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46話 ばかなやつ
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赤龍山より西に数キロ。
大陸の極西へと至る道は夥しい数の魔物により埋め尽くされ、まるで百鬼夜行のような様相となっていた。
ゴブリン、オーク、ケンタウロス。
和也が名を知らない魔物や姿すら見た事の無い魔物も存在している。
それらを先導するのはたった1人の人間。
「良かった、良かった」
「魔王様は戦争を暫くしないと思っていたが、その気になったんだなあ」
「殺したり殺されたりしたいよ、里の皆も呼ばなくてわ」
列の中からは戦争を望む声が数多く漏れ出る。
早く戦いたい、早く殺したいし、その課程で死ぬのも捨て難い。
……なんて馬鹿らしい。
人類には到底理解出来ない魔物ならではの破綻した思考だった。
人類には理解出来ない、それは魔王と呼ばれる青年にも共通している。
魔王は命のやり取り、戦争を楽しいと思った事など一度もない。
強力な魔物に凄まれれば心臓が縮みあがるし、かの勇者と相対した時なんて恐怖で叫びそうになるのを堪えて戦った。
そんな人間らしい考えを持っていながらも魔王は魔物の為に戦争を用意した。
そして今回も用意する、沢山人が、魔物が死ぬだろう。
彼自身死ぬかもしれない。
もう誤魔化せずに今度こそ本当に殺されるかもしれない。
だけれど、彼は魔物の為に働き続ける。
そういう風に育てられた。
魔物が喉を乾かせば水を汲み。
腹を空かせば今朝動かなくなった兄弟を口に放り込む。
主人の部屋が汚れれば掃除をする。
その汚れがかつて兄弟であった者の血肉であろうと関係ない。
人類は魔物の奴隷だった。
魔王もその例外に漏れず、魔物の為に誠心誠意働き続ける。
魔王という名はただの奴隷の役職に過ぎない。
力が強いなら荷物運び係。
足が早いなら伝令係。
命や活力を司る奇跡の力を持っていたから、魔王という役職に就いた。
魔物は慕い、本当の王の様に従ってくれるが……魔王は魔物を臣下として見た事なんて1度も無い。
魔王は、青年は只管に尽くす。
細胞の奥底にまで刻み込まれた恐怖と義務感から主人である魔物に尽くす。
その為に、こんなに頑張った。
頑張ったのに誰も褒めてくれないんだ。
「……馬鹿らしい」
異様の熱気の中、冷めた声が静かに響く。
「なぁんだこれ。遠目には和也に見えたから着いてきたけど……」
悪魔王。
夜風が寒いと言うのにスポーティな格好のまま、彼女は百鬼夜行から少し離れて歩いていく。
興味が湧いて、列の先頭に行けば見知らぬ男が先導しているのが見えた。
魔物が他者を見分ける際には魔力を基準とする、その基準で言うのならその男は和也なのだが……
「邪なる瞳の王。お前も加わってくれるならとても心強いよ」
「……ふーん」
彼は和也では無かった。
魔力は全く同じ、顔も良く似ている。
だが、彼は和也では無い。
「僕は和也の仲間だよ。君じゃない」
「あぁ、知ってる」
魔王は手を差し伸べた。
柔らかい笑みを浮かべて、優しく語りかける。
「君を和也に惚れさせたのは俺だ」
「はぁ? 」
「悪魔王の力が帝国との戦争には必要だったんだ。だから、記憶と感情を操作される度に俺から君に干渉した。地下牢獄の時から、最初から」
「……」
「生まれて初めての恋をした気持ちはどうだった? 毎日が煌めいて見えただろう」
和也には絶対に出来ない世を憎む目。
「生まれて初めての良心はどうだった? 罪悪感でどうしようも無くなっただろう」
口角を上げて、目を細めて。
笑っているようで、全く笑ってはいない。
「全部俺が仕組んだ。愛も良心もお前には無いものだ……でも、俺ならお前に与えてやれる。こっちに来い、あれは偽物の恋だったんだよ、拘る理由は無いんだ」
お前の望む物、全てを与えよう。
だなんて、言われたら。
「……ぷっ」
おかしくって笑っちゃう。
