神に喧嘩を売った者達 ~教科書には書かれない真実の物語~

平行宇宙

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学園編 § 学校生活編

第81話 お子様には、聞かせられない話

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 「今日の収穫を聞こうか。」
 淳平の部屋に落ち着くと、彼はそんな風に促した。
 「天一に龍脈を見せられた。ひどいもんだったよ。黒い何かが結構な数浮いていて、流れが良くなかった。」
 「黒い何か。なんかの術の残滓、てとこか。」
 「うん、たぶんそうだろうって。」
 「天将が動いてるっていうのは、面倒だな。」
 「狐にも協力はもらってる。それと、地主の元社に行った。」
 「ほー。巫女様はお元気で?」
 「まぁね。アソコの今の姉様、前の手伝ったときの新巫女様だったって。僕のこと覚えてた。」
 「まぁ、直接助けた子だろ?」
 「みたいだ。」
 「おまえなぁ・・・まぁいいか。で?」
 「とりあえず、それだけ。今のところあそこの結界柱に異常はなさそう・・・と思う。」
 「なんだ?えらく歯切れ悪いなぁ。」
 「んー。なんていうか違和感?」
 「違和感、ねぇ。」
 「巫女様も違和感感じてるって。」
 「・・・なるほどね。それで?」
 「それだけ。もし結界柱に異常があれば知らせてくれるっていうから、姉様とおして狐に連絡を行くようにしておいた。」
 「ん。上出来か。それでな、他に何か言われた感じ?」
 「ああー、どうだろ。」
 「伏見の神職と似たようなこと?」
 「・・・たぶん。」
 「なるほどね。」
 そう言うと、淳平は黙り込んだ。
 目はなくても、なんというか普通の人が目を閉じた感じ。どうやら思索の海に入り込んだようだ。
 出ていくか・・・
 そうは思うが、部屋に帰りたくはない、かな。
 ゼンとも気まずい気がする。


 そんな感じで30分ほど。
 少しウツラウツラとしていたんだろうか。
 気がつくと、側に座っていたはずの淳平の姿がない。
 顔をめぐらすと、奥のデスクでなにやらやっている。
 それを見るともなしに見ていたら、こちらに顔を向けてきた。

 「起きたか。」
 そう言うと、再び元の席へと戻ってきた。
 手には、ノート=タブレットの進化版 を持っている。
 座りながら、僕にノートを差し出した淳平。条件反射でそれを受け取った。
 「チャット?」
 「ああ、大樹だ。」
 「大樹?」
 世界唯一の能力者ではないザ・チャイルド竹内辰也。そのひ孫に当たるのが大樹だ。先日富士城に戻った際、話をしたが、あの一族は3代いや4代にわたって、僕らと妙に深く関わっている。というよりも、あの絵本寄贈ってのをやった一族ってことか。

 僕は、淳平に促されて、ノートを見る。
 大樹と淳平のやりとり。
 人の名前の羅列?
 なんだこれ?そう思って、淳平を見る。

 「おまえも薄々気付いているだろうが、今回のあやかしのバカみたいな出現は人為的なもんだ。それに、例の二重陣は当然人為的なものだろう。その根っこにあるのは玄人の計画で素人の実行、ということだ。」
 まぁ、そうだろうな。
 「でだ、なんでそんなことをしたか。そしてなんでそんなことができたか。この二つを考えると、自ずと答えは出る。だろう?」
 「そんなことをしたか。そしてできたか?」
 玄人がやるのはまずかった、ということ?
 まぁ、霊力は筆跡鑑定より誰の物かバレやすいから、そのあたり?強者であればあるほど、それが誰がなした技なのか、長く跡が残るものだ。
 それともうひとつ。
 複数の術が使われている。
 汚染、が気になるのは玄人なら当然だろう。いや、汚染を起こしたくない、そういう人間ってことか。何度かあえて爆発や汚染を起こそうとしたヤツらと戦った。少なくともそういう破壊願望が強いタイプとは違う、と読んで良いのだろうか?

 「少なくとも、霊能力を誇示して一般人を驚かそうって奴じゃなさそうだ、ということは分かってんだろ?逆に言えば、相手は能力者だと思って行動してるってこった。」
 淳平が言う。
 「能力者相手に、自分たちはその気になればこんな風に簡単に結界ないし龍脈を脅かすことができる、そう主張したい、のかもしれない。」
 「なんだよ。そっちの方が歯切れ悪いんじゃない?」
 「ハハハ、まぁそう言うなって。いいか。二重だろうが単品だろうが素人に描かせて、自分たちならこれを正規でできる、そう主張するヤツらが出てきたら、こっちとしても、対応を考える必要があるだろう?それこそあらゆる別の仕事をほっぽりだしてでも、な?」
 まぁ、それはそうだろう。
 素人作でもこれだけ影響が出ているんだ。まともな術が施されたら、この比じゃないのは当然だ。いや、普通に爆発か汚染が起きて、後始末に相当な被害を覚悟すべきだろうな。

 「今の日本じゃな、AAOと無関係な霊能者、なんてのは、ほぼいないだろう。少なくともAAOが把握していない霊能者、なんてのは、ないと言っても過言じゃない。」
 確かに。
 組織力にものをいわせて、AAOに関わらない霊能者に対しての監視はばかみたいにキツい。放置しているのは、、と判断した人達だけ。AAOは100年も満たない振興組織だとしても、霊能者の集団ははるか昔、有史以前より存在する。これらがタッグを組んだAAOに、そういう意味での死角はないだろう。ていうか死角があったら、とっくに僕はAAOの魔手から逃れている。

 「でここで問題です。さて、これだけのことをやれるのは誰?いやどういう集団でしょうか?」
 「・・・集団、だって?」
 「すくなくとも、俺はそう思ってる。大樹もついでに言えば蓮華もそうだ。」
 「で、誰なんだよ。」
 「・・・おまえも少しは考えろって。はぁ、まぁいいか。それが飛鳥ちゃんだもんねぇ。はぁ。あのな、これだけのことができるAAOでない霊能者はいないってことはだ、これだけのことをやっているのはAAOの、しかも京都の龍脈をいじれるだけのノウハウを持つ霊能者集団、そう考えるのが自然だ、そうは思わないか?」
 「AAOの能力者?」
 「ああ。それもとびっきり優秀で、それなりの組織力を持つ奴な。しかもおそらくは複数の組織の集合体だ。でなければこれだけの札やら魔法陣を集めるのは難しい。」
 「それって・・・」
 「AAOはこれをやったやつらと、これを調べているグループと、すくなくともその二つには分かれているだろう、そう考えるべきだと思うぜ。」
 「しかも中枢の人間が関与している?」
 「そういうこと。」
 「それがゼンに聞かせられない理由ってやつ?」
 「まあな。あいつらはまだAAOに理想を持ってっからなぁ。まぁ、そういうことだわ。飛鳥ちゃんも、その辺ちいとばかり気にしといて。あ、ちなみにそれ。大樹が調べた怪しいヤツらね。頭に入れといて。」

 改めて見たその名前群には、想像以上の大物も多数含まれていた。
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