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第3話
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「来たな、キナイ」
「シグルト様……」
シグルト様に呼び出され向かった先は、彼のお屋敷の庭でしたの。昼間、ガーデンパーティをした場所です。
あれからだいぶ時間が経ち、公爵家のご好意で泊まっていくことになり今夜、シグルト様に呼び出されたという事ですの。
公爵家には、昔からよく泊まりに来てましたの。シグルト様のご両親は優しく、私にも良くして下さいますから。
「座ってくれ」
「分かりましたの」
庭の東屋で、2人並んで腰かけました。
膝掛けやクッションが既に多く用意されていて、座り心地は悪くなく寒くもなかったですの。
「呼び出された理由は、分かるか?」
「……いえ」
「昼間、俺の言葉…信じられなかった?」
「……」
「やっぱり、な」
『言ってません。私はキナイに不誠実になるような事はしてませんし言ってません』
シグルト様の言葉を、信じてないわけではありませんの。
でも……何も話して貰えない、何が起きるか教えて貰えない、そんな状態が続けば不安にもなりますの。
「キナイ、俺はお前を裏切る事は絶対にない。今までもこれからも」
「……」
「信じられないか」
「……」
私は、何も答えられませんでしたの……
シグルト様の顔が見られず、俯いてしまいました。
学園にいた時から、シグルト様は何も話されませんでした。私を巻き込みたくないから……そう言いますが、今回は巻き込まれています。なのに、何も聞かされていませんでした。
何故ですの?
どうしていつも、私には何も話して下さらないのですか?フィレニア様には話していたのでしょう?聞きましたのよ。
「……」
私は何も言えず沈黙が場を支配しますのに、シグルト様も何も話されませんでした。顔が見えないので、どんな表情をしてるのかは分かりませんけど…
それからどれだけの時間が経ったでしょうか…
不意にシグルト様の手が、私の手に触れましたの。
「俺が何も話さないのは、お前を危険に晒したくないからだ」
「……分かってますの。いつも、そう言いますものね」
「俺は次期宰相だ、命だって常に狙われている。機密事項を知れば、キナイだって命の危険に晒される。俺は……それが嫌だ」
「私は……シグルト様にとって、居ても居なくても良い存在……という訳ですの?」
「?!そんな訳っ……!」
だってそうでしょう?
貴方は私を必要としたことありませんもの。
「私は……シグルト様にとって邪魔な存在なんですのよね?何も聞かされず、何も相談されず、ただただ守られるだけの存在……それって、居なくても良いと思いますの…」
だから……
「婚約……破棄…しても、良いですのよ?」
込み上げる思いを何とか押し込めて、顔を上げてシグルト様の方を見ましたの。
瞳から、一筋涙が落ちるのを皮切りに、大粒の涙が頬を伝って落ちていきますけど……涙を拭わず私はシグルト様を見つめます。
次第に、シグルト様の顔が見えなくなるまで私は涙を拭えませんでした。
「ち、違っ!おれは……俺は!」
シグルト様にしては珍しく声を荒らげ、握っていた手を離し私の肩に手を置き真正面からシグルト様に見つめられ、一瞬涙が止まりました。
「キナイが嫌いとか、迷惑とか、邪魔だとか思った事は1度もない!相談しなかったのは、本当に心配で巻き込みたくなかったからだ!……子供の頃に、1度危険な目にあってるだろう?怪我だってしたじゃないかっ」
子供の頃……ですの?
「俺達がまだ、10歳だった頃だ…お忍びでこっそり街の市場に出掛けたことがあっただろう?」
10歳の頃、確かに親にも従者にも護衛にも内緒で出掛けたことがありましたの……
「その時、次期宰相に選ばれてはなかったけど、それでも……俺が原因でならず者に襲われただろ?お前は俺を庇って背中に傷を負った……一生、消えること無い傷を……」
……あぁ、そうでしたの。
確かに……大怪我を負って両親に怒られて、1度婚約が破談になりかけましたね。2人で必死に説得して、婚約を続行したのでした。
「その時、お前の両親に誓った。二度と危険な目に遭わせないと、必ず守ると…誓ったんだ」
「そうだったんですの……」
「嫌ってなどいない、寧ろ愛してるんだ!……頼むから、婚約破棄だなどと……言わないでくれっ」
私の胸に頭を押し付け、シグルト様は涙を流しましたの……彼が泣く姿は、あの時以来です…私が怪我を負った、あの日以来……
「……事情は分かりましたの。でも、何も知らされないと言うのは、悲しいですの。信頼されてないみたいで…」
「悪かったっ」
「お願いですの、私にも手伝わせて下さい…力になれる事もあると思いますの。邪魔になりそうな時は身を引きますから……何が起きても、守ってくれるのでしょう?」
「あぁ……悪かった。悪かった、キナイ。愛してる、愛してるよ」
シグルト様の本心を知る事が出来て、本当に良かったですの。
危険な目にあうのは怖い事です。
でも、シグルト様と一緒なら乗り越えられると私信じてますの。
シグルト様は、誓いは違えないと私のお父様にもう一度約束したそうですの。
『また、キナイを危険な目に合わせるかも知れません。でも、絶対に守ります!だから、彼女を私の人生に巻き込む事をお許し下さい!!』
と。
お父様は何も言わず、シグルト様の頭を撫でて部屋を出て行きました。お母様は、私にこっそりと「良かったわね」と言ってお父様の後を追って行きました。
あれから、何度か危険な目にあいましたが…シグルト様は誓い通り私を守って下さいました。
~完~
「シグルト様……」
シグルト様に呼び出され向かった先は、彼のお屋敷の庭でしたの。昼間、ガーデンパーティをした場所です。
あれからだいぶ時間が経ち、公爵家のご好意で泊まっていくことになり今夜、シグルト様に呼び出されたという事ですの。
公爵家には、昔からよく泊まりに来てましたの。シグルト様のご両親は優しく、私にも良くして下さいますから。
「座ってくれ」
「分かりましたの」
庭の東屋で、2人並んで腰かけました。
膝掛けやクッションが既に多く用意されていて、座り心地は悪くなく寒くもなかったですの。
「呼び出された理由は、分かるか?」
「……いえ」
「昼間、俺の言葉…信じられなかった?」
「……」
「やっぱり、な」
『言ってません。私はキナイに不誠実になるような事はしてませんし言ってません』
シグルト様の言葉を、信じてないわけではありませんの。
でも……何も話して貰えない、何が起きるか教えて貰えない、そんな状態が続けば不安にもなりますの。
「キナイ、俺はお前を裏切る事は絶対にない。今までもこれからも」
「……」
「信じられないか」
「……」
私は、何も答えられませんでしたの……
シグルト様の顔が見られず、俯いてしまいました。
学園にいた時から、シグルト様は何も話されませんでした。私を巻き込みたくないから……そう言いますが、今回は巻き込まれています。なのに、何も聞かされていませんでした。
何故ですの?
