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番外編
Ⅳ
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「アルさんや。」
「なんだい、ローさんや。」
「子供達は何故あんなに元気なんですかね?」
「子供だからでしょ。」
アレクセイが5歳になった夏、ギルフォードが長期休みが取れたので、ローランドの伴侶が治める領地に3人で遊びに来ていた。
1週間の宿泊を予定しており、昨日の昼過ぎに到着した。
ローランドの子供のロダン君とすっかり意気投合して、2日目ですでに母の手に負えないやんちゃぶりを発揮してくれていた。
午前中は2人で見ていたけど、午後は旦那様方に任せた。
今はギルフォードとローランドの伴侶であるティオドールが剣を教えている。
そして僕達は遠くから眺めながら、お茶をしている。
「本当に自分の親を尊敬するわ。よく4人も育てたよ。」
「僕のところは従者任せだったから、よくわからなくて、お義母様にあれこれ聞きながら、子育てをやっているよ。」
「家によってさまざまだよな。」
「でもローランドも今では2児の母親じゃない。」
今年の春に生まれたばかりの子、マーカス君は、今はローランドの隣に籠に入って寝ている。
「やっぱり兄弟は欲しいかなって思って。」
「兄弟かぁ。」
「アルサスもギルフォードも兄弟仲は割と殺伐としているから、あんまり良いイメージはない?」
「僕の兄もそうだけど、ギルの兄達も当主の座につくまで、取って代わられるって思っていたみたいだから。顔を合わせる度に嫌味言われていたし。」
「二人して優秀だから。」
「世代交代した時に、完全に籍を離れたから、もう交流することはないから有難いよ。」
「離籍したんだ。」
「ギルなんて隊長になったら、公爵邸でお祝いしてやるって言い出すし。ギルはもちろん断ったけど。どうも兄達に代わってから、領地経営が上手くいっていないようで。弟の名誉は家の名誉みたいなこと言い出すし。当主の座も名誉も欲しいなんて欲張りすぎだよ。まずは当主の仕事ぐらいきちんとこなしてもらいたいわ。」
「公爵家当主なら、やることいっぱいだからな。采配するだけでも大変そう。」
「陛下もさ、王太子の時と違って仕事量が多くなって、会議の時に部下に全振りしようとしていたから、『賢王になれとは言わないけど、後世で愚王と言われたくなかったら、やるべきことはやりなさい!』って、思わず言っちゃったもん。」
「流石アルサス!」
「宰相も大臣達も言えなかったから、代わりによく言ってくれたって、拍手をもらったよ。」
「でも、なんでアルサスが会議出てんの?」
「部長が今年の春から、隣国に行っているから、僕は代理だよ。副部長は牧場勤務だし、先輩方は出たがらないし。」
「うちらの上の年代って大丈夫なの?」
「まだまだ親世代が元気なうちに、しっかりしてほしいけどね。」
「アランの侯爵様は?」
「アランがしっかりしているから大丈夫でしょ?」
「たしかに。」
「ローランドのところは?」
「うちは地方だから、家族が団結していないとやっていけないよ。両親もまだまだ健在だし。」
「団結か。なんかそういうのに憧れる。」
「アルサスとギルフォードが、そういう家庭を作ったらいいじゃない。男爵家だから、前より縛りも少なくなったんだから。」
「そうだね。僕も二人目は考えようかな。」
休憩に入ったようで、汗だくになった子供達が駆け寄ってきた。
「母様!」
「母さん!水ちょうだい!」
「ほら、飲んだら汗拭いて。風邪引くよ?」
「母様、父様が剣でビュンってするの、かっこいいの。」
「見れて良かったね。セイも汗拭いてね。」
僕達は子供の汗をタオルで拭き、水分を取らせた。
ギルフォードもゆっくり歩いてこっちにやってきた。
「ロダンは、見込みあるな。基礎をしっかり教えれば、伸びるよ。」
「父様、父様、セイは?」
「セイは流石私の子で将来が楽しみだよ。」
と、ギルフォードがアレクセイを抱き上げる。
「うわっ!ギルフォードの親バカ姿見ちゃったよ。ティオも剣術は強かったから、ロダンは父さん似かな?」
「ローランドから愛称呼びを聞いたのは、案外これが初めてだ。」
「ティオは1歳上じゃん。ディオ様もいたから、間違えてディオドールって呼ばれたこともあったらしくて、学園では苗字呼びを徹底していたから。流れで僕も名前でなく、『婚約者』や『伴侶』って人に言う時はそうしていたんだよ。」
「てっきり恥ずかしくて呼んでないだけだと思っていたよ。」
「幼馴染なんだから、名前くらい普通に言えるわ!」
「ロダンも父様似なの?」
「セイも父さん似だって。おそろいだね!」
「おそろいだ!」
「「うちの子天使!」」
「親バカが増殖した。」
「ところで、ティオはどうしたの?」
「従者に呼ばれて行った。流石に1人ではこの2人の面倒は無理だから、休憩に入ったよ。」
「ギルも汗拭いたら、水分取ってね。」
僕はギルフォードにタオルを渡す。
「ありがとう。」
そのまま5人で、お茶をしていたら、ディオドールが走ってローランドの元に来た。
「ロー、西の牧場に魔獣が出たらしい。これから見に行ってくる。」
「あそこは今年は子牛が多く産まれたから、狙われたかもだね。何人で行くの?」
「今集められても10人くらいだ。連絡を回してもらっているが、早くても明日の朝にこっちに来れると思う。」
「私も行こう。」
「ギルフォードはお客様だからいいよ。」
「だが、私は騎士だ。民の生活を守らなくてどうする?!」
「では、お願いする。助かる。準備出来次第出発する。」
「僕は馬の手配を頼んでくる。アルサス、子供達お願いね!」
ティオドールとローランドは、慌ただしくその場を離れた。
僕は収納魔法から、魔の森で使っているギルフォードの装備を渡した。
「ギル、気をつけてね。」
「アルが心配するような危険な真似はしない。行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
と、ギルフォードを見送る。
「父様達は、悪いのをやっつけに行くから、帰ってくるまで母様達の言うこと聞ける?」
「「うん。」」
「お外は危ないから、お家に入ろうか?」
「「うん。」」
子供達を連れて家の中に戻る。
子供達も大変な事が起こったと肌で感じたのか、素直に家に戻ってくれた。
絵本を読んだり、マーカス君が起きたのでみんなであやしたりして過ごした。
夕方には、ローランドも戻ってきて、夕食を食べ、お風呂に入れた後は、子供達はすぐに寝てくれた。
僕とローランドは、伴侶達の帰りを待った。
「ここら辺はあまり魔獣が出ないよね。」
「出ないね。たまに森から出てくるけど、すぐにまた森に戻っていくよ。」
「うちの公爵領みたいに気性の荒いのはいなかったはずだけど。」
「今年は森の恵みがあまり良くないって聞いていたから、子牛を狙って出てきたかも。」
「魔獣をなくすと畑を荒らす動物が増えるから、難しいところだよね。」
「でも牧場をやられるのも困るしね。」
「ティオドール様は、魔獣を狩ったことはあるの?」
「1度だけあるって言っていた。すっごい大変だったって言っていた。」
「今回はギルがいるから、狩ることになったから、少しは楽だね。」
「ギルフォードは何回もあるの?」
「あるよ。僕が間引かないと、公爵領は今頃魔獣で溢れ出ているよ。ギルと婚約してからは、一緒に狩りに出ているよ。」
「何気にアルサスってなんでもできるよね。」
「何気にって、言い方ひどい。もともと引き篭もり人生送るつもりだったし。」
「料理はうまい、野菜は育てられる、狩りはできる、家は建てられる、あとは服を作れたら完璧?」
「裁縫だけは才能なかったわ。」
