真紅の殺戮者と魔術学校

蓮月

文字の大きさ
上 下
12 / 42
第一章

第3話

しおりを挟む

「大丈夫だ。壊れはしないぞ。」

ニコレッタさんはふふんっと笑った。

「え?」

「あ、コレを。」

ニコレッタさんは俺の手首に
赤色と黒色の2個の腕輪をつけた。

「それはお前の魔力を抑えるものだ。」

「魔力を抑える?」

「お前が魔銃を壊してしまう原因はだな。お前の魔力量が異常なのは知っているよな?」

「はい。」

俺の魔力量は普通の人より
何倍も多い。異常な位に。

「んで、お前は加減してたつもりなのか知らんが…ステラに流し込む魔力の量が多すぎだったんだ。そして多すぎる魔力量で魔銃がキャパオーバーをおこして壊れてしまっていたんだ。」

「多すぎた……。」

一時期そう考えて魔力量を減らして
流したんだが、それでも多かったのか。

「まあ、考えてステラに流してもステラは器。例えるなら蛇口の様に魔力を出したり止めたりは出来ない。考えて流しても蛇口は閉まらないからな、魔力は溜まり続ける。」

「だから、この腕輪で?」

「そうだ。その腕輪は、蛇口代わりだ。ステラに意図的に魔力を調節して流すと次に意図的に流すまで、魔力がステラに流れにくくなる。完璧に止めると危ないからちょっとは流れるがな。」

「……爆発、ですよね。」

俺がボソリと呟くといきなり
ニコレッタさんにグワシっと肩を掴まれた。
ニコレッタさんの顔を見ると
驚愕の表情を浮かべていた。

「……お前、何でそんな事を知っている?」

「…………見たんです。目の前で。」

「は?見ただと??」

「そこまでだ、ニコレッタ。後で私が話すよ。」

父上がニコレッタさんと俺の間に
入ってきて止めた。

「いいですよ、父上。俺から話します。」

「……分かった。」

ふぅっと一息吐いて言う。

「俺が、父上と母上……ディオン・オールディスとキッカ・オールディスの実の息子ではない事は知ってますか?」

「ああ。知っている。」

「俺は元々、とある研究施設の実験体でした。魔力量が異常なのは、そこの狂った奴らに身体を変えられたからです。その実験で生き残った俺と数十人は、毎日訓練をさせられました。地獄のような訓練です。そのような訓練に耐えられる子供は、何人いるのでしょうか。耐えられなくなった子供は精神が壊れました。ある子供は、自我を失いました。ある子供は、何度も頭を床に打ち付けました。ある子供は……自分のステラを噛みちぎりました。そして、その子供はそのまま魔術を発動しようとしたんです。それで……目の前で、身体がバラバラに吹き飛びました。」

「…………まさか、お前っ、あの"ファーム"の生き残りか?」

ニコレッタさんがハッと口を抑える。

「"ファーム"と呼ばれていたんですね。ファーム……農場ですか、ハハッ、では、俺達は家畜ですね。」

「……すまない。」

泣きそうな顔で俺を見るニコレッタさん。
言葉遣いは荒いけど、根は凄く
いい人なんだろう。

「昔の事です。今は幸せなので。…話を戻しましょう。」

「ああ。……それで、その腕輪でもある程度は調節できるが、多分普通の魔銃だと壊れる。そこで、この魔銃だ。この魔銃はキャパオーバーを起こさない仕組みが付いている。二丁なのは……魔力量が多いお前なら普通は使えない二丁でも使えるだろうと思ったからだ。つまり、オマケだ。」

