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73話 月を見る
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時は巡る。
人々や魔物達の予想通り、魔物の国を作り道徳を教え込む等という馬鹿げた計画は、当然のように上手くいく事は無かった。
数え切れない程の問題が発生し、その全てを魔王と和也は力で解決してきた。
力で問題を解決すれば、当然力による反発が起こる。
何度も何度も、体制に逆らう魔物達を魔王と和也は圧し続けた。
同時に、少しずつだが彼らに賛同する魔物も現れ始める。
最初は余りに強大な力を畏怖し、次第に共感を示し……彼らと共に魔物達の国を作ろうと志を同じくしていった。
最初はケンタウロス族、元々人類と交流のある種族だったが故に他の魔物よりも考えが柔軟であった。
誇り高い戦士でもあったが、新族長である春の息吹を筆頭に少しずつ、本当に少しずつ意識を改革していく。
次にゴブリン、オーク、和也と関わりを持っていた種族らが仲間に加わっていき。
何度も裏切りや反乱が発生して、その度に何かを失い、あるいは得て。
失う事が悲しい事だと学び。
長い長い時間が流れる。
和也が魔王に、異世界へと引き摺り込まれてから100年。
魔物達の初めての学校が出来てから50年、退学者や留年者が相次ぎ、ようやく初めての卒業式を執り行ってから30年。
人類歴元年。
旧帝国歴にして、140年。
古くは安全線、と呼ばれた大陸を分割する線の中央。
赤龍山の麓、副都フジにて。
100年振りの、人類と魔物の外交が行われた。
「初めまして。この度、帝国より魔物達との外交を任されたエルドライドと申します」
少し地味な顔をした爽やかな青年が握手を求め、手を差し伸べる。
「良く、来た。帝国の者、見た事があるぞ。何年も前、エルヴィンが、残した血か」
今となっては数少ない世界最強種ドラゴン、その筆頭である月を見る者が笑顔でそれに応じた。
ナイフのような爪を収納し、鱗も身体の一部にしか現れておらず一目では魔物と判別付かない者もいるかもしれない。
ただ、焔のように赤い髪と満月の様に淡く輝く瞳は人外である事を示していた。
「やっぱり僕をご存知でしたか。月を見る者様、聞いていた話よりずっと人類言語がお上手だ」
「言葉の節目に、息継ぎをすると、聞き取りやすいと、夫に聞いた。まだまだ、勉強中だ、今は文字を、学んでいる」
「貴方のような強く、そして美しい方が筆頭となり融和に励んで下さるからこそ、我らの会談も予定通り実現出来ました。本当に感謝しています」
「相変わらず、あいつの血は、口が良く回る」
ひとしきり思い出話をした後に、2人は席に着く。
魔物の国お馴染みとなった、ゴブリンの運ぶ軽食を口にしながら今後の事を話し合った。
「魔物の国はどうなりましたか? ある程度情報は入ってきますが、やはり限られていまして」
「当初の目標、全種族の支配は、今、進捗が5%、と、言った所だ」
「……それは」
聞きにくい事を聞いてしまった。
気まずそうにエルドライドは視線を逸らすが、対照的に月を見る者は軽快に笑う。
「元々不可能だった。だが、進捗がある、充分だ。まだまだ時間がかかるが、最後まで付き合う」
「そうですか……では、まだ本格的な交流は難しそうですね」
「留学、や、貿易、は難しい。私の鱗なら、何度か贈ったろう、あの程度なら……」
「なるほど……では、当初の建国宣言通り、国交は見送り、次は100年後となりますか」
この会談は魔物達の現状を知り、交流が可能かどうかを判断する為の物だった。
しかし、まだまだ魔物の国は激動の中にあり、落ち着いた交流は未だ叶いそうにない。
