~帝国魔法ギルド第三部土木課~魔法大学を次席で卒業した俺が、左遷された先で皇女様に実力を認められた件

響 恭也

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「待って! 魔法大学を次席って、天才レベルじゃない!」

 大学に入るにも相応の才能がいる。まして貴族の子弟なら幼いころから英才教育を受けているわけで、一般入学枠はそれだけで差をつけられているわけだ。
 いわゆる魔法の才能のエリートが集まる場所で、上位に食い込むには血のにじむような努力と、天性の才能が必須と言われる。
 それこそ、主席から5人までは宮廷魔術師の地位すら夢じゃないってくらいだ。
 帝国大学はそれ以外にも、騎士コース、官僚コースなんかがあって、門戸は庶民にも開かれている。
 在学中は身分の一切ははく奪され、学生という身分に置かれる。
 これは、初年度に貴族の学生が庶民の学生にいろいろやらかしたことが原因って言われてる。ま、事実だろうな。
 後年、統一帝エレスフォードの参謀を務めたシゲンも庶民の出身だった。それもあって、在学中の身分は平等ということは伝統となっていた。

「ま、そうだな。魔力操作と魔法構築、魔術理論は主席だったぞ」
 シレっと言ってのけるとローレット嬢は目を見開く。
「何でそんな天才が第三部なんて掃き溜めにいるのよ?」
「そうだな。さっきの俺の魔法行使を見ていたんなら気づいたことはなかったか?」
 そう問いかけるとローレット嬢は目を閉じて先ほどの光景を思い出しているようだ。そして一つのことに気付いたのだろう。
「全部、触れたところから発動してた?」

「そうだ。俺の魔法行使には欠陥があってね、触れた場所にしか魔力を流せない。逆に魔力を流して支配したものなら動かせる。こんなふうにな」
 俺が足踏みすると、背後でベッドのシーツがバサッと舞い上がった。

「今のは足の裏から魔力を流して床経由でベッドの上まで支配したわけだ」
 普通は複数の物質を経由して魔法を行使することはしない。そもそもロスが大きすぎるのだ。
 魔法伝導率が高い金属としてはミスリルなどがあるが、そういうった物質でも抵抗は0じゃない。
 100の魔力を流してもミスリルでいいところ90。そのほかの物質なら半分もいかない。
 そのことに思い当たったのだろう、ローレット嬢は再び驚きの表情を浮かべる。

「どんだけ出力高いのよ……?」
「いや、たぶん人並みに毛が生えたレベルだぞ?」
「はい!?」
「魔力操作の応用でな。通そうとする物質に波長を合わせると抵抗を無視できるんだ」
「え!? それって今大学で研究されてる……」
「ああ、もしや後輩か?」
「マーリン教授の研究室にいるわ」
「それはすごい!」
「いえ、それほどでも。うふふふふ」
 抱きかかえているベフィモスがもみくちゃにされている。それでも当の本人(?)は平然としたもんだ。
 というかこの辺でごまかされてくれないものかと思ったがさすがにそこまでちょろくはなかった。

「ってまって! あの魔力同町理論を考えたのあんたなの!?」
「なんなら自分自身に限り実践してるけどな」
「……聞くのが怖いけど、あなた、階梯は?」
「……想像ついてるだろうが特級だ」
 魔導士の階梯というものがあって、上に上がるほど稀少だ。10の階梯があり、その上の規格外と認められた魔導士が……特級の階梯を得る。
 ちなみに、大学を卒業しただけで5階梯。上位卒業者には3階梯を上限に称号が授与される。

「そう、わかったわ。いろいろ納得した」
「そうか、わかってくれたか!」
「貴方が特級と知っているのは誰?」
「マーリン師匠と、うちのマスターのガンドルフ。あとそこのローリエだ」
「妻になるのだからとうz「最後まで言わせねえよ!」」

 最後まで締まらない感じだな。ふうとため息をついたところでドアがノックされた。

 ローレットがドアを開けると、詰所の兵士がいた。
「あ、ローレット様。向こうに走らせた使者が戻りました」
「そう、ありがとう」
「これがお求めの品です」
 兵士が差し出した袋を受け取ると、彼女は腰のポーチからコインを数枚渡す。
「走ってくれた兵にこれを。美味しいものでも食べてと伝えておいて。ありがとうね」
「いや、我らも職務ですので!」
「いいじゃない。このところ事故の影響で大変だったでしょ?」
「ですが……」
「じゃあ、改めて命じます。わたしが供出した資金でこの詰所の兵で食事をして英気を養うこと! これ追加の予算ね!」
「はっ、ありがとうございます!」
 
 そのやり取りを見て俺は少しいやな予感がした。街道の詰所は帝国軍の直轄だ。その兵に命令を出せるのは……。

「さて、わたしは行くところがあるからここでお暇するわね。また会いましょう、ギルバートさん」
 すると、彼女が抱きしめていたベフィモスがブルッと体を震わせその手を振りほどくと、なぜか俺の頭の上に鎮座した。

「……これは、新しい萌え。そう、わたし、萌えているのね」
 ローリアがハイライトの消えた目で俺の方を見てくる。
「あ、そうだ。これ」
 トリップしているローリアを尻目にローレットがハンカチを差し出してきた。
「ん?」
「命を救われてそのままっていうのはわたしの沽券が許さないの。だからこれは手付、ね」
 そう言い残すとローレットは軽やかな足取りで部屋から出て行く。
 ほどなく馬のいななきと、走り去る足音が聞こえた。

「ほんとに急いでたんだな」
「そう、ですね。それはそうとアルバートさん。それ……」
「ああ、まったく厄介なことになりそうだ」

 俺の手の中に残されたハンカチには刺繍がしてあった。それは帝国皇帝の一族だけが許される紋章をかたどっていた。

「あ、そうだ。玉の輿とかに惑わされないでくださいね。さもないと……」
 ローリエが底冷えのする声で俺の耳元にささやいた。
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