あれおかしいな?こんなはずじゃなかった!?

響 恭也

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オルレアン会戦

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 オズワルド軍はエヴルーの城塞まで軍を下げ、負傷兵の収容と再編成に努めた。損害は諸侯軍のかなりの比率に及び、戦闘に耐えうる数は15000ほど。5000近い戦死者を出していた。
 一方レイル軍のほうも、砦の戦いで1500ほどの損害を出しており、実戦に耐えうる兵力は何とか1万に届くほどである。クリフォードの兵力と合わせて18000あまり。
 オズワルド軍は、輜重兵から兵力を補充し、3万以上を確保している。後方支援の兵に城砦を守らせ、再出撃してきた。グラナダの城塞も損傷が激しく、再度の攻勢には耐えられない。レイル軍も出撃し、両軍はオルレアン平原で向かい合った。
 オズワルド軍は急進し、ロラン丘陵に布陣する。レイルは丘陵を見上げる形で布陣していった。中軍にクリフォード軍8000、左翼にプロバンス伯率いる5000、右翼にレイル率いる5000。クリフォードが布陣しているあたりを頂点に、左翼側は同じ程度の高さ、右翼側に向けやや下っている地形である。
「あの布陣をどう読む?」
 アレクサンドルからの下問にレオポルドが少し考え込んだのち答える。
「右翼に攻撃をひきつけ、左翼が回り込む意図かと。左翼のプロバンス軍の中にバルデンの旗幟があったと聞きます。騎兵による突破でこちらの分断が狙いでは?」
「ふむ、そうだな、妥当と思うが、一つわからない点がある。その意図であればロラン丘陵を取らなかったのはなぜだ? 兵力に劣る敵軍が優位な地形を占めねば敗北は必至であろう」
「単にわが軍の反攻の時期を見誤ったのでは?」
「あのレイルという若者がそのような初歩的なミスをするだろうか?」
「先のグラナダの戦闘で驕ったのかもしれませぬ」
「まあ、そうだな。戦端を開けばわかるか」
「御意。そもそも同数でもリスクの高い戦術を、倍近い戦力差で行う時点で驕っております」
「ふむ、まあ、この戦力差を覆すだけの材料はないな。よし、前衛に攻撃を命じよ!」
「はは!」
 本陣で旗が振られ、伝令が走り出す。一拍おいて前衛部隊が動き出す。レイル率いる右翼に向け突撃を開始した。

「さて、来たな」
「うん、セタンタ。頼む」
「ああ、任せとけ」
 レイルとセタンタはわずかに笑みを向けあうと、前線に向かった。
 最前列では攻撃を受け止めやすいよう土塁を築いている。土塁も横一線に作るのではなく、互い違いになるように前後に作られており、踏み入った敵を包囲できるよう構築されていた。弩を装備した兵も多く配備されており、盾を構えた重装歩兵と弩隊の組み合わせで防御力を高めている。セタンタ率いる遊撃兵は500。縦横に駆け巡り、突出した部隊を撃破し、敵陣に浸透し暴れまわる。レイルの身体の駆け引きも巧緻を極め、数度の波状攻撃をすべて跳ね返してのけた。金属鎧を撃ち抜く威力のある弩だが、連射が出来ない。短弓による矢継ぎ早の射撃で時間を稼ぎ、踏み入ってきた敵に十字射撃で確実に倒す。だが数の差は出ており、増援が投入されるとさすがに疲労からか押されることも増えてきた。最初に築いた土塁は突破され、次の陣も支えきれず、第3防衛ラインまで押し込まれていた。
 戦闘開始からすでに4時間。右翼は押し込まれ中央舞台の側面が見えそうな位置まで後退している。小競り合いを繰り返していた左翼が急に攻勢を強めた。バルデン騎兵が投入されたとの報を受け、レオポルトが自身の部隊を敵左翼の抑えとして投入する。ここまで、戦況はレオポルトの読み通りに推移しており、左翼からの突破で陣列を分断するのが狙いと考えていた。
 戦況の変化は急激だった。クリフォード軍が戦線を押し上げてきたのである。前衛5000が一気に前進し、ロラン丘陵を駆け上がる。この時点で丘陵の本陣は5000あまり、クリフォード軍に数的優勢が発生していた。さらに右翼軍を押し込んでいたため、本隊と突出した左翼軍との間が開いており、クリフォード軍の後衛3000がその地点に進出、敵左翼と本隊の分断に成功する。そこから敵本隊を半包囲し、一気に攻め立てたため、本隊が崩れ後退した。クリフォード軍はロラン丘陵の奪取に成功したのである。ここに中央突破と敵軍の分断が成った。
 右翼はセタンタがゲイボルクの魔力開放で敵中央500ほどを一撃で倒す。そこにレイル率いる親衛隊が突入し右翼部隊の指揮官を討ち取る。次席指揮官への指揮権の移譲が行われるまでに、レイル軍の攻勢に碌な対応が取れず出血が広がってゆく。敵指揮官は中央が突破されたことを確認すると徐々に兵を退かせ本隊との合流を図る。そしてクリフォード軍の一部が退路を断つ動きを見せたため、一気に兵を下げた。その結果としてかなりの損害を受けたが、潰走には至らず本体との合流を果たしたのである。
 左翼はレオポルトの必死の指揮で突破を防いでいたが、中央を突破されたことで兵の動揺が広がる。頭上から逆落としにクリフォード軍の攻勢を受ければ敗北は免れない。前方のプロバンス軍に攻勢を叩きつけ、相手を少し押し下げた後に兵をまとめ右後方に兵を下げる。そのまま曲線を描くように兵を機動させ、何とか合流を果たした。だが進行方向を塞がないように側面を突く形でクリフォード軍の攻撃を受け、少なからず被害を出している。
 わずか半日の戦いで、レイル軍2000、オズワルド軍7000の被害を出した。特に両翼部隊は半壊といっていいほどで、士気は大きく低下している。退却戦を行うとなれば、さらにどれだけの損害が出るかわからない状況だった。
 アレクサンドルは講和の使者を出した。オルレアン地方の放棄を条件に撤兵を提案し、受け入れられた。
 翌朝をもって両軍は撤退した。オズワルド軍は、半数近い兵を失うという大敗北を喫したのである。だが被害の大半は諸侯軍で、王国直轄軍も被害は出たがまだ健在であった。だが、レイルの戦術の冴えと奇策を行う知略を見て、勝ち目は薄いと考え撤兵の決断を下したのである。
 オルレアンの野にレイル軍の勝鬨が響き渡った。
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