カチャッと黒い魔銃を取り出す。

「……もしかして、ステラが使われてます?」

「な、何故わかった!?」

「何となく?」

「お前、頭いいのな…。」

結構な自信作だったらしく、
秘密がバレてガクゥとなるニコレッタさん。

「ふふん。私の自慢の息子さ。」

ドヤ顔をする父上。
…恥ずかしいです、止めてください。

「さて、という事で説明は以上だ。また、何か会ったら言ってくれ。お、そうだ!ADXで連絡先を交換しておこう。」

「ありがとうございます。」

ニコレッタさんは、連絡先を交換した後、
またな~と言って出て行った。

「……ふぅっ。じゃあ、レウももう暗いから夕飯を食べて寝なさい。本当は一緒に食べたいんだけど、馬鹿に呼び出されているから。」

馬鹿……多分、
親友であるアルヴィート王国の
現国王であるイヴァール国王陛下の
事だろう。

「では、失礼します。」

「ああ。おやすみ、レウ。」

学校長室から出て、
ふうっと息を吐く。
とても疲れた。

「……早く寝よう。」

俺は直ぐに自分の部屋へと
帰った。
夕飯は、机のADXから
注文すると、ロボットが
運んで来てくれる。

「…煮込みハンバーグとサラダ…と白米でいいか。」

注文して暫く経つと
コンコンッとドアがノックされた。
ドアを開けるとロボットが。

「ゴチュウモンサレタオショクジヲ、オモチシマシタ。」

「ありがとう。」

お礼をいい、プレートを受け取る。

「デハ、シツレイシマス。」

ロボットはウイイィンと
音を立てながら帰っていった。
中に入って、ご飯を食べる。

「……美味い。」

煮込みハンバーグはソースが
絶妙に肉の本来の旨みを引き立てていた。
サラダの野菜はどれも新鮮で
シャキシャキしていた。

「……昔じゃあ、考えられなかったな。」

あの頃は固いパンを二つも
食えれば幸せだった。

食べ終わると外へ出て、
プレートを専用の返却場所に
置いて戻る。
風呂に入って身体を洗う。

「……傷……消えないな。」

自分のあちこちには、
傷が沢山ついている。
胸には、あの実験跡が。

「………………。」

洗い終わり、部屋着に着替えて
電気を消してベットに潜る。
窓からは、少し欠けた満月が
優しく輝いていた。



翌朝、早く起きて
動きやすい格好に着替えて
朝の日課を行う。
外に出て30分間のジョギング。
そして30分間の筋肉トレーニング。

「ふぅ。……そろそろ時間か。」

終わったので、部屋に
戻ってシャワーを浴びた。
その後、ADXで朝食を注文して
朝食を食べた。
ちなみに今朝は、サンドイッチと
オニオンスープ、野菜ジュースを
注文した。
どれも絶品だった。

朝食後、制服に着替えて
あの黒色の魔銃が入ったケースを
持って部屋を出る。
ちゃんと、あの腕輪も付けている。
部屋を出ると丁度、ガンドも
部屋から出てきた。

「お、はよー!レウ!!」

「おはよう、ガンド。……それがガンドの魔銃か?」

ガンドは腰のホルダーに
青い魔銃が一丁あった。

「おう!!俺の相棒だぜ!!お前は……そのケースん中か?」

「ああ。」

「そっか!!あ、一緒に途中まで行こうぜ!!」

ガンドと一緒に途中まで歩く。
教室の前で別れて、教室へと入る。
そして自分の席に座った。

「おはよう、レウ。」

「……おはよう、ルチア。」

また、隣の席のルチアが
話しかけてきた。
……苦手だ。こういうタイプ。

「ねぇ、昨日は、はぐらかされたけど今日こそ教えなさいよ。魔力量。」

「……嫌だ。というか、もう話しかけないでくれ。めんどくさい。」

「ハァッ!?酷くない!?」

プーっと頬を膨らますルチア。
……子供かよ。

「ハイハーイ!!皆さんおはようー!席に着いてねー!」

また良いタイミングで
リンダ先生が教室に入ってきた。

「はーい、今日は魔銃について勉強した後で、実際に魔銃を使ってみますよー。」

「先生ー!僕まだ、魔銃持ってませーん!!」

「あ、大丈夫ですよー。事前プリントには、明日までって連絡してましたもんね!明日までにあれば大丈夫ですよー。今日無い人は学校から貸しますのでー。……さて、それでは授業を始めますよー。」

