嫌われ者の王女、砂漠の地で大切にされる

紫宛

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第4話 毒紋

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その日の夜……

「……っ?!」

毒紋っが……っ!!

(指先が……痺っれ……)

「おい!どうした?!」
「……ソ…?」


何でここに、ソル様が……?!


確か……一緒に食事をとって、地下水で沐浴して……それぞれのテントに戻ったはず…っ
ここにいるはずがないのに……!

「おい……っ!誰かっ」
「へ、……いき、だ……」
「何が平気だっ」
「すぐ、なお……るから、だれも……よばな、ぃで」
「…………」

衛生兵を呼ぼうとするソル様を、痺れる手で服を掴み何とか止める。
私が止めると彼は、掴んでいた私の手を解き自身の体に寄せた。

「俺に寄りかかれ」

唇や舌先が痺れ、上手く話せなくなる。
彼に引き寄せられ、広い胸板に頬を寄せると彼の心音が聞こえてくる。

……彼は私を胸に抱き寄せても、ドキドキしてる感じはないみたい。そうよね……政略結婚だし、大っ嫌いな敵国の姫だもんね……

背中をポンポンと叩く彼の手が心地よく、次第に意識が薄れていく。この毒は、段階的に進行するもの……1段階目は軽い痺れに襲われるだけのはず…眠くなる要素……なんて……

「……スー」
「……寝たのか?」
「……」

ソルは、アマルを抱き上げ布団に寝かせた。




「もう良いぞ、入って来い」

外に向かって声を掛けるが、中々そいつは入って来ない。「どうした?」と声を掛ければ「失礼します」と言う言葉と共にラシードが入ってきた。

「敵とはいえ、女性ですからね。女性の部屋に無断で入るのは……ねぇ」
「…………」

非難の目が俺に向けられる。

いや、だって、大きな音がしたんだっ!
何かあったのかと思うだろ?!しかも、入ったら姫が蹲ってるから……尚のことっ

確かに、姫の了承を得ないで勝手に入ったのは悪かったと思っているが……。

「兎に角、アマル姫を布団に寝かせた方が良いのではありませんか?」
「……そうだな」

俺は姫を抱き上げ、布団に……布団……?
布団はどこだ?

目の前にあるのは、薄い布の上に小さなクッションを置いたような簡素な布団?だった。

「これが、布団か?姫の寝床と言うには、簡素すぎないか?」
「……ええ、そうですね」
「知ってたか?」
「知るわけないでしょう」
「だよな……」

とりあえず、ひざ掛けの様な布を捲り姫を寝かせた。小さなテントの中には荷物などなく、小さな小箱がひとつ置いてあるだけだった。俺のテントの中だって、もっと荷物はあるぞ……。

「ラシード、俺のテントからクッションをいくつか持って来い」
「はっ?」

ラシードはソルに正気ですか?という視線を送るが、ソルは「早くしろ」と言うだけだった。

仕方なさそうにため息をつくと、ラシードはテントから出ていく。




……『月華の姫』

ソルは穏やかに眠るアマルを見て、昔出会った一人の少女を思い出していた。
銀色に輝く長い髪を持ち、言語能力を持った強く美しい少女……『月華の姫』

ずっと、また会いたいと思っていた。
だが、会えないまま時は流れ、今では顔を思い出せないが……それでも、あの美しい銀の髪と、強き心は色褪せることなく覚えている。

アマル姫……銀の髪を持つ、敵国の姫……
彼女は少し『月華の姫』に似ている気がする……

「お待たせしました。ですが、宜しいんですか?」
「構わない。姫の寝床に敷いてやってくれ」

今は、まだ……

姫の事は分からない。
敵なのか、味方なのか……

それに……苦しんでいた理由も…

ラシードと共にテントを出て、振り返る。

「ラシード、彼女が『月華の姫』だったら俺は……」

俺は……どうするんだろうか……
俺が彼女を認めたとしても…仲間が、民が、敵国の人間である姫を認めるとは思えない。

「貴方が信じたならば……私達は、付いて行くだけですよ」
「…………」

そんな2人を、たまたま起きていた地竜が見ていた。

グル、グルルゥ
『若いというのは、いいもんじゃのぉ』
グゥルルル、ルッルッル
『約束したからのぉ。ほっほっほ』

小さく唸り、目を閉じた地竜。
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