一度目は勇者、二度目は魔王だった俺の、三度目の異世界転生

染井トリノ

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魔王時代編

17.ムウの冒険

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 尖った水晶が乱立する大地を、一匹の猫がてくてくと歩いている。猫は水晶の先端にぴょんと飛び乗って、周りの景色を眺めた。

「いないでありますなぁ」

 我輩はムウであります。我輩は今、主殿に命じられて、ある魔物を探しているのでありますよ。
 遡る事一日前、ベルフェオルはムウにおつかいを頼んだ。

「魔法原石、でありますか?」

「そうだ。大量に必要になるから集めてほしい」

 魔法原石とは、魔道具などの動力源になる魔法石の元である。
 ベルフェオルは魔界全域に巨大な結界を造る計画を立てていた。途方も無い計画だが、実現させる気マンマンだった。そのためには動力源となる魔法石が必要になる。それもかなり高純度な物でなくてはならない。

「北の大地に、魔法原石がたくさん生えてる土地がある。そこには全身が魔法原石で出来た特殊な魔物、クリスタルドラゴンが生息している」

「そのドラゴンを倒せば良いのでありますか?」

「ああ。クリスタルドラゴンの身体は、高純度の魔法原石で出来ている。かなりの大きさだし、一匹でも狩れれば十分だ。頼めるか?」

「もちろんでありますよ! 主殿の命、全霊をもって引き受けるであります!」

 ムウは意気揚々と出発した。そして到着したのが、水晶(魔法原石)が並び生えている大地である。見渡す限り一面水晶が生えている。これを持って帰れば十分のように思えるが、残念ながら生えている水晶は純度が足りない。
 ムウは水晶の上を跳びまわり、目的のドラゴンを探した。

「むっ……これは――」

 探索を続けていると、大きな大きな穴を見つけた。そっと中を覗き込むと、全身が透明な水晶で出来たドラゴンが丸まって眠っている。

「あれでありますな!」

 ムウは躊躇なく飛び込んだ。さっと着地して、ドラゴンの目の前に立つ。気配を察知したドラゴンが、ギロっと大きな目を開いた。

「恨みはないでありますが、主殿命に従い、お前を倒させてもらうでありますよ!」

 ドラゴンがむくっと起き上がり、巨大な翼を広げて威嚇する。大地が揺れるような雄叫びを上げて、ムウを睨みつけた。

「いくでありますよ!」

 ムウは一直線に駆け出した。駆けながら姿を白銀の鎧騎士へ変化させた。

「覚悟するであります!」

 ムウは右手に握った剣を振り上げた。彼が変身したのは、かつての主の姿。初代勇者ローランの力を再現したのだ。振り上げた剣を、大きく地面に叩きつけるように振り下ろす。
 たった一振りで、ドラゴンの首は地面に落ちた。

「さすが主殿でありますな!」

 倒したのは自分なのに、主を褒める律儀なムウであった。
 そうして大量の魔法原石を持ち帰った。ベルフェオルに渡した時、褒められながら撫でられて、ムウは幸せそうだったという。
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