どうしていつも、私には何も話して下さらないのですか?フィレニア様には話していたのでしょう?聞きましたのよ。
「……」
私は何も言えず沈黙が場を支配しますのに、シグルト様も何も話されませんでした。顔が見えないので、どんな表情をしてるのかは分かりませんけど…
それからどれだけの時間が経ったでしょうか…
不意にシグルト様の手が、私の手に触れましたの。
「俺が何も話さないのは、お前を危険に晒したくないからだ」
「……分かってますの。いつも、そう言いますものね」
「俺は次期宰相だ、命だって常に狙われている。機密事項を知れば、キナイだって命の危険に晒される。俺は……それが嫌だ」
「私は……シグルト様にとって、居ても居なくても良い存在……という訳ですの?」
「?!そんな訳っ……!」
だってそうでしょう?
貴方は私を必要としたことありませんもの。
「私は……シグルト様にとって邪魔な存在なんですのよね?何も聞かされず、何も相談されず、ただただ守られるだけの存在……それって、居なくても良いと思いますの…」
だから……
「婚約……破棄…しても、良いですのよ?」
込み上げる思いを何とか押し込めて、顔を上げてシグルト様の方を見ましたの。
瞳から、一筋涙が落ちるのを皮切りに、大粒の涙が頬を伝って落ちていきますけど……涙を拭わず私はシグルト様を見つめます。
次第に、シグルト様の顔が見えなくなるまで私は涙を拭えませんでした。
「ち、違っ!おれは……俺は!」
シグルト様にしては珍しく声を荒らげ、握っていた手を離し私の肩に手を置き真正面からシグルト様に見つめられ、一瞬涙が止まりました。
「キナイが嫌いとか、迷惑とか、邪魔だとか思った事は1度もない!相談しなかったのは、本当に心配で巻き込みたくなかったからだ!……子供の頃に、1度危険な目にあってるだろう?怪我だってしたじゃないかっ」
子供の頃……ですの?
「俺達がまだ、10歳だった頃だ…お忍びでこっそり街の市場に出掛けたことがあっただろう?」
10歳の頃、確かに親にも従者にも護衛にも内緒で出掛けたことがありましたの……
「その時、次期宰相に選ばれてはなかったけど、それでも……俺が原因でならず者に襲われただろ?お前は俺を庇って背中に傷を負った……一生、消えること無い傷を……」
……あぁ、そうでしたの。
確かに……大怪我を負って両親に怒られて、1度婚約が破談になりかけましたね。2人で必死に説得して、婚約を続行したのでした。
「その時、お前の両親に誓った。二度と危険な目に遭わせないと、必ず守ると…誓ったんだ」
「そうだったんですの……」
「嫌ってなどいない、寧ろ愛してるんだ!……頼むから、婚約破棄だなどと……言わないでくれっ」
私の胸に頭を押し付け、シグルト様は涙を流しましたの……彼が泣く姿は、あの時以来です…私が怪我を負った、あの日以来……
「……事情は分かりましたの。でも、何も知らされないと言うのは、悲しいですの。信頼されてないみたいで…」
「悪かったっ」
「お願いですの、私にも手伝わせて下さい…力になれる事もあると思いますの。邪魔になりそうな時は身を引きますから……何が起きても、守ってくれるのでしょう?」
「あぁ……悪かった。悪かった、キナイ。愛してる、愛してるよ」
シグルト様の本心を知る事が出来て、本当に良かったですの。
危険な目にあうのは怖い事です。
でも、シグルト様と一緒なら乗り越えられると私信じてますの。
シグルト様は、誓いは違えないと私のお父様にもう一度約束したそうですの。
『また、キナイを危険な目に合わせるかも知れません。でも、絶対に守ります!だから、彼女を私の人生に巻き込む事をお許し下さい!!』
と。
お父様は何も言わず、シグルト様の頭を撫でて部屋を出て行きました。お母様は、私にこっそりと「良かったわね」と言ってお父様の後を追って行きました。
あれから、何度か危険な目にあいましたが…シグルト様は誓い通り私を守って下さいました。
~完~
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