悪魔王は魔王を指差して馬鹿笑いした。
のけぞって、唾と共に笑い声を撒き散らす。
「あはははは! 彼にそっくりな顔で、そんな寒いこと言うなよ! 笑っちゃって、さぁ! く、くく」
魔王は少し困惑するが、不愉快そうにはせずに言葉を続けようとして。
悪魔王はそれを遮る。
「偽物だとかどうでもいいね。それ、恋敵がドラゴンってのより大事かい? それに恋は障害がある方が燃えるだろう」
「……? 」
真っ向から真実を突き付けられ、その上でこんな結論で誘いを断られるのは全くの予想外であった。
「僕に恋愛感情を与えてくれた事は感謝するよ、良心もね。それだけだよ」
「ならどうするんだ、俺の邪魔をするか」
魔王は柔らかな表情を一変させ、ドス黒い殺気を撒き散らした。
呼応して何百もの魔物も殺気立つ。
「今の僕じゃ殺されちゃうからさ。今日の所は帰るよ……やめときな、君だって本調子じゃないだろう」
魔王の威圧感を受けても平然としたまま、悪魔王は進行方向を変えて帰り始めた。
「あ、そうだ」
「味方にならない奴の話なんて聞く意味はない」
素っ気ない魔王を無視して、麗らかな日和は言葉を続ける。
「まあまあ。安心しなよって言いたかったんだ。和也は君の元に来るよ、君の事もきっと助けてくれる」
ちょっとだけ待っておきな。
と、言いたい事を一方的に言い残して麗らかな日和は黒い翼を出現させた。
何度か羽ばたいてから飛翔する。
「……」
東の夜空に消えていく麗らかな日和を憎々しげな目で少しの間追って、また魔王は歩き始める。
後ろには沢山の魔物達。
だけれど、誰も魔王の横には来ようとしなかった。
一方その頃。
「いいか、よく聞くんだ月を見る者。もうその下りは終わってだな」
月を見る者は大きな掌を色とりどりの衣服でいっぱいにして、自慢げに和也に差し出していた。
和也に屋敷から追い出されから直ぐに、態々住処である赤龍山へと服を取りに飛んで戻ったらしい。
「どうだみな私が集めた宝物だぞこれなんか金色の糸で編まれているこれは宝石が何十もついているんだ大事な物だがカズヤなら着てもいいぞ」
「真面目な雰囲気になってるの! そういうのはまた後でね! 」
あげる、いらないの押し問答を暫く繰り返す。
お互いに少し疲れ始めた所で、タイミング良く空から麗らかな日和が降り立った。
「ただいま! やあ和也、大変な事になっちゃったね! 」
黒い羽根を畳み、元気僕っ子のキャラを取り繕う。
まだ羽での飛行には慣れていないのか、肩を揉んで凝りを解した。
「おかえり。なぁ、今俺どうなってる? 」
「今日もかっこいいよ」
「お、おん……えーと、ほらそのそうじゃなくて」
真っ直ぐに好意を浴びせられて照れた和也が視線を逸らした。
その様子を楽しそうに観察して、意地悪を止めた麗らかな日和が和也の額に触れる。
「君のお陰で記憶や感情だけじゃなくて魂にもある程度干渉出来るようになったからね、どれどれ……」
黄金の瞳を怪しく輝かせ、額に触れたまま自分より少し高い背の和也に視線を合わせる。
ちなみに、視線を合わせる意味は無い。
「……うん。君の中には君しかいない」
「それは、神様も、あの魔力も? 」
「うん。君の世界に居た死を司る神も、魔王の魔力も、何も無い……あ」
「え、なになに」
「なんだろうこれ……君の魂しかないのは確かだ、でも……複数に重なって揺らめいている」
麗らかな日和にのみ見る事の出来る魂は、何重にも重なり合って複雑に揺らめいていた。
全て和也の物に違いないが、複数存在するのは有り得ない。
「それは……多分残機だな。普段から神様がもしもの為にって用意してくれていた奴だ……神様が奪われたならそれも残ってないはずなのに」
「へぇ、なるほど。つまり、君は今制限付きの不死身って訳だ……数は、50。君は今なら50回死ねるという事になる」
「……起き土産か、餞別のつもりなのかな。あの捻くれ者め」
胸に手を当てると、鼓動は1つ。
今の和也には魂や死を感じ取る力は残滓程度にしが残っていないが、微かに懐かしい気配を察する事が出来る。
「大事に使わないとね。みんな、それじゃあ今後の事を話そうと思う……」
大陸の極西へと至る道は夥しい数の魔物により埋め尽くされ、まるで百鬼夜行のような様相となっていた。
ゴブリン、オーク、ケンタウロス。
和也が名を知らない魔物や姿すら見た事の無い魔物も存在している。
それらを先導するのはたった1人の人間。
「良かった、良かった」
「魔王様は戦争を暫くしないと思っていたが、その気になったんだなあ」
「殺したり殺されたりしたいよ、里の皆も呼ばなくてわ」
列の中からは戦争を望む声が数多く漏れ出る。
早く戦いたい、早く殺したいし、その課程で死ぬのも捨て難い。
……なんて馬鹿らしい。
人類には到底理解出来ない魔物ならではの破綻した思考だった。
人類には理解出来ない、それは魔王と呼ばれる青年にも共通している。
魔王は命のやり取り、戦争を楽しいと思った事など一度もない。
強力な魔物に凄まれれば心臓が縮みあがるし、かの勇者と相対した時なんて恐怖で叫びそうになるのを堪えて戦った。
そんな人間らしい考えを持っていながらも魔王は魔物の為に戦争を用意した。
そして今回も用意する、沢山人が、魔物が死ぬだろう。
彼自身死ぬかもしれない。
もう誤魔化せずに今度こそ本当に殺されるかもしれない。
だけれど、彼は魔物の為に働き続ける。
そういう風に育てられた。
魔物が喉を乾かせば水を汲み。
腹を空かせば今朝動かなくなった兄弟を口に放り込む。
主人の部屋が汚れれば掃除をする。
その汚れがかつて兄弟であった者の血肉であろうと関係ない。
人類は魔物の奴隷だった。
魔王もその例外に漏れず、魔物の為に誠心誠意働き続ける。
魔王という名はただの奴隷の役職に過ぎない。
力が強いなら荷物運び係。
足が早いなら伝令係。
命や活力を司る奇跡の力を持っていたから、魔王という役職に就いた。
魔物は慕い、本当の王の様に従ってくれるが……魔王は魔物を臣下として見た事なんて1度も無い。
魔王は、青年は只管に尽くす。
細胞の奥底にまで刻み込まれた恐怖と義務感から主人である魔物に尽くす。
その為に、こんなに頑張った。
頑張ったのに誰も褒めてくれないんだ。
「……馬鹿らしい」
異様の熱気の中、冷めた声が静かに響く。
「なぁんだこれ。遠目には和也に見えたから着いてきたけど……」
悪魔王。
夜風が寒いと言うのにスポーティな格好のまま、彼女は百鬼夜行から少し離れて歩いていく。
興味が湧いて、列の先頭に行けば見知らぬ男が先導しているのが見えた。
魔物が他者を見分ける際には魔力を基準とする、その基準で言うのならその男は和也なのだが……
「邪なる瞳の王。お前も加わってくれるならとても心強いよ」
「……ふーん」
彼は和也では無かった。
魔力は全く同じ、顔も良く似ている。
だが、彼は和也では無い。
「僕は和也の仲間だよ。君じゃない」
「あぁ、知ってる」
魔王は手を差し伸べた。
柔らかい笑みを浮かべて、優しく語りかける。
「君を和也に惚れさせたのは俺だ」
「はぁ? 」
「悪魔王の力が帝国との戦争には必要だったんだ。だから、記憶と感情を操作される度に俺から君に干渉した。地下牢獄の時から、最初から」
「……」
「生まれて初めての恋をした気持ちはどうだった? 毎日が煌めいて見えただろう」
和也には絶対に出来ない世を憎む目。
「生まれて初めての良心はどうだった? 罪悪感でどうしようも無くなっただろう」
口角を上げて、目を細めて。
笑っているようで、全く笑ってはいない。
「全部俺が仕組んだ。愛も良心もお前には無いものだ……でも、俺ならお前に与えてやれる。こっちに来い、あれは偽物の恋だったんだよ、拘る理由は無いんだ」
お前の望む物、全てを与えよう。
だなんて、言われたら。
「……ぷっ」
おかしくって笑っちゃう。
悪魔王は魔王を指差して馬鹿笑いした。
のけぞって、唾と共に笑い声を撒き散らす。
「あはははは! 彼にそっくりな顔で、そんな寒いこと言うなよ! 笑っちゃって、さぁ! く、くく」
魔王は少し困惑するが、不愉快そうにはせずに言葉を続けようとして。
悪魔王はそれを遮る。
「偽物だとかどうでもいいね。それ、恋敵がドラゴンってのより大事かい? それに恋は障害がある方が燃えるだろう」
「……? 」
真っ向から真実を突き付けられ、その上でこんな結論で誘いを断られるのは全くの予想外であった。
「僕に恋愛感情を与えてくれた事は感謝するよ、良心もね。それだけだよ」
「ならどうするんだ、俺の邪魔をするか」
魔王は柔らかな表情を一変させ、ドス黒い殺気を撒き散らした。
呼応して何百もの魔物も殺気立つ。
「今の僕じゃ殺されちゃうからさ。今日の所は帰るよ……やめときな、君だって本調子じゃないだろう」
魔王の威圧感を受けても平然としたまま、悪魔王は進行方向を変えて帰り始めた。
「あ、そうだ」
「味方にならない奴の話なんて聞く意味はない」
素っ気ない魔王を無視して、麗らかな日和は言葉を続ける。
「まあまあ。安心しなよって言いたかったんだ。和也は君の元に来るよ、君の事もきっと助けてくれる」
ちょっとだけ待っておきな。
と、言いたい事を一方的に言い残して麗らかな日和は黒い翼を出現させた。
何度か羽ばたいてから飛翔する。
「……」
東の夜空に消えていく麗らかな日和を憎々しげな目で少しの間追って、また魔王は歩き始める。
後ろには沢山の魔物達。
だけれど、誰も魔王の横には来ようとしなかった。
一方その頃。
「いいか、よく聞くんだ月を見る者。もうその下りは終わってだな」
月を見る者は大きな掌を色とりどりの衣服でいっぱいにして、自慢げに和也に差し出していた。
和也に屋敷から追い出されから直ぐに、態々住処である赤龍山へと服を取りに飛んで戻ったらしい。
「どうだみな私が集めた宝物だぞこれなんか金色の糸で編まれているこれは宝石が何十もついているんだ大事な物だがカズヤなら着てもいいぞ」
「真面目な雰囲気になってるの! そういうのはまた後でね! 」
あげる、いらないの押し問答を暫く繰り返す。
お互いに少し疲れ始めた所で、タイミング良く空から麗らかな日和が降り立った。
「ただいま! やあ和也、大変な事になっちゃったね! 」
黒い羽根を畳み、元気僕っ子のキャラを取り繕う。
まだ羽での飛行には慣れていないのか、肩を揉んで凝りを解した。
「おかえり。なぁ、今俺どうなってる? 」
「今日もかっこいいよ」
「お、おん……えーと、ほらそのそうじゃなくて」
真っ直ぐに好意を浴びせられて照れた和也が視線を逸らした。
その様子を楽しそうに観察して、意地悪を止めた麗らかな日和が和也の額に触れる。
「君のお陰で記憶や感情だけじゃなくて魂にもある程度干渉出来るようになったからね、どれどれ……」
黄金の瞳を怪しく輝かせ、額に触れたまま自分より少し高い背の和也に視線を合わせる。
ちなみに、視線を合わせる意味は無い。
「……うん。君の中には君しかいない」
「それは、神様も、あの魔力も? 」
「うん。君の世界に居た死を司る神も、魔王の魔力も、何も無い……あ」
「え、なになに」
「なんだろうこれ……君の魂しかないのは確かだ、でも……複数に重なって揺らめいている」
麗らかな日和にのみ見る事の出来る魂は、何重にも重なり合って複雑に揺らめいていた。
全て和也の物に違いないが、複数存在するのは有り得ない。
「それは……多分残機だな。普段から神様がもしもの為にって用意してくれていた奴だ……神様が奪われたならそれも残ってないはずなのに」
「へぇ、なるほど。つまり、君は今制限付きの不死身って訳だ……数は、50。君は今なら50回死ねるという事になる」
「……起き土産か、餞別のつもりなのかな。あの捻くれ者め」
胸に手を当てると、鼓動は1つ。
今の和也には魂や死を感じ取る力は残滓程度にしが残っていないが、微かに懐かしい気配を察する事が出来る。
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