一度目は勇者、二度目は魔王だった俺の、三度目の異世界転生

染井トリノ

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魔王時代編

7.弟子にしてください

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 吹き飛ばされた男が起き上がってくる。

「なんだてめぇは……」

 一人がエレナを睨みながら聞く。エレナは男の問いを無視して、倒れている俺へ手を差し伸べた。

「立てるかしら?」

「えっ、ああ……」

 俺は戸惑いながらもその手をとった。ぐいっと起こされ立ち上がる。無視された男は顔を真っ赤にして怒っていた。

「無視してんじゃねぇぞぉ!!」

 人間達は次々に起き上がっていく。武器を構え、野蛮な視線を彼女へ向けた。

「騒がしいわね」

 エレナが右手を前にかざした。彼女からあふれ出る強大な魔力を感じ取り、俺の全身が震えあがった。

「【闇魔法:バイオレットガンド】」

 展開された魔法陣から、紫色の魔力エネルギー弾が散弾のように放出される。魔力弾は人間達の防具を破壊し、皮膚と肉を抉って消える。一瞬声を上げた人間達だったが、すぐに静かになった。
 俺の全身はもう一度震え上がった。恐怖による震えではない。これは――

「大きな怪我はしていないわね」

 エレナが俺を見て言う。俺はこくりと頷いた。

「そう。自分で治せる?」

「治癒魔法なら使える」

「なら大丈夫ね」

 エレナは軽く微笑んた。
 エレナ・ローズブレイド、魔法学園の創設者にして魔王軍四天王の一人。出会ったばかりの彼女は、まだ名の知れた魔術師ではなかったが、実力は十二分に備わっていた。
 俺はエレナによって窮地を救われたのだ。彼女はこの頃、目的もなく一人で旅をしていたらしい。つまり偶然通りかかっただけだった。そのお陰で俺はこうして生きている。

「……」

 俺は変わり果てた村を歩いた。助かったのは俺だけで、他の仲間たちは殺されてしまった。誰一人として起き上がらない。俺は自分の無力さに腹を立てた。

「もう良かったの?」

 エレナの質問に、俺は頷いて答えた。

「近くの街まで送ってあげるわ。これからどうするかは、そこでゆっくり考えなさい」

「あの!」

 そう言って歩き出そうとしたエレナを、俺は言葉で引き止めた。そして――

「俺を弟子にしてほしい!」

 振り返った彼女に、俺は頭を下げてお願いした。
 本能が、直感が教えてくれる。エレナの元で学べば、必ず魔王になれると。

「俺はもっと強くなりたいんだ!」

「強く……ねぇ」

 エレナは頭を下げる俺をじっと見つめた。そしてこう問いかけてきた。

「あなたは何のために強くなりたいのかしら?」

「魔王になって、この世界を救うため」

 俺は頭をあげて返答した。エレナと俺の視線が重なる。互いに逸らすことなく、黙ったまま見つめ合う。数秒が経過する。俺の視線から覚悟を感じ取ったエレナが、先に目を瞑った。

「いいわ。弟子にしてあげる」

 こうして、俺はエレナの弟子になった。
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