8 / 33
正体
しおりを挟む
「待って! 魔法大学を次席って、天才レベルじゃない!」
大学に入るにも相応の才能がいる。まして貴族の子弟なら幼いころから英才教育を受けているわけで、一般入学枠はそれだけで差をつけられているわけだ。
いわゆる魔法の才能のエリートが集まる場所で、上位に食い込むには血のにじむような努力と、天性の才能が必須と言われる。
それこそ、主席から5人までは宮廷魔術師の地位すら夢じゃないってくらいだ。
帝国大学はそれ以外にも、騎士コース、官僚コースなんかがあって、門戸は庶民にも開かれている。
在学中は身分の一切ははく奪され、学生という身分に置かれる。
これは、初年度に貴族の学生が庶民の学生にいろいろやらかしたことが原因って言われてる。ま、事実だろうな。
後年、統一帝エレスフォードの参謀を務めたシゲンも庶民の出身だった。それもあって、在学中の身分は平等ということは伝統となっていた。
「ま、そうだな。魔力操作と魔法構築、魔術理論は主席だったぞ」
シレっと言ってのけるとローレット嬢は目を見開く。
「何でそんな天才が第三部なんて掃き溜めにいるのよ?」
「そうだな。さっきの俺の魔法行使を見ていたんなら気づいたことはなかったか?」
そう問いかけるとローレット嬢は目を閉じて先ほどの光景を思い出しているようだ。そして一つのことに気付いたのだろう。
「全部、触れたところから発動してた?」
「そうだ。俺の魔法行使には欠陥があってね、触れた場所にしか魔力を流せない。逆に魔力を流して支配したものなら動かせる。こんなふうにな」
俺が足踏みすると、背後でベッドのシーツがバサッと舞い上がった。
「今のは足の裏から魔力を流して床経由でベッドの上まで支配したわけだ」
普通は複数の物質を経由して魔法を行使することはしない。そもそもロスが大きすぎるのだ。
魔法伝導率が高い金属としてはミスリルなどがあるが、そういうった物質でも抵抗は0じゃない。
100の魔力を流してもミスリルでいいところ90。そのほかの物質なら半分もいかない。
そのことに思い当たったのだろう、ローレット嬢は再び驚きの表情を浮かべる。
「どんだけ出力高いのよ……?」
「いや、たぶん人並みに毛が生えたレベルだぞ?」
「はい!?」
「魔力操作の応用でな。通そうとする物質に波長を合わせると抵抗を無視できるんだ」
「え!? それって今大学で研究されてる……」
「ああ、もしや後輩か?」
「マーリン教授の研究室にいるわ」
「それはすごい!」
「いえ、それほどでも。うふふふふ」
抱きかかえているベフィモスがもみくちゃにされている。それでも当の本人(?)は平然としたもんだ。
というかこの辺でごまかされてくれないものかと思ったがさすがにそこまでちょろくはなかった。
「ってまって! あの魔力同町理論を考えたのあんたなの!?」
「なんなら自分自身に限り実践してるけどな」
「……聞くのが怖いけど、あなた、階梯は?」
「……想像ついてるだろうが特級だ」
魔導士の階梯というものがあって、上に上がるほど稀少だ。10の階梯があり、その上の規格外と認められた魔導士が……特級の階梯を得る。
ちなみに、大学を卒業しただけで5階梯。上位卒業者には3階梯を上限に称号が授与される。
「そう、わかったわ。いろいろ納得した」
「そうか、わかってくれたか!」
「貴方が特級と知っているのは誰?」
「マーリン師匠と、うちのマスターのガンドルフ。あとそこのローリエだ」
「妻になるのだからとうz「最後まで言わせねえよ!」」
最後まで締まらない感じだな。ふうとため息をついたところでドアがノックされた。
ローレットがドアを開けると、詰所の兵士がいた。
「あ、ローレット様。向こうに走らせた使者が戻りました」
「そう、ありがとう」
「これがお求めの品です」
兵士が差し出した袋を受け取ると、彼女は腰のポーチからコインを数枚渡す。
「走ってくれた兵にこれを。美味しいものでも食べてと伝えておいて。ありがとうね」
「いや、我らも職務ですので!」
「いいじゃない。このところ事故の影響で大変だったでしょ?」
「ですが……」
「じゃあ、改めて命じます。わたしが供出した資金でこの詰所の兵で食事をして英気を養うこと! これ追加の予算ね!」
「はっ、ありがとうございます!」
そのやり取りを見て俺は少しいやな予感がした。街道の詰所は帝国軍の直轄だ。その兵に命令を出せるのは……。
「さて、わたしは行くところがあるからここでお暇するわね。また会いましょう、ギルバートさん」
すると、彼女が抱きしめていたベフィモスがブルッと体を震わせその手を振りほどくと、なぜか俺の頭の上に鎮座した。
「……これは、新しい萌え。そう、わたし、萌えているのね」
ローリアがハイライトの消えた目で俺の方を見てくる。
「あ、そうだ。これ」
トリップしているローリアを尻目にローレットがハンカチを差し出してきた。
「ん?」
「命を救われてそのままっていうのはわたしの沽券が許さないの。だからこれは手付、ね」
そう言い残すとローレットは軽やかな足取りで部屋から出て行く。
ほどなく馬のいななきと、走り去る足音が聞こえた。
「ほんとに急いでたんだな」
「そう、ですね。それはそうとアルバートさん。それ……」
「ああ、まったく厄介なことになりそうだ」
俺の手の中に残されたハンカチには刺繍がしてあった。それは帝国皇帝の一族だけが許される紋章をかたどっていた。
「あ、そうだ。玉の輿とかに惑わされないでくださいね。さもないと……」
ローリエが底冷えのする声で俺の耳元にささやいた。
