たとえばこんな恋模様

響 恭也

文字の大きさ
13 / 14

プレゼントパニック

しおりを挟む
 あの騒動から早1年、双子はすくすくと育ち、母である佳代さんの後ろをくっついて回るところがたまらなくかわいかった。わんこと猫も大人になり、元気な3歳児に負けないパワーを発揮している。日向でわんこのお腹に埋もれてお昼寝しているところは思わず写真に撮ってしまった。スマホの待ち受けは今これである。
 あの時妊娠が発覚した時の子供も無事生まれている。女の子で千佳と名付けた。兄と姉はちーちゃんと舌足らずな声でかわいがっている。その様子を見て俺と佳代さんの頬は緩みっぱなしであることは言うまでもない。ポチがしゅたっと足元に現れた。なおーんと声をかけてくる。佳代さんはおむつをもって千佳のもとにすっ飛んでいった。相変わらず有能なベビーシッターである。おやつのカリカリを与えると、ゴロゴロ言いながら受け取り、満足げに尻尾を揺らしていた。

「クリスマスにはサンタさんがプレゼントをくれるんだよ」
「えー、そうなんだー」
「ゆーくん、いい子にしてないともらえないんだよ」
「僕いい子だよー」
「えー、けどこの前えり先生に怒られてたじゃない」
「だってあれは・・・」
「ゆう君? そのお話ママに聞かせてくれるかな?」
「え、いや、あの、え?僕何もしてないよー?」
 加菜はそっぽを向いている。しらばっくれているだけなのだがやたらかわいい。で事情をきくと、いじめられてる子をかばったらしい。その時にちょびっとポカスカがあったので、お友達を叩いちゃいけませんと両成敗的に叱られたそうだ。
 奥の部屋からうきゃーって声が聞こえてきた。そっと様子を見ると、ウルウルした目で佳代さんが悠太を抱きしめている。事情は正確に伝わって、感極まって抱きしめたようだ。思い切り。
「ママ、悠太が苦しそうだよ?」
「え? あ・・・思わず力がはいっちゃった・・・てへ?」
「ママの愛が苦しい・・・」
 おいまて、どこでんなセリフを覚えてきた?

 話を元に戻し、二人からプレゼントは何がほしいか?パパからサンタさんにお手紙出すからねと、紙に書かせた。ママは千佳ちゃんにご飯を上げている。ドアの外にはタマ(犬)がデーンと座っている。うちの父が入ろうとしてがっつり嚙みつかれたのはもう笑い話になっている。
 子供たちを寝かしつけ、預かった手紙を開く。加菜のほうは、おとうと、と書かれていた。顔を見合わせると、頬を赤く染めている。いつまでたっても新妻である。そして、佳代さんが悠太の手紙を開いた瞬間、口から短い悲鳴が漏れた。そこにこう書かれていた。「あたらしいおかあさん」ちょっと取り乱している佳代さんを落ち着かせ、一緒にお風呂に入って今出てきた。弟が増えるかどうかはコウノトリさん次第である。
「私、あの子に嫌われてるのかな?」
「うん、それは絶対にない」
「だって、新しいお母さんって・・・さっきも目を回すまで抱きしめちゃったし」
「あー、けどなんか意味が違う気がするよ」
「うう、お母さんがんばる。もっといいお母さんになるから」
「まあ、あしたちょっと聞いてみるよ」
「うん、お願いね」
 そしてそのまま眠りについた。さすがにちょっと動揺しているのか布団の中でむぎゅっとしがみついてきた。ちょっと寝るのが遅くなった。

 次の日、冬には珍しく晴れ間がのぞき、悠太と散歩に出た。
「悠太、サンタさんからお手紙が来ててね。プレゼントのことでちょっと聞きたいことがあるんだって」
「へー、すごい! それで、何を聞いてきたの?」
「うん、新しいママって、どんなママがいいのかな?」
「うん、それはね・・・」

 俺と悠太が帰ってきて、佳代さんはなんかそわそわしていた。悠太がただいまーって佳代さんにしがみついて甘えている。子供の可愛さにとろけそうな笑顔になっている。そんな嫁さんがかわいい。
 夜、子供を寝かしつけて、なんか判決を聞くような緊張感で悠太の希望を聞いてきた。そして答えを教えるとぽかーんとしたあと、少し涙ぐんでいた。その答えとは…同じのもう一人だった。

「あのねー、ママが大変なんだよ。ちーちゃんのおせわして、ぽちとたまにご飯あげて、ぼくらをお風呂に入れて、そんでまたちーちゃんが泣いて。僕がお昼寝から起きたら、ままがちーちゃんの横でおねんねしてたの。そんで、もう一人ママがいたら、もっと楽になるのかなーって。そんで、僕ももっとママといれるのかなーって」
「そうか、悠太は優しいなあ。いいこだ」
ちょっと泣きそうになった。いい子に育ってるのは間違いなく佳代さんのおかげだ。
「けどね、ママが大変だから、僕もっとお手伝いするの。ちーちゃんのお世話もするの。加菜ちゃんと一緒にね」
 そういってにぱっと笑った息子の笑顔につられ、俺も笑ってしまっていた。
 その時の素直な思いをそのまま佳代さんに伝えた。ちょっと涙がにじんだ目じりと、幸せそうな笑顔と、子供たちの寝顔が家族の幸せの証だったのだ。

 そして子供たちのプレゼントのリクエストの問題が解決していないことに気付き、二人そろって頭を抱えるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

忖度令嬢、忖度やめて最強になる

ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。 5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。 週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。 そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り―― 忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。 そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。 中世風異世界でのお話です。 2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

処理中です...