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第39話
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ソルシエラの元王都付近が私の担当です。この近くには、魔獣が出る魔窟が大小合わせて4つほどあり……
危険なのはやはり、大きい魔窟です。なので……城があった街の南にある、海に近い魔窟から結界をはって行こうと思います。
海に近い魔窟が、私が担当する地域では1番大きな魔窟になります。水に関係する魔獣が多く生息し、魔窟の奥深くには竜種も存在している事が確認できています。ただ、何故か竜種は魔窟から外に出ることはなく、氾濫が起きても決して魔窟から出ない事も確認していました。
竜種の生態調査は、出来ませんでしたが…
竜種が居る魔窟の最深部付近は、強力な魔獣が多く生息しソルシエラの騎士では歯が立たなかったのです。
なら何故、竜種の生息確認が出来たかと言えば........偶然の賜物ですね。
上位種の魔獣に襲われ、騎士達を守りながら逃げてる時に竜種のいる空間に迷い込んだのです。竜は私達を一瞥しましたが、興味が無いのか殺す気がないのか直ぐに視線を外し寝てしまったのです。
敵うわけが無いので、騎士達を連れてその場を離れましたが……その場所を離れる時、竜が私を見た気がしました。竜の魔獣に知り合いなんていませんから、気の所為でしょうけど…
でも、何だかとても........いいえ、そんな訳ないですね。
とにかく、急いで魔窟の場所に向かったんです。
そこで私たちは、驚きの光景を目にすることになりました。
「メシア様…下がっていてください」
「メシア、前に出るな」
ルジャイ様とゾファロ様が前に出て、ナファール様が庇うように私の手を引き自分の後ろに引っ張りました。
ナファール様の背中に庇われる時、私は確かに見ました。
太陽の光を反射する、綺麗な水色の....
ナファール様の背中から顔を出し、さっき見えたものの正体を確かめるように目を凝らし覗きみました。
ルジャイ様とゾファロ様が対峙する向こう側....
そこには、太陽の光に反射して輝く綺麗な水色の鱗をした竜でした。あの時に見たのと同じ、いえ....あの時は魔窟の中で見たので、こんなに綺麗な鱗だとは思いませんでした。
「メシア様から聞いてはいたが、いざ対面すると厄介だな」
ルジャイ様が、ゾファロ様に下がるよう指示を出し自分も下がりました。お2人とも凄く強いのですが、竜が未知数のため攻勢に出るのを躊躇っているようです。
その時、竜が鎌首をもたげさせました。
当然、その仕草にルジャイ様達も武器を構えましたが....
竜は、首を持ち上げただけで攻撃してくる雰囲気はありませんでした。
「??」
「?」
首を上げた竜は、ただ静かに私達を見つめるだけ....
「どういう事だ?攻撃してこないのか?」
「竜種は、凶暴で獰猛だと聞きますが....」
「メシア様に、恐れをなしてるんじゃないっスか?」
「そういう感じじゃ無さそうだが....」
あの竜....
私が竜を凝視していると、竜もまた私を見ました。私たちの視線が重なると、竜は静かに立ち上がり魔窟の中に入って行きました。
「....は?」
警戒していたルジャイ様達は、困惑の声を上げる。当然ですよね?最も危険視されている竜が、凶暴で獰猛とされている竜が、ルジャイ様達でさえも苦戦する竜が、何もせず魔窟の中に入って行くんですから。でも、納得もしました....あの時と一緒だな、と。
「あの....あの竜に敵意は無いみたいです」
私は、前にもこういう事があったと....その時も、敵意は無く私達が離れるまで....いえ、離れる前も離れた後も私達人間を攻撃してくることは無かったと伝えました。
流石に皆さん驚いていたようですが、実際にこの目で見たからと納得もして下さいました。
理由は分かりません。
もしかしたら、魔獣の頂点に立つ竜種ですから、人間など取るに足らないと思っているのかも知れません。
でも....あの竜の、私を見る目は..............