「裁縫もあったら、泣きたくなるわ。アルサスが完璧だったら、面白味がないわ。」
「僕に面白さを求めないで。」
日付が変わる頃、玄関の方が騒がしくなり、使用人が、伴侶達が戻ってきたと連絡をくれた。
「ギル!」
「ただいま。ティオドール殿はまだ外にいる。私の方から話すけど。ローランドは待つかい?」
「いや、今はまだ忙しいから。ギルフォードから先に話を聞きたい。」
部屋に戻り、ギルフォードは装備を外しながら話した。
「牧場に行ったら、狼型の魔獣が親子でいたんだ。やっぱり子牛を狙っていた。でも、親牛達で子牛を守っていたから、被害はなかった。かと言って、このまま放置する訳にもいかないし、被害が出ていないから、狩ることもできない。でだ、私が威圧を放って、森に帰した。狼型なら、強いものには服従するってアルが言っていたから、私の方が強いって示したら、帰っていったよ。何人かは牧場に残って、今夜は見廻りをしてもらっている。」
「牛にも人にも被害が出なくて良かったよ。ギルフォードありがとう。」
「私の提案を承諾してくれたティオドール殿の賢明な判断だ。」
「でも、ギルがいなくなったら、また出てくるんじゃない?」
「いなくなるまでに魔獣避けの魔石を取り寄せられる時間はあるから、大丈夫だろう。」
「そうだね。時間があれば対策が取れるね。」
「でも、熊型とか虎型でなくて良かったね。アイツらだったら、被害が出ていたもの。」
「それを平気で倒すくせに。」
「僕をエサ扱いする方が悪い。ギルだって、最近は一刀で倒せるようになってきたじゃない。」
「何ソレ。最強夫婦目指しているの?夫婦喧嘩で国吹っ飛ばさないでね?」
「「するかっ!!」」
もう遅い時間なので、さっさと片付けて寝ることにした。
翌朝日の出とともに叩き起こされた。
魔獣が玄関にいる、と。
ギルフォードと急いで向かうと、子牛ぐらいの大きさのが2匹、中型犬くらいの大きさのが5匹の狼型の魔獣がお座りの状態でいた。
ギルフォードの顔を見ると、嬉しそうにしている。
「ギルフォード、懐かれたね。」
「やっぱり懐かれたか。」
「王都に連れて行けないよ。どうするの?」
「ティオドール殿どうしようか?」
「私もどうしたらいいかわからない。」
「……番犬代わりに飼っちゃえば?」
「それいいね!流石!アルサス!」
「魔獣だから、契約魔法で言うこと聞いてくれるし、代わりに毎日エサをもらえるし、お互い良いこと尽くめじゃない?」
「ティオ!そうしよう。僕、犬飼いたかったんだ。」
「子供達の情操教育にいいしね。」
「えっ?えっ?」
「ティオドール殿。あの2人は言い出したら、止められない。諦めてくれ。」
「契約魔法するよ。君達も主人はギルでなく、ティオドール様になるんだけどいいかな?エサをもらう代わりに、害あるものから、この家の人達を守って欲しいんだ。できるかな?」
「「「「「ワン」」」」」
「了解だって。ティオドール様もいい?」
「あ、ああ、わかった。」
収納魔法から契約魔法に使う用紙を出した。
確認を取りながら、どちらも不利にならない要項を決めていく。
契約を書き終えたら、ティオドール様と群れのボスに魔力を流してもらう。
仲介人の僕の魔力を流して、契約が成立した。
「契約書はティオドール様が保管してね。伯爵家の番犬だってわかるように、首輪をしたほうがいいかも。名前も必要か。」
「僕首輪を用意する!名前はみんなで決めよう!ティオもそれでいい?」
「ああ。なんかあっという間に飼うことが決まって、頭がまだ追いつかない。」
「流れに乗った方が楽ですよ。」
魔獣達に洗浄魔法をかけて、ローランドとモフモフを堪能した。
子供達も起きてきて『わんわんだ!』って喜んでくれた。
子供達と子犬(?)の戯れている姿は可愛かった。
帰る頃には2人と5匹はすっかり仲良くなっていて、別れの時は2人を引き離すのが大変だった。
また遊びに来るからね!!
「ローランドから手紙が届いたんだけど、犬達はなんか良い仕事してくれて助かっているって書いてあるんだ。良い仕事って何?」
「それは、……ローランドにとっての良い仕事なんだろう。」
「ローランドは肝心なところを省くよね。」
「アルも人のこと言えないが、な。」
「てへっ。」
「なんだい、ローさんや。」
「子供達は何故あんなに元気なんですかね?」
「子供だからでしょ。」
アレクセイが5歳になった夏、ギルフォードが長期休みが取れたので、ローランドの伴侶が治める領地に3人で遊びに来ていた。
1週間の宿泊を予定しており、昨日の昼過ぎに到着した。
ローランドの子供のロダン君とすっかり意気投合して、2日目ですでに母の手に負えないやんちゃぶりを発揮してくれていた。
午前中は2人で見ていたけど、午後は旦那様方に任せた。
今はギルフォードとローランドの伴侶であるティオドールが剣を教えている。
そして僕達は遠くから眺めながら、お茶をしている。
「本当に自分の親を尊敬するわ。よく4人も育てたよ。」
「僕のところは従者任せだったから、よくわからなくて、お義母様にあれこれ聞きながら、子育てをやっているよ。」
「家によってさまざまだよな。」
「でもローランドも今では2児の母親じゃない。」
今年の春に生まれたばかりの子、マーカス君は、今はローランドの隣に籠に入って寝ている。
「やっぱり兄弟は欲しいかなって思って。」
「兄弟かぁ。」
「アルサスもギルフォードも兄弟仲は割と殺伐としているから、あんまり良いイメージはない?」
「僕の兄もそうだけど、ギルの兄達も当主の座につくまで、取って代わられるって思っていたみたいだから。顔を合わせる度に嫌味言われていたし。」
「二人して優秀だから。」
「世代交代した時に、完全に籍を離れたから、もう交流することはないから有難いよ。」
「離籍したんだ。」
「ギルなんて隊長になったら、公爵邸でお祝いしてやるって言い出すし。ギルはもちろん断ったけど。どうも兄達に代わってから、領地経営が上手くいっていないようで。弟の名誉は家の名誉みたいなこと言い出すし。当主の座も名誉も欲しいなんて欲張りすぎだよ。まずは当主の仕事ぐらいきちんとこなしてもらいたいわ。」
「公爵家当主なら、やることいっぱいだからな。采配するだけでも大変そう。」
「陛下もさ、王太子の時と違って仕事量が多くなって、会議の時に部下に全振りしようとしていたから、『賢王になれとは言わないけど、後世で愚王と言われたくなかったら、やるべきことはやりなさい!』って、思わず言っちゃったもん。」
「流石アルサス!」
「宰相も大臣達も言えなかったから、代わりによく言ってくれたって、拍手をもらったよ。」
「でも、なんでアルサスが会議出てんの?」
「部長が今年の春から、隣国に行っているから、僕は代理だよ。副部長は牧場勤務だし、先輩方は出たがらないし。」
「うちらの上の年代って大丈夫なの?」
「まだまだ親世代が元気なうちに、しっかりしてほしいけどね。」
「アランの侯爵様は?」
「アランがしっかりしているから大丈夫でしょ?」
「たしかに。」
「ローランドのところは?」
「うちは地方だから、家族が団結していないとやっていけないよ。両親もまだまだ健在だし。」
「団結か。なんかそういうのに憧れる。」
「アルサスとギルフォードが、そういう家庭を作ったらいいじゃない。男爵家だから、前より縛りも少なくなったんだから。」
「そうだね。僕も二人目は考えようかな。」
休憩に入ったようで、汗だくになった子供達が駆け寄ってきた。
「母様!」
「母さん!水ちょうだい!」
「ほら、飲んだら汗拭いて。風邪引くよ?」
「母様、父様が剣でビュンってするの、かっこいいの。」
「見れて良かったね。セイも汗拭いてね。」
僕達は子供の汗をタオルで拭き、水分を取らせた。
ギルフォードもゆっくり歩いてこっちにやってきた。
「ロダンは、見込みあるな。基礎をしっかり教えれば、伸びるよ。」
「父様、父様、セイは?」
「セイは流石私の子で将来が楽しみだよ。」