「なかなか、上手くはいかないものだ。夫は、あいつらを、手のかかる子どもと言ったが、その通りだ」
「しかし成果は出ている、そうですよね」
「うむ。100年後は、もう少し良い報告が出来る様に、努力しよう」
「100年後と言うと私の曾孫、もっと先の世代でしょうか? 想像も出来ません」
「我らの事は、置いておいて、帝国も大変だと聞いている」
エルドライドは冷や汗を零した。
聞かれたくない事だったらしいが、話題にくらい挙がるのは仕方ない、何せこちらもビッグニュースだ。
「……ここ数十年で帝国の権威は衰える一方です。貴方の知る帝国よりも、今の帝国の国土は3分の1程になりましたよ」
最後の帝国十二勇士。
アークライト・シーザー辺境伯の加齢による死を最後に、宝具の適応者は現れる事が無くなった。
役目を終えたとばかりに、今も封印柱の中で眠り続けている。
魔物の脅威が仮初とは言え消え失せたのを良い事に、諸国は挙って帝国を攻撃し始めた。
唯一の超大国であった帝国は徐々に離反され、国土を切り離され、今や近隣国の軍事力に怯える日々を送っている。
「常に栄え続ける、とはいかない、ものだ。まぁ、どうしても困れば、あいつを頼れば良い、帝国にはまだまだ返し切れない、借りがあるはずだろう」
「……あぁ、麗らかな日和ですか」
悪魔の王、麗らかな日和。
今や似非元気僕っ娘歴100年の大ベテラン、彼女の本質を知る者は少ない。
彼女は和也の言葉を忠実に守り、この100年、人類の為に尽くし続けてきた。
人類救済委員会。
通称、和也の会……とかいうクソダサ組織を和也の死後立ち上げ、少ない有志と共に大陸を駆け回っている。
その活動内容は、魔物の影響や人類同士の戦争で被害を被った人々への支援が八割。
残りは人魔を救った大英雄? 和也の偉業を伝える事。
カズヤ教だなんて揶揄されているが、麗らかな日和自身今や聖女すら呼ばれ始めている為、着実に信者を増やしている。
口癖はあと〇〇〇年……らしい。
誰かの為に、という行動は彼女にとって未だ苦痛の様だ。
「以前お会いした事がありましたが、僕が彼女の本質を知ってると分かるや否や酷い態度で……」
「あいつは、夫の言う事以外、聞かない奴だった。夫の死後、なんやかんや、理由をつけて投げ出すと思ったが、律儀な奴だ」
「ええ全く……そういえば、最近お話を聞きませんが魔王陛下は? 」
「魔導王、だ。人間だから、改名に意味は無いのに、馬鹿なヤツ、最近改めた。あいつは、毎日頑張っている」
頑張っている、なんて一言で到底表せる業務内容では無いのだが。
不死である、超越者である、と言う理由でこの世界の誰よりも働いている。
時間が足りない……とボヤき続け、書類作業の為に時空を引き伸ばす魔法をこっそり使っていた時はロリエルにしこたま怒られていた。
「まあ、アイツも律儀だ、全て終わるまで、投げ出す事は、無いだろう」
「魔物の方が人材に恵まれていらっしゃる……あ、お時間は大丈夫ですか? 」
「む、そうか、この小さな時計は、時間を指して鳴る事はないんだったな」
月を見る者の手首には可愛らしい腕時計が巻かれている。
和也が結婚記念日に、とわざわざあちらの世界から買って持って来た物だった。
大事に大事に扱っているが、元の雑な性格もあり流石に傷が目立つ。
「すまない、もう出ようと思う。エルドライド、今日はありがとう、曾孫か、その子孫によろしくと、言っておいてくれ」
「ええ、必ず。こちらのゴタゴタも落ち着かせてお待ちしています」
「それでは、100年後、な」
例えどれだけ忙しくても、月を見る者は日が沈む時間には自分の巣に帰る事にしていた。
生意気な魔物をこらしめる時も、頼まれ学校で教鞭を振るう時も、気ままに世界一周に出かけた時も。
必ず、日が沈むより早く巣に帰る。
赤龍山の頂上。
溢れんばかりの金銀財宝は1つ残らず誰かに譲るか売るかしてなくなってしまった。
