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領地視察編
約束、そして覚悟
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サイラの授業が始まって2ヶ月が経った。僕は初日に決めたように、ずっと勉強するフリをしていた。いや、ちがうな。正確にいうと勉強はしていたんだが、受験勉強はしていなかった。
彼女は僕が計算だけしかできず、歴史を全く覚えられないことに少しだけイライラしていた。
顔に出さないようにしているようだったが、今回ばかりは下手くそだなと思った。
「あの、カケル様…… 失礼ですが本当に17歳なんですよね?」
ほんとに失礼なことを言ってくれるね。でもその気持ちが分からない訳じゃない。17歳ならどんなにバカでも少しくらいは覚えられる。それが全く覚えられないとなれば疑いたくなる。まぁ僕の場合はわざとだけど。
「ごめん……。実は暗記がものすごく苦手で。計算とかは得意だからできるけど、歴史はこの量を全部覚えるのは無理かもしれない」
すごく申し訳なさそうな顔をして彼女に謝る。
「そうだったんですか。それはすみませんでした……。もう少し分かりやすく授業しますので諦めないでください」
「頑張ってみるよ」
心にも思ってないことを言って、また内職をする。
「それとカケル様」
彼女が言い忘れていましたと言葉を続けた。
「ちゃんと寝られてますか? 勉強を始めてから毎日寝不足のように思えます。寝坊も多いですし」
「全然覚えられないから夜も勉強しているんだ。そしたら朝起きれなくなっちゃって」
「それは逆効果ですよ! 夜はしっかり寝てください」
「わかったよ」
僕の返事を聞いて、彼女は再び授業を再開した。
「今日はこれで終わりにします! どうですか? 以前より分かりやすく授業したつもりなのですが」
「うん! 今日の内容は大丈夫そうだよ!」
ごめん、全く聞いてなかった。
「それはよかったです! 今日は早く寝ましょうね」
こうして今日の授業を終え、食事を摂った。
部屋に戻って机に向かう。いつもなら本を持ってベッドの上に行くのだが、今日は明日の準備があるので椅子に座ってペンを握る。
僕はゲイルに手紙を書く。普段外に出ることはできないが、明日は税の徴収をする日であり、父と一緒なら領民の元へ行くことが可能なのだ。
僕は異世界の文字でざっくりと短い文章を、日本語でより詳しく長い文章をそれぞれ別の紙に書いた。そしてその2つの手紙と、とある表を一緒に封筒に入れ、引き出しにしまった。
手紙の内容と表の意味をゲイルはすぐに理解できるだろう。なんせゲイルは人族なのだから。
この世界では身分に関係なく、女神から与えられた知恵を少なからず受け継いでいるはずだ。だから僕は理解できると確信している。
僕が領地を離れた時に頼りになるのは身内ではなく領民だ。それも相互に絶対的信頼をおける領民。
あの時、多くの領民が集まる中で唯一、僕に対して敵意むき出しだったのがゲイルだ。周りの反応は、不安や恐怖を宿した目から、彼に罰が下されると思っているように見えた。
しかし、彼はそんなことを気にしないと態度を改めることなく堂々としていた。危険を冒してまで僕を人質にし、みんなを助けようとしたのだろう。
だから僕は彼に託すことにした。学院に通っている間、領民のことを。
次の日、父、執事のジェイス、僕の3人で領民の元へ歩いていく。サイラはというと僕が父と一緒にいるから大丈夫と言って屋敷においてきた。
僕の懐には昨日書いた手紙が入っている。この手紙を2人の隙を見てゲイルに届けなければいけない。
それにしても家を出る時から2人の表情が少し暗い気がする。理由は分かってるけど知らないふりをする。
「ねぇ、2人とも元気ないね。どうしたの?」
2人は慌てるように答える。
「そ、そんなことないよな! ジェイスよ」
