真紅の殺戮者と魔術学校

蓮月

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第一章

第2話

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その後魔力車と呼ばれるものに乗った。
俺はじっと目の前に座っている
赤髪の男を見た。

「俺の名前……レウ。……あなたの名前?」

「ん?私の名前か??私の名前はディオンだ。」

「ディ……オン?……ディオン。」

「ああ、そうだ。それで、こっちで仏頂面で座っているのがユリヤ。俺の側近だ。」

隣に座っているさっきの
女性がディオンの腕を抓りあげた。

「はじめまして、レウ。私の名前はユリヤよ。宜しくね。」

「痛い痛い痛いッ!!ユリヤ、ストップだ!!」

「もし、困った事があったら私に言ってね。」

すっと、ディオンの腕から手を引く
ユリヤ。

「それにしても、あなたのその容姿……珍しいわね?」

すっと、優しく頭を撫でられる。

「確かにな。」

「……変?俺の容姿。」

「いや、変ではない。見たことない髪色と瞳の色だなと思っただけだ。」

俺はボサボサの髪を摘む。
……黒い髪だ。……瞳は、灰色?だっけ。

ー キッ。

「お、着いたか。降りるぞ、レウ。」

ディオンに促されて魔力車から降りた。
すると、目の前に大きな建物があった。

「大きい。」

「ハハッ。そうか。ほら、入るぞ。」

ディオンに手を繋がれて
建物の中に入っていく。
建物の中も広く綺麗だった。

「キラキラ……。」

すると、突然鈴を転がす様な
綺麗な声が響いた。

「お帰りなさいませ、ディオン。」

中央の階段から綺麗な金髪の女性が
降りてきた。

「ああ、ただいま、キッカ。」

「ご無事そうで何よりです。……ところで、そちらの子は?」

「ああ、えっと、その事で話したい事があるんだが…。」

「ああ、ユリヤから先に聞いてますよ。その子を引き取るんでしょう?大歓迎ですわ。」

ニコッと華が咲くような笑顔を
浮かべるキッカ。

「ADXを使ったのか?……早いな…ユリヤ。」

顔を引きつかせてユリヤを
見るディオン。

「当たり前です。」

ふっと笑うユリヤ。

「えーと、貴方のお名前は?」

腰を屈めて優しく語りかけるキッカ。

「……レウ。あなたの名前は?」

「キッカよ。宜しくね。今日から貴方のお母さんよ。」

「お、かあ……さん?」

「そう。お母さん。」

ぎゅっと抱き締められる。

「……もう大丈夫よ。安心して。」

ふわふわと優しい香りがした。

「暖かい……。」

いつの間にかディオンの腕の中にも
包まれていた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

それから、5年後……

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「これより、アルヴィート王国魔術学校、第××回入学式を行う。」

俺はレウ。今年で多分15歳。
今日はアルヴィート王国魔術学校の
入学式だ。今年から、
ここで魔術の勉強をする。

この世界には魔術と呼ばれるものが
存在する。魔術は体内の血液に
含まれる魔力を使う。
その魔力を手の甲に12歳になったら
国の義務により無償で付けられる
ステラと呼ばれる透明な石を器と
する事によって魔術を発動できる。
ちなみに血液に含まれる魔力量は
個人差がある。

「それでは、これからの学校生活を楽しんでください。」

ー パチパチパチ

学校長の話が終わり、皆が拍手をした。
そして、クラス発表の為、
続々と自分のADXを見ている。

ADXとは、通信機の様なものだ。
これにより、連絡のやり取りが出来る。
大きさや形は様々で、
腕に付けるタイプやイヤリング形のもの、
巨大な机形のものなどある。

さて、俺のクラスは……。


          『貴方のクラスは、Cクラスです。』


Cクラスか。
俺は立ち上がり、教室へと向かう。
アルヴィート王国魔術学校の建物は
殆ど白で統一されていて、
とても美しい。

「……ここか。」

第一学年Cクラスと書かれている
ドアを開けて中へと入る。
教室は一番前に教壇があり、
生徒の机はADXが埋まっている。
俺は適当に一番後ろの窓側の席へと座る。
全ての席が埋まったところで
教師が入って来た。

「こんにちは。今日からCクラス担当となるリンダだよー。宜しくねー。早速だけど、今から魔力測定を行うからこの測定器に触れてねー。じゃあ、前から順番に触りに来てー。」

「いきなりかよ~。」

「どれ位かなぁ~。」

ちらほらと不安気な声が上がる。

「ねぇ、次。アンタだよ。」

トントンと肩を叩かれた。
横を見るとうすい茶色の髪色の
少女が座っていた。

「俺?」

「そう。アンタの番。」

「いや、俺は……。」

どう言おうかと言い淀んでいると…。

「えっと、次は……あっ!レウ君ね!!レウ君はもう既に測ってるからいいわよー。次の子どうぞー。」

リンダ先生が慌てて言った。
ほぅっと一安心する。

「え?もう測ってるの??」

隣の少女が話しかけてくる。

「ああ。」

「どのくらい?」

「何で教えなきゃならないんだ?」

「は?イイじゃん。教えてくれたって。」

「名前すら知らない他人なのに?」

そこで少女は自分が名乗ってない事に
気がついた様だ。

「あ、ごめん。私はルチア。宜しく。」

「宜しく。俺はレウ。」

「で、一体魔力量はいくつ……。」

「ルチアさーん。次はルチアさんよー。」

そこで丁度ルチアの番が来た。

「あ、はーい!!」

パタパタと走るルチア。
めんどくさい奴が隣の席になって
しまった。
その後滞りなく測定が終わり、
男子寮へと向かった。
今日は測定のみらしい。
この学校は寮制となっていて、
一人一部屋与えられる。
自分にあてがわれた部屋へと入る。
部屋はまあまあ広く、
ちゃんと風呂とトイレも付いている。

「連絡するか…。」

椅子に座り、机にはめ込められている
ADXを操作する。

ー ピッ。

『レウ~!!』

いきなり画面に豊満な胸が
映し出された。

「……母上、ADXを抱きしめても意味無いですよ。」

俺が呆れながら言うと、
今度はちゃんと母上……
キッカ・オールディスが映し出された。

『あ、そうね。元気~?』

「今朝会ったでしょう…元気ですよ。」

『うふふ。そうね~。今は自分の部屋?』

「そうですよ。」

『ディオンには会いに行った?』

「今から向かいます。」

『わー嬉しいわぁ~。』

母上がパアっと笑う。
……とても、35歳とは思えない
若々しさだ。

「何がです?母上。」

『ディオンより先に私に連絡してくれるなんて~。嬉しいわぁ~。』

「そうですか…。」

『うふふ。照れてるのかしら?……じゃあ、そろそろディオンの所へ行ってらっしゃい?多分そわそわして待ってるわ。』

「分かりました。では、また。」

『ええ。愛してるわ、レウ。』

ー プツンッ。

「……ありがとうございます、母上。」

俺は立ち上がり、部屋を出る。
すると、ゴチっと軽い音がした。

「痛っ!?……びっくりしたぁ~!!」

どうやら扉の前に誰か居たらしい。

「すまない。大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だぜ!」

扉の後ろにいたのはなかなか
ガッチリとした体格の少年だった。

「俺はガンド。隣の部屋だから、挨拶しようと思ったんだ。宜しくな!!」

「ああ、宜しく。俺はレウだ。」

「宜しくな!!お前クラスは?」

「Cクラスだ。」

「俺はDクラス。お、そうだ!明日一緒に昼飯食おうぜ!!」

二カリと笑うガンド。
特に一緒に食べる奴もいないし…
いいか。

「ああ。分かった。」

「おっしゃあ!!んじゃあ、またな!!」

そう言うと、ガンドは自分の部屋へと
入っていった。

「……さて、行くか。」

俺は男子寮を出て、学校長室へと
辿り着いた。
ふぅっと息を吐いてドアを
ノックする。

ー コンコンコンッ

「誰だ?」

「第一学年Cクラス、レウ・オールディスです。」

「入れ。」

許可を貰い中へと入る。
ドアを閉めて振り返る。

「レーーウーーー!!」

すると、いきなり
息をするのが辛いほど抱き締められた。

「ぐっ……学校長、お離し下さい。」

「誰もいないから、父上って呼んでくれ!!」

「父上、お離し下さい。死にそうです。」

俺のSOSに気づいた学校長…
及び父上…ディオン・オールディスは
渋々ながら身体を離してくれた。

「遅いから心配したよ、レウ。」

「母上と連絡を。あと、隣室の同級生と話していたので。」

「そうか。キッカには連絡したか。」

「はい。」

「……いやー、それにしても制服似合うなぁーレウは。」

「そうですか?ありがとうございます。」

俺は自分が着ている制服を見る。
アルヴィート王国魔術学校の制服は、
黒をベースとした軍服っぽい制服だ。
グレーのシャツに黒のジャケット。
ジャケットには金の刺繍が
施されている。
左襟には、アルヴィート王国の国旗の
バッチが付いている。
ネクタイは好きなものをして良いので
適当に黒のネクタイをしている。
ズボンもジャケットと同じように
黒に金の刺繍が施されている。

「あ、そうだ。コレを渡そうと思ってたんだ。」

ゴソゴソとポケットから何かを
取り出して俺に渡す。
受け取って見てみるとそれは…

「ネクタイピン?」

赤色の綺麗な模様が描かれている
ネクタイピンだった。

「そうだ。私とキッカからだよ。」

早速、制服に付属していた
一般的なシルバーのピンを
外して貰ったピンを付ける。

「ありがとうございます。嬉しいです。」

「喜んで貰えてよかったよ。」

「はい……。」

「さて、ところでレウは攻撃科だよな。」

この学校では、攻撃科と研究科、
防衛科がある。
クラスは、A、Bクラスが研究科。
C、Dクラスが攻撃科。
E、Fクラスが防衛科。
レウはCクラスのため攻撃科だ。
研究科は主に魔術の術式を研究する。
攻撃科は主に兵士となる為の訓練をする。
防衛科は主に兵士を援護する
援護員になる為の訓練をする。

「はい。ですが……魔銃が。」

俺は黙り込む。
魔銃とは、魔術を目標の位置に
撃ち出す為に作られた武器だ。
人間は魔術を発動する際、
頭に術式を思い描かなければならない。
しかも発動する位置が手に
触れていない場合、その位置を
さらに計算して術式に
組み込まなければならない。
人間の脳ではこの位置の計算を
しつつ組み込むのは難しい。
その為、魔銃が必要になる。
魔銃はその位置を思い描くだけで
自動的に計算し、術式に
計算結果を書き込んでくれるのだ。

「……ちょっと待っててくれ。」

父上はそう言うと、ADXを
使って誰かを呼んだ。
暫くすると…

ー コンコンコンッ

ドアがノックされた。

「ディオン、私だ。」

「来たか、入れ。」

ガチャリと音を立てて
ドアが開く。
そして、白衣を着た美女が入ってきた。

「んで?ディオン?この少年がそうか??」

「ああ、私の息子のレウだ。」

「へぇー。私はニコレッタだ。宜しく。」

にやっと笑うニコレッタさん。

「アレは持ってきたか?」

「ああ、ほれ。」

ずいっと俺にシルバーのケースを
手渡すニコレッタさん。

「開けてみろ。」

「……分かりました。」

俺はケースを受け取り、
ロックを外してケースを開ける。

「これは……。」

「これは私が何年もかけて作り上げた最高傑作だ。有難く使え。」

ケースには黒の魔銃が二丁
収まっていた。
赤色のラインのデザインが美しい。

「でも、俺は……魔銃は、使えないです。」

そう俺は、魔銃を使っても
何故か魔銃が壊れてしまうのだ。
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