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第二部
87.
しおりを挟む瞬間、カイトの攻撃とキングストロングナイトの攻撃が完全に同じタイミングになってしまう。このままだと、カイトに攻撃が直撃してHPバーを大きく減少させることは目に見えた。
「あっ――――」
息を呑むカイト、その体に長剣が上から振り下ろされる。
直撃の寸前にそれが逸れてカイトの横の地面を抉った。
「ヤト――」
インターセプターである俺が、カイトにヒットする前にパリィした結果だ。
アシストのないBCOで難しいとされる技術がいくつかある。
その一つがパリィであり、もう一つが〝チェーン〟だ。
BCOでは敵が体勢を崩した時、プレイヤー同士が入れ替わり連鎖攻撃する〝スイッチ〟をチェーンと言う。
システム的にアシストのないその行為をチェーンと呼ぶきっかけとなったのが、スキル発動時のスキル同士の連鎖攻撃を〝スキルチェーン〟と呼ぶ事からスキルを使わないスイッチをチェーンと言う。
「スイッチ!!」
しかし、俺のようなVRMMOのヘビーユーザーはついつい癖で〝スイッチ〟とコールしてしまう。と言っても、本来ソロである俺がスイッチとコールしてしまうのは、癖ではなく固定観念なのだが……。ステレオタイプというわけではないが、そういった昔ながらをついつい使用するのは俺の個性なのかもしれない。
「いっくよー!」
カイトの持つ歪剣が、淡い赤紫のエフェクトを纏うとスキルが発動する。
SNAKE BITEと軌道に記されると、キングストロングナイトの2本のHPバーの1本目が残り4分の1まで減る。
「ナイス!カイト!!」
ナナの言葉に、カイトは左手でVサインを突き出す。
その後も、陣形を保ったままで狙い通りキングストロングナイトのHPバーを最後の1本の半分にまで減らす。キングストロングナイトは、残りHP約10000で通常の範囲攻撃を仕掛けてくる。それを俺がパリィすると、いよいよ今回の戦いの見せ場がやってくる。
俺はビージェイに目で合図を出すと、ビージェイはマリシャに、マリシャはナナに。
ナナの視線が俺と交差すると、俺は左手で簡易スロットにあらかじめ入れておいたアンプルを取り出した。そのアイテムは〝調律アンプル〟という物だ。
レアドロップアイテムのそれは、パーティーメンバーのレベルを調律して全ステータスを平均化し、誤差を合計が10以内にすることができる。
レベルの高い者と低い者が調律されるそれは、本来のゲーム攻略には絶対に使いどころのないアイテムだ。
しかし、BCOに置いてレベルの調律で戦いを楽しむ場合には、とてもメリットのあるアイテムになる。レベル変動型のボスやモブに対して、そのレベルを最低限抑えられるし、一番の利点が〝スキルチェーン〟が発動できることである。
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