「はい! ただ外には危険がありますのでカケル様のことを心配してるのですよ」
心配してる……ね。
「そっか! 僕は大丈夫だよ!」
中身のない会話をしていると、領民の住んでいる家が見えてくる。
「ジェイス、毎度のことだが何かあった時は1番に我を守るのだぞ?」
「わかっております」
領民の家がある場所の中心に着くとジェイスが大きな声で周りに呼びかける。
「税の徴収にきたぞ! 早く持ってこい!」
次々に領民がお金を抱えて集まってくる。その中にゲイルを見つけた。彼のところにいこうとしたところで全員の視線がある方向に向けられているのに気づいた。僕も足を止めてその方向を見ると、農具を担いで向かってくる8人の領民がいる。もちろんお金は持ってない。
「貴様らは何をしてるんだ?」
ジェイスの呼びかけに先頭の男が答える。
「もう金はない。だからお前らを殺してやる!」
そう言って男は駆け出した。残りの7人もこちらに向かって駆けてくる。
するとジェイスが小さな声で何やら訳の分からない言葉を喋り始めた。
「コール・ディル・ファイラル」
言い終わった直後、ジェイスの指から炎の球が飛び出し、男たちに直撃した。燃える男たちを見て父とジェイスは笑っていた。
「バカな奴らだ。お前らなんぞ魔法で一撃なんだよ! これ以上逆らってみろ! 1人残らず燃やし尽くすからな!」
その言葉を聞いた領民たちは下を向き、拳を強く握りしめていた。
ジェイスが後始末をしに、燃えた男たちのところへ歩いていく。1人では怖いのだろう、父もジェイスについていった。
僕はこの隙にゲイルの元へ向かった。
「おい、なんでここに来たんだ!」
「時間がない。静かに僕の話を聞け」
僕の表情に余裕がないのがわかったのか、彼はすぐに黙って頷いた。
「まずはこれを」
手紙をゲイルに渡す。
「とにかく読めばわかる」
受け取ったゲイルは、少し間を開けて申し訳ないと言った。
「どうして謝る?」
「カケル様のリュックが盗まれた。金はみんなに配った後だったからそれは大丈夫だったんだが……」
「やっぱりか。それなら気にすることはない。それよりこの手紙のことはたとえ誰であっても話したり見せたりするな。領民だろうと屋敷の誰かであろうと」
「わかった。カケル様、やっぱりってどういうことだ? 知っていたのか?」
「それより聞きたいことがある。隣の領地に盗みにいこうと言い始めた領民がいるな?」
僕は質問を無視して聞く。
「あ、あぁ、いるがそれがどうした?」
「おそらくリュックを盗んだやつはそいつだ。いいか、ゲイル。少なくとも今は、全てを疑え。信じるな。僕がそう言う理由も手紙を読めば分かる」
「俺はカケル様を信じてる。了解した」
信じるなと言ったばかりなのに、バカなやつだな。
「僕は前に言ったな。この領地を変えてみせると。みんなのことを忘れないと」
「そうだな、確かに言った」
「約束だ、ゲイル。僕はもう誰一人として死なせたりしないから。笑って過ごせる未来を作ってみせるから。だからゲイルも約束してくれ。その時まで生き続けると」
「このまま死んでたまるかってんだよ。カケル様、俺は待っているからな、そんな夢のような未来を。だから俺からも1ついいか?」
「カケル、どこにいるのだ」「カケル様~?」
2人がこっちに戻ってきてしまった。これ以上は話していられない。
背を向け走り出す僕にゲイルは言う。
「絶対に死ぬなよ」
僕は振り返り、彼の目を見てはっきりと言い返す。
「当たり前だ!」
再び2人の元に走り出す。
僕が無茶すると思って心配してくれたんだろう。
僕の言葉を、約束を、僕自身を本気で信じてくれているのだろう。
僕はその気持ちに絶対に応えてみせる。
「怖かったから隠れてた!」
僕と合流した2人は安心したような顔をしていた。そして徴収を終え屋敷へと帰った。
僕は部屋のベッドの上で一日のことを思い出していた。
