3 / 6
第3話 地竜と会話
しおりを挟む
アイシャを休ませながら、目的地まで進むと、砂が盛り上がったような場所に辿り着いた。
山ではない。
砂が集まって固まったような、そんな感じの砂の小山が目の前にあった。その砂山には空洞があって、中に入れるようだった。
「ここに、地竜様が?」
声に出すつもりのなかった問いが、口をついて出てしまった。思いっきり素の声で……
(じゃなくてっ!)
「こんな所に、地竜が?……ここに入るんですのぉ~?」
物すっごく!嫌そうに聞こえるように言ってやったわ。
「あぁ、嫌なら待っていればいい」
「……い、行くわよっ!行けばいいんでしょ?!アイシャっ!行くわよ!」
「は、はい!姫様っ」
「…………」
アマルの言葉は嫌そうだったが……その表情が、態度が、伴っていなかった。アマルの顔は初めて見る景色に瞳を輝かせ、楽しそうな足取りは軽やかに砂山の中に入っていった。
もちろん、ソルにはアマルが漏らした最初の言葉も聞こえていた。近くにいた、ラシードにも。
「あの娘の行動が、分かりません」
「ああ、……行くぞ、ラシード」
「はっ」
先に行ったアマルを追うように、ソル達は砂山の中に入って行く。
まるで小さな鍾乳洞のような光景に、アマルは内心興奮していた。
(本でしか知らなかったけど……凄く綺麗…)
アマルは、隠しているつもりなのだろうが、進む度に瞳を輝かせ、「あれは何ですか?」「あっちは?」と、ソルに聞く姿は年相応の少女で……ソルはといえば、表情を崩すこと無くアマルの問いに答えていた。
「おい、止まれ」
「え?」
急に腕を捕まられ後ろに引き戻される。
(な、なに?!)
彼の胸に倒れ込み、意図しない距離に顔が勝手に赤くなる。
(っ!ち、違う、これは違うのよっ。ドキッとなんてしてないわっ!)
「なにす……んぐ」
文句を言おうとして、口を塞がられる。
抗議の視線を上に投げると、彼の瞳と視線が重なった。
なんの感情もない視線なのに……
《黙ってろ》
そう言われている気がした。
「…………。」
私が黙ると、彼の手が口から離された。それが少し名残惜しい……なんて、思わないですわ…
「あまり大きな声を出すな。地竜様が驚かれる」
ソル様の視線を追って、奥の少し明るい方を見た。
そこには……
淡い光に照らされた、人の数倍はありそうな竜がいたわ。鈍色に光る鱗は、一部が鋭く尖っており触ると怪我をしそうでした。そして近付く私たちの気配を感じ取ったのか、地竜様はゆっくりとした動作で起き上がり唸り声をあげましたの。
あまりの大きな声に一瞬驚いて、腰を抜かしそうでしたわ。
グゥルルルルゥ(※1)
『ほう、人の子か。もう、そんな時期か……ふむ』
「地竜殿、様子はどうでしょうか?何か困った事はありますか?」
ソル様が、地竜様に問いかけます。
……ソル様には、地竜様の言葉が分かるのでしょうか?私と同じ力が……?
私には……言語理解能力がありますので、分かりますけれど……?
「……水晶だ。地の水晶は、彼らの感情を映す。怒りや痛いと言った感情には赤く、辛く悲しい感情には青く、楽しい嬉しいと言った感情にはオレンジ色で映し出される。他にも色々とあるが、それらを読み取り、言いたい事を察するんだ」
私がソル様の顔を覗いていたからでしょう。ソル様が面倒臭そうに、ですが丁寧に教えて下さいました。なので、ラシード様が持つ水晶に目をやると、さっき教えて貰った色では無く黄色をしていました。
「黄色は、驚き、興味、愉快等を表すんだ」
「そうなんですね」
グゥルルル、ルルゥ
『おや、知らないお嬢さんが居るよ』
グル
『誰かな?』
グルルッルゥ
『知らないよ。ソルが教えてくれるんじゃないか?』
竜同士が会話をしている。
ラシード様が持つ水晶と同じものを持った人が他にも数人いて、それぞれが担当と思われる地竜の傍に行った。
どの水晶も黄色を示していて、よっぽど私の存在が気になるみたいだわ。
そしてソル様とラシード様は、地竜の中でも1番大きな竜の傍に行ったので私もついて行った。
……凄く嫌そうな顔をしてるわ…2人とも。
グゥルルル
『今回も、特に何も無いぞ』
地竜様の唸り声に反応した水晶は、穏やかな新緑色をしていた。彼の言葉通り、特に何も無く安定しているんだと思いますわ。
「今の所、異常は無さそうだな」
ソル様は、大きな地竜様の前に立つラシード様の水晶を見て、他の方たちが持つ水晶にも目を配ると、安心したように頷いた。
「はい、では野営の準備をしますか?」
「あぁ、そうしてくれ」
「畏まりました」
「俺は、この辺りを見てくる。……姫は危ないので、付いて来ないでください」
「し、仕方ありませんから、待っていてあげます」
と嫌そうに言った。
彼の前では、なるべく我儘に傲慢に……を心掛けないとっ!
