一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸

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6話

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 テラは短時間で使える低レベルの回復魔法を使い急いで回復を行う。
そして速度UPの支援魔法を使って自分の速度を高める。

「よし!これで準備が出来たぞ」

 そのまま森を逃げるように走っていく。
走り出したテラをジャイアントボアは逃がしてたまるものかと凄い勢いで追いかける。
テラは蛇行しながら進み木がジャイアントボアとの間に来るように計算しながら走る。
木はジャイアントボアになぎ倒される物もあるが、上手く足止めになる物もあった。
   そしてテラが探していたものがついに見つかった。
テラは丘を駆け上がっていく。
ジャイアントボアもテラのすぐ後ろを追いかけて来る。
   テラは丘を登りきると一番急になっている所を駆け下りて行く。
それを追うジャイアントボアは突然スピードを落としゆっくりと丘を降りる。

「メルの言う通りジャイアントボアは前脚が短いから下り坂は苦手なんだ」

 テラが探していたのは下り坂であった。
ちょうど良い下り坂が無かったので丘を利用したのだった。
 テラは下り坂の途中から先程使用した土の槍をジャイアントポア目掛けて何度も使用する。
5発程当たった所で片目を槍で潰したジャイアントボアが下り坂を落ちてきた。
テラはそれを寸での所で躱す。

「危なかった…注意してやらないと」

 落ちて行ったジャイアントポアからまだ上に居るもう1頭のジャイアントポアに目をやり土の槍を発動する。
10発程度撃った所でもう1頭のジャイアントポアも下り坂を転がり落ちてきた。
テラから離れた所を落ちて行きテラは下に落ちた2頭のジャイアントポアを見る。
2頭ともまだ息はあり時折「フゴッ」といった鳴き声が聞こえる。
テラはそのまま下に居るジャイアントポア目掛けて土の槍を何度も発動する。
何発も土の槍を放ちようやく動かなくなったことを確認してからジャイアントポアの下へと向かう。

「近くで見るとやっぱり大きいな…
こんな大きなモンスターを僕の攻撃魔法で倒したんだ…」

 テラは攻撃魔法が使えた事とCランクのジャイアントポアを1人で倒したことに感動を覚えていた。
土の槍はジャイアントポアの至る所に刺さっていてその惨状は普通の人なら目を覆いたくなるものであった。
テラは感動は一旦忘れジャイアントポアの解体を始めた。
やはりジャイアントポアは重いので価値の高い牙と魔石を取り出し袋へと入れて行く。
そして回復魔法を使い自分の体を回復させた後その場を後にする。

「街道からけっこう離れてしまったんだなぁー
森は危険だって言ってたから早く戻らないと…」

 危険な森から急いで街道へと戻るテラ。
30分程歩きようやく先程歩いていた街道へと出る。
丁度さっき休憩を取った岩を見つけ再び腰を下ろし休憩を取る。

「ふーもう朝になってしまったし、ちょっと休憩しよう」

 いつの間にか太陽は昇り街道に光が差していた。
テラはそこで袋からパンと水を取り出し朝食を食べ始めた。
固いパンと水なのでなんとも味気ない朝食であるが、テラのジャイアントポアとの戦いの疲れを癒すには充分であった。
そして朝食を食べ終わり、何気なく土の槍を森の木に向かって発動させる。

「この魔法って本当は石の槍が飛んでいくはずなんだよね…
やっぱり僕が下手だから土の槍になっちゃうのかな?」

 本来ならストーンニードルという石で出来た槍が飛んでいく魔法なのだが、テラが使うと土の槍となってしまう。

「うーん、この魔法は土の槍が飛んでいくんだからクレイニードルとでも呼ぼうかな
それにしても僕が攻撃魔法を使えるようになるなんて…
これならメルと一緒に旅を出来るかな?
いやこの程度の魔法じゃメルの魔法には全然敵わないよね…
もっと頑張らなくちゃ」

 テラが新たに決意をした時遠くの方から声が聞こえてきた。

「おーーーい兄ちゃーーん生きてるかーー
生きてたら返事してくれーーー」

「おい!ジャイアントポアに聞こえたら襲われちまうから大声出すな!」

「兄貴だって大声出してるじゃねえか!」

「それはお前が言うこと聞かないからだろうが!」

「そんな事より命の恩人の兄ちゃんに何かあったらどうするんだ!」

「それはそうだけどよ…
またジャイアントポアに襲われたら…」

「襲われたらまた逃げればいいさ。
おーーーい兄ちゃん生きてるかーーー」

「だから大声を出すのはやめろって!」

 ロック兄弟が大声を出しながら馬車を走らせていた。
テラは立ち上がりロック兄弟に大きく手を振った。

「僕はここに居ますよ!」

「おい!兄貴あそこ!あそこ!」

「ああ分かってる!」

 馬車はテラの近くまで来ると止まりロック兄弟が馬車を降りてきた。

「よ、よ、よかった~」

ロック弟はそう言うと心底安心したのか膝から崩れ落ちてしまった。

「兄ちゃん無事で良かった。
幾等なんでもジャイアントポアが出るこの街道を徒歩で通ろうなんて危ないぞ!
とにかく一旦村に戻るからジャイアントポアが出る前に急いで馬車に乗ってくれ!」