どこか懐かしむような、嬉しそうな?
うーん、会ったと言っても、過去に逃げた時だけのはずですし...?
「メシア様?」
「どうした?メシア」
私が考え込んでいると、ロクさんとナファール様が心配そうに私の顔を覗き込んでいました。
「わっ....っ」
「っ!?すまん、驚かせるつもりは無かったのだが....どうした?何か気になることでもあるのか?」
私の顔を覗き込んでいたのは、ロクさんとナファール様でしたが、他の方達も周りを警戒しながら私を見ていました。結構長い間、ぼーっとしていたみたいです。
「すみません、なんでもないんです。魔獣の気配がないようでしたら、結界を張ってしまいますね」
そう言えば、先程から感じていた事なのですが....
この辺り一帯、魔獣がいません....ゾファロ様達が警戒してるから、と言えなくも無いのかも知れませんが....でも、1匹も出ないなんて事...あるのでしょうか?
「うむ、もしかしたら先程の竜が原因かも知れんな」
「竜、ですか?」
「あの竜、魔窟の前に居ただろう?」
そう言えば....
海に体を半分入れながらも、魔窟の真ん前を陣取っていた竜....竜の威圧、もしくわ力によって他の魔獣が外に出てこれなかった?
「竜が魔獣が外に出るのを防いでいた....とても信じられる事ではないが、こんなにも平穏だと逆に信じられてしまうな」
「メシア様、そろそろ結界を....先程の竜が、魔窟の中から顔を出していますっ!!」
慌てた兵士の声で、魔窟を見れば....
「........本当ですね」
水色の竜は、頭だけを外に出し何か訴えるような視線をこちらに寄越していました。まるで、『結界を張らないの?』と言っているように、私には感じられました。
だからという訳ではありませんが、魔窟の前に移動し祈るために膝をおりました。けれど、竜は私を見て頭を魔窟の中に戻し見つめるだけ....
私から少し離れたところで、ゾファロ様がすぐに動けるように待機していました。
危険なのはやはり、大きい魔窟です。なので……城があった街の南にある、海に近い魔窟から結界をはって行こうと思います。
海に近い魔窟が、私が担当する地域では1番大きな魔窟になります。水に関係する魔獣が多く生息し、魔窟の奥深くには竜種も存在している事が確認できています。ただ、何故か竜種は魔窟から外に出ることはなく、氾濫が起きても決して魔窟から出ない事も確認していました。
竜種の生態調査は、出来ませんでしたが…
竜種が居る魔窟の最深部付近は、強力な魔獣が多く生息しソルシエラの騎士では歯が立たなかったのです。
なら何故、竜種の生息確認が出来たかと言えば........偶然の賜物ですね。
上位種の魔獣に襲われ、騎士達を守りながら逃げてる時に竜種のいる空間に迷い込んだのです。竜は私達を一瞥しましたが、興味が無いのか殺す気がないのか直ぐに視線を外し寝てしまったのです。
敵うわけが無いので、騎士達を連れてその場を離れましたが……その場所を離れる時、竜が私を見た気がしました。竜の魔獣に知り合いなんていませんから、気の所為でしょうけど…
でも、何だかとても........いいえ、そんな訳ないですね。
とにかく、急いで魔窟の場所に向かったんです。
そこで私たちは、驚きの光景を目にすることになりました。
「メシア様…下がっていてください」
「メシア、前に出るな」
ルジャイ様とゾファロ様が前に出て、ナファール様が庇うように私の手を引き自分の後ろに引っ張りました。
ナファール様の背中に庇われる時、私は確かに見ました。
太陽の光を反射する、綺麗な水色の....
ナファール様の背中から顔を出し、さっき見えたものの正体を確かめるように目を凝らし覗きみました。
ルジャイ様とゾファロ様が対峙する向こう側....