ソル様が離れ、ラシード様は私を警戒しながらも野営の準備をしに行った。時折、こちらに視線を投げてくるので、私がおかしな行動をしないように監視してるんだと思いますわ。
私は小さく微笑み、ラシード様の目を盗んで地竜様の方に近寄った。
グルゥ
『なんだ?』
「少し話しをしてみたくて……竜と話すのは初めてですの」
グル、グルルゥ
『我とか?!水晶はどうした?』
「無くても大丈夫ですわ。地竜様の言葉は分かりますから」
私は、他の人に聞こえないように気を付けながら地竜様と会話を続けた。
グゥルルル
『なんと!言語能力を持った人間が現れるとはのぉ』
「珍しい事なのですか?」
グル、ルルルル
『そうじゃな、近年ではあまり見かけぬ』
そうなんだ……
じゃあ、隠していて正解だったかも。
竜と話せると祖国にバレたら、もっと嫌なことさせられそうだもの。
ソル様が戻ってくるまで、私は地竜様との会話を楽しんだ。
もうすぐ、一日目が終わる……っ?!
─────
※1
地竜の唸り声の後に『』で示した言葉は、ソルや他の人間には伝わっていません。
『』の中の言葉は、アマルのみ理解しております。よろしくお願いします(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
山ではない。
砂が集まって固まったような、そんな感じの砂の小山が目の前にあった。その砂山には空洞があって、中に入れるようだった。
「ここに、地竜様が?」
声に出すつもりのなかった問いが、口をついて出てしまった。思いっきり素の声で……
(じゃなくてっ!)
「こんな所に、地竜が?……ここに入るんですのぉ~?」
物すっごく!嫌そうに聞こえるように言ってやったわ。
「あぁ、嫌なら待っていればいい」
「……い、行くわよっ!行けばいいんでしょ?!アイシャっ!行くわよ!」
「は、はい!姫様っ」
「…………」
アマルの言葉は嫌そうだったが……その表情が、態度が、伴っていなかった。アマルの顔は初めて見る景色に瞳を輝かせ、楽しそうな足取りは軽やかに砂山の中に入っていった。
もちろん、ソルにはアマルが漏らした最初の言葉も聞こえていた。近くにいた、ラシードにも。
「あの娘の行動が、分かりません」
「ああ、……行くぞ、ラシード」
「はっ」
先に行ったアマルを追うように、ソル達は砂山の中に入って行く。
まるで小さな鍾乳洞のような光景に、アマルは内心興奮していた。
(本でしか知らなかったけど……凄く綺麗…)
アマルは、隠しているつもりなのだろうが、進む度に瞳を輝かせ、「あれは何ですか?」「あっちは?」と、ソルに聞く姿は年相応の少女で……ソルはといえば、表情を崩すこと無くアマルの問いに答えていた。
「おい、止まれ」
「え?」
急に腕を捕まられ後ろに引き戻される。
(な、なに?!)
彼の胸に倒れ込み、意図しない距離に顔が勝手に赤くなる。
(っ!ち、違う、これは違うのよっ。ドキッとなんてしてないわっ!)