大学に入るにも相応の才能がいる。まして貴族の子弟なら幼いころから英才教育を受けているわけで、一般入学枠はそれだけで差をつけられているわけだ。
いわゆる魔法の才能のエリートが集まる場所で、上位に食い込むには血のにじむような努力と、天性の才能が必須と言われる。
それこそ、主席から5人までは宮廷魔術師の地位すら夢じゃないってくらいだ。
帝国大学はそれ以外にも、騎士コース、官僚コースなんかがあって、門戸は庶民にも開かれている。
在学中は身分の一切ははく奪され、学生という身分に置かれる。
これは、初年度に貴族の学生が庶民の学生にいろいろやらかしたことが原因って言われてる。ま、事実だろうな。
後年、統一帝エレスフォードの参謀を務めたシゲンも庶民の出身だった。それもあって、在学中の身分は平等ということは伝統となっていた。
「ま、そうだな。魔力操作と魔法構築、魔術理論は主席だったぞ」
シレっと言ってのけるとローレット嬢は目を見開く。
「何でそんな天才が第三部なんて掃き溜めにいるのよ?」
「そうだな。さっきの俺の魔法行使を見ていたんなら気づいたことはなかったか?」
そう問いかけるとローレット嬢は目を閉じて先ほどの光景を思い出しているようだ。そして一つのことに気付いたのだろう。
「全部、触れたところから発動してた?」
「そうだ。俺の魔法行使には欠陥があってね、触れた場所にしか魔力を流せない。逆に魔力を流して支配したものなら動かせる。こんなふうにな」
俺が足踏みすると、背後でベッドのシーツがバサッと舞い上がった。
「今のは足の裏から魔力を流して床経由でベッドの上まで支配したわけだ」
普通は複数の物質を経由して魔法を行使することはしない。そもそもロスが大きすぎるのだ。
魔法伝導率が高い金属としてはミスリルなどがあるが、そういうった物質でも抵抗は0じゃない。
100の魔力を流してもミスリルでいいところ90。そのほかの物質なら半分もいかない。
そのことに思い当たったのだろう、ローレット嬢は再び驚きの表情を浮かべる。
「どんだけ出力高いのよ……?」
「いや、たぶん人並みに毛が生えたレベルだぞ?」
「はい!?」
「魔力操作の応用でな。通そうとする物質に波長を合わせると抵抗を無視できるんだ」
「え!? それって今大学で研究されてる……」
「ああ、もしや後輩か?」
「マーリン教授の研究室にいるわ」
「それはすごい!」
「いえ、それほどでも。うふふふふ」
抱きかかえているベフィモスがもみくちゃにされている。それでも当の本人(?)は平然としたもんだ。
というかこの辺でごまかされてくれないものかと思ったがさすがにそこまでちょろくはなかった。
「ってまって! あの魔力同町理論を考えたのあんたなの!?」
「なんなら自分自身に限り実践してるけどな」
「……聞くのが怖いけど、あなた、階梯は?」
「……想像ついてるだろうが特級だ」
魔導士の階梯というものがあって、上に上がるほど稀少だ。10の階梯があり、その上の規格外と認められた魔導士が……特級の階梯を得る。
ちなみに、大学を卒業しただけで5階梯。上位卒業者には3階梯を上限に称号が授与される。
「そう、わかったわ。いろいろ納得した」
「そうか、わかってくれたか!」
「貴方が特級と知っているのは誰?」
「マーリン師匠と、うちのマスターのガンドルフ。あとそこのローリエだ」
「妻になるのだからとうz「最後まで言わせねえよ!」」
最後まで締まらない感じだな。ふうとため息をついたところでドアがノックされた。
ローレットがドアを開けると、詰所の兵士がいた。
「あ、ローレット様。向こうに走らせた使者が戻りました」
「そう、ありがとう」
「これがお求めの品です」
兵士が差し出した袋を受け取ると、彼女は腰のポーチからコインを数枚渡す。
「走ってくれた兵にこれを。美味しいものでも食べてと伝えておいて。ありがとうね」
「いや、我らも職務ですので!」
「いいじゃない。このところ事故の影響で大変だったでしょ?」
「ですが……」
「じゃあ、改めて命じます。わたしが供出した資金でこの詰所の兵で食事をして英気を養うこと! これ追加の予算ね!」
「はっ、ありがとうございます!」
そのやり取りを見て俺は少しいやな予感がした。街道の詰所は帝国軍の直轄だ。その兵に命令を出せるのは……。
「さて、わたしは行くところがあるからここでお暇するわね。また会いましょう、ギルバートさん」
すると、彼女が抱きしめていたベフィモスがブルッと体を震わせその手を振りほどくと、なぜか俺の頭の上に鎮座した。
「……これは、新しい萌え。そう、わたし、萌えているのね」
ローリアがハイライトの消えた目で俺の方を見てくる。
「あ、そうだ。これ」
トリップしているローリアを尻目にローレットがハンカチを差し出してきた。
「ん?」
「命を救われてそのままっていうのはわたしの沽券が許さないの。だからこれは手付、ね」
そう言い残すとローレットは軽やかな足取りで部屋から出て行く。
ほどなく馬のいななきと、走り去る足音が聞こえた。
「ほんとに急いでたんだな」
「そう、ですね。それはそうとアルバートさん。それ……」
「ああ、まったく厄介なことになりそうだ」
俺の手の中に残されたハンカチには刺繍がしてあった。それは帝国皇帝の一族だけが許される紋章をかたどっていた。
「あ、そうだ。玉の輿とかに惑わされないでくださいね。さもないと……」
ローリエが底冷えのする声で俺の耳元にささやいた。
0
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる