王国への独立宣言 〜この領地では自由にやらせてもらいます〜

雀の涙

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領地視察編

想いを込めて

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 今日は部屋に1人篭っていた。

 サイラには昨日のことで少し1人になりたいと頼み、授業を休みにしてもらった。父に詳しいことを聞いたらしく、すんなり休むことができた。きっと人が死んでしまったところを見たからカケルには刺激が強すぎたとでも言ったのだろう。

 ベッドの上で昨日のジェイスの魔法を思い出していた。あれはおそらく呪文や詠唱といった類のものなのだろう。日本でクラスの奴が厨二病みたいに唱えてるのとなんとなく似ていた。

 それを見て僕は思った。やはりこの世界に魔法は2つ存在すると。

ーーーーーー
 

 僕はこの2ヶ月間ずっとを学び、鍛錬し、ひたすら研鑽を積んできた。
 最初の1ヶ月間は魔法そのものについて改めて勉強し直し、その本質について考え続けた。
 それと並行して、自分の意思で魔力を一定の量、一定の速さで体内に循環させる訓練を行った。
 勉強は授業中に、訓練は夜の自由時間にそれぞれやっていた。本に書いてあることをそのまま受け入れるのではなく、その本質を理解していった。

 僕が導き出した魔法というものの本質、それは自由であるということだ。
 初めて魔法の本を読んだ時、僕は魔法をちゃんと理解していなかったんだと気づいた。

《属性は火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。使うことのできる属性は人によって様々である。》

 本当は人によって様々なんかじゃなかった。この世界ができた時に女神が魔法を与えたのはエルフ族のみだった。エルフ族が全ての属性を使うことができていたから、この7つの属性が今でも本に書かれて残っているわけだ。本当は誰もがを扱うことができる。

 そして重要なのはそのあとだ。

《魔力を指に集め、それぞれの属性のイメージを込める》

 このイメージが何よりも大切なことだった。創造したものが魔力を元に形となって現れる。これが魔法だったのだ。
 現在、魔力量や属性を機器を使って測定している。それは魔力を目で見ることができる人がいないから。つまりこの世界には少なくともいるはずなんだ。本物の魔法を使える人が。そして自ずとそれ以外の人は偽物の魔法を使っているということになる。

《属性のイメージを魔力に込めると色づき可視化できるようになる。》

 これは魔法の基礎だと僕は思った。この世界のほとんどの人が魔力を見ることができないと書いてあった。しかしそれは間違いで、魔力に色をつける魔法を使うことができないだけだと。

 きっとエルフ族と人族が対立した時点で、エルフ族が魔法を教えるということをやめた。女神から与えられた知恵を持つ人族は魔法を自らの手で新たに作った。エルフ族のような自由自在な魔法ではなく、ある法則に従って発動する魔法を人族は手に入れた。それが今も使われている。これが本物と偽物、2つのの魔法である。

 以上のことをまとめると、魔法というのは自由に創造したものの具現化である。そして、そこからわかるのは全ての属性を扱うことができるという表現は間違いで、そもそも属性とは人族が魔法を7つに分類しただけなのだと思う。本当は魔法そのものに属性は存在しない。つまりなのだ。
 

 それと訓練でも分かったことがいくつかある。まずは僕がやはりイレギュラーな存在であるということ。初めは苦戦していた訓練も徐々に慣れてきて、今ではおそらく3日間は魔力を放出してても倒れないだろう。それほど魔力量が多い。

 次に、全身に魔力を循環させる速さは魔法の発動までの時間に比例するということ。速いほどすぐに魔法を放てるようになる。僕は一定の量と速さを保つことができるようになってから、速さを変える訓練をして、この1ヶ月で限界まで循環速度を速くすることができた。

 後は魔力を身体の一部分に溜めることができるということ。例えば両手に魔力を溜めておくとする。魔法を使いたいと思った時、魔力を循環させなくても手に溜めた魔力を消費すれば発動することができる。つまり、マシンガンのように魔法を連発できるのだ。しかし欠点もあって、溜められる時間に限界がある。あまり長くは持たない。僕の場合は循環速度が速く、数発なら連発できなくもないのであまり必要ないかもしれないが、一応訓練しておいた。おかげで5時間まで保てるようになった。

 
 次の1ヶ月は魔法の実験を繰り返し、僕の創造がどこまで具現化できるのか、限界はどこなのかを検証していった。そして僕の中で必要だと思った魔法の発動を速くし、威力を高めるためにイメージをより具体的にした。もちろん前の1ヶ月でしていた基礎訓練も忘れずにやった。

 僕が毎日寝不足だったのは寝る時間を削ってこういった訓練をしたいたからである。


ーーーーーー

 

 僕は2ヶ月を自分のため、救いたいと思う人たちのためにひたすら魔法だけに費やした。

 それなのに、だ。

 昨日8人の領民を救うことができなかった。いや、見捨てた。

 助けることによって僕が魔法を使うことができると知られれば敵はどう動いてくるかわからない。もしかしたら僕が何かする前に多くの領民を殺すかもしれない。

 僕は命を天秤にかけたんだ。多くの命と8人の命を。

 そして選んだ。多くの命を救うことを。

 日本にいた頃、テレビでも学校でも話題になることがあった、もしもという話。
 もしも沈み行く船に、救命ボートが1つだけある。そこに乗れるのはたった1人だけ。母親と恋人のどちらを救いますか?
 こういった話はたくさん聞いたし、現実にも少なからずある。
 
 生きていれば必ず決断を迫られる時がくる。どちらかを選ばなくてはいけない時がくる。そこに両方という選択肢は存在しない。必ず後悔するようにできている。

 それはこの世界にもいえることだろう。しかし、ここは日本じゃない。

 じゃあここと日本の違いは何か。

 があるということだ。

 魔法は万能であるとはいえない。しかし魔法を使えば、母親も恋人も救えるんじゃないか? 他のもしもにおいてもいくらでも対処できるんじゃないか?

 昨日も考えたとおり、見捨てていいわけがなかった。時間はなかったかもしれない。それでも諦めず、全員を救える道を考えるべきだった。

 今はもう終わってしまったことだ。どんなに悔やんでも戻ることはできない。それは魔法でも無理だ。訓練中に魔法を使って試したが過去に戻ることはできなかった。


 だからせめて今できることをしよう。

 僕はベッドから降りて部屋の窓を開ける。

 あの8人に救えなくて申し訳なかったという気持ちと天国で、来世で幸せに生きてほしいという願いを込めて手のひらから優しく暖かな8つの光を空に向けて放った。

「どうかこの想いが届きますように。そして僕はあなた方の分まで生きて、みんなを幸せにしてみせる。もう2度と見捨てないから」

 僕はこの想いが届くようにと、8つの光が空の彼方に飛んでいくのを見守り続けた。

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