今や、代わりにこじんまりとした一軒家が立っている。
「ただいま! 」
荷物を置き、余所行きの服を脱ぎ捨てると和也のジャージを着て外に飛び出た。
大きめな石を置いただけの墓に駆け寄ると、買ってきた食事を広げる。
「良かった良かったまだ日が沈む前だ今日の月は満月だぞ和也私の晩御飯はハンバーグだお野菜もちゃんと買ったぞ」
墓には拙く、カズヤ! と彫られていた。
「今日は帝国の奴の子孫に会ったぞあっちも大変そうだった次の報告は100年後だ次はもっといい報告が出来ると良いんだがな」
夜空にはまん丸、黄金の満月か浮かんでいる。
「お前がわざわざこっちにお墓を作ってくれるおかげでこうして毎日会えるから私は凄く幸せだぞ本当は神を手放さずに不死でいて欲しかったが我儘はいけないからな」
何時までも異世界に留まる訳にもいかず、魔物の国が軌道に乗るよりも早く和也と愛歌は元の世界に帰ってしまった。
月を見る者と会う為、魔王に無理を言って週に一度は世界を渡るという生活を何十年も続け。
少し前、和也は神を分家の子に継がせると加齢による病から帰らぬ人となった。
あっという間だった。
朝ご飯を持って来た月を見る者が最初に発見し、手厚く葬った。
彼の死後、荒れに荒れると予想した魔物達が決死の覚悟で山を登ると、月を見る者は墓石を相手にいつもの様に晩酌なんてしていたのだ。
死を受け入れられなかった訳でも、理解出来なかった訳でも無い。
人は死ぬのだと理解して、和也を愛し、死んだ後も愛し続けている。
本当は後を追って自分も死にたかったが、どうせ転生してしまうし、何より魔物の国の事だってまだまだこれからだ。
少なくとも、国が落ち着くまでは死ぬつもりは無い。
金銀財宝は全て無くなったが、それよりずっと大切な和也との思い出に囲まれて、今日も龍は思い出に浸り、未来の為に生き続ける。
いつか、ひょっこり、輪廻を巡ってきた和也に会えたらな、なんて夢を見て。
「見ろ和也、月が綺麗だ」
人々や魔物達の予想通り、魔物の国を作り道徳を教え込む等という馬鹿げた計画は、当然のように上手くいく事は無かった。
数え切れない程の問題が発生し、その全てを魔王と和也は力で解決してきた。
力で問題を解決すれば、当然力による反発が起こる。
何度も何度も、体制に逆らう魔物達を魔王と和也は圧し続けた。
同時に、少しずつだが彼らに賛同する魔物も現れ始める。
最初は余りに強大な力を畏怖し、次第に共感を示し……彼らと共に魔物達の国を作ろうと志を同じくしていった。
最初はケンタウロス族、元々人類と交流のある種族だったが故に他の魔物よりも考えが柔軟であった。
誇り高い戦士でもあったが、新族長である春の息吹を筆頭に少しずつ、本当に少しずつ意識を改革していく。
次にゴブリン、オーク、和也と関わりを持っていた種族らが仲間に加わっていき。
何度も裏切りや反乱が発生して、その度に何かを失い、あるいは得て。
失う事が悲しい事だと学び。
長い長い時間が流れる。
和也が魔王に、異世界へと引き摺り込まれてから100年。
魔物達の初めての学校が出来てから50年、退学者や留年者が相次ぎ、ようやく初めての卒業式を執り行ってから30年。
人類歴元年。
旧帝国歴にして、140年。
古くは安全線、と呼ばれた大陸を分割する線の中央。
赤龍山の麓、副都フジにて。
100年振りの、人類と魔物の外交が行われた。
「初めまして。この度、帝国より魔物達との外交を任されたエルドライドと申します」
少し地味な顔をした爽やかな青年が握手を求め、手を差し伸べる。
「良く、来た。帝国の者、見た事があるぞ。何年も前、エルヴィンが、残した血か」
今となっては数少ない世界最強種ドラゴン、その筆頭である月を見る者が笑顔でそれに応じた。
ナイフのような爪を収納し、鱗も身体の一部にしか現れておらず一目では魔物と判別付かない者もいるかもしれない。
ただ、焔のように赤い髪と満月の様に淡く輝く瞳は人外である事を示していた。
「やっぱり僕をご存知でしたか。月を見る者様、聞いていた話よりずっと人類言語がお上手だ」
「言葉の節目に、息継ぎをすると、聞き取りやすいと、夫に聞いた。まだまだ、勉強中だ、今は文字を、学んでいる」
「貴方のような強く、そして美しい方が筆頭となり融和に励んで下さるからこそ、我らの会談も予定通り実現出来ました。本当に感謝しています」
「相変わらず、あいつの血は、口が良く回る」
ひとしきり思い出話をした後に、2人は席に着く。
魔物の国お馴染みとなった、ゴブリンの運ぶ軽食を口にしながら今後の事を話し合った。
「魔物の国はどうなりましたか? ある程度情報は入ってきますが、やはり限られていまして」
「当初の目標、全種族の支配は、今、進捗が5%、と、言った所だ」
「……それは」
聞きにくい事を聞いてしまった。
気まずそうにエルドライドは視線を逸らすが、対照的に月を見る者は軽快に笑う。
「元々不可能だった。だが、進捗がある、充分だ。まだまだ時間がかかるが、最後まで付き合う」
「そうですか……では、まだ本格的な交流は難しそうですね」
「留学、や、貿易、は難しい。私の鱗なら、何度か贈ったろう、あの程度なら……」
「なるほど……では、当初の建国宣言通り、国交は見送り、次は100年後となりますか」
この会談は魔物達の現状を知り、交流が可能かどうかを判断する為の物だった。
しかし、まだまだ魔物の国は激動の中にあり、落ち着いた交流は未だ叶いそうにない。
「なかなか、上手くはいかないものだ。夫は、あいつらを、手のかかる子どもと言ったが、その通りだ」
「しかし成果は出ている、そうですよね」
「うむ。100年後は、もう少し良い報告が出来る様に、努力しよう」
「100年後と言うと私の曾孫、もっと先の世代でしょうか? 想像も出来ません」
「我らの事は、置いておいて、帝国も大変だと聞いている」
エルドライドは冷や汗を零した。
聞かれたくない事だったらしいが、話題にくらい挙がるのは仕方ない、何せこちらもビッグニュースだ。
「……ここ数十年で帝国の権威は衰える一方です。貴方の知る帝国よりも、今の帝国の国土は3分の1程になりましたよ」
最後の帝国十二勇士。
アークライト・シーザー辺境伯の加齢による死を最後に、宝具の適応者は現れる事が無くなった。
役目を終えたとばかりに、今も封印柱の中で眠り続けている。
魔物の脅威が仮初とは言え消え失せたのを良い事に、諸国は挙って帝国を攻撃し始めた。
唯一の超大国であった帝国は徐々に離反され、国土を切り離され、今や近隣国の軍事力に怯える日々を送っている。
「常に栄え続ける、とはいかない、ものだ。まぁ、どうしても困れば、あいつを頼れば良い、帝国にはまだまだ返し切れない、借りがあるはずだろう」
「……あぁ、麗らかな日和ですか」
悪魔の王、麗らかな日和。
今や似非元気僕っ娘歴100年の大ベテラン、彼女の本質を知る者は少ない。
彼女は和也の言葉を忠実に守り、この100年、人類の為に尽くし続けてきた。
人類救済委員会。
通称、和也の会……とかいうクソダサ組織を和也の死後立ち上げ、少ない有志と共に大陸を駆け回っている。
その活動内容は、魔物の影響や人類同士の戦争で被害を被った人々への支援が八割。
残りは人魔を救った大英雄? 和也の偉業を伝える事。
カズヤ教だなんて揶揄されているが、麗らかな日和自身今や聖女すら呼ばれ始めている為、着実に信者を増やしている。
口癖はあと〇〇〇年……らしい。
誰かの為に、という行動は彼女にとって未だ苦痛の様だ。
「以前お会いした事がありましたが、僕が彼女の本質を知ってると分かるや否や酷い態度で……」
「あいつは、夫の言う事以外、聞かない奴だった。夫の死後、なんやかんや、理由をつけて投げ出すと思ったが、律儀な奴だ」
「ええ全く……そういえば、最近お話を聞きませんが魔王陛下は? 」
「魔導王、だ。人間だから、改名に意味は無いのに、馬鹿なヤツ、最近改めた。あいつは、毎日頑張っている」
頑張っている、なんて一言で到底表せる業務内容では無いのだが。
不死である、超越者である、と言う理由でこの世界の誰よりも働いている。
時間が足りない……とボヤき続け、書類作業の為に時空を引き伸ばす魔法をこっそり使っていた時はロリエルにしこたま怒られていた。
「まあ、アイツも律儀だ、全て終わるまで、投げ出す事は、無いだろう」
「魔物の方が人材に恵まれていらっしゃる……あ、お時間は大丈夫ですか? 」
「む、そうか、この小さな時計は、時間を指して鳴る事はないんだったな」
月を見る者の手首には可愛らしい腕時計が巻かれている。
和也が結婚記念日に、とわざわざあちらの世界から買って持って来た物だった。
大事に大事に扱っているが、元の雑な性格もあり流石に傷が目立つ。
「すまない、もう出ようと思う。エルドライド、今日はありがとう、曾孫か、その子孫によろしくと、言っておいてくれ」
「ええ、必ず。こちらのゴタゴタも落ち着かせてお待ちしています」
「それでは、100年後、な」
例えどれだけ忙しくても、月を見る者は日が沈む時間には自分の巣に帰る事にしていた。
生意気な魔物をこらしめる時も、頼まれ学校で教鞭を振るう時も、気ままに世界一周に出かけた時も。
必ず、日が沈むより早く巣に帰る。
赤龍山の頂上。
溢れんばかりの金銀財宝は1つ残らず誰かに譲るか売るかしてなくなってしまった。
今や、代わりにこじんまりとした一軒家が立っている。
「ただいま! 」
荷物を置き、余所行きの服を脱ぎ捨てると和也のジャージを着て外に飛び出た。
大きめな石を置いただけの墓に駆け寄ると、買ってきた食事を広げる。
「良かった良かったまだ日が沈む前だ今日の月は満月だぞ和也私の晩御飯はハンバーグだお野菜もちゃんと買ったぞ」
墓には拙く、カズヤ! と彫られていた。
「今日は帝国の奴の子孫に会ったぞあっちも大変そうだった次の報告は100年後だ次はもっといい報告が出来ると良いんだがな」
夜空にはまん丸、黄金の満月か浮かんでいる。
「お前がわざわざこっちにお墓を作ってくれるおかげでこうして毎日会えるから私は凄く幸せだぞ本当は神を手放さずに不死でいて欲しかったが我儘はいけないからな」
何時までも異世界に留まる訳にもいかず、魔物の国が軌道に乗るよりも早く和也と愛歌は元の世界に帰ってしまった。
月を見る者と会う為、魔王に無理を言って週に一度は世界を渡るという生活を何十年も続け。
少し前、和也は神を分家の子に継がせると加齢による病から帰らぬ人となった。
あっという間だった。
朝ご飯を持って来た月を見る者が最初に発見し、手厚く葬った。
彼の死後、荒れに荒れると予想した魔物達が決死の覚悟で山を登ると、月を見る者は墓石を相手にいつもの様に晩酌なんてしていたのだ。
死を受け入れられなかった訳でも、理解出来なかった訳でも無い。
人は死ぬのだと理解して、和也を愛し、死んだ後も愛し続けている。
本当は後を追って自分も死にたかったが、どうせ転生してしまうし、何より魔物の国の事だってまだまだこれからだ。
少なくとも、国が落ち着くまでは死ぬつもりは無い。
金銀財宝は全て無くなったが、それよりずっと大切な和也との思い出に囲まれて、今日も龍は思い出に浸り、未来の為に生き続ける。
いつか、ひょっこり、輪廻を巡ってきた和也に会えたらな、なんて夢を見て。
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