魔銃についての基礎の
授業を聞いた後、
魔銃の実習を行う為に
訓練場へと移動した。

「さて、では皆さん。今日は魔銃であの的を撃ってみましょう!!術式は先ほど教えた基本の"貫通"の術式ですよ!あ、他に術式を知っている生徒は、その魔術を使ってもいいですよー。」

的は15メートル先にある。
……何の術式にしようか。

「フンッ。では、俺からやろう!」

髪の毛をかき上げながら、
1人の少年が前に出る。

「では、ザウル君。どうぞ!!」

ザウルという少年は、
金色の魔銃を取り出して構えた。
……ギランギランだな、あの魔銃。

ー パアンッ。

ザウルが狙った的は
バチッと電気を帯びた後、
燃え始めた。

「おおー!"雷弾"の術式ですかー!お見事です、ザウル君!!」

「フッ。これくらい当たり前だ。」

どうやらザウルはかなりの
高飛車らしい。
取り巻きっぽい者達以外は
顔が引きつっている。

その後順番に終わらせていき、
俺の番が来た。
目立つのは嫌なので普通に
"貫通"の術式にする。
ケースから魔銃を一丁だけ
取り出して構える。

ー パアンッ。

「おおー!ど真ん中です!!素晴らしい!!」

俺はふぅっと息を吐く。
魔銃は本当に壊れなかった。
いつもならバラバラに
壊れるのに。

「次は……ルチアさん!」

どうやら次はあのめんどくさい奴
らしい。
ルチアはオレンジ色の魔銃を
的に向かって構えた。

ー パアンッ。

的はボウッという音と共に
燃え始めた。

「おおっ!"火弾"の術式ですね!!お見事です!!」

ルチアの腕はこのクラスでは
なかなか良い方だった。
授業後、昼休みになり
食堂前でガンドを待つ。

「お、待ったか!?レウ!!」

「いや、そんなに待ってない。」

「んじゃあ、昼飯食おうぜ!!」

昼飯を食堂の調理員に注文して
受け取り、席に着く。

「美味そ~!!頂きます!!」

「頂きます。」

昼飯は鮭の香草焼きと白米、
ほうれん草のお浸しに豚汁だ。

「美味ぇ~!!……そう言えばレウ!お前の魔銃見せてくれよ!!」

「ああ。」

ケースから魔銃を出して見せる。

「おおっ!黒か!!カッケーなぁ!!……ん?このブランド印……ま、まさかっ!!あのの!?」

ふおおおっと変な声を
上げているガンド。

って?」

「な、な!?お前知らずに買ったのか!?」

「いや、貰った。」

「なにィ~!!?といえば、世界で一番と言われる超大手の魔術道具専門店だぞ!!その中でもミュールズの魔銃は最高級品と言われてるんだぞ!?それを貰ったって!!誰に!?」

「ちょっと、ガンド!落ち着け!!周りに迷惑だ。」

先ほどからチラチラと
こちらを周りに見られている。

「す、すまん。……んで、誰に?」

「……父の知り合いだ。」

「へぇー…。誰だろうな?相当なツテがないと……ていうか、レウの親父さんって、何してるんだ??」

「父か?……う、うーん……。」

「何だ?言えないのか??」

「……静かに聞いてくれるなら話すが。」

また先ほどの様に騒がれると目立つ。

「分かった。で?何の仕事なんだ??」

「……父はディオン・オールディス。この国の宰相であり、この学校の学校長だ。」

「……は?……ハァアァ~~!?」

……ガンド、五月蝿い。
また、目立ってる。
しおりを挟む

処理中です...