一人になってしまった回復術師は世界を救う

新兎丸

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33話

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   イングベルトと一緒に大魔王について調べながら自分の戦い方にちいても模索する日々を送るテラは今日も日課の訓練を終え、イングベルトと共に大魔王の魔力の流れを探っていた。

「大賢者様ちょっと見て下さい。
この魔力の波形は今までに無いものです!」

「これは大魔王の可能性が高いぞ!
どうやら魔王の居城付近の地下から魔王に向けて魔力を送っているのだな」

   ついにテラとイングベルトは大魔王の魔力らしき物がある所を掴んだ。

「しかしここは…ドラゴンの縄張りのそばの山の地下から魔力が出ているみたいだな。
どうやらドラゴン達は大魔王について知っているだけでなく正体も知っておるようだな…」     

「それでゼルマルさんもあの反応だったのかも知れませんね。
どうします、ゼルマルさんに聞いてみますか?」

「そうだな…教えてくれるとは思えんが念の為聞いてみるとするか。
テラよドラゴンストーンを貸してくれ」

   テラはイングベルトに言われた通りドラゴンストーンを手渡す。
イングベルトは魔力をドラゴンストーンに流しゼルマルとの会話を試みる。

「ゼルマルよ聞こえておるか?
吾輩だ!イングベルトだ!」

『 どうしたのだ?
吾輩も忙しいからそう頻繁に連絡してくるのは勘弁して貰いたいのだが…』

「まあそう言うな。
大魔王の居所について分かったのだからな」

『 ほう?お主の妄想で作り上げたその大魔王とやらはどこに居るのだ?』

「それはお主達ドラゴンが住むドラゴンの山のそばにある山の中だ!
ギリギリお主達の縄張りの中では無いがすぐ側に大魔王が住んでいてお主達は良いのかな?」

『 ………何の事やらさっぱり吾輩には分からんが、そうだ!久しぶりにお互い腕が訛ってるだろうし戦闘でもやらぬか?』

「ほう良いだろう!
その腐った性根を叩き直してくれるわ!」

   そこでイングベルトはゼルマルとの会話を終える。
何故かゼルマルがこちらに来てイングベルトと戦う事になってしまった。
横で聞いていたテラはどうしてゼルマルがここまで頑なに大魔王の事を話さないのか不思議でしょうがなかった。

「大賢者様どうしてゼルマルさんは僕達に大魔王の事を教えるのを拒むのでしょうか?」

「何も拒んでなどおらんよ。
ゼルマルがこちらに来ればその理由も分かるだろう」

   イングベルトはそう言うとテラより先に地上への階段を上がり始めた。
イングベルトはかなりの高齢なのに階段を1段飛ばしでひょいひょいと上がっていく。
テラも急いで階段を駆け上がるがとてもイングベルトの上がるスピードには追いつけなかった。
   テラが地上に上がるとイングベルトがどこからか持ってきた椅子で寛いでいた。

「流石は大賢者様魔法を使わなくても素早い身のこなしですね」

「あの程度の事ザリュウに比べれば児戯にも等しいのだ。
どうやらテラにはザリュウの動きが速すぎて見えなかったようだな。
レベルを更に上げていけばテラでも出来るようになるぞ」

「本当ですか!」

   テラは自分にも出来るようになると言われて顔を綻ばせる。
テラは椅子に座り本を読んでいるイングベルトを尻目に短剣で木を斬りつける訓練をしていた。
   しばらくしてゼルマルが上空より現れる。
テラとイングベルトの前に着地すると話し始める。

『 お主達と戦う為に急いで来てやったぞ!
さて戦おうか!』

   ゼルマルは戦うと言いながら地面に何かを描き始める。

〈 この会話は吾輩が持っている魔石を通して大魔王にも聞かれておるから戦闘している声を出しながら筆談で話すぞ〉

   ドラゴンの言葉で書かれているためテラには何も分からなかったがイングベルトには分かるようだ。

〈 やはり大魔王の事を知っておったのだな。
なぜここまで秘密にしなければならないのだ?〉

〈それは大魔王がドラゴンの長であったエンシェントドラゴンの息子だからだ 。
エンシェントドラゴンはもう亡くなっているが今のドラゴンの長は律儀な者で今も大魔王を気にかけているのだ〉