そこには、太陽の光に反射して輝く綺麗な水色の鱗をした竜でした。あの時に見たのと同じ、いえ....あの時は魔窟の中で見たので、こんなに綺麗な鱗だとは思いませんでした。
「メシア様から聞いてはいたが、いざ対面すると厄介だな」
ルジャイ様が、ゾファロ様に下がるよう指示を出し自分も下がりました。お2人とも凄く強いのですが、竜が未知数のため攻勢に出るのを躊躇っているようです。
その時、竜が鎌首をもたげさせました。
当然、その仕草にルジャイ様達も武器を構えましたが....
竜は、首を持ち上げただけで攻撃してくる雰囲気はありませんでした。
「??」
「?」
首を上げた竜は、ただ静かに私達を見つめるだけ....
「どういう事だ?攻撃してこないのか?」
「竜種は、凶暴で獰猛だと聞きますが....」
「メシア様に、恐れをなしてるんじゃないっスか?」
「そういう感じじゃ無さそうだが....」
あの竜....
私が竜を凝視していると、竜もまた私を見ました。私たちの視線が重なると、竜は静かに立ち上がり魔窟の中に入って行きました。
「....は?」
警戒していたルジャイ様達は、困惑の声を上げる。当然ですよね?最も危険視されている竜が、凶暴で獰猛とされている竜が、ルジャイ様達でさえも苦戦する竜が、何もせず魔窟の中に入って行くんですから。でも、納得もしました....あの時と一緒だな、と。
「あの....あの竜に敵意は無いみたいです」
私は、前にもこういう事があったと....その時も、敵意は無く私達が離れるまで....いえ、離れる前も離れた後も私達人間を攻撃してくることは無かったと伝えました。
流石に皆さん驚いていたようですが、実際にこの目で見たからと納得もして下さいました。
理由は分かりません。
もしかしたら、魔獣の頂点に立つ竜種ですから、人間など取るに足らないと思っているのかも知れません。
でも....あの竜の、私を見る目は..............
どこか懐かしむような、嬉しそうな?
うーん、会ったと言っても、過去に逃げた時だけのはずですし...?
「メシア様?」
「どうした?メシア」
私が考え込んでいると、ロクさんとナファール様が心配そうに私の顔を覗き込んでいました。
「わっ....っ」
「っ!?すまん、驚かせるつもりは無かったのだが....どうした?何か気になることでもあるのか?」
私の顔を覗き込んでいたのは、ロクさんとナファール様でしたが、他の方達も周りを警戒しながら私を見ていました。結構長い間、ぼーっとしていたみたいです。
「すみません、なんでもないんです。魔獣の気配がないようでしたら、結界を張ってしまいますね」
そう言えば、先程から感じていた事なのですが....
この辺り一帯、魔獣がいません....ゾファロ様達が警戒してるから、と言えなくも無いのかも知れませんが....でも、1匹も出ないなんて事...あるのでしょうか?
「うむ、もしかしたら先程の竜が原因かも知れんな」
「竜、ですか?」
「あの竜、魔窟の前に居ただろう?」
そう言えば....
海に体を半分入れながらも、魔窟の真ん前を陣取っていた竜....竜の威圧、もしくわ力によって他の魔獣が外に出てこれなかった?
「竜が魔獣が外に出るのを防いでいた....とても信じられる事ではないが、こんなにも平穏だと逆に信じられてしまうな」
「メシア様、そろそろ結界を....先程の竜が、魔窟の中から顔を出していますっ!!」
慌てた兵士の声で、魔窟を見れば....
「........本当ですね」
水色の竜は、頭だけを外に出し何か訴えるような視線をこちらに寄越していました。まるで、『結界を張らないの?』と言っているように、私には感じられました。
だからという訳ではありませんが、魔窟の前に移動し祈るために膝をおりました。けれど、竜は私を見て頭を魔窟の中に戻し見つめるだけ....
私から少し離れたところで、ゾファロ様がすぐに動けるように待機していました。
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