魔物パーツコレクター ~ツンデレで鈍感系の俺が魔物の力でフォーリンラブ~

のきび

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食べられません

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 ギルドに戻ると昨日の酔っぱらいがまた因縁をつけてきたので、アゴに一発パンチを入れて黙らせた。
 そいつの仲間は相変わらず我関せずだ、本当に仲間なのかも疑わしくなるレベルだ。

 清楚さんの所に行きアイテムボックスから採集品を納品して終了確認してもらった。

 だが俺がアイテムボックスを使うのを見て、驚きの表情を見せると待つように言い、階段を慌ただしく上っていった。
 しばらくすると上階から右目に眼帯をしているおっさんと一緒に降りてきた。おっさんは俺を一瞥すると「お前か虚空ボックスを使う奴は」と上から目線で聞いてきた。

「虚空ボックスがなにかは知りませんがずいぶん横柄な物言いですね」

「悪い悪い、こういう性格なんだ許せ。俺はここのギルドマスターをやっているロゼスと言うものだ」
 ギルマスが直々になんの用かと思えば、なんでも明日の護衛クエストで行きと帰りに荷物を運んで欲しいと言うことなのだそうだ。
 そして出来れば今後も輸送任務を引き受けて欲しいのだとか。

「もちろん荷馬車でも運ぶのだが、お前の虚空ボックスで運ぶ物資を増やせれば物流も安定するしな」

 ロゼスの話によるとギルドはこの町の物流を一手に担になっていて、この街に暮らす人の生活を支えている。ほぼ毎日護衛クエストがあるそのはその為だと言う。

 仕事が途切れずにあると言うのはいいことだが永遠に運び屋をやるつもりはない。
 半永久的に仕事があるのはメリットだが、今の俺にはデメリットでしかない。
 一つの街に長居をする気はないのだ定着するような依頼は断るに限る。

 それに今回はビキナーを抜けるためのクエストだ。他の初心者はこんなことをしなくても初心者クエストをクリアできるわけだし受ける意味は無いな。

「お断りさせていただきます」

「うむ、そうだな。報酬を良い忘れていた、ギルマス権限でB級に昇格させよう」
 最初に提示しないと言うのはあくどい、リンゴ屋のおっさんが言ってたのはこういうことか。
 しかしB級か、飛び級は魅力的だがそれだけでは引き受ける気にはならない。100億円持ってるやつに1万円をあげても喜ばないのと一緒だ、B級にはそれほどの魅力しかない。

「B級ならすぐになれるから取引材料にはならない」
 あくまでも主導権は俺にある、余程魅力的な提案をしない限り俺は首を縦には振らない。

「言うじゃないか。うむ、良いだろう。毎週1回運搬に従事してくれればB級資格と運搬費用は10kgにつき500Gゴルスを渡そう」

 500Gゴルスか正直お金には困っていないが依頼を受けないのも変だしな。
 ただこの運搬作業は往復で三日かかるのだ。
 そうなるとドミニティに行く回数も減る。

 それはちょっと困る。

「運送代は10㎏につき1000ゴルスで運送のやり方は俺の自由にやらせてもらうと言う条件ならやってやってもいい」

「1000ゴルスか持ち運べる虚空ボックスの量にもよるが、どのくらい運べる?」
 多分いくらでも入るが、あまり大量に運べることを教えてしまうとこれを生業にしている奴の仕事を奪いかねないので少なめに伝えた。
「馬車10台分は積める」
「そ、そんなにか!?」
 あ、多すぎたか、無限から馬車10台分はかなり少なくなってると思うのだが。

「普通の虚空ボックスはどのくらい積めるんです?」
「持てても馬車一台だ」
 その程度か、10倍も運べたら驚くよな。

「それと運送は自由にやらせてもらうということだが運送手段はあるのか?」
 その問いに転移魔法があるので一度あちらの町でマーキングしたら今後は一人で運搬すると言うことを了承してもらった。
 時間短縮できるのに使わないと言う選択肢はないからな。

「それとですね」

「まだあるのか?」
 ロゼスは辟易したように首をふる。
 むしろこっちが本題だ。

「魔窟ドミニティへの入場許可をもらいたいのですが」

「帰ってくればB級だそんなものなくても入れるぞ」

「今から1時間程潜りたいのです」
 ロゼスは顎に手をあて暫し考えたあと渋々許可書をだした。
 運搬専門として使いたいのに怪我をされたらたまらない、だが断れば俺の心象を悪くするとでも思ったのだろう、渋々ながらも許可を出してくれた。

 俺は許可書をもらい明日の約束をしてギルドを出た。

 明日、朝日が昇ったら出発するそうなので、それまでにギルド前に集合してくれと言われた。今回はこちらからだす余剰物資はないので俺の役目は護衛だけだ。

「おい、ケバ子時間が無い抱えるぞ」
 俺はケバ子を小脇に抱え屋根から屋根へ飛び宿屋に帰りついた。
 ケバ子を下ろし部屋に居ろと命令をするとそのまま踵を返し屋台に向かった。

 りんご屋のあった場所に行くと近くに串に刺した肉を売っている店があった。

 俺は串を10本程買いアイテムボックスに入れると猛ダッシュで門を抜け魔窟ドミニティに向かった。

 マーキングしておけば良かったと後悔しても、出たときはまだ魔法使えなかったし仕方ないか。

 俺の脚力で全開で走れば10分もかからない。

 途中魔物がが出たが、一瞬で蹴り飛ばし粉砕した。

 俺の通行を邪魔する奴は何人たりとも許さん。

 ドミニティに着き守衛に許可書を見せると快くいれてくれた。
 ただ俺が軽装なのを見て無理はするなよと声をかけ心配そうにする。

 最初に入ったときの守衛とはえらい違いだ。

 だが目的地は最下層だから魔物は出ない、無理も糞もないのだ。

 最下層に着きドアを開けるとエミリが独り中央で座っていた。
 側に立っても俺に全く気が付いていない。

「おいエミリ。無視するな」

 正面に立ち顔を抑えて俺を見させるが、目が虚ろで光が無い。どういうことだ。

 しばらくそのまま声をかけていると、エミリは一瞬ハッとすると目に輝きが戻った。

「どどどどうしたのよ急に! 来るなら来るって言ってよねレディには身支度も必要なのよ」

 そう言うと俺の手を払いのけ髪を手櫛で整え直す。

「私を殺す方法分かったの?」

「いや、三日ほど来れなくなるから挨拶にでも思って」

「会いに来てくれたんだ?」

 は? 

 殺す相手の様子をうかがいに来ただけなんだが?

 バカなことをいう娘だと思いながら、俺は屋台の串焼きを差し出す。こんな所にいたら串焼きなんて食べられないだろうから最後の晩餐パート1だ。

「いや、この肉美味しくてさお裾分けにと思ってね」

「……私、食事できないよ」

「……」
 そうか、そうだよな。完全にしくじった。1万年もこんな場所に閉じ込められて不死なのだ食事すらいらないことに普通考えればわかったはずだ。

「でも、ありがとう。すごく嬉しい」

 そう言って俺から串焼きを奪うとムシャムシャと食べ出した。
 だが食べたものは体からボトボトと床に落ちていった。

「美味しかったよ」

 エミリはそう言うと涙を流した。
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