一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸

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26話

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 テラはロックドラゴンに対して短剣やクレイニードルを駆使して攻撃するがまるで効果はない。
ロックドラゴンはその名の通り皮膚が岩の様に固く敵の攻撃を通さないのだ。
これがジュニアやマイトであれば力でロックドラゴンの固い皮膚を破壊することができるかもしれないが非力なテラではとても出来そうもない。

「どうしよう…僕の攻撃が効かない…」

『わっはっはどうしたその程度か!
もしその程度ならドラゴンストーンを持つのに相応しくないから殺してやろう』

 ロックドラゴンは大きく息を吸い込み始める。

「マズい!ブレスが来る!」

 テラは大きな岩の陰に隠れるがこれで大丈夫なのかと心配する。

「やっぱりこの岩じゃ防げない!」

テラが岩の影を出ると同時に黄色い閃光が上空に向かって放たれた。
その威力は先程まであった雲を吹き飛ばす程であった。

『本気の実力を見せぬなら次は当てるぞ!』

「くそっ!僕で遊んでいるのか!」

 テラはどうしたらいいか分からなかったが逃げる事は出来ないと感じ取っているのでロックドラゴン相手に突っ込んでいく。
それをロックドラゴンはただ見ているだけで何もしないでいた。

(完全になめられてるな…)

 短剣を腹に突き刺そうとするが固い皮膚に阻まれ短剣は弾かれてしまう。
クレイニードルをロックドラゴンの顔目掛けて何度も放つが蚊が飛んでいて目障りだという感じで顔の前を前足てぶんぶんと振りそれも全て弾かれる。
試しに大岩の上から飛び降り短剣を振るうがそれも威力が足りずに弾かれてしまう。

『どうやらもう限界のようだな…
ではこちらから行くぞ!』

 ロックドラゴンは先程までより速いスピードで尻尾を振り回し辺りの大岩を砕いた。
砕かれた大岩が無数の礫となりテラへと襲い掛かる。

「痛っ!」

 テラは礫を躱し切れず体中に傷を負ってしまう。
致命傷になるような傷はないが大きな礫を防いだ左腕が折れている。
慌てて回復魔法を使い傷を癒すがその間ロックドラゴンはただ見ているだけだった。

『回復魔法は悪くないがそれ以外はお粗末だな。
他に何かないのか?」

 ロックドラゴンの言葉にテラは違和感を覚えていた。
先程からテラに致命傷となるような攻撃は当てないようにしている気がするし、言っている事もテラを完全に試しているかのような発言ばかりだ。

「それならこれでどうだ!」

 クレイニードルを詠唱をしていく。
しかし魔法は発動はさせずに貯めておく。
それが10発になった時ロックドラゴンの足目掛けて放つ。
クレイニードルは一直線に並びロックドラゴンの体重を支えている後ろ足に次々にぶつかっていく。
1発目が当たるとその1発目に2発目が着弾する。
それが3発、4発と次々に前にあるクレイニードルを押すようにぶつかっていく。
 するとようやく僅かながらにロックドラゴンの皮膚を削る事が出来た。
傷口からは血が流れている。

『せっかく待ってやったのにその程度か…
もう飽きてきたし終わりにして良いか?』

 ロックドラゴンは自分の足から出ている傷には気付いておらずテラの攻撃は全て皮膚で防いだものと思っていた。
それほど小さな傷だったがテラには一筋の光明が見えた。

「まだ終わりませんよ!」

『そうか…ではもう少しだけ付き合ってやるから見せてみろ!』

 テラは短剣を両手に持ちロックドラゴンの懐へと飛び込む。
そして先程クレイニードルで傷付けた後ろ足に短剣を何度も振り下ろす。
皮膚がクレイニードルで裂けていた為テラの短剣による攻撃で徐々に傷が広がっていく。
ようやくロックドラゴンは自身の後ろ足に傷を負っている事に気付いた。

『何をした!お主の攻撃程度では吾輩に傷など付けられる筈がない!』

 ロックドラゴンはそう言って前足をテラに向かって振り下ろすがテラは前足を躱すと後ろ足の傷付けた部分に再度攻撃していく。
だがロックドラゴンも回転し尻尾を振り回してテラを自身から引き剥がそうとするが、テラは足の間を潜り抜けその際にも攻撃を加えていく。