〈大魔王はドラゴン縁の者か…
つまり吾輩が大魔王に攻め込んだらドラゴンは敵になると言う事か?〉

〈それはないだろう。
大魔王を良く思ってない吾輩みたいなのも多いからどちらの味方もする事は無いと思う〉

   テラは2人が地面に魔法で書いている文字が分からないため演技でやっている戦闘を本気で戦っていると思い込み固唾を飲んで見守っていた。

〈吾輩はこれから大魔王の所に攻め込もうと思っておるのだがそこまで送ってはくれんか?〉

〈近くまで行くと怪しまれるから近くまでなら良いだろう。
しかし大魔王は悔しいが吾輩よりも強いぞ!〉

〈負けず嫌いのお主が言うならそうなのだろう。
だが吾輩以外の人間は大魔王の事を信じておらん。
残念ながら吾輩しか戦える者は居らんのだ〉

〈後ろにいるテラはどうだ?
回復術士にして見どころがあると思うが?〉

〈戦力にはならんよ。
頼みの綱の攻撃魔法は自身の命を削って使ってから吾輩が禁止にした〉

〈しかしお主の後釜とまでは行かない迄もある程度知識を持った者がこの先居らねば大変な事になるだろう?
だから今の内に仕込んでおけ!
どうせ大魔王の目は勇者に向いておるからそのぐらいの時間ならあるだろう〉

〈ゼルマルよ大魔王の事をよく知っておるな…
何か隠しておるんじゃないか?〉

〈隠しても意味はあるまい大魔王は吾輩の母の姉の子だからな…
だから大魔王…いやノアが産まれた時から知っておる〉

〈そうか…大魔王ノアを倒すのはお主の血縁を倒す事になるのか…〉

〈いけ好かない奴だから気にする必要はないぞ!
ただドラゴンと魔族の混血種だから何をしてくるか分からないぞ〉

〈ドラゴンと魔族の混血種だと!
そんな事が可能なのか?〉

〈可能かどうかと言われれば実際に居る事だし可能なのだろう〉

〈そうか…〉

   2人は地面に文字を描き話している間も戦闘を続けていた。
そのせいで辺りは完全に荒地となりテラは2人の実力を目の当たりにして驚愕していた。

「2人の本気がここまで凄いなんて…」

   テラは2人がカモフラージュで手加減して戦っている事を知らない為、未だに全力で戦っていると思い込んでいた。

〈ではゼルマルよ2週間後にここで落ち合おう。
それまで吾輩はテラに色々と伝えておこう〉

〈うむそうすると良いだろう。
ではまた2週間後にな〉

   2人は筆談と戦いをやめる。

『 ふむ腕は訛っていなかったようだな。
また運動不足になったら来てやろう』

「お主こそ腕が訛ってるのではないか?
吾輩ときちんと戦えるように鍛え直して来るのだぞ」

『 ふん強がりを…ではまたな…』

   ゼルマルはそう言うと飛び去って行った。
イングベルトはテラに事情を説明する。

「…という訳でお主に吾輩の持っている知識なんかを授けようと思うのだがどうだ?」

「大賢者様の知識を僕に…
大変嬉しい事なのですが僕で大丈夫でしょうか?」

「お主ならなんとかなるだろう。
常に努力を怠らずに精進しているお主なら出来ると信じておるぞ」

「はい!ご期待に応えられるように頑張ります!」

   こうしてテラは大賢者の知識を授かる事になった。
しかしイングベルトは大魔王に自分が勝てないであろう事は隠してテラに伝えた為テラはイングベルトの死ぬ可能性については知らずに、ただイングベルトがしばらく帰って来れないからの事だと思っていた。
   こうしてイングベルトと一緒に入れる最後の時間が始まった。
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