と、ギルフォードがアレクセイを抱き上げる。
「うわっ!ギルフォードの親バカ姿見ちゃったよ。ティオも剣術は強かったから、ロダンは父さん似かな?」
「ローランドから愛称呼びを聞いたのは、案外これが初めてだ。」
「ティオは1歳上じゃん。ディオ様もいたから、間違えてディオドールって呼ばれたこともあったらしくて、学園では苗字呼びを徹底していたから。流れで僕も名前でなく、『婚約者』や『伴侶』って人に言う時はそうしていたんだよ。」
「てっきり恥ずかしくて呼んでないだけだと思っていたよ。」
「幼馴染なんだから、名前くらい普通に言えるわ!」
「ロダンも父様似なの?」
「セイも父さん似だって。おそろいだね!」
「おそろいだ!」
「「うちの子天使!」」
「親バカが増殖した。」
「ところで、ティオはどうしたの?」
「従者に呼ばれて行った。流石に1人ではこの2人の面倒は無理だから、休憩に入ったよ。」
「ギルも汗拭いたら、水分取ってね。」
僕はギルフォードにタオルを渡す。
「ありがとう。」
そのまま5人で、お茶をしていたら、ディオドールが走ってローランドの元に来た。
「ロー、西の牧場に魔獣が出たらしい。これから見に行ってくる。」
「あそこは今年は子牛が多く産まれたから、狙われたかもだね。何人で行くの?」
「今集められても10人くらいだ。連絡を回してもらっているが、早くても明日の朝にこっちに来れると思う。」
「私も行こう。」
「ギルフォードはお客様だからいいよ。」
「だが、私は騎士だ。民の生活を守らなくてどうする?!」
「では、お願いする。助かる。準備出来次第出発する。」
「僕は馬の手配を頼んでくる。アルサス、子供達お願いね!」
ティオドールとローランドは、慌ただしくその場を離れた。
僕は収納魔法から、魔の森で使っているギルフォードの装備を渡した。
「ギル、気をつけてね。」
「アルが心配するような危険な真似はしない。行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
と、ギルフォードを見送る。
「父様達は、悪いのをやっつけに行くから、帰ってくるまで母様達の言うこと聞ける?」
「「うん。」」
「お外は危ないから、お家に入ろうか?」
「「うん。」」
子供達を連れて家の中に戻る。
子供達も大変な事が起こったと肌で感じたのか、素直に家に戻ってくれた。
絵本を読んだり、マーカス君が起きたのでみんなであやしたりして過ごした。
夕方には、ローランドも戻ってきて、夕食を食べ、お風呂に入れた後は、子供達はすぐに寝てくれた。
僕とローランドは、伴侶達の帰りを待った。
「ここら辺はあまり魔獣が出ないよね。」
「出ないね。たまに森から出てくるけど、すぐにまた森に戻っていくよ。」
「うちの公爵領みたいに気性の荒いのはいなかったはずだけど。」
「今年は森の恵みがあまり良くないって聞いていたから、子牛を狙って出てきたかも。」
「魔獣をなくすと畑を荒らす動物が増えるから、難しいところだよね。」
「でも牧場をやられるのも困るしね。」
「ティオドール様は、魔獣を狩ったことはあるの?」
「1度だけあるって言っていた。すっごい大変だったって言っていた。」
「今回はギルがいるから、狩ることになったから、少しは楽だね。」
「ギルフォードは何回もあるの?」
「あるよ。僕が間引かないと、公爵領は今頃魔獣で溢れ出ているよ。ギルと婚約してからは、一緒に狩りに出ているよ。」
「何気にアルサスってなんでもできるよね。」
「何気にって、言い方ひどい。もともと引き篭もり人生送るつもりだったし。」
「料理はうまい、野菜は育てられる、狩りはできる、家は建てられる、あとは服を作れたら完璧?」
「裁縫だけは才能なかったわ。」
「裁縫もあったら、泣きたくなるわ。アルサスが完璧だったら、面白味がないわ。」
「僕に面白さを求めないで。」
日付が変わる頃、玄関の方が騒がしくなり、使用人が、伴侶達が戻ってきたと連絡をくれた。
「ギル!」
「ただいま。ティオドール殿はまだ外にいる。私の方から話すけど。ローランドは待つかい?」
