コレが弟だ」
兄はエミールの言動に呆れながら言う。
「はぁ?何言ってんの?僕だってノイリスを兄だなんて思いたくないよ!」
はい、言質いただきました。
「では、今日から二人兄弟ですね、兄上」
「そうなるな」
私と兄は、良い笑顔で言う。
反対に、エミールは、顔面蒼白だ。まさか兄からもそう言われるとは思ってもいなかったらしい。
更に父が追い詰めるように、
「エミール、お前はノイリスの結婚を潰すどころか、この家自体を潰す行為をしていた。私がいいと言うまで、自室で謹慎をしていろ」
「~~そんなぁぁ!!」
と、父は執事長を呼び、情けない声を上げたエミールは他の侍従達に引き摺られながら、執務室から連れて行かれた。
謹慎ということは、報復をさせてもらえる機会がなさそうだ。
……もう、父に任せよう。エミールで悩んでいたノイリスにも、負担は減ることだし。
『先程の遣り取りだけでも、十分に報復になります』
あれで?
『あれで十分です。兄弟だからと甘くみていたので、2人に兄弟でないと言われて、絶望していました。寧ろ、あの手の人は、逆ギレして何をしでかすか、予想がつきませんのでそれ以上はしない方が懸命です』
確かに。でも可愛い報復くらいはしたかったな。残念だ。
でも、一人で喫茶店に行って、待ちぼうけを食らったのは笑えた。
『……あなたは私が思っていたより、底意地が悪いですね』
いや、普通ですよ、普通。
『【普通】の意味を問いたいです』
「ノイリス、侯爵家には私から知らせる。今は身体を休めなさい」
「はい、ありがとうございます」
私は部屋へと戻った。
部屋に戻った私はベッドに横になり、トラウザーのポケットから懐中時計を取り出し眺める。
裏蓋の溝。多分これが重要なことだと思う。
しかもこの大きさって……。
「リュー、この溝は、おまえか?」
『正解です』
「…懐中時計の鍵?聞いたことがない。」
『私は、【鍵】ですので』
リューは意味深な言い方をする。……いや待て、アイツのことだ、まだ何かあるな、と予測はできる。けれど、今聞いたところで、はぐらかされるだけだ。なら、時計の修理が先決である。
私は左手薬指に嵌っているリューを外す。
あれだけノイリスが引っ張っても動かなかった指輪がスルっと外れた。
指輪を懐中時計の裏蓋に嵌める。
カチ
パカッ
無事に裏蓋を開くことができた。
裏蓋が開いたら、溝から指輪が落ちる。嵌ったままかと思ったけど、なんだか『また指に戻りたい』と言っているみたいなので、指に嵌めた。
時計のムーブメントを確認したけど、異常はなかった。それならただの電池切れということになる。しかし、電池は使われていない。電池の代わりに隆に渡された鉱物を入れたのだから。
「この鉱物のエネルギーがなくなったのか。リュー、この鉱物は何だ?」
『オリハルコンです』
「……どうして、アイツは手に入りにくいものを簡単に手に入れるのかな?!アイツの豪運はこの世界でも健在だったのか?!しかも使い捨てみたいな作り方ばかりして!!本当に職人だったのか!!」
と、私は憤慨してしまった。
隆は昔から変に運が良い。だから、見たことがない鉱物を探しに行くって旅に出ていた節もある。それでレアメタルなんかを偶に引き当てるから、運が良いとしか言えない。
『オリハルコンは魔力を貯めておけば、魔法具は永年的に使用可能です』
「電池切れならぬ魔力切れか。魔力はどうやって貯めるんだ?」
『魔法師にお願いするのが一番です』
「なるほど」
『ちなみにこの時計は、賢者から王家の方に託され、王家の方が魔力を貯めてました』
「……それは、面倒だな。」
私は面倒なことは嫌いなんだ!ノイリス、早く起きてくれ!時計が直るんだぞ!!
『この人、ノイリスに丸投げしようとしています』
「人聞きの悪い言い方をするな!」
「父上!どういうことですか!」
怒り心頭に入ってきたのは、青年だった。いや、少年なのかな?
父に『父上』と言うから、この家の子だ。となれば、兄と私がこの場にいるのだから、自動的にこの青年は弟となる。
弟はこんな顔なんだなと、呑気に思った。19歳のわりに幼く見える。【若く見える】でない、【幼く見える】だ。
「ノックぐらいしなさい」
「それより、どういうことですか!宝飾店の入店お断りって!」
『それより』って。礼儀は大事だよ?
あと、なんで宝飾店なんかに行きたがるんだろう?
