一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸

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24話

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   翌朝テラが目覚めると道場の方から声が聞こえてきた。

「まだ陽が上ったばかりなのに誰だろう?」

テラは声の主を確かめに道場へと向かう。
そこではジュニアとマイトが模擬戦を行っていた。

「くそっ!もう1回お願いします!」

「次はもう少し考えて戦って下さいね」

   汗だくのマイトの攻撃をジュニアは木剣で全て捌いている。
マイトをよく見ると既に体中傷だらけになっており相当激しく模擬戦を行っているようだった。

   テラは必死にやっている2人に声を掛けることを躊躇い朝食の準備をしている事にした。
朝食の準備をしていると疲れきったマイトが入ってくる。

「テラ済まねえ!
つい気合が入りすぎちまって朝食の準備を忘れてた!
今からやるからちょっと待っててくれ!」

「マイトさん朝食ならもうすぐ出来ますから汗でも流して来て下さい」

「悪いな…じゃあお言葉に甘えさせて貰うぜ!」

「どうぞさっぱりしてきて下さい」

   マイトは何度もテラに謝りながら外へと向かって行った。

(前は門下生の皆で朝食当番を押し付けあっていたのに…
マイトさんがいつも押し付けられて愚痴ってたのが懐かしいな…)

   テラは道場の他の門下生達が本当にいないのだと物思いにふけっていた。
朝食が終わりテラはジュニアに話を切り出す。

「師範僕は1人でも戦えるようになったと思うのでメルと合流して旅に出ようと思っています」

「そうですか…ですが勇者パーティーにはすでに賢者が居ますがそれはどうするのですか?」

「それに関しては出たとこ勝負ですね。
メルが僕の事を必要だって言ってくれればついて行きますし、必要ないって言われれば僕は去ろうと思います」

「…本当にテラですか?
以前はそんな事口が裂けても言えない子だったはずなのに一体何があったのですか?」

「ミールさんに散々言われましたからね…」

   テラは上を見てどこか遠い目をしている。
ジュニアはそんなテラを見てやれやれと首を振り話を続ける。

「母なら後悔するぐらいなら行動するようにテラの性格も変えかねませんね…
魔族との戦いで王都ごと焼き尽くそうとした人ですからね…」

「ミールさんならそのぐらいやりかねませんね…
ですがメルの所に行きたいというのは僕の意思です!」

「そうですか…
せっかくテラが帰ってきたと思ったのにここもまた寂しくなりますね」

「そうですよね…
帰ってきて早々に出て行くなんて礼儀知らずですよね…
すいません今の話は忘れて下さい」

「そう言うことを言ってるんじゃありませんよ。
せっかく帰って来たのにもう旅立ってしまうとなると私も寂しいですし、何よりマイトが寂しがりそうだからですよ」

「ちょっと師範!
俺は別にテラが居なくても寂しくなんかありませんよ!」

「そうですかでは私が寂しいので出発は1週間後ではどうでしょうか?
少しくらい遅くなっても大丈夫でしょう?」

「はい!それくらいでしたら問題ありません」

「ありがとうございます。
では早速マイトと模擬戦をやって頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

   ジュニアの言葉にマイトはビクッと反応する。

「僕は大丈夫ですけどマイトさんは朝から師範とずっとやっててお疲れではないでしょうか?」

「弟弟子に心配される程疲れちゃいねえぜ!
師範!俺はいつでも大丈夫ですから」

「頼もしいですね。
ではマイトは先に道場に行って武器や防具を準備をしていて下さい」

「はい!」

   マイトは勇ましい顔をして部屋を出て行った。

「テラすいませんね。
マイトはテラが帰ってくるまで気の抜けた態度をしてまして、私がいくら言っても効果がなかたので利用させて頂きました」

「そういう事だったんですね…
師範が寂しいだなんて変だとは思っていたのですがそういう理由だとは思いませんでした…」

「テラが出て行くのが寂しいのは本当ですよ。
短い間とはいえ門下生になった者が居なくなるのは寂しい者ですよ」

   ジュニアの言葉に亡くなった門下生達の事も含まれて居ると感じテラはジュニアが寂しさを感じているのは本当なのだと思った。

「あんまりマイトを待たせてはいけませんからそろそろ道場の方へ行きましょう」

「はい!」

   テラとジュニアが道場に着くと準備万端のマイトが待っていた。

「さあ早くやろうぜ!」

マイトが投げてきた短剣2本を受け取り模擬戦が始まった。

   マイトは木剣を下段に構えテラの出方を伺っている。
そこにテラはクレイニードルを連発で放つが全て躱されてしまう。

「追撃して来ないのは俺を舐めてるのか?」

「違いますよ。
昨日と同じ手では読まれてしまいますからね」

   マイトは追撃して来ないテラに怒りをあらわにしていたがテラの理由を聞き納得し木剣を構え直す。
その瞬間テラは短剣を片手に持ちマイトに突っ込む。
マイトはタイミングを合わせ剣を下から上に切り上げるがテラは途中で止まりマイトの足目掛けてクレイニードルを連射する。
   マイトは必死に避けるが1発がマイトの足に当たりマイトは顔を顰める。
テラはその間にマイトの横に回り込み短剣を振るがそれは剣で防がれてしまうが空いている手を使いクレイニードルを放つ。
クレイニードルはマイトの腕にかすり腕からは血が零れ落ちていた。
   マイトはテラから距離を取り落ち着こうとするが、テラはそれを許さずマイトの近くから離れない。
マイトは剣を横薙ぎにブンブン振り回すが全て躱された上にクレイニードルを何度も食らってしまう。

「くそっ!離れろ!」

「離れませんよ!」

   テラはマイトの動きについて行きクレイニードルで徐々にだがマイトにダメージを与えていく。

「あーうざってえ!
前はこんな戦い方してなかっただろうが!」

「ミールさんの修行の成果ですよ」

「へっ!そうかよ!」

   マイトは剣と足を大振りに振り回すがテラはその隙をついて短剣を振るう。
そして10分程過ぎた時ジュニアの声が戦いを止める。

「ここまで!
テラお疲れ様でした。
マイトたったの半年でここまで差を付けられた気分はいかがですか?」

「最悪ですね…」

   ジュニアの言葉にマイトは下を向き落ち込んでいた。

「その気待ちを忘れないようにして下さいね。
マイトは良くも悪くも気持ちに左右される事が多いので、その悔しさを忘れなければ修行に打ち込むことが出来るでしょう」

「師範!俺はもっと強くなれますか!?」

「強くなれますよ。
それは私が保証します」

「俺真面目に修行しますから…
お願いします!」

   マイトはテラに一撃も入れることが出来ず完敗した事で自分を情けなく思っていた。
テラがいない間ジュニアとレベルの低い門下生しか居ない事で知らず知らずの間に強くなる事への意欲が失われていた事に気付いたのだ。

「その気持ちを忘れないで下さいね。
そして一緒にザリュウ剣術道場を再興して行きましょう」

「はい頑張ります!」

   テラは2人の師弟愛を見て自分もあの中に居て一緒にザリュウ剣術道場の再興に尽力したいと少し思ったが、自分にはあの中に入る資格ないのだと言い聞かせていた。

   その後も何度もマイトと模擬戦をこなしテラは自分が居るべき場所について考えるのであった。
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