「いや、今はまだ忙しいから。ギルフォードから先に話を聞きたい。」
部屋に戻り、ギルフォードは装備を外しながら話した。
「牧場に行ったら、狼型の魔獣が親子でいたんだ。やっぱり子牛を狙っていた。でも、親牛達で子牛を守っていたから、被害はなかった。かと言って、このまま放置する訳にもいかないし、被害が出ていないから、狩ることもできない。でだ、私が威圧を放って、森に帰した。狼型なら、強いものには服従するってアルが言っていたから、私の方が強いって示したら、帰っていったよ。何人かは牧場に残って、今夜は見廻りをしてもらっている。」
「牛にも人にも被害が出なくて良かったよ。ギルフォードありがとう。」
「私の提案を承諾してくれたティオドール殿の賢明な判断だ。」
「でも、ギルがいなくなったら、また出てくるんじゃない?」
「いなくなるまでに魔獣避けの魔石を取り寄せられる時間はあるから、大丈夫だろう。」
「そうだね。時間があれば対策が取れるね。」
「でも、熊型とか虎型でなくて良かったね。アイツらだったら、被害が出ていたもの。」
「それを平気で倒すくせに。」
「僕をエサ扱いする方が悪い。ギルだって、最近は一刀で倒せるようになってきたじゃない。」
「何ソレ。最強夫婦目指しているの?夫婦喧嘩で国吹っ飛ばさないでね?」
「「するかっ!!」」
もう遅い時間なので、さっさと片付けて寝ることにした。
翌朝日の出とともに叩き起こされた。
魔獣が玄関にいる、と。
ギルフォードと急いで向かうと、子牛ぐらいの大きさのが2匹、中型犬くらいの大きさのが5匹の狼型の魔獣がお座りの状態でいた。
ギルフォードの顔を見ると、嬉しそうにしている。
「ギルフォード、懐かれたね。」
「やっぱり懐かれたか。」
「王都に連れて行けないよ。どうするの?」
「ティオドール殿どうしようか?」
「私もどうしたらいいかわからない。」
「……番犬代わりに飼っちゃえば?」
「それいいね!流石!アルサス!」
「魔獣だから、契約魔法で言うこと聞いてくれるし、代わりに毎日エサをもらえるし、お互い良いこと尽くめじゃない?」
「ティオ!そうしよう。僕、犬飼いたかったんだ。」
「子供達の情操教育にいいしね。」
「えっ?えっ?」
「ティオドール殿。あの2人は言い出したら、止められない。諦めてくれ。」
「契約魔法するよ。君達も主人はギルでなく、ティオドール様になるんだけどいいかな?エサをもらう代わりに、害あるものから、この家の人達を守って欲しいんだ。できるかな?」
「「「「「ワン」」」」」
「了解だって。ティオドール様もいい?」
「あ、ああ、わかった。」
収納魔法から契約魔法に使う用紙を出した。
確認を取りながら、どちらも不利にならない要項を決めていく。
契約を書き終えたら、ティオドール様と群れのボスに魔力を流してもらう。
仲介人の僕の魔力を流して、契約が成立した。
「契約書はティオドール様が保管してね。伯爵家の番犬だってわかるように、首輪をしたほうがいいかも。名前も必要か。」
「僕首輪を用意する!名前はみんなで決めよう!ティオもそれでいい?」
「ああ。なんかあっという間に飼うことが決まって、頭がまだ追いつかない。」
「流れに乗った方が楽ですよ。」
魔獣達に洗浄魔法をかけて、ローランドとモフモフを堪能した。
子供達も起きてきて『わんわんだ!』って喜んでくれた。
子供達と子犬(?)の戯れている姿は可愛かった。
帰る頃には2人と5匹はすっかり仲良くなっていて、別れの時は2人を引き離すのが大変だった。
また遊びに来るからね!!
「ローランドから手紙が届いたんだけど、犬達はなんか良い仕事してくれて助かっているって書いてあるんだ。良い仕事って何?」
「それは、……ローランドにとっての良い仕事なんだろう。」
「ローランドは肝心なところを省くよね。」
「アルも人のこと言えないが、な。」
「てへっ。」
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