今日領民を8人も死なせてしまった。僕は救うこともできたのに、しなかった。それをしてしまえば流れが大きく変わってしまうから。だが、それを理由に見殺しにしていいわけがなかった。僕は大きな過ちを犯した。
もう2度と見捨てない。救えるものは救ってみせる。
僕は新たな覚悟を決めた。
彼女は僕が計算だけしかできず、歴史を全く覚えられないことに少しだけイライラしていた。
顔に出さないようにしているようだったが、今回ばかりは下手くそだなと思った。
「あの、カケル様…… 失礼ですが本当に17歳なんですよね?」
ほんとに失礼なことを言ってくれるね。でもその気持ちが分からない訳じゃない。17歳ならどんなにバカでも少しくらいは覚えられる。それが全く覚えられないとなれば疑いたくなる。まぁ僕の場合はわざとだけど。
「ごめん……。実は暗記がものすごく苦手で。計算とかは得意だからできるけど、歴史はこの量を全部覚えるのは無理かもしれない」
すごく申し訳なさそうな顔をして彼女に謝る。
「そうだったんですか。それはすみませんでした……。もう少し分かりやすく授業しますので諦めないでください」
「頑張ってみるよ」
心にも思ってないことを言って、また内職をする。
「それとカケル様」
彼女が言い忘れていましたと言葉を続けた。
「ちゃんと寝られてますか? 勉強を始めてから毎日寝不足のように思えます。寝坊も多いですし」
「全然覚えられないから夜も勉強しているんだ。そしたら朝起きれなくなっちゃって」
「それは逆効果ですよ! 夜はしっかり寝てください」
「わかったよ」
僕の返事を聞いて、彼女は再び授業を再開した。
「今日はこれで終わりにします! どうですか? 以前より分かりやすく授業したつもりなのですが」
「うん! 今日の内容は大丈夫そうだよ!」
ごめん、全く聞いてなかった。
「それはよかったです! 今日は早く寝ましょうね」
こうして今日の授業を終え、食事を摂った。
部屋に戻って机に向かう。いつもなら本を持ってベッドの上に行くのだが、今日は明日の準備があるので椅子に座ってペンを握る。
僕はゲイルに手紙を書く。普段外に出ることはできないが、明日は税の徴収をする日であり、父と一緒なら領民の元へ行くことが可能なのだ。
僕は異世界の文字でざっくりと短い文章を、日本語でより詳しく長い文章をそれぞれ別の紙に書いた。そしてその2つの手紙と、とある表を一緒に封筒に入れ、引き出しにしまった。
手紙の内容と表の意味をゲイルはすぐに理解できるだろう。なんせゲイルは人族なのだから。
この世界では身分に関係なく、女神から与えられた知恵を少なからず受け継いでいるはずだ。だから僕は理解できると確信している。
僕が領地を離れた時に頼りになるのは身内ではなく領民だ。それも相互に絶対的信頼をおける領民。
あの時、多くの領民が集まる中で唯一、僕に対して敵意むき出しだったのがゲイルだ。周りの反応は、不安や恐怖を宿した目から、彼に罰が下されると思っているように見えた。
しかし、彼はそんなことを気にしないと態度を改めることなく堂々としていた。危険を冒してまで僕を人質にし、みんなを助けようとしたのだろう。
だから僕は彼に託すことにした。学院に通っている間、領民のことを。
次の日、父、執事のジェイス、僕の3人で領民の元へ歩いていく。サイラはというと僕が父と一緒にいるから大丈夫と言って屋敷においてきた。
僕の懐には昨日書いた手紙が入っている。この手紙を2人の隙を見てゲイルに届けなければいけない。
それにしても家を出る時から2人の表情が少し暗い気がする。理由は分かってるけど知らないふりをする。
「ねぇ、2人とも元気ないね。どうしたの?」
2人は慌てるように答える。
「そ、そんなことないよな! ジェイスよ」
「はい! ただ外には危険がありますのでカケル様のことを心配してるのですよ」
心配してる……ね。
「そっか! 僕は大丈夫だよ!」
中身のない会話をしていると、領民の住んでいる家が見えてくる。
「ジェイス、毎度のことだが何かあった時は1番に我を守るのだぞ?」
「わかっております」
領民の家がある場所の中心に着くとジェイスが大きな声で周りに呼びかける。
「税の徴収にきたぞ! 早く持ってこい!」
次々に領民がお金を抱えて集まってくる。その中にゲイルを見つけた。彼のところにいこうとしたところで全員の視線がある方向に向けられているのに気づいた。僕も足を止めてその方向を見ると、農具を担いで向かってくる8人の領民がいる。もちろんお金は持ってない。
「貴様らは何をしてるんだ?」
ジェイスの呼びかけに先頭の男が答える。
「もう金はない。だからお前らを殺してやる!」
そう言って男は駆け出した。残りの7人もこちらに向かって駆けてくる。
するとジェイスが小さな声で何やら訳の分からない言葉を喋り始めた。
「コール・ディル・ファイラル」
言い終わった直後、ジェイスの指から炎の球が飛び出し、男たちに直撃した。燃える男たちを見て父とジェイスは笑っていた。
「バカな奴らだ。お前らなんぞ魔法で一撃なんだよ! これ以上逆らってみろ! 1人残らず燃やし尽くすからな!」
その言葉を聞いた領民たちは下を向き、拳を強く握りしめていた。
ジェイスが後始末をしに、燃えた男たちのところへ歩いていく。1人では怖いのだろう、父もジェイスについていった。
僕はこの隙にゲイルの元へ向かった。
「おい、なんでここに来たんだ!」
「時間がない。静かに僕の話を聞け」
僕の表情に余裕がないのがわかったのか、彼はすぐに黙って頷いた。
「まずはこれを」
手紙をゲイルに渡す。
「とにかく読めばわかる」
受け取ったゲイルは、少し間を開けて申し訳ないと言った。
「どうして謝る?」
「カケル様のリュックが盗まれた。金はみんなに配った後だったからそれは大丈夫だったんだが……」
「やっぱりか。それなら気にすることはない。それよりこの手紙のことはたとえ誰であっても話したり見せたりするな。領民だろうと屋敷の誰かであろうと」
「わかった。カケル様、やっぱりってどういうことだ? 知っていたのか?」
「それより聞きたいことがある。隣の領地に盗みにいこうと言い始めた領民がいるな?」
僕は質問を無視して聞く。
「あ、あぁ、いるがそれがどうした?」
「おそらくリュックを盗んだやつはそいつだ。いいか、ゲイル。少なくとも今は、全てを疑え。信じるな。僕がそう言う理由も手紙を読めば分かる」
「俺はカケル様を信じてる。了解した」
信じるなと言ったばかりなのに、バカなやつだな。
「僕は前に言ったな。この領地を変えてみせると。みんなのことを忘れないと」
「そうだな、確かに言った」
「約束だ、ゲイル。僕はもう誰一人として死なせたりしないから。笑って過ごせる未来を作ってみせるから。だからゲイルも約束してくれ。その時まで生き続けると」
「このまま死んでたまるかってんだよ。カケル様、俺は待っているからな、そんな夢のような未来を。だから俺からも1ついいか?」
「カケル、どこにいるのだ」「カケル様~?」
2人がこっちに戻ってきてしまった。これ以上は話していられない。
背を向け走り出す僕にゲイルは言う。
「絶対に死ぬなよ」
僕は振り返り、彼の目を見てはっきりと言い返す。
「当たり前だ!」
再び2人の元に走り出す。
僕が無茶すると思って心配してくれたんだろう。
僕の言葉を、約束を、僕自身を本気で信じてくれているのだろう。
僕はその気持ちに絶対に応えてみせる。
「怖かったから隠れてた!」
僕と合流した2人は安心したような顔をしていた。そして徴収を終え屋敷へと帰った。
僕は部屋のベッドの上で一日のことを思い出していた。
今日領民を8人も死なせてしまった。僕は救うこともできたのに、しなかった。それをしてしまえば流れが大きく変わってしまうから。だが、それを理由に見殺しにしていいわけがなかった。僕は大きな過ちを犯した。
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