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第二部
78.
しおりを挟む二人の様子を離れて見ていたヤトは、背後から近寄る影に気が付けない。
「な~に見てんだよヤト坊!ん~?お花見じゃなくて雛たちを愛でる趣味があるとは~、中々の助平さんですな~」
イベント用の見た目装備の二人を、ジッと眺めてそう言うビージェイは、徐にヤトの肩に腕をかける。
「……カイトが最近元気なくてな――」
ビージェイの言葉に突っかかることなくカイトの心配をするヤトに、肩透かしを食らったビージェイは真面目に話題を聞く。
「カイトちゃんが?ヤト坊……なんかやらかしたのか?」
「いや、俺っていうよりカイト自身の問題らしんだがな」
「カイトちゃん自身?元気が無い……あ!!なるほどね」
ビージェイは頭を掻いてヤトに言う。
「お前ちゃんと保健体育の授業を受けたか?」
「……ああ、一応はな」
「女の子の日って分かるか?」
「……生理……そうか、そういうことか」
ビージェイの言わんとすることを理解したヤト。
「フルダイブ中の生理現象は軒並み感覚遮断でこっちに影響は無い、けどな、月経……生理ってのはリアルに血が出ちまって、多い人だと貧血になるらしいからな」
ヤトは、「やけに詳しくないか?」と疑問の表情。
「いやいや、実はな~最近子どもらの授業を見学する機会があってだな、その時丁度やってたのさ、こっちに来る前に生理のきてない子たちが、リアルに戻ってからもしそうなっていた時に驚かないようにってな」
「……なるほど」
「……俺はなヤト坊、そんなことちっとも頭に無かったぜ、俺はほら〝友だちの友だちぐらいまでは助けたい〟程度の考えだったからさ」
「そんなことないだろ、俺は羨ましかった……ビージェイの持っている正義は人の心を癒し慰める正義だし、その授業をした人は子どもたちの未来を心配した正義だ」
「正義っていうか、人柄ってやつじゃないか?」
「俺にとっては一緒だ、正義ってのは言葉であって、大義であって、想いであって、ビージェイの言うとおり人柄でもある。俺にとっての正義は――暴力であり、悪に対する敵意なんだ」
「……ヤトの正義はなんつーかぁ――重いな」
「いいや、軽いんだ……悪に対して揮えても、それで救われる人間は一握り……ビージェイや子どもに教育する人たちの正義と比べると、救える力としては――軽すぎる」
ヤトはそう言うと、向き合ってビージェイの肩に手を置く。
「これでも尊敬してんだよ、あんたをさ――」
ビージェイはテレながら頭を掻く。
「……よせよ~らしくないぜ~」
そうして、ヤトはマリシャと話すカイトの方へと向かい、ビージェイの言葉をうのみにして心配して声をかける。
その結果、カイトは顔を真っ赤にしてビージェイに怒りをぶつけに向かうことになった。
その後、数日かけてマリシャに献上されたポイントは、彼女の独断で〝雛あられ〟に変わり子どもたちに配られた。
ビージェイとファミリアメンバーと、その他一部のプレイヤーや小さいウサギの紳士が肩を落とすのも無理なかった。
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