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しおりを挟む鬱蒼とした森の中を俺達は黙々と出口に向かってひたすら歩く。
嫌な湿気を含んだ風が体に纏わり付いている。
(森の中で二人に会ったけど魔物は何処かに居るはず。それなのにどうやって此処まで来た?)
今周りを見渡して見ても静かな木々があるだけで魔物の気配は無い。居ないみたいだから偶々此処まで来れたのだろうか?昼間はまだ魔物は出ないのだろうか?思った俺は聞いてみる事にした。
「あのー魔物が居る森の中を二人だけでどうやって此処まで来たのですか?」
「それね。魔物が少なくなる昼間に来たのもあるけど、私達の知り合いの人が行商人でね。魔物避けの凄い魔道具を扱っていて買ったのよ。これが良く効くからこれが無いと此処には来れないわ」
「そうなんですね。トルシア国では普通に魔法のアイテムが手に入るんですね。じゃあ誰でも魔法を扱えるの?」
「そうよ。魔法は私達の生活に馴染んでいてそれ程珍しい物でもないわ。当たり前の様に浸透しているの」
凄い。ガルド国では魔法は聖女が扱える物でそれで国を守らせていると聞いた。秘匿的過ぎて国民にはお目にかかれ無い様だ。それが国が違ったら認識が違う。だったらこの国には聖女は居ないんだろうか?
「じゃあトルシア国には聖女様は居ないんですか?」
「聖女様?ああ、ガルド国に居る国を守る聖なる乙女の事かしら?」
聖なる乙女。普通そうだよなぁ。だけど今の聖女様は男なんです。何が悲しくてそうなった...。
二人に見せてあげたい。俺の弟が聖女様なんだよって。
「そうです。聖なる乙女です。そうなんですけどガルド国の今の聖女様は男で俺の弟です」
「えぇえ男で弟?本当なのかい?...男で...。それは凄い事だ。じゃあ君は聖女様のお兄様だね。そんな立場の人が此処に?お兄様なのにどうして侍従に?」
ヨハネスさんがびっくりしてツッコんでいる。それはそうだ。俺もそっち側だったら多分聞いていた。
「えっと私は弟のお願いで弟お付きの侍従をしていました。まだ作法を身に付けている途中でまだ見習いみたいなものです」
と俺は苦笑いをする。
「えっお兄様なのにお付き?意味分からないわ...。兄弟なんでしょう?お付きなんて酷いわ!!聞いた事無いわよ!!」
とヘレンさんが怒っている。これが普通の反応だよなぁ。あの扱いはやっぱりおかしいよ。
「私と弟は小さい頃から仲が悪くてお互い生理的に無理なんです。鉢合わせたら嫌味言ったり詰ったり。家族は自分達によく振り回されていました。なので弟の今回の仕打ちも仕方ないと思っています。初対面で重い話しして済みません。話すべきでは無かったです」
初対面でこんな話はキツいよ。夫婦の人の良さにつけ込んで甘えてる。俺も最低だなぁ。
「まぁ、もう終わった事は仕方ないわ。これからどうするか考えた方が良いわよ。忘れてトルシア国で心機一転頑張ろう!」
と前向きに励ましてくれた。ヨハネスさんも頷いている。重い話聞かされたのに二人とも優しいなぁ。
湿った空気感を払拭する様に
「侍従の話しもびっくりしたけどトルシア国は魔法がね発達しているから魔法で国を守れるんだ。だから聖女様も居ないし、魔物にも怯え無くて良いんだよ。魔術師が居てね。守ったり戦ったりしているんだ」
とヨハネスさんは魔法や聖女について言ってくれた。
それから歩き続けて幾つもの木々や小川を抜け森の出口が見えて来た。明るい出口の光が見える。
魔物には会わずに抜けられてホッと息を吐いた。
森の出口を抜けた時、人の手が加えられて整備されている道が見えた。ガルド国からトルシア国に入ったのだ。これからこの国で生きていくのだ。大丈夫やっていける。不安と緊張を抱えて俺は目の前を見据えた。
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