『ちょこまかと動き回りおって…
あー面倒くさい!」

 突如ロックドラゴンは翼をはためかせその巨体で上空へと上がっていく。

(そういえば翼って攻撃してなかったな…)

 テラはクレイニードルを先程と同じ要領で翼目掛けて放つ。
だが翼は羽ばたいている為同じところにはぶつかる事は無かったが薄い皮膜のような部分に次々に突き刺さっていく。
それをチャンスとみたテラは翼目掛けてクレイニードルを次々に放った。
だがドラゴンも上空でブレスを吐くように口から空気の塊を吐き出すとテラのクレイニードルは撃ち落されていく。

「流石にそう何発も簡単に許してくれないか…
でも上空に攻撃するにはこれしかない!」

 テラは他に上空への攻撃手段を持たない為クレイニードルを打ち続けるしかなかった。
ロックドラゴンはクレイニードルを空気の塊で撃ち落していたが様子が変わって来た。

『ぜぇぜぇぜぇ…はぁーフンッ!
ぜぇぜぇぜぇ………はぁーーーフンッ!
まだ来るのか…ぜぇぜぇぜぇ……」

 ロックドラゴンは完全に息が切れ空気の塊を出すのが辛くなっていた。
一方テラは詠唱して攻撃魔法を使用しているのでまだまだ魔力には余裕があった。
段々とテラのクレイニードルがロックドラゴンの空気の塊を放つ合間に当たるようになってきた。

「よし!当たってるぞ」

 テラは無詠唱と詠唱したクレイニードルでロックドラゴンに休ませる暇を与えない。
ロックドラゴンの翼にはいつしかクレイニードルが無数に刺さっていた。

『これまでじゃ!
お主の事を認めるからもう終いにするぞ』

「えっ!認めてくれるんですか?」

 テラはクレイニードルを放つのを止めロックドラゴンが降りてくるの待つ。
ロックドラゴンが降りてきて翼をまじまじとみるとテラのクレイニードルは先っぽが刺さっているだけだった。

『全く厄介な所を狙いおって…
この翼の皮膜はな空を飛ぶ際に魔力を流す部分でな、多少の傷ならどうという事はないのだがこうも沢山魔力の流れる部分をせき止められると流石に困るわ!』

「そうだったんですか…
それでこうやって降りてきたということは僕を試すような真似をした理由を聞かせて頂けるんですか?」

『ほーう分かっておったか』

「誰でも分かりますよ」

『そうなのか…頑張って演技したつもりだったんだがダメだったか…』

「それでどうして試すような真似をしたのですか?』

『それはな…イングベルトに頼まれただからだ。
昨日の夜にここを
吾輩はセラスの翼と昔戦ってな…
その時にそのドラゴンストーンをくれてやったのだ』

「それで師範はここに行くように言ってたのか…」

 全てジュニアがお膳立てした事だった。
ジュニアが大賢者イングベルトに頼み込みロックドラゴンに協力してくれるようにお願いしていたのだ。

『まあ吾輩に傷一つ付けられぬような軟弱者だったら断ってやるつもりだったがお主はギリギリ合格だ』

「ありがとうございます!」

『それで吾輩は何をすれば良いのだ?
イングベルトからはお主に協力するように言われておるが面倒な事はごめんだぞ』

 テラは北の洞窟に行って勇者パーティーに会いたい事を伝える。
するとロックドラゴンはその話に興奮して聞いていた。

『勇者とは強いのか?
そんな者が居るとはでは早速行くぞ!
早く背中に乗れ!』

「えっ!今は暗いから明日の朝行けば良いんじゃないですか?」

『そんなゆっくりして居ては勇者パーティーが逃げてしまうだろ!
とっとと行くぞ!』

 ロックドラゴンは背中にテラを乗せて上空に羽ばたこうとしている時にテラが翼にまだクレイニードルが刺さりっぱなしになっている事に気付いた。

「ちょっと待って下さい!
翼に刺さっている物を抜きますから!」

『ふむ…そういえばそんな物刺さっていたな…
急いで頼むぞ』

 翼に刺さったクレイニードルを抜き回復魔法を掛けていく。
忘れずに足の傷も治療していく。
そして再びロックドラゴンの背中に乗ると上空へと上がる。

『では行くぞ!しっかり捕まって居るのだぞ』

「はい!お願いします」

 テラを乗せて真夜中にロックドラゴンは北の洞窟へと猛スピードで向かうのであった。
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