従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。

チカフジ ユキ

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5.楽しい事は共有する事。これ絶対。

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「冷たいのでしたら、やはりアメリア様から歩み寄ってはいかがですか? お相手は侯爵家。身分の低い子爵令嬢・・・・・・・・・お金のない・・・・・見た目だけに価値がある・・・・・・・・・・アメリア様なら、微笑んで甘えればきっと可愛がってくださいますよ」

 にこりと笑って助言すると、一瞬アメリアの顔が歪み彼女はついにさめざめと泣きだした。

「ひどいわ……そんな下品な事をおっしゃるなんて。やっぱり貴族でないからね。フランが可哀そうだわ。こんな優しくない人と結婚しなくちゃいけないなんて」
「お嬢様、もうよろしいではないですか。これ以上はお身体に触ります。行きましょう」
「ええ、カタリナ夫人。わたくし、少し具合が悪くなってきたわ。でも、ヴィオレッタ、わたくし、本当にあなたの事が心配なのよ。だから、少しでも貴族のお友達を作れるように、せめてそれだけでも手伝わせて? これ、わたくしの誕生日パーティーの招待状よ。よかったら来てね。お友達を誘ってもいいわよ?」
「お嬢様、なんてお優しいのでしょう、それに比べて――!」

 キッと再び目じりを吊り上げるカタリナ夫人の姿を見ていると、どうしてフランツやアメリアがこんなどうしようもない人間性になったのか分かる気がした。

「ありがとうございます。時間がありましたら、伺いますわ」

 全く行く気はないが、ここまで言われれば逃げるのも癪だ。
 お友達・・・を誘ってもいいと言ったのだから、ぜひわたしのお友達を誘おう。
 きっと喜んできてくれるはずだ。

「ルーナ、手紙を書くから準備して頂戴。ああ、最高級の紙でよろしくね」
「かしこまりました」

 退室していくアメリアをおざなりに見送り、わたしは一つの手紙を書いた。
 楽しいイベント事は一人で楽しむものではないのだから。
 口元が緩んで、相手がどんな顔をするのか今から楽しみだった。

「ところで、ヴィオレッタ様はアメリア令嬢のご婚約者様をご存じなのですか?」
「ええ、あの偏屈侯爵はそれなりに有名だから」

 偏屈侯爵とは、アメリアの婚約者の通称だ。
 偏屈、もしくは堅物、根暗、地味男、まあ、色々言われているけど、わたしは出来ればご遠慮したい類の男である事は間違いない。

 商才に関しては才能がある。
 それゆえ手広く商売を行ったり投資したりと、ルー商会ほどではないが、かなり商売では稼いでいるのは兄弟から聞いて知っていた。
 さらには、領地も広大なので、領地収入もあるおかげで、財産は莫大。
 しかもまだ二十代となれば、その奥方の座は引く手あまたで殺到するはずだった。

 だけど、かの侯爵は人嫌いで女嫌いときた。
 そんな人嫌い女嫌いの侯爵が婚約したのだから、普通はどんな人か気になる。
 しかし、実際は全く噂にもならなかった。

 実は、ここで聞くまでわたしも知らなかった。
 むしろ、何かの妄想かと思うほど信じられなかったけど、調べてみるとどうやらそれは本当らしく、多額の資金援助をしていることが分かった。

 というか、それがかなりの額だから、真実味を帯びた。
 ぶっちゃけ、それだけ資金援助してもらっているのにほかの男にうつつを抜かす方がどうかしていると本気で思う。
 感謝して尽くすくらいの事しなさいよと説教したい。
 しないけど。

「アメリア嬢からしてみたら、気に食わないでしょうね。なにせ、侯爵様は世間一般的に容姿が優れているとは言い難いから」

 前髪が長く、目が隠れている。
そのせいでどこか陰鬱な姿は、あまり女性陣から好まれるとは言えない。
ただし、現実的なら容姿は二の次三の次、甲斐性があるほうが貧乏よりましだと女性は考える。意外と打算的なのだ、女子は。
 だけど、時にはアメリアのような存在もいる。

「それじゃあ、ルーナ。これ出してきて頂戴。ルー商会を経由してね」
「かしこまりました」

 ルーナが出て行くと、わたしはふふっと口元が緩む。
 カンだけど、なんかとっても楽しいことが起こりそうな予感がする。
 きっと招待した友人も楽しんでくれると思う。

「いい日になりそう」

 わたしはソファから立ち上がって、フランツのせいで中断した書類を手に取った。


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