俺の居場所を探して

夜野

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 莉央を本気で怒らせてしまった。王子からの流れ弾を食らったけどちょっかいを止められなかった自分が悪い。今自分が置かれている状況を見てこれからの事を考える。あれから莉央は城の兵士に命じて俺を捕まえ城から追い出し、国外にある森の奥深くに俺を放置した。
莉央は連れて行かれる俺を見て嘲笑ったのだ。王子から邪魔者を離せると安心した。そしてせいぜい抗って生きてみせろと言っていた。煽る様に莉央は将来俺が莉央にどれ位抵抗出来るのか楽しみにしているみたいだった。
自力で脱出は無理だったけど最後は城から出られたので、離れる事には成功した。最悪の形でだけど。


 これからどうやって生きて行こう。見知らぬ土地に一人放り出されて心細い。森は鬱蒼としていて視界も悪い。魔物が今にも飛び出して来たら俺どう切り抜けたら良いの?不安ばかりが募っていき、ため息を吐いて思考を巡らせていた。
その時後ろでパキッと何かを踏む音がする。まさかと思い振り向けば木々の中男女が目を見開きあり得ない物を見たかの様に此処を見て固まっていた。まさかこんな奥深い森の中で人に出くわすとは思ってみなかったかもしれない。あっちから見たら魔物が居る所で人が無防備に居る事があり得ない事だ。


年齢は見た感じ五十代位優しそうな雰囲気の人の良さそうな男女だった。俺は置いて行かれるのが怖くて、通じるか分からないけど勇気を出して話かけてみた。



「助けてください!!」


発した言葉にビクッとした二人は一瞬固まってお互い顔を見合わせ静かな空気が流れ緊張感が高まる。ドクドクと嫌な汗が流れどっちも出方を待っていた。駄目だ通じなかったのか?今度はどうしようと思った時。



「何故こんな所に居るのですか?」



 男の人が声を掛けた。良かった同じ言葉だ。通じるみたい。それだけでもう俺は泣きそう。



「ガルド国から追い出されたんです。ここに」



はっきり言ってしまった。これだけで国外追放されたのがバレる。もし俺に関わればこの人達もただじゃ済まないと思う。危険な事に巻き込んでしまう。だけど何かしら動かないと俺自身もこの先生き残れるか。生き残る力が俺には無い。情け無いけど縋らないと駄目だった。悔しい。



「ガルド国から?と言う事は追放されたんですか?」
「そうです」


 今度は女性が尋ねる。バレてしまった物は誤魔化せない。だから森から絶対出なければ!!



「無理を承知でお願いします。どうか森の外まで連れて行ってくれませんか?」



訝しげな顔で見ていたのをふっと表情を和らげる。そして優しそうな顔を見せた。



「良いわよ。此処に居たら危ないもの。一緒に森を抜けて私達の国へ行きましょう」



 拒否されるのを覚悟していた俺はそう言われるとは思わなかったので目を見開き、泣きそうになった。



「本当ですか。こんな見ず知らずの俺なのに。危ない事に巻き込んでしまうかも知れません。それなのにありがとうございます」


深々と頭を下げて何度も何度もお礼を言う。体裁なんて構っていられない。強情を張っても損をするだけなので素直に甘える事にした。



「ふふっ。素直な方なのね。こんな所に連れて来られたのは事情が有るみたいだけど辛かったわね」



 目を細めて語りかける。それだけで人柄が分かる様だった。



「此処はガルド国の隣国トルシア国よ。私達は夫婦でトルシア国でお店を開いていて、森の中に食材を取りに来たのよ。私の名前はヘレン。私の隣に居るのが旦那のヨハネスよ。あなたの名前はなんて言うんですか?」
「僕の名前は小林響也です。ガルド国から来ました。国の王宮に居たんですが、そこで問題を起こしてしまいました。そして罰として此処に連れて来られました」
「まぁ王宮で?だったらあなたはそれなりの地位が有る方かしら?」
「いぇ、お恥ずかしながら侍従として働いていたのです」
「それじゃ貴い方のお側に居た人じゃない!」
「はぁ...まぁそうですね」


 
 実感は全然無いんだけど。莉央とあの王子だし。貴いかも知れないが不安しかないぞ。



「面白そうだからもっと色々聞きたいけど、暗くなる前に此処を抜けましょうか」



 ヘレンさんの言う通りだ。ただでさえ魔物が居る森なのに。何かあったら怖すぎる。
 俺はご厚意に甘え早々と森を抜ける事にした。




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