『多分、夜会への為か、俳優への貢物の調達でしょう』
ああ、そうか。宝飾店の出禁を食らえば、夜会には宝飾なしでは出れない(宝飾付けなくても出席はできるけど、下種の勘繰りを貰うだけだ)し、俳優への貢物が用意できないから、会ってはもらえないって、ことか。
俳優に会えないことに対しての怒りなのか、散財ができないことに対しての怒りなのか、私にはわからないけど。
『おそらく、両方でしょう』
今日はずっと話さなかったのに、解説とツッコミだけは通常運転だな、リューさんよぉ。
弟はいつもツケで買い物をしていたみたいだから、現金なんて持っていないだろうし。父も現金を渡してはいないだろうし。
まぁ、リュー情報では、この世界の貴族の買い物は、ツケ払いが当たり前みたいだし。
「当たり前だ。婚約者でもない者に、宝飾品を貢ぐなど、愚か者のする行為だ」
「婚約者にするために、贈り物をしていたんです」
「相手は俳優だぞ?平民だぞ?お前は平民になるとでも言うのか?それに俳優のパトロンはお前だけでないんだぞ?」
「ぐっっ!!」
父の言葉で詰まるエミール。
もしエミールが、彼と結婚が出来たとしても、他にもパトロンがいる状態なら、不貞行為をし続けられるだろう。
それを許せる人なんて、極稀だろう。
「貢ぎたいなら、自分で稼ぎなさい」
その言い方だと、エミールは稼業の手伝いもしていないみたい。
何か言い訳をしないと、と考えているだろうエミールは、父と対面に座っている私に気がついたようで。
「あっ!ノイリス!なんで家にいるの!この前、喫茶店に行ったけど、フェリックス様も来ないんだもん!僕がお茶代を払う羽目になったじゃない!」
いや、自分で注文したものは自分で払おうよ。
エミールの発言を聞いた父は、頭を抱え、深い溜息を吐く。
「兄上、コレが私の弟ですか?品がなくて、私の兄弟だとは思えません」
と、隣に座る兄に、にっこりと笑いながら私は言う。
「残念なことに、コレが弟だ」
兄はエミールの言動に呆れながら言う。
「はぁ?何言ってんの?僕だってノイリスを兄だなんて思いたくないよ!」
はい、言質いただきました。
「では、今日から二人兄弟ですね、兄上」
「そうなるな」
私と兄は、良い笑顔で言う。
反対に、エミールは、顔面蒼白だ。まさか兄からもそう言われるとは思ってもいなかったらしい。
更に父が追い詰めるように、
「エミール、お前はノイリスの結婚を潰すどころか、この家自体を潰す行為をしていた。私がいいと言うまで、自室で謹慎をしていろ」
「~~そんなぁぁ!!」
と、父は執事長を呼び、情けない声を上げたエミールは他の侍従達に引き摺られながら、執務室から連れて行かれた。
謹慎ということは、報復をさせてもらえる機会がなさそうだ。
……もう、父に任せよう。エミールで悩んでいたノイリスにも、負担は減ることだし。
『先程の遣り取りだけでも、十分に報復になります』
あれで?
『あれで十分です。兄弟だからと甘くみていたので、2人に兄弟でないと言われて、絶望していました。寧ろ、あの手の人は、逆ギレして何をしでかすか、予想がつきませんのでそれ以上はしない方が懸命です』
確かに。でも可愛い報復くらいはしたかったな。残念だ。
でも、一人で喫茶店に行って、待ちぼうけを食らったのは笑えた。
『……あなたは私が思っていたより、底意地が悪いですね』
いや、普通ですよ、普通。
『【普通】の意味を問いたいです』
「ノイリス、侯爵家には私から知らせる。今は身体を休めなさい」
「はい、ありがとうございます」
私は部屋へと戻った。
部屋に戻った私はベッドに横になり、トラウザーのポケットから懐中時計を取り出し眺める。
裏蓋の溝。多分これが重要なことだと思う。
しかもこの大きさって……。
「リュー、この溝は、おまえか?」
『正解です』
「…懐中時計の鍵?聞いたことがない。」
『私は、【鍵】ですので』
リューは意味深な言い方をする。……いや待て、アイツのことだ、まだ何かあるな、と予測はできる。けれど、今聞いたところで、はぐらかされるだけだ。なら、時計の修理が先決である。
私は左手薬指に嵌っているリューを外す。
あれだけノイリスが引っ張っても動かなかった指輪がスルっと外れた。
指輪を懐中時計の裏蓋に嵌める。
カチ
パカッ
無事に裏蓋を開くことができた。
裏蓋が開いたら、溝から指輪が落ちる。嵌ったままかと思ったけど、なんだか『また指に戻りたい』と言っているみたいなので、指に嵌めた。
時計のムーブメントを確認したけど、異常はなかった。それならただの電池切れということになる。しかし、電池は使われていない。電池の代わりに隆に渡された鉱物を入れたのだから。
「この鉱物のエネルギーがなくなったのか。リュー、この鉱物は何だ?」
『オリハルコンです』
「……どうして、アイツは手に入りにくいものを簡単に手に入れるのかな?!アイツの豪運はこの世界でも健在だったのか?!しかも使い捨てみたいな作り方ばかりして!!本当に職人だったのか!!」
と、私は憤慨してしまった。
隆は昔から変に運が良い。だから、見たことがない鉱物を探しに行くって旅に出ていた節もある。それでレアメタルなんかを偶に引き当てるから、運が良いとしか言えない。
『オリハルコンは魔力を貯めておけば、魔法具は永年的に使用可能です』
「電池切れならぬ魔力切れか。魔力はどうやって貯めるんだ?」
『魔法師にお願いするのが一番です』
「なるほど」
『ちなみにこの時計は、賢者から王家の方に託され、王家の方が魔力を貯めてました』
「……それは、面倒だな。」
私は面倒なことは嫌いなんだ!ノイリス、早く起きてくれ!時計が直るんだぞ!!
『この人、ノイリスに丸投げしようとしています』
「人聞きの悪い言い方をするな!」
69
あなたにおすすめの小説
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ラストダンスは僕と
中屋沙鳥
BL
ブランシャール公爵令息エティエンヌは三男坊の気楽さから、領地で植物の品種改良をして生きるつもりだった。しかし、第二王子パトリックに気に入られて婚約者候補になってしまう。側近候補と一緒にそれなりに仲良く学院に通っていたが、ある日聖女候補の男爵令嬢アンヌが転入してきて……/王子×公爵令息/異世界転生を匂わせていますが、作品中では明らかになりません。完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる