11 / 20
領地視察編
想いを込めて
しおりを挟む
今日は部屋に1人篭っていた。
サイラには昨日のことで少し1人になりたいと頼み、授業を休みにしてもらった。父に詳しいことを聞いたらしく、すんなり休むことができた。きっと人が死んでしまったところを見たからカケルには刺激が強すぎたとでも言ったのだろう。
ベッドの上で昨日のジェイスの魔法を思い出していた。あれはおそらく呪文や詠唱といった類のものなのだろう。日本でクラスの奴が厨二病みたいに唱えてるのとなんとなく似ていた。
それを見て僕は思った。やはりこの世界に魔法は2つ存在すると。
ーーーーーー
僕はこの2ヶ月間ずっと魔法を学び、鍛錬し、ひたすら研鑽を積んできた。
最初の1ヶ月間は魔法そのものについて改めて勉強し直し、その本質について考え続けた。
それと並行して、自分の意思で魔力を一定の量、一定の速さで体内に循環させる訓練を行った。
勉強は授業中に、訓練は夜の自由時間にそれぞれやっていた。本に書いてあることをそのまま受け入れるのではなく、その本質を理解していった。
僕が導き出した魔法というものの本質、それは自由であるということだ。
初めて魔法の本を読んだ時、僕は魔法をちゃんと理解していなかったんだと気づいた。
《属性は火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。使うことのできる属性は人によって様々である。》
本当は人によって様々なんかじゃなかった。この世界ができた時に女神が魔法を与えたのはエルフ族のみだった。エルフ族が全ての属性を使うことができていたから、この7つの属性が今でも本に書かれて残っているわけだ。本当は誰もが全ての属性を扱うことができる。
そして重要なのはそのあとだ。
《魔力を指に集め、それぞれの属性のイメージを込める》
このイメージが何よりも大切なことだった。創造したものが魔力を元に形となって現れる。これが魔法だったのだ。
現在、魔力量や属性を機器を使って測定している。それは魔力を目で見ることができる人がほとんどいないから。つまりこの世界には少なくともいるはずなんだ。本物の魔法を使える人が。そして自ずとそれ以外の人は偽物の魔法を使っているということになる。
《属性のイメージを魔力に込めると色づき可視化できるようになる。》
これは魔法の基礎だと僕は思った。この世界のほとんどの人が魔力を見ることができないと書いてあった。しかしそれは間違いで、魔力に色をつける魔法を使うことができないだけだと。
きっとエルフ族と人族が対立した時点で、エルフ族が魔法を教えるということをやめた。女神から与えられた知恵を持つ人族は魔法を自らの手で新たに作った。エルフ族のような自由自在な魔法ではなく、ある法則に従って発動する魔法を人族は手に入れた。それが今も使われている。これが本物と偽物、2つのの魔法である。
以上のことをまとめると、魔法というのは自由に創造したものの具現化である。そして、そこからわかるのは全ての属性を扱うことができるという表現は間違いで、そもそも属性とは人族が見たことのある魔法を7つに分類しただけなのだと思う。本当は魔法そのものに属性は存在しない。つまり無なのだ。
それと訓練でも分かったことがいくつかある。まずは僕がやはりイレギュラーな存在であるということ。初めは苦戦していた訓練も徐々に慣れてきて、今ではおそらく3日間は魔力を放出してても倒れないだろう。それほど魔力量が多い。
次に、全身に魔力を循環させる速さは魔法の発動までの時間に比例するということ。速いほどすぐに魔法を放てるようになる。僕は一定の量と速さを保つことができるようになってから、速さを変える訓練をして、この1ヶ月で限界まで循環速度を速くすることができた。
後は魔力を身体の一部分に溜めることができるということ。例えば両手に魔力を溜めておくとする。魔法を使いたいと思った時、魔力を循環させなくても手に溜めた魔力を消費すれば発動することができる。つまり、マシンガンのように魔法を連発できるのだ。しかし欠点もあって、溜められる時間に限界がある。あまり長くは持たない。僕の場合は循環速度が速く、数発なら連発できなくもないのであまり必要ないかもしれないが、一応訓練しておいた。おかげで5時間まで保てるようになった。
次の1ヶ月は魔法の実験を繰り返し、僕の創造がどこまで具現化できるのか、限界はどこなのかを検証していった。そして僕の中で必要だと思った魔法の発動を速くし、威力を高めるためにイメージをより具体的にした。もちろん前の1ヶ月でしていた基礎訓練も忘れずにやった。
僕が毎日寝不足だったのは寝る時間を削ってこういった訓練をしたいたからである。
ーーーーーー
僕は2ヶ月を自分のため、救いたいと思う人たちのためにひたすら魔法だけに費やした。
それなのに、だ。
昨日8人の領民を救うことができなかった。いや、見捨てた。
助けることによって僕が魔法を使うことができると知られれば敵はどう動いてくるかわからない。もしかしたら僕が何かする前に多くの領民を殺すかもしれない。
僕は命を天秤にかけたんだ。多くの命と8人の命を。
そして選んだ。多くの命を救うことを。
日本にいた頃、テレビでも学校でも話題になることがあった、もしもという話。
もしも沈み行く船に、救命ボートが1つだけある。そこに乗れるのはたった1人だけ。母親と恋人のどちらを救いますか?
こういった話はたくさん聞いたし、現実にも少なからずある。
生きていれば必ず決断を迫られる時がくる。どちらかを選ばなくてはいけない時がくる。そこに両方という選択肢は存在しない。必ず後悔するようにできている。
それはこの世界にもいえることだろう。しかし、ここは日本じゃない。
じゃあここと日本の違いは何か。
魔法があるということだ。
魔法は万能であるとはいえない。しかし魔法を使えば、母親も恋人も救えるんじゃないか? 他のもしもにおいてもいくらでも対処できるんじゃないか?
昨日も考えたとおり、見捨てていいわけがなかった。時間はなかったかもしれない。それでも諦めず、全員を救える道を考えるべきだった。
今はもう終わってしまったことだ。どんなに悔やんでも戻ることはできない。それは魔法でも無理だ。訓練中に魔法を使って試したが過去に戻ることはできなかった。
だからせめて今できることをしよう。
僕はベッドから降りて部屋の窓を開ける。
あの8人に救えなくて申し訳なかったという気持ちと天国で、来世で幸せに生きてほしいという願いを込めて手のひらから優しく暖かな8つの光を空に向けて放った。
「どうかこの想いが届きますように。そして僕はあなた方の分まで生きて、みんなを幸せにしてみせる。もう2度と見捨てないから」
僕はこの想いが届くようにと、8つの光が空の彼方に飛んでいくのを見守り続けた。
サイラには昨日のことで少し1人になりたいと頼み、授業を休みにしてもらった。父に詳しいことを聞いたらしく、すんなり休むことができた。きっと人が死んでしまったところを見たからカケルには刺激が強すぎたとでも言ったのだろう。
ベッドの上で昨日のジェイスの魔法を思い出していた。あれはおそらく呪文や詠唱といった類のものなのだろう。日本でクラスの奴が厨二病みたいに唱えてるのとなんとなく似ていた。
それを見て僕は思った。やはりこの世界に魔法は2つ存在すると。
ーーーーーー
僕はこの2ヶ月間ずっと魔法を学び、鍛錬し、ひたすら研鑽を積んできた。
最初の1ヶ月間は魔法そのものについて改めて勉強し直し、その本質について考え続けた。
それと並行して、自分の意思で魔力を一定の量、一定の速さで体内に循環させる訓練を行った。
勉強は授業中に、訓練は夜の自由時間にそれぞれやっていた。本に書いてあることをそのまま受け入れるのではなく、その本質を理解していった。
僕が導き出した魔法というものの本質、それは自由であるということだ。
初めて魔法の本を読んだ時、僕は魔法をちゃんと理解していなかったんだと気づいた。
《属性は火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。使うことのできる属性は人によって様々である。》
本当は人によって様々なんかじゃなかった。この世界ができた時に女神が魔法を与えたのはエルフ族のみだった。エルフ族が全ての属性を使うことができていたから、この7つの属性が今でも本に書かれて残っているわけだ。本当は誰もが全ての属性を扱うことができる。
そして重要なのはそのあとだ。
《魔力を指に集め、それぞれの属性のイメージを込める》
このイメージが何よりも大切なことだった。創造したものが魔力を元に形となって現れる。これが魔法だったのだ。
現在、魔力量や属性を機器を使って測定している。それは魔力を目で見ることができる人がほとんどいないから。つまりこの世界には少なくともいるはずなんだ。本物の魔法を使える人が。そして自ずとそれ以外の人は偽物の魔法を使っているということになる。
《属性のイメージを魔力に込めると色づき可視化できるようになる。》
これは魔法の基礎だと僕は思った。この世界のほとんどの人が魔力を見ることができないと書いてあった。しかしそれは間違いで、魔力に色をつける魔法を使うことができないだけだと。
きっとエルフ族と人族が対立した時点で、エルフ族が魔法を教えるということをやめた。女神から与えられた知恵を持つ人族は魔法を自らの手で新たに作った。エルフ族のような自由自在な魔法ではなく、ある法則に従って発動する魔法を人族は手に入れた。それが今も使われている。これが本物と偽物、2つのの魔法である。
以上のことをまとめると、魔法というのは自由に創造したものの具現化である。そして、そこからわかるのは全ての属性を扱うことができるという表現は間違いで、そもそも属性とは人族が見たことのある魔法を7つに分類しただけなのだと思う。本当は魔法そのものに属性は存在しない。つまり無なのだ。
それと訓練でも分かったことがいくつかある。まずは僕がやはりイレギュラーな存在であるということ。初めは苦戦していた訓練も徐々に慣れてきて、今ではおそらく3日間は魔力を放出してても倒れないだろう。それほど魔力量が多い。
次に、全身に魔力を循環させる速さは魔法の発動までの時間に比例するということ。速いほどすぐに魔法を放てるようになる。僕は一定の量と速さを保つことができるようになってから、速さを変える訓練をして、この1ヶ月で限界まで循環速度を速くすることができた。
後は魔力を身体の一部分に溜めることができるということ。例えば両手に魔力を溜めておくとする。魔法を使いたいと思った時、魔力を循環させなくても手に溜めた魔力を消費すれば発動することができる。つまり、マシンガンのように魔法を連発できるのだ。しかし欠点もあって、溜められる時間に限界がある。あまり長くは持たない。僕の場合は循環速度が速く、数発なら連発できなくもないのであまり必要ないかもしれないが、一応訓練しておいた。おかげで5時間まで保てるようになった。
次の1ヶ月は魔法の実験を繰り返し、僕の創造がどこまで具現化できるのか、限界はどこなのかを検証していった。そして僕の中で必要だと思った魔法の発動を速くし、威力を高めるためにイメージをより具体的にした。もちろん前の1ヶ月でしていた基礎訓練も忘れずにやった。
僕が毎日寝不足だったのは寝る時間を削ってこういった訓練をしたいたからである。
ーーーーーー
僕は2ヶ月を自分のため、救いたいと思う人たちのためにひたすら魔法だけに費やした。
それなのに、だ。
昨日8人の領民を救うことができなかった。いや、見捨てた。
助けることによって僕が魔法を使うことができると知られれば敵はどう動いてくるかわからない。もしかしたら僕が何かする前に多くの領民を殺すかもしれない。
僕は命を天秤にかけたんだ。多くの命と8人の命を。
そして選んだ。多くの命を救うことを。
日本にいた頃、テレビでも学校でも話題になることがあった、もしもという話。
もしも沈み行く船に、救命ボートが1つだけある。そこに乗れるのはたった1人だけ。母親と恋人のどちらを救いますか?
こういった話はたくさん聞いたし、現実にも少なからずある。
生きていれば必ず決断を迫られる時がくる。どちらかを選ばなくてはいけない時がくる。そこに両方という選択肢は存在しない。必ず後悔するようにできている。
それはこの世界にもいえることだろう。しかし、ここは日本じゃない。
じゃあここと日本の違いは何か。
魔法があるということだ。
魔法は万能であるとはいえない。しかし魔法を使えば、母親も恋人も救えるんじゃないか? 他のもしもにおいてもいくらでも対処できるんじゃないか?
昨日も考えたとおり、見捨てていいわけがなかった。時間はなかったかもしれない。それでも諦めず、全員を救える道を考えるべきだった。
今はもう終わってしまったことだ。どんなに悔やんでも戻ることはできない。それは魔法でも無理だ。訓練中に魔法を使って試したが過去に戻ることはできなかった。
だからせめて今できることをしよう。
僕はベッドから降りて部屋の窓を開ける。
あの8人に救えなくて申し訳なかったという気持ちと天国で、来世で幸せに生きてほしいという願いを込めて手のひらから優しく暖かな8つの光を空に向けて放った。
「どうかこの想いが届きますように。そして僕はあなた方の分まで生きて、みんなを幸せにしてみせる。もう2度と見捨てないから」
僕はこの想いが届くようにと、8つの光が空の彼方に飛んでいくのを見守り続けた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる