一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸

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23話

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 テラはミールとの修行の成果を見せる為ジュニアに挑むことになった。
以前なら門下生が周りを囲んで居たのだが今は数人の練習生とマイトが居るだけでちょっと寂しいなとテラは思いながらジュニアの前に立つ。

「師範胸をお借りします」

「いつでもどうぞ」

 クレイニードルを5発一気にジュニア目掛けて放ち、その後ろをテラは走ってジュニアに接近する。
ジュニアはクレイニードルを飛び上がり躱すがテラも飛び上がりジュニアに短剣の一撃を入れる。
お互い着地しジュニアはテラを驚いた顔で見ている。

「素晴らしい!まさかあの魔法を5発も一気に放つとは…
その後の攻撃も私が躱す事を見越しての素晴らしい動きでした。
たった半年でここまで強くなるとは…
私も本気で行きますよ!」

 模擬戦の為木で出来た短剣とはいえジュニアの脇腹に一撃入れた事をテラは内心喜んでいたのだが、ジュニアの本気という言葉を聞いて気を引き締めた。

「テラ行きますよ」

 ジュニアは目にも止まらぬ速さでテラに近づくと剣を横に振るう。
テラはそれを短剣で受け止めると空いている手でクレイニードルを放つ。
しかしジュニアはクレイニードルの直撃を受けながらも足払いを掛けてくる。

「くっ!」

 テラが倒された所にジュニアは前方に縦回転しながらかかと落としを放つ。

「ぐはっ!」

「思ったより良いのが入ってしまいましたね…」

 テラは口から血を吐きながらもクレイニードルをジュニアに目掛けて放つ。
なんなく横に躱されてしまったがそこに短剣を持ったテラが飛び込んでいく。

「なっ!今の蹴りはそんなに動けるほど軽いものじゃなかったですよ。
何かからくりがありますね」

「さあ何のことでしょう?」

   ジュニアは早々とテラがミールに仕込まれた何かがある事に気付いた。
それが何かを探るためジュニアは攻勢に出た。

「くっ!流石は師範やりますね…」

「そんな事言っておいてダメージを受けてる様子はないじゃないですか。
何発かは確実に当たってる筈なのですが…
どういうカラクリですか?」

「それは教えられませんよ…クレイニードル」

   テラはジュニアに攻撃をなかなか当てられず、ジュニアはテラに何度も当てているのだがテラにダメージを受けた様子はない。

「テラもう少し本気を出させて貰いますね」

   ジュニアはそう言った瞬間スピードを上げテラの背中に回り込み木剣による一撃を入れる。
しかし背中に一撃が入った瞬間テラは吹き飛ばされながらクレイニードルを放つ。
道場の壁にぶつかりその場に倒れ込むテラだったが手で体を押さえたかと思うとすぐに立ち上がった。

「なるほど仕掛けは分かりませんが超スピードで回復させているのですね。
先程から攻撃魔法を使う時も詠唱がありませんしこれが修行の成果ですか?」

「はい…もうバレてしまうとは流石師範です」

   テラがミールに教わった簡単な魔法なら詠唱無しで使えるという便利な技術だ。
今のテラのレベルだと骨折や内臓損傷ぐらいなら無詠唱で治せる。
   しかしこの技術には欠点もある。
詠唱して魔法を使うよりも多くの魔力を使ってしまうのだ。
いくら魔力の多いテラでも魔力が無限にある訳ではないので使い所を見定めないと魔力が尽きてしまう。

「本当にテラは凄いですね。
回復術士でここまでの戦えるようになった方を私は知りません。
敬意を表し力以外は全力で行かせて頂きますよ」

「えっ!ちょっとそれはやめて頂けませんか…」

「行きますよ!」

   ジュニアはテラの言葉を無視して突っ込んでくる。
とてもテラの目では追えない速さでテラの周りを縦横無尽に飛び回りテラを翻弄する。

(相手の速さが自分を上回ってる場合はカウンターに集中しろってミールさん言ってたな)

   テラはミールに教わった通りにカウンターに賭けるに事にした。
しかもそれをジュニアに悟られないように慌てる振りをしながらだ。
後ろからテラの足を狙って横薙ぎの一撃が放たれる。
直撃を受けるがその瞬間テラも短剣で反撃する。
テラの一撃はジュニアの顔を掠めジュニアは警戒して距離を取る。
その間にテラは足を回復させ追撃のクレイニードルを放つ。
   虚をつかれたジュニアはクレイニードルを剣でたたき落とすがテラはそれを囮にジュニアの横に飛び込むと短剣で一撃を入れる。

「ぐっ!」

   ジュニアはテラの一撃を背中に受けよろけてしまう。
そこにテラは手を休めずに攻撃を加える。
しかしジュニアはそれを剣で受け止めるとテラの頭部に強力な裏拳を放つ。
   その一撃でテラは道場の壁を突き破り外まで飛ばされてしまう。

「グハッ!」

「はっ!テラ大丈夫ですか?」

「師範やり過ぎです!テラが死んじゃいますよ!」

   ジュニアとマイトは吹き飛ばされたテラの方へと駆け寄ると砂煙の中からテラは飛び出し短剣でジュニアに攻撃を仕掛ける。

「テラご無事でしたか!?」

   テラの一撃を剣で受け止めながらジュニアはテラの怪我の具合を見るが外傷は無さそうだ。

「テラここまでにしましょう。
貴方の修行の成果はしっかりと見させて頂きましたよ」

「ありがとうございました!」

   ジュニアは念の為テラの怪我の具合を再度確認するが怪我は無さそうだ。
寧ろジュニアの方が怪我をしている程だった。
   場所を応接室に移し一息着くとジュニアはテラに色々と聞いてきた。

「テラ先程の戦いで傷を一切負わなかったようですがどうやったのですか?
手加減したとはいえ私の一撃を無傷と言うのは有り得ません。
それに無詠唱で魔法を使えるようになったのですか?
それにあの身のこなし全て母の所で教わったのですか?
早く教えて下さい」

「師範ちょっと落ち着いて下さい!
師範が詰め寄るからテラが怯えてるじゃありませんか!」

「またまたマイトったらご冗談を…
私と互角にやり合ったテラがこの程度で怯える訳が………ありましたね」

   マイトの後ろに隠れているテラを見てようやくジュニアは落ち着きを取り戻す。

「すいませんでした…
テラの余りの成長ぶりに興奮し過ぎてしまいましたね。
それでテラは何をやったのか教えて貰えますか?」

「はい…」

   テラはジュニアに魔力を多く使用するがレベルの低い無詠唱で魔法が使える事。
そしてピンチの時のみ使用する魔法について説明する。

「この短剣なのですがミールさんに頂いた物でここに大賢者様が作った道具が埋め込まれてまして一つだけ魔法を貯めておけるのです。
先程師範の一撃を喰らった時に僕が使える最高の回復魔法を仕込んでいたのでそれを発動させました」

「なるほど…そんな素晴らしい物があったとは流石は大賢者様ですね。
それにしても母はたった半年でテラをここまで鍛え上げるとは…」

「ミールさんのおかげです。
そういえば師範にたまには会いに来て欲しいって言ってましたよ!」

「母が?まさかあの母がそんな事言うはずがありませんよ。
そんな暇があるなら魔法を覚えろと昔から何度も言われましたからね。
結局私は魔法を使う事はできませんでしたが…」

「本当に言ってたんですが…
心変わりしたんですかね?」

「あの母が?歩いた後には荒野しか残らないと言われた殲滅の魔女が心変わりですか?
ちょっと信じられませんね」

「殲滅の魔女って過去に大賢者様と共に魔族の侵略を食い止めたあの殲滅の魔女ですか?」

「テラは知らなかったのですか!?
父さんのザリュウと王都のギルドマスターも一緒にセラスの翼というパーティーで暴れ回ってそうですよ」

「そんなザリュウさんも…
それに王都のギルドマスターまで…
まさかあのセラスの翼に会ってたなんて…」

「おいおい本気かよ!
そんな事も知らずにザリュウ剣術道場に入る奴が居るなんて驚きだぜ!」

「確かにこの町では有名でしたが他の町では名前までは広まってなかったのでしょう」

「それにしてもこの道場に入っても気付かないのは鈍すぎですよ」

   ジュニアとマイトはこの国で1番有名だったパーティーの1人であるザリュウにテラが気づかなかった事に驚いている。
   なおセラスの翼は不屈の戦士ザリュウと天弓術士と呼ばれ王都のギルドマスターであるガービと大賢者イングベルトと殲滅の魔女ミールの4人パーティーだ。
魔族の侵攻をたったの4人で食い止めた功績から全員が国から表彰されている伝説のパーティーである。
   テラも知っていたのだが全員を名前ではなく通称でしか知らなかったのだ。

「ザリュウさんがセラスの翼…
ザリュウさんがセラスの翼…
ザリュウさんがセラスの翼…
ザリュウさんがセラスの翼…
ザリュウさんがセラスの翼…」

「テラ大丈夫ですか!?
しっかりして下さい」

「師範これはショックを受けすぎておかしくなってますね…
部屋で休ませときます」

   マイトはおかしくなったテラを部屋へと連れて行きベッドに寝かせる。
寝かせてもテラは呪文のようにずっと呟いていた。

「テラ俺も負けないからな!」

   マイトの言葉はテラに届かなかったがマイトは何かを決意した顔をして部屋を出ていった。
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