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四章
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しおりを挟む私は薬師としてジュカクの森を探索し、ロウは守杜としてジュカクの森を探索するようになる。少しして、ようやく販売できるだけの薬が作れる材料が揃って来て、私は暇さえあれば薬を煎じていた。
ロウは魔の物の数が少し多いと言って晩頃まで帰らないが、帰ってくると、大量の上質な薬草を持って帰ってくる。
「これ、とても珍しいものよ、これも、これもとても上質だわ、こんなの私売ってる所しか見たことないわ、凄いロウ」
私の薬草採取より何倍の成果を出してくれるロウ、でも、ロウが持ってくるその高価な薬草たちは、正直売り物にしては高くなりすぎて、村なんかでは扱えないというのが本音だった。
でもそんな事をロウに言っても仕方がないから、私は受け取るだけ受け取って普通の薬に少し混ぜる程度の使い方をすることにした、そうすることで効能が上がるのは分かってたから。
「魔の物がやはり多い、が、北にいた頃よりも小さく弱いものばかりだ。数日間狩り続ければ、その内夕方に帰れるようになる」
そうロウが言う中、私はロウの胸板に触れながら、真新しい寝台の寝心地の良さも相まってすぐに寝ついてしまう。
「おやすみカイナ――」
「聞いてるか、ジュカクの森に効き目の良い薬を売る薬師がいるらしいんだが」
「ああ、貴族が惚れこむほどのベッピンらしいじゃないか!俺も見に行きて~な」
ジュカクの森にやたらと効き目の良い薬を売る美人な薬師がいる、その噂はすぐにカルの国中に広まる。
カルの国は薬学には国を上げ人材を育成していたため、すぐに何人もの人間が私の腕を確かめるために訪ねてきた。
その腕もそうだけど、容姿だけを見に来る人も多くて、既にロウがいると分かるけど、何人もが私に甘い言葉だけを囁きに来た。
「カイナ、あぁ美しい乙女よ、こんな森ではなく我が屋で暮らさないか!」
「ははは、ありがとうございますスベイさん、でも、私この森の中がとても居心地が良くて、それに〝夫〟もいる身ですので――」
中には、スベイさんのようなカルの国の貴族が求婚に訪れることも少なくなかった。
そんな時、私の薬と容姿に惚れこみ、私とロウと産まれてくる子のために森に家を建ててくれると言う物好きなお金持ちの商人が現れ、私が大工さんに立ててもらった小屋の横に、勝手に一軒家を作ってしまった。
何度もお断りしたけど、その人は頑なに止めようとはせず、かなりお年を重ねられている方で、家族の反対もある中強行していた。
「人生の終わりに惚れた女への土産じゃ、胸をときめかせてくれた礼くらいさせろ」
そう言って、私も結局最後まで押し切られてしまった。
ロウはその人のこといい奴くらいに考えていたけど、本当に後でどうなるか分からないのは怖くて、私はこの時ほど〝タダより高いものは無い〟という父の言葉に怯えたことはない。
その家が完成する頃には、私のお腹は見ただけで明らかに大きくなっていた。
「ツナム・ハジクが言うには、あいつの娘が妊娠した時も人よりも大きい腹になったらしい、あいつの推測では腹の中で子どもが人の姿と眷属の姿に順番に変わっているせいで、大きさが変わるのだろうと言っていた」
「そんな事どうでもいいから、早くほら」
私がロウに催促するのは狼の姿になることで、ジュカクではなるだけ人の姿をしているロウに少し不満を持っていた。
ロウとしては、ジュカクの森のあるカルの国が、人狼に容赦がないのが分かっているため、獣の姿は絶対に見せたくないという考えがある。けど、ロウは私のお願いを断れない。
「ロウほら、キスして」
甘える私に、ロウは獣の姿で顔に口を近付ける。
その甘えは、母親になる私にとって、少し不安だった心の表れ。初めての妊娠で初めての出産、人狼の子であることは間違いないのだ。もしも、ちゃんと生まれてこなかったら、そう考えて夜中目が覚める時も少なくはなかった。
「あ!今、お腹蹴ったかも!」
ロウは私の言葉にその獣の耳を腹にピタリとくっ付ける。
「元気に生まれて欲しいな」
そう呟くとロウも小さく、コクリと同意してくれた。
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