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追放と加入
第1話 追い出されました
しおりを挟む「はい?」
クエストから帰ってきて、宿屋の部屋に入った途端にパーティメンバーから伝えられた言葉。私は、何を言われたのか一瞬理解が出来ず聞き返す。
「聞こえなかったのか?」
「お前さ、錬金術師って言うけどポーションしか作れねぇじゃん」
「はっきり言って邪魔なんだよね~」
「邪魔以上だな」
口々に文句を言ってくる、仲間たち。
いや、仲間だった人達?
私の名は、イレーネ。
職業は、錬金術師。
冒険者ランクは、Aランク
私に文句を言ってくる彼らは、東の勇者パーティだ。
「ポーションしか作れないお前は、要らない。今日で貴様をメンバーから外し新たに聖女を迎える事にした」
「ポーションなんて、買えば済む事だしね」
「まぁ、金は掛かるが聖女が居れば解呪も回復も支援も出来る。ポーションしか能がないお前よりはよっぽど役に立つ」
そう言って、勇者ザハルは扉まで歩きドアノブに手を伸ばしドアを開けると、そこには金髪を緩くひとつに縛り肩に流した綺麗な女性が立っていた。
「聖女レニアだ」
「こんにちは、イレーネさん」
紹介された女性は、優雅に微笑み(私には悪い笑にしか見えない)手を差し出してきた。
咄嗟に手を出せないでいると、拳闘士ゴドが唾を飛ばしながら怒鳴ってきた。
「おい!レニアさんが手を出してるんだ!握手ぐらいしろ!常識だろうが!」
「ほ~~んと、常識がないよね~」
ケラケラと笑いながら言ったのは、大魔道士ウルべだ。
恐る恐る手を差し出せば、レニアと呼ばれた女性が私の手を握る。
「……っ!」
ギリギリと音がしそうな程に強く。
痛みで、顔が歪みそうになりながらも彼女を見やる。
「これからは、私がザハル様をお守りします。貴方の立場を奪ってしまってごめんなさいね」
レニアは、申し訳なさそうに、でも手は握りつぶす勢いで握ってくる。
「レニアが謝る必要は無い、無能なコイツが、何時までも居座ってたのが問題だったんだ」
「そうだよ、俺ら東西南北存在する勇者パーティの中でも1、2位を争うほどの最強パーティに、お荷物が居ることが問題だったんだ」
まぁ、と言って頬に手を添え顔を赤らめる彼女を、やっと離してもらった手を擦りながらジッと見る。
頷きながらも、私をお荷物と貶してくる狙撃手キリクの言葉に悲しくなってきた。
私だって、もう、このパーティーには居たくない……!
無能無能無能!
毎日、無能って言われて、でも、ポーションは作れって……
作っても感謝されることは無かった……!
(もうヤダ!こんなパーティー私だって願い下げよ!)
「分かりました。ならば、メンバー脱退の書類にサインをお願いします」
「書類なら、もう書いてある。これを持ってサッサと出ていけ!」
「残念だったね、君はもう東の勇者パーティじゃない。もう二度と高待遇は期待しない方が良いよ」
「じゃあな!無能錬金術師さんよ!」
そう言って蹴り飛ばされた私は、廊下で尻もちをつき、蹴り飛ばした相手を見た。
こちらをギロっと睨むゴド、蹴り飛ばされ尻もちを着いた私を朝笑うウルべ、静かに弓を構えるキリク、勇者の腕に胸を押し付けるように抱き着くレニア、そして、私を憎むような鋭い視線を向ける勇者ザハル。
私は、彼らの望むようにポーションを作ってきたはずだ。
体力回復、魔力回復、体力魔力回復、状態異常回復……全回復。
昨日も、要求分を納品したばかり。
なのに……この扱い……
目の前で、静かに扉は閉まっていく。
3年も頑張って来たのに……なんで……
視界が涙で霞んできた。
完全に扉が締まり、私は静かに立ち上がる。
(ギルドに行かなきゃ)
涙で視界が霞むも、この場に居座る訳にもいかない。
ここは、酒場と宿屋が一体化した冒険者用の宿屋だ。
ゆっくりと階段を下り、宿屋を出ていく。
もう一度、彼らが泊まっている部屋を見上げ、ギルドに向けて歩き出した。
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