俺の居場所を探して

夜野

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10 王子と資料室で響也の独白

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 ガルド国で生きて行く為に王城の資料室で資料を調べていた時不意に声をかけられ声のした方へ視線を向けて見ると―――


ガルド国第一王子のアリューシャ殿下が本棚に凭れて俺に微笑んでいる。ただでさえお互いの立場から接点など無く、王族であるから気安く声なんて掛けられ無い。多忙な上にこうやって一緒にいる事で莉央や本来の婚約者に目を付けられたら大変な事になる。


婚約者―――以前王子と一緒に居る所を遠くから見た事が有る。王子と一緒に居ても見劣りする事無く、とても綺麗で知的そうなのに勝ち気そうにも見える女性だった。王子の手綱を引いてやって行ける素質を持っていそうにも見えた。莉央とは又違う方向性の美人の気がした。
王子のタイプは一癖有る人が好みなんだと思い自分にもそんな王子の色恋沙汰が降り掛かって来なかった事に安堵した。巻き込まれたらどんな事になるか分からない。自分は抵抗出来ない相手達で酷い事になるのは目に見えている。それが容易に想像出来てブルッと体を震わせた。

 
 そんな王子が俺の目の前に居る。城内だけどお供も付けず一人立っていた。まだ此処に来て日が浅い俺でさえ王子の城内の一人歩きは不安だ。けど、王子ならば資料の疑問も何か知っていて答えてくれるかも知れない。
王子を早く此処から離れさせないといけないのに、俺は自分の興味に勝てずたずねていた。


この国の同性婚の事についてだ。男は子供を産めないし、まだ大多数の人達が異性愛者だ。なので、日本では同性同士結婚は無理で、此処では魔法を使えば子供を産む事が可能だと言う。凄い話だ。当たり前だけど考えた事すら無かった。

 
 王子は俺に近づき手元の資料を覗き込む。暑かったのか詰め襟の部分を開けて首元をはだけさせていた。行儀が悪いのも構わず王子にしては珍しいと思う。首元と鎖骨がちらっと見えて肌の白さにキョドって目が泳いでしまう。そしてふわっと香る花の様な甘い匂い。これが王子の匂いなのかとふと思いドキドキして目のやり場を探していた。



俺を見て不思議に思ったのか王子は首を傾げた。


同性婚についても尋ねてみる。そんな俺に王子は目を瞬かせて面白い物を見つけたという風に笑っていた。今の体制になった理由をなんて事も無いと言う。なんて事無い訳無い。現代が同じ状況になったら嫌過ぎて絶えられ無い。相当この国の人達は追い詰められていたんだろうなと想像出来る。諸々考え込んでいるうちに王子が俺の顔を覗き込んでいる。気付かなかった。

 
 ハッとして目線を上げると碧い目と視線が合う。力強い目線に胸がドキドキする。どうしたんだ俺。
そしたら気になる人が居るのかいと意味が分からない事を聞かれてはぁ?と返してしまった。王子は友達か?そんな俺に王子は気にする風も無く俺が同性婚に興味が有ると思っているらしい。王子的には俺が同性婚をしたい風に見えているんだろうか?


距離が近い事で二人の間に変な空気感が出ている事に気付く。それくらいお互い近かった。王子は何考えているんだろう。この状況を誰かに見つかって誤解したらまずい。第三者から見たら、最初の顔合わせの時に見た王子と莉央の空気感に似ているかも。
俺は王子を無理やり離した。そうしたら変な言い訳を始める。俺がとばっちり食らっちゃうんだよ~。


俺に興味が出たらしく意地悪そうにくすくす笑い出した。この野郎~巫山戯んじゃね~!


そしたらなんて言ったかコイツはキスして見ても良いかと言う。興味を持ったんで味見してみたいと。うん。頭がおかしくなったんだな。冗談じゃない。


拒否しようと思って口を開いたら言い終わらないうちに本棚に背を押し付けられ顎を持ち上げられ王子の形の良い唇を押し当てられていた。 ふぇ?


 余りの早業に頭が追い付かない…。
 

 ふぅ、んん~ん



 ありえない状況にパニックになり固まっていると王子は色々唇の角度を変え俺の反応を見て楽しんでる様に見える。コイツ手慣れてやがる…。王子のくせに。
どんどんキスは深くなって無理やり俺の閉じている唇を舌でこじ開けやがった!!そして俺の舌を捕まえてお互いの舌を絡め合う。


資料室にキスの啜り上げる卑猥な音が響く。静か過ぎてハッキリ聞こえ俺は羞恥でどうにか成りそうだ。王子の手は俺の腰に回り、引き寄せぐっとお互いの胸と胸が密着する。


密着度と羞恥と激しさで酸欠になり頭がぼーっとして体がずり落ちそうになる。そんな俺に気付いたのか王子は漸く唇を離した。ぼーっとしている俺と濡れている唇を見て満足したのか、俺の唇の唾液を拭い極上の微笑みを見せた。


 やっと気が済んだのか。こんなキスしていたら体と気持ちが持たない。王子の相手する人も大変だな。俺は熱い息を吐き出し王子を睨み上げる。


一時の火遊びかも知れない。だがこんな事はもう止めて欲しい。たしなめるとまた何か言い訳を言う。ちょっと遊ぶつもりだったが俺の反応が可愛くて止まらなかったみたいだ。なんだそれ。


 可愛い?  己の目は節穴か?

しかし王子は同性相手でも抵抗無いんだな。経験値が高いのか?同性、異性問わずってか?王族がそれじゃあ大スキャンダルだぞ。もみ消すのか?それが日常なのか?だとしたら相当だな。この国は大丈夫なんだろうか?怪訝な俺を気にする事も無く俺の頬に軽くキスをして、ヒラヒラと手を振って足取り軽く出て行った。


 俺は床にヘタり込むと呆気に取られて出て行ったドアをずっと見ていた。
嵐の様だった。そしてある事に気付く。肝心な事が聞けていないのと、今起こった事を莉央にバレたらタダじゃあ済まないという事だった…。

 
 ふぁあ~最低~。 巫山戯んな~!!


誰も居ない静かな資料室に俺の心の叫びが響き渡った。
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