「えっとジャイアントポアなら誰かが瀕死の状態にしていたので僕が止めを刺しました」

 テラはあまり騒ぎにならないように少しだけ嘘をついた。
誰かが攻撃して瀕死だったのは1頭だけだったのだが、敢えてそこは伏せてロック兄弟に伝えたのだ。

「本当か!もしそれが本当ならとんでもないビッグニュースだぞ!」

「ええ、本当ですよ。
ジャイアントポアの死体ならあちらに1頭ありますので確認しますか?」

「あ、ああお願いしても良いか?」

 ロック兄をジャイアントポアの死体の所に連れて行こうとした時弟も立ち上がり一緒について行く。
そして死体をみたロック兄弟は固まってしまった。

「この部分が誰かに攻撃されていたみたいなのですが、どうですか?」

「あ、兄貴これはすげえな!」

「ああ、まさか俺達に襲ってきたジャイアントポアが…」

「襲われた時暗かったからここまで大きいとは思わなかったな」

 テラが誰かに攻撃されていた所を教えるがその話は無視され兄弟で何かしら話し始めた。

「なあ兄ちゃんこのジャイアントポアの死体なんだが俺達に売ってくれないか?」

「えっと…どうせ僕では運べないのでお2人でどうぞ。
でも牙と魔石は既に僕が取ってしまったのですが…」

「元々このジャイアントボアは兄ちゃんが仕留めたものだから兄ちゃんの物さ。
牙や魔石よりもこのサイズの肉と皮があれば村は大分助かるだろう、だから一回村に持って帰って売ろうと思うんだが」

「ええ、ジャイアントボアを持っていくのは構いませんが僕は町に行かないと…」

「それはちょっと待ってくれないか!
兄貴と俺の命の恩人で村の恩人でもある兄ちゃんが勝手に出てったって村は今ちょっとした騒ぎになってるんだ。
酒場の親父やカイリなんかはまだ食べさせてない料理があるのにとか言って怒ってるし、

宿の親父なんて「俺達に光をくれたテラ様にまだ何も恩を返してない!」って言いだして1人で追い掛けようとしてたんだぜ。
だから村を出て行くにしてもちゃんと挨拶してからにしてくれねえかな?
町までは俺達兄弟がちゃんと送り届けるからさ」

 テラはその話を聞き村人に心配を掛けてしまった事を悔いて一旦ロック兄弟と村に戻る事にした。
ロック兄弟とジャイアントボアの解体を行い馬車に詰め込んだ後、馬車に乗り込んで村へと向かう。
馬車の中でロック兄弟にテラが出てった後の話を色々と聞いた。

「兄ちゃんが起きてこないって女将が騒ぎ出してよ、部屋の中に置いてあった書置きを見てあの女将が泣き崩れちまったんだぜ。
その後宿屋の親父がまだ村に居るかもしれないって言いだして村中を俺達と探し回ったんだ。
村中の奴らが兄ちゃんを探し回ったんだが結局もう村を出たって話になってよ、俺達兄弟が代表して馬車で探すことになったんだ」

「色々とご迷惑をお掛けしてすいません…」

「全くホントだぜ!こいつこんな事言ってるが、「俺と兄貴が生きてるのは兄ちゃんのおかげだから絶対に俺達が見つけて見せる」なんて言って村を飛び出したんだぜ!」

「おい!兄貴その話はやめろ!」

「こいつったら街道に入る前からずっと兄ちゃんの事大声で呼んでいたんだぜ。
おかげでこっちはいつモンスターが出るか冷や汗ものだったぜ」

「兄貴すまなかった…動転しててつい…」

「今となっちゃあ兄ちゃんも無事だったし気にするな!
俺も命の恩人の兄ちゃんを探すのには賛成だったしな」

「なんか僕のせいで色々すいませんでした…」

「ほんとだぜ!出てくならちゃんと挨拶して出てけって話だ!
村の皆も恩人が勝手に出てったって怒ってるからこってり絞られるといいさ」

「それにしても兄ちゃんは槍を手に持ってるところを見ると槍の心得はあったのか?」

「いえ特に使えるという訳じゃありませんが、護身用に持ってます」

「そうだよなー回復術師が1人で戦うなんて話聞いた事ないもんな。
良かったら町に剣術道場があるんだがそこで槍術も教えてくれるんだが町に行ったら行ってみるか?」

「それは行ってみたいのですが時間が…」

「持ち方や振り方なんかの基礎を学ぶだけならそんなに時間は掛からないと思うぞ
それに俺達兄弟の知り合いだから色々融通を聞かせてくれると思うから試しに行ってみたらどうだ?」

「そこまで言われたらちょっと試しに行ってみますか…」

「よし!そうと決まれば後は俺達に任せておけ!
町に行くのは兄ちゃんの都合に合わせるからな、って言っても村の連中がそう簡単に離してくれないから時間掛かるかもな」

「違えねえはっはっはっ!」

 町で槍術を習う事になりテラは持っている槍に力を込める。
そうこうしている内に馬車は村へと戻るのであった。
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