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第二章
第2話
しおりを挟む※注意
今回は話の場面がよく変わります。
場面が切り替わる所は※で区切って
あります。
それと、更新が遅くなってしまい、
すみません…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ー カカッ!!
「…少しズレたか。」
狙いより少しズレた位置に
刺さった2本のナイフを見つつ、汗を拭う。
刺さったナイフを抜こうと的に
近付こうとした時、不意に
ポケットのADXのコール音が鳴った。
「…誰だ?」
ADXの画面を見ると、
そこには友人の名前があった。
ー ピッ。
「…ガンド?」
『レウ!!元気か?』
ー キーーンッ。
ガンドの声は相変わらず大きくて
音割れしてしまい、耳が痛い。
「…ガンド、もう少し声のボリュームを下げてくれないか?耳が痛いんだが…。」
『おお!すまん!』
「それで…どうしたんだ?」
『レウの家に遊びに行く日を決めようと思って電話したんだが…今、暇か?』
「ああ。大丈夫だ。」
『そっか!で、日程だけど、お前ん家は何日が大丈夫そうだ?』
何日…。
「…すまない。今はまだ分からないから、とりあえずガンド達の空いてる日を教えてくれ。」
『おぅ!いいぜ。えーっと、とりあえず俺は…特にコレといって用事はねぇぜ!』
「…………。」
『レウ、今暇人だなって思っただろ!!』
「いや、暇なんだなって思った。」
『いやそれ、意味一緒!!……んで、ミルは今週と再来週は空いてて、ヒスティエちゃんは特に予定はないらしいぞ。』
「そうか、分かった。」
『ヒスティエちゃんも俺と同じ暇人なのに、何もツッコまn…』
「ないな。」
『俺にだけ塩対応!!分かった、アレだな!好きな奴ほど冷たくするって……あれ…何か言ってて恥ずかしい…。』
最後の方は何故か
ゴニョゴニョ喋っていて
聞き取れなかった。
「まあ兎に角、両親に聞いてみる。」
『おう。また分かったら連絡くれ。』
「了解。じゃあな。」
『ああ。』
ー ピッ。
「……日程か。」
父上には聞にくいから、
とりあえず母上に聞いてみよう…。
でも、その前に…
ー ヒュンッ!!
俺は右に見える林の中に
ナイフを素早く投げた。
「…………。」
耳を澄ませるが悲鳴は聞こえない。
「…気のせいか?」
「レウ坊ちゃん。」
後ろを振り返ると使用人が
立っていた。
「レウ坊ちゃん、メイヒョル様がお呼びです。」
「…分かった。ありがとう。」
…ナイフの回収は後回しだな。
俺は屋敷へと歩いた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「……ふぅ。危なかったですね。」
私はそう独りごち、茂みから立ち上がる。
そして、足元で気絶している
侵入者を引き摺って歩き始めた。
「…さすが、レウ坊ちゃんです。」
私がこの侵入者を素早く背後から
張り倒していなかったら、
今頃侵入者の胸にナイフが
刺さっていたことでしょう。
「…死んでもらっては困ります。」
私はある小屋に辿り着くと、
侵入者を逃げられないように拘束して
冷えた井戸水を頭からぶっかけた。
「うぅ…ッ。」
侵入者…男はぼんやりと
目を開けた。
「…目が覚めましたか?」
「…ッ……此処は、何処だ…?」
「ここは…小屋ですとしか言いようがないですね、すみません。…ご気分は?」
「…………。」
男は顔を顰め、私を睨んだ。
「…まあ、良くはないですよね。お薬を打ちましたから、少々。」
「…俺をどうするつもりだ。」
「…どうされたいですか?」
私は男の目の前に椅子を
持って来て座る。
「………取引を、しないか?」
「取引ですか?」
「ああ。」
…いい加減この台詞、聞き飽きたなぁー。
私は思わず溜息を吐いてしまった。
「内容は?」
「…俺を逃がしてくれたら、金をやる。」
「…幾らでしょう?」
「…50ケト(※50万)。」
「…………。」
私が口を開けて固まったのを
見て男は口角を上げた。
「…どうだ?悪くない条件だろ?」
「…………ぅ。」
「何だ?」
「…やっっっすッ!!」
「…え?」
私は思わず叫んでしまった。
男は私の反応が予想外だったのか、
固まっている。
「イヤイヤ、無いわー。安すぎるわー。50ケトとか…安い、安すぎる。」
私は溜息を吐いて、
にっこりと笑顔を男に向けた。
「ま、幾ら金を積んだって、取引なんかするつもり無いけどね。」
「ッ!!」
「…さて、質問タイムに入りましょう。ちゃーんと正直に答えてくださいね?じゃないと…。」
私は男の耳元で囁く。
「…とっても痛い思いをしますので♡」
男から息を飲む音が聞こえた。
私は男から離れて小屋にある道具箱を
ゴソゴソと物色する。
「うーん…自白剤使ったら面白くないですし……あ、コレがいいかな?」
男は私が道具箱から出したモノを
見てヒィっと悲鳴を上げた。
「あ、コレ、お好きですか?良かったです。じゃあ…素直にお話くださいね?」
私は汚れすぎておちない赤色が
こびり付いた巨大な鋏を
持って椅子に座った。
「うおッ!!…侵入者か。こりゃまた、お前に捕まるなんて災難な奴だな。」
「ふふっ…何処の手の者だと思う?」
小屋の扉が開き、
外から同僚が入ってきた。
手には煙草を持っているので
一服しに来たのだろう。
屋敷内ではキッカ様の体調を
気にして皆この小屋で一服する。
「うーん…帝国の奴を早朝捕まえたからな…国内の…旦那の敵対派閥の奴か?」
「正解よ。後で、コレを差出人の書斎の椅子に座らせとくつもり。」
「えげつな……。」
同僚は足で動かなくなった男をつついた。
そして顔にすぱーっと煙を
吹きかけた。
「…馬鹿な奴らだな、ほーんと。」
「えぇ、そうね。…ねぇ、片付け手伝ってくれない?」
「うえぇ…。俺が?マジか…俺も不運だな。」
同僚の顔には面倒臭いと
書かれている。
「私だって貴方の片付け、手伝ってあげたりするじゃない。」
「うっ……。わかった、手伝う。」
…確かに床や壁にこべりついている
血や肉片を片付けるのは大変だ。
少し派手にやり過ぎてしまった。
「…後で、ご飯奢ったあげるわ。」
「マジ!?んじゃあ、頑張るぜ。にしても、こんだけヤったって事は…キッカ様狙いだったか?」
「………えぇ。」
「そんじゃあ、しょうが無いな。」
ディオン様やレウ坊ちゃんを
狙っていたなら、ここまでヤらなかった。
…逆に、お二人を狙うなんて馬鹿な真似を
させられる侵入者に同情してしまう。
けれど、キッカ様は別だ。
あの方は綺麗で可憐で儚い。
そして道端で転がっていた者に
手を差し伸べてくれる。
私はあの方は天使か女神なのでは
ないかと思う。…いや、違うな。
天使や女神は、何度お願いしても
助けてはくれない。…くれなかった。
彼女は…キッカ様は…私にとって…
私達にとって…自分の命よりも大切な人だ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「あら?訓練してたの?」
「母上。」
屋敷に入ると母上と会った。
「メイヒョル様の所に行くの?私もついて行っていいかしら?」
「えぇ、いいですよ。」
「うふふ、ありがとう。」
母上と並んで師匠が待つ部屋へと向かう。
…ついでに、あの事について聞こう。
「母上。」
「なぁに?レウ。」
「…友人が屋敷に遊びに来る日は、何日なら宜しいですか?」
母上はキラキラと目を
輝かせながら笑顔を浮かべた。
「まあ!!何日でもいいわよ!!…あ、でも準備をしなければならないから…三日後からなら、何日でもいいわ!!」
「分かりました、ありがとうございます。」
「ふふふっ。嬉しいわぁ~。何人くらい、来てくれるのだったかしら?」
「えっと、3人です。女子が2人で…男子が1人。」
すると何故か不思議そうな顔をする母上。
「…あと2人足りなくないかしら?」
「え?」
…他に誰か誘ったか?
「この間、クラト君から…えーと…クラト君と…ルチアちゃん…ガンド君…ミルスィニちゃん…ヒスティエちゃん…が遊びに行くので、宜しくお願いしますね、って連絡があったわよ?」
「え…。」
クラト先輩…いつの間に。
そして、俺が否定しにくいように
ルチアも入ってる…。
「…あら?」
「…いえ、5人でした。」
「ふふっ、レウも偶にうっかりしている事があるのね。」
後でクラト先輩と話そう。
じっくりと…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「…状況は?」
豪華だが品のある部屋に
少年の声が響いた。
「…既に首尾は整いました。あとは殿下がソレを押すだけです。」
少年…サルザット帝国第一皇子である
コルネリウスに少女が答えた。
「ふふっ…このスイッチ一つで…一体何人もの人が死ぬのだろうね?」
コルネリウスは妖艶な笑みを浮かべる。
少女は何も答えず、コルネリウスを
見つめていた。
「これは必要な犠牲だ。…君は私を化物だと思うかい?」
「…いえ。私は…ただ、貴方の側で…貴方が死ぬまで…仕えるだけです。」
「ふふっ、死ぬまで…ね?嬉しいね、そんな事を言ってくれるなんて。」
コルネリウスは少女を
自分の隣に座らせた。
「…化物は………いや、何でもない。」
私らしくないなとコルネリウスは苦笑した。
少女は何も言わずに、
ただコルネリウスの手を優しく握った。
「…さあ、世界を…壊そうか。」
コルネリウスは呟いた。
そしてスイッチを押した。
この日、ヤード王国で
大規模な爆発が起きた。
爆発はあらゆる場所で起き、
建物は崩壊…死者は何千人…
負傷者は何十万人にも及んだ。
そして…国王も…。
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