王国への独立宣言 〜この領地では自由にやらせてもらいます〜

雀の涙

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領地視察編

限られた時間

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「あ、そういえばカケルよ、4歳になったら王都のクリスセント学院に入学させることにしたからな」

 それはあまりに突然のことだった。

 父と母が帰ってきてすぐに昼食を取ることになり、僕は父から長ったらしい、つまらない土産話を聞かされていた。いつかの校長先生のお話と同じように聞き流し、終わる時をひたすら待っていた。
 そんな時に先ほどのサプライズ発言がその話の流れで思いついたように、軽い口調で言われたのだ。あまりに自然な流れで思わずそのまま聞き流しそうになった。

 想定外のことに驚く僕を他所に、2人は楽しく会話していた。

「それまではしっかり勉強してもらわないといけないな。まあ我らの息子だ! きっと優秀な成績で合格するだろう」

「ええ! 間違いないわ! それにまだ4もあるのよ! カケルならきっと大丈夫よ」

「そうだな! おい、お前がカケルに勉強を教えろ。これでカケルが不合格だったら、その時は命がないと思え」

 そう言って近くにいたメイドに無茶な命令をした。

 僕は未だに学院の件を受け入れられないでいた。2人がまるで僕が何をしようとしているのか知っているみたいに、それを邪魔するかのように。そう思えて仕方なかった。
 それにまだ4ヶ月って……。もう4ヶ月しかないでしょ! 3歳児がたった4ヶ月でどうにかなるわけないでしょ。焦りと混乱でいっぱいになっていた。

 横に座っているサイラに目をやると、彼女も予想していなかったのだろう、その表情から動揺が隠しきれていないのが分かった。その様子から彼女が裏切ったとは思えない。
 それでは誰が? と考えるがサイラ以外と関わりを持たない僕には分からなかった。

「ん? どうしたんだサイラ」

 彼女が突然手を挙げた。

「その役目私にお任せしていただけないでしょうか」

 色々考えすぎてそこまで頭が回らなかった。教師の役目を他の人がやれば僕は自由に動くことはできないし、3歳児を演じなければいけなくなる。
 17歳でこんな急展開に焦るようでは僕もまだまだだな。

「わかった。勉強も含め世話係としてしまえば給金も浮くしな! よし、サイラに任せる」

「ありがとうございます」


 こうして昼食の時間は終わりを迎えた。

ーーーーーー

 部屋に戻った僕たちはすぐに話し合いを始めた。

「学院のことなんだけど、サイラは知らなかったんだよね?」

「もちろんです。普通学院に通うのは10歳からとなっています。それは貴族も平民も変わりません。しかし例外として優秀だと認められた場合、年齢に関係なく入学することができます。」

「僕は誰に優秀だと認められたんだ?」

「……わかりません。カケル様は生まれてから勉強をしたことはありませんでした。優秀かどうか見極めることは困難かと」

 ん? まぁいいか。

 貴族の権力があれば無理にでも入学させることなんて造作のないことなんだろう。しかし問題はそこではない。少なくとも父はただのバカではないということだ。ただ贅沢をしているだけの豚じゃなかった。自分に害のあるものは徹底的に排除するつもりだ。

「バレたってことだな」

 僕はボソッと呟くとサイラがその言葉に反応した。

「私は何も話していません!」

「……わかってるよ。あの時サイラも驚いていたのを見ている。誰が心当たりはないか?」

「あるとすれば領主様の執事くらいしか思いつきません」

「そうか。それが確定しない以上は気をつけて行動しないといけないな」

 これはかもしれないな。

「まず何から始めますか?」

 やっぱり賢いな。それに切り替えも早い。彼女は残りわずかな時間の中で何をすべきなのか、頭に思い浮かんでいるんだろう。

「サイラは何を最も優先すべきだと思う? おそらく僕の考えとはずなんだ」

「勉強を優先すべきだと思います。まずは領主様に言われたとおり勉強をすることで諦めたと思わせるのがよいかと。バレていると慌てたカケル様なら時間が残されていないと知り、すぐに行動すると思っているはずです」

「さすがだね! やっぱり同じだったよ」

 本当に素晴らしいと思う。この短時間でここまで考えられる人はそういない。彼女が味方なら心強いだろう。

「明日からは勉強に専念するよ! 朝から夕方くらいまでやろう。そしてご飯を食べたらすぐに寝ることにする」

「わかりました! それでは失礼します」

 部屋の扉が閉まったのを確認し、すぐに机に向かう。

 僕の推測が正しければ、おそらくかなり後手に回っている。相手は相当先を見越しているだろう。それに相手は1人じゃない。これからは本当に気をつけないといけない。学院の件は想定外だったが、おかげで色々とわかったこともある。
 
 机の引き出しに入っている紙を取り出し、僕の計画をで書き始める。ちなみに僕はこの世界の文字を読み書きできる。父の書斎にあった報告書を見た時に読めることを知り、その後部屋で書けることも確認した。今日本語を選んだのはもし見られたとしてもいいようにだ。

 1時間ほど経ち、王都の学院に入学するまでの計画は立てることができた。きっと相手の裏をかくことができるだろう。僕も焦らずじっくりと計画を進めていこう。

 ある本を持ってベッドの上に移動する。

 残された時間はわずかしかない。限られた時間を有効に使おう。

「さて、はじめるとしますか」

 こうして僕の計画が始まった。
 
 
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