「なにす……んぐ」
文句を言おうとして、口を塞がられる。
抗議の視線を上に投げると、彼の瞳と視線が重なった。
なんの感情もない視線なのに……
《黙ってろ》
そう言われている気がした。
「…………。」
私が黙ると、彼の手が口から離された。それが少し名残惜しい……なんて、思わないですわ…
「あまり大きな声を出すな。地竜様が驚かれる」
ソル様の視線を追って、奥の少し明るい方を見た。
そこには……
淡い光に照らされた、人の数倍はありそうな竜がいたわ。鈍色に光る鱗は、一部が鋭く尖っており触ると怪我をしそうでした。そして近付く私たちの気配を感じ取ったのか、地竜様はゆっくりとした動作で起き上がり唸り声をあげましたの。
あまりの大きな声に一瞬驚いて、腰を抜かしそうでしたわ。
グゥルルルルゥ(※1)
『ほう、人の子か。もう、そんな時期か……ふむ』
「地竜殿、様子はどうでしょうか?何か困った事はありますか?」
ソル様が、地竜様に問いかけます。
……ソル様には、地竜様の言葉が分かるのでしょうか?私と同じ力が……?
私には……言語理解能力がありますので、分かりますけれど……?
「……水晶だ。地の水晶は、彼らの感情を映す。怒りや痛いと言った感情には赤く、辛く悲しい感情には青く、楽しい嬉しいと言った感情にはオレンジ色で映し出される。他にも色々とあるが、それらを読み取り、言いたい事を察するんだ」
私がソル様の顔を覗いていたからでしょう。ソル様が面倒臭そうに、ですが丁寧に教えて下さいました。なので、ラシード様が持つ水晶に目をやると、さっき教えて貰った色では無く黄色をしていました。
「黄色は、驚き、興味、愉快等を表すんだ」
「そうなんですね」
グゥルルル、ルルゥ
『おや、知らないお嬢さんが居るよ』
グル
『誰かな?』
グルルッルゥ
『知らないよ。ソルが教えてくれるんじゃないか?』
竜同士が会話をしている。
ラシード様が持つ水晶と同じものを持った人が他にも数人いて、それぞれが担当と思われる地竜の傍に行った。
どの水晶も黄色を示していて、よっぽど私の存在が気になるみたいだわ。
そしてソル様とラシード様は、地竜の中でも1番大きな竜の傍に行ったので私もついて行った。
……凄く嫌そうな顔をしてるわ…2人とも。
グゥルルル
『今回も、特に何も無いぞ』
地竜様の唸り声に反応した水晶は、穏やかな新緑色をしていた。彼の言葉通り、特に何も無く安定しているんだと思いますわ。
「今の所、異常は無さそうだな」
ソル様は、大きな地竜様の前に立つラシード様の水晶を見て、他の方たちが持つ水晶にも目を配ると、安心したように頷いた。
「はい、では野営の準備をしますか?」
「あぁ、そうしてくれ」
「畏まりました」
「俺は、この辺りを見てくる。……姫は危ないので、付いて来ないでください」
「し、仕方ありませんから、待っていてあげます」
と嫌そうに言った。
彼の前では、なるべく我儘に傲慢に……を心掛けないとっ!
ソル様が離れ、ラシード様は私を警戒しながらも野営の準備をしに行った。時折、こちらに視線を投げてくるので、私がおかしな行動をしないように監視してるんだと思いますわ。
私は小さく微笑み、ラシード様の目を盗んで地竜様の方に近寄った。
グルゥ
『なんだ?』
「少し話しをしてみたくて……竜と話すのは初めてですの」
グル、グルルゥ
『我とか?!水晶はどうした?』
「無くても大丈夫ですわ。地竜様の言葉は分かりますから」
私は、他の人に聞こえないように気を付けながら地竜様と会話を続けた。
グゥルルル
『なんと!言語能力を持った人間が現れるとはのぉ』
「珍しい事なのですか?」
グル、ルルルル
『そうじゃな、近年ではあまり見かけぬ』
そうなんだ……
じゃあ、隠していて正解だったかも。
竜と話せると祖国にバレたら、もっと嫌なことさせられそうだもの。
ソル様が戻ってくるまで、私は地竜様との会話を楽しんだ。
もうすぐ、一日目が終わる……っ?!
─────
※1
地竜の唸り声の後に『』で示した言葉は、ソルや他の人間には伝わっていません。
『』の中の言葉は、アマルのみ理解しております。よろしくお願いします(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに対して、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載しております。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
婚約破棄の日の夜に
夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。
ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。
そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました
あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。
そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。
平民出身のヒロインの「善意」、
王太子の「優しさ」、
そしてそれらが生み出す無数の歪み。
感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。
やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。
それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。
なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。
これは、
「断罪される側」が最後まで正しかった物語。
そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる