王国への独立宣言 〜この領地では自由にやらせてもらいます〜

雀の涙

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領地視察編

ゲイルへの手紙 (二枚目)

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『 ゲイルへ

  これが読めるってことはちゃんと覚えたんだな。よくやった、ゲイル。
 
 この先書かれていることにきっとゲイルは疑いたくなるだろう。本当なのか? って。今は信じなくてもいい。ただとにかく知っておいてくれ。

 僕が王都に向かうまであと二ヶ月はある。この間に何か起こることはないと思う。だから少しずつでいいから手紙の内容をきちんと整理してほしい。

 最初に僕のことについて書くことにするよ。

 僕の名前はカケル。カケル・ゴレイではなくニッタ・カケルだ。訳が分からないでしょ? ちゃんと説明するよ。

 僕は日本という国で生まれ育った17歳の新田翔という人間だ。ゲイルの知っている3歳児のカケル様とは別人なんだ。名前が同じだからややこしいんだけどさ。

 僕は日本で自殺したんだ。そしてこっちのカケルは階段から落ちて頭を打った。おそらくその時に僕の魂がどういうわけかカケルに移り、こうして二度目の人生を送ることになった。こんなのは僕の予想だけどね。こんな非現実的なことが起こるなんて思いもしなかった。

 ゲイルは本当に3歳なのかって疑問に思ったことがあったよね?
その疑問は正しかったんだよ。僕は3歳じゃなく17歳だ。明らかに3歳児の口調や行動じゃない。
 あの時ゲイルたちの生活について聞くには、僕のことを信じてもらわないといけないと思った。みんなの知るカケル様のフリではなく、本当の僕で接しなければいけないと。
 だから偽るのをやめて、僕自身で向き合うことを選んだ。

 僕が思い描く未来を作りたい理由や僕の日本での生活は王都から帰ってきた時にでも話すよ!


 僕についてはこの辺で終わりにして、ゲイルたちにとって重要なことを伝えなきゃいけないからね。

 それは僕たちの敵についてだ。

 ゲイルたちはウールが敵だと思っているよね? こんな悪政をされて、苦しい日々を送る羽目になった原因はあいつだから。

 それは間違いではない。ただ正解とも言えない。

 俺は最初あいつが頭のキレる奴だと思っていた。領民にお金を渡したことを知ってすぐに学院に入学させるという対策をしてきたから。
 だけどそれはちがった。あいつはただ贅沢がしたいだけの能無しだと、操られているだけだと気づいたんだ。

 悪いのはウールだ。だが、本当に悪いのはその後ろに隠れてクスクス笑っている奴だよ。

 初めに敵の黒幕を伝えておく。これはほぼ確実と言っていい。

 隣の領地、ジル領のガルノート・ジルだ。

 こいつの命令で動いている奴らがいる。

 一人目はウールの執事であるジェイスだ。
 こいつには仲間がいて、領民に紛れ込んでいる。そいつらが僕のリュックを盗んでジェイスに渡し、僕のしたことを報告した。
 僕が全てを疑え、信じるなと言ったのは身近に敵がいると思ったからだ。
 領民のフリをしていたジェイスの仲間は、みんなに隣の領地に盗みに行こうと言い出した。そうだね? これはおそらくジェイスの計画に繋がっている。
 隣の領地の金や物を盗んで生活をやりくりしていた。ジェイスはそれをネタに領民たちを脅し、自分の言うことを聞かせる。領民たちはそれに反対すればウールとガルノートの2人から潰されることになる。つまり選択肢は残されていないってことだ。

 ジェイスは領民を使ってこの領地をウールから奪い取るつもりなのかもしれない。
 
 二人目は僕の世話係であるサイラだ。
 これにはゲイルも驚いているんじゃない? 信じられないだろ?
こいつは貴族と同じようにクズだったよ。

 サイラは領民たちに食べ物やお金を分け与え、自分に恩を感じさせた。これはみんなに聞いてみればわかるよ。実際ゲイルもサイラには感謝していただろう? そうしてみんなの心を少しずつ掴んでいき、最終的にはガルノートの指示で領民たちに分け与えていたと伝える。隣の領地のガルノート様が皆さんのことを可哀想だと思い、救いたい一心で助けてくれていたのだといった感じでね。
 すると領民たちはどうするだろうか? サイラに、ガルノートについて行くだろう。そして二つの領地で争いが起きれば、こちらは200人、ましてやサイラが領民を引き連れて相手側につくので結果ほぼゼロになる。つまり人数差でやる前から負けは決まっている。
 争いは起きずにウールは降参。サイラは安全にこの領地を奪うだろう。

 サイラとジェイスは協力関係にないということは僕が確認した。

 僕はサイラを信用して、僕が17歳であることを伝えてしまった。そしてそれはガルノートを通りてジェイスにも伝わってしまった。だから邪魔な僕を排除するために王都の学院に入学させることをウールに提案した。

 僕がいなくなった後二人はそれぞれのやり方でこの領地を奪い、ガルノートに渡すつもりだ。そしてガルノートは権力を使い、二人のうちどちらかを貴族にするつもりだ。そしてこの領地を与える。

 これはいわば戦争のようなものだ。

 ゲイルたちは黒幕であるガルノートの前に、二人を別々に対処しなければならない。

 ゲイルにお願いしたいのはジェイスの仲間を見つけること、みんなからサイラやジェイスをどう思っているかを怪しまれることなく聞くこと。まずはこの二つだ。

 そして今後サイラから物やお金を受け取ったら、サイラが帰った後でみんなに伝えてほしいんだ。

 これはカケル様のおかげで、王都に行っている間にみんなが困らないようにサイラにお願いをしてくれたのだと。
 そしてこれがバレるとカケル様は殺されてしまうから俺たちだけの秘密にしなければいけないと。

 そうすればサイラがガルノートが助けてくれたと言っても、みんなはカケル様のおかげなはずだよな? って疑問に思い、混乱するはずだから。

 これからかなり危険な目に合うことが多くなると思う。

 だけど僕はもう誰一人死なせないと約束したから。

 だから大丈夫。安心して。


 なるべく早くこの領地に戻ってくる。その時まで必ず生きていてくれ。

               カケル  』

 




※ ゲイルは日本語のひらがなとカタカナしか習得していないため、カケルとゲイルは互いに手紙のやり取りはこの二つでしているが、"ゲイルの気持ち"という話でも分かるように大変読みにくいので、それ以降は漢字も含まれることにしています。
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