【完結】妹の激白~旦那様が、まさか─と裸で寝ているなんてっ~

紫宛

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プロポーズ

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「リリィ・スパロウ様。どうか、この手を取って俺と結婚して頂けませんか?
 俺は、ずっと貴方が好きでした。愛しております……ですから…」
「ですが、私は……」


✾✾✾✾✾

拝啓、ルリィお姉様へ

私は今、とても困っています。

先日、お姉様が私を連れて隣国に連れて行って下さり、更に隣国の貴族の方の養子に入れて下さったお陰で、真面まともな生活がおくれています。
その事に関して、とても感謝しておりますわ。
その上、お姉様の護衛騎士にまでさせて頂き、私とても嬉しいんですの。


ですが……

スパロウ家にお世話になったその日から、ジェスト様の護衛騎士、アレフ様に結婚を申し込まれておりまして……
私は離婚した身ですから…釣り合わないと申しましたのに…『そんな事は気にしない』と仰られて……

新しく家族になりましたスパロウ家の皆さんも、『受けたらいい』と言って、アレフ様に味方なさいますし…

お姉様……私どうしたらいいのでしょう?

✾✾✾✾✾

「なんて手紙をリリィがくれたのよ?わたし、今からリリィの元に行ってくるわ!」
「ルリィが行かなくても!明日になれば、会えるじゃないかっ!リリィは、ルリィの護衛騎士になったんだからっ!!」
「それはそれ、これはこれよっ!護衛騎士としてそばに居る時のリリィは、仕事モードで全然姉妹の会話をしてくれないんだものっ」

執務室で何時もの会話をする2人は、この国ハクリマルの王と王妃である。妹リリィを溺愛する王妃と、王妃を取られたくない王の会話である。

侍女や執事達は慣れたもので、その光景を横目に入れても気にせずに仕事をこなす。

「リリィがアレフと結婚したら、リリィの1番は私じゃなくなるのよね……複雑だわ。幸せになって欲しいけど、1番は私がいいのに…」

と、ルリィが毎日リリィと言うので、ジェストはやはり面白くないと思っていた。
そんな時だ、更に面白くない人物達がルリィを訪ねてやって来たのは。

門番から報告が来て、執事長が俺の執務室にやって来た。報告を受けた時から、ルリィの顔から笑顔が消え…
「何しに来たのよ……縁は切った上に、向こうでは爵位と領地を取り上げられたのでしょう?良くここまで来れたわね。会うつもりは一切ないから、追い返して」と言った。

それから報告は上がっていないから、何処かに行ったのだと思う。



その数日後、アレフから有休の申請があった。リリィを誘って遠駆けに行くと言っていた。それを聞いたルリィが案の定「こっそり付いていくわ」と、だから僕は「今回は、止めてあげなよ」と言った。

だって確実に、プロポーズだろ?

毎日のようにスパロウ家に通い、逢瀬を重ねて来たんだ。だいぶ、仲も深まったようだし…リリィもOKするんじゃないかな?と思うんだよね。

「仕方ないわね……リリィの幸せが1番だもの。お姉ちゃん、今回我慢してあげるわ」

……ま、頑張りなよ、アレフ……
君も、僕と同じ思いを、すればいいんだ……

ジェストは、遠い目をした後フッと笑った。





今日は、アレフ様に誘われて小高い丘まで馬を走らせてきた。馬に乗って大地を駆けるのは、とても楽しいわ。この風を切る感覚も、とても久しぶりな気がする……解放的な気分になるわ。

初めて、プロポーズをしてくれたあの日から、毎日のように私を訪ねて下さいました。私はまだ来たばかりだと、ジェスト陛下が近衛騎士団長に話を通して下さって……仕事は少なめだったので。

なのでアレフ様は、自分の時間が空くと必ずお茶に誘って下さったり、時には街に遊びに連れて行ってくださったりと、とても楽しい毎日を送っていました。

でも流石に、これ以上返事を先延ばしにするのも失礼な気がして……先日手紙を出したのです。この間の返事をしたいと……

そしたら、遠駆けに誘ってくれて……

城下町を見下ろせる小高い丘の上で、馬から降りる……今日は令嬢スタイルなので、馬から降りるのに四苦八苦していたら、アレフ様が手を差し出してくれました。

恥ずかしくなって、顔を俯かせていたら「大丈夫か?」と心配気な声が真上から聞こえてきました。

バッと顔を上げれば、かなり近い位置にアレフ様の凛々しい顔があって、一気に顔に熱が集まった。

それを見たアレフ様か私を地面に下ろすと、「熱ですか?」と額をくっつけてきたっ!!

「だ、大丈夫ですわ!」
「そうですか?何かあったら、直ぐに言って下さいね」

アレフ様は、いつも優しい……
会った時も、私に寄り添って守って下さった。
何故……この方は、私にこんなに優しいのでしょうか?


2人で街を見下ろしていると、アレフ様が静かに語り始めた。

「リリィ様は、覚えてないかも知れませんね」
「え?」
「俺がリリィ様とお会いしたのは、あの日が初めてではありません。もう、7年前になります」

アレフ様と私は、7年前に既に会っているそうです。

「7年前の剣術大会……覚えていませんか?」

剣術大会……?
7年前……?

「あっ!……まさか」
「思い出して頂けましたか?」
「は、はい…最後まで決着が付かなかった…お方ですね」
「ええ、あの時、何故か悲しそうな顔で『ルリィ』と名乗っていましたね」

そうなんです。
剣術大会で良い成績を残せば、お父様やお母様に認めて頂ける。そう思って参加した剣術大会……ですが、決勝戦まで勝ち進んだものの、最後の対戦相手には決着が付かなかった。

白熱した戦いで、興奮冷めやらぬまま、相手の方と握手を交わした。

その時だ、お父様がを呼んだのは……

『ルリィ』

と大きな声で…

私は……、私達は、入れ替わってなどいなかったのに、気が付けば周りから褒め称えられるのは『ルリィ』お姉様。

リリィは、何も出来ない、何の役にも立たない穀潰しと言われ続けた。

「その時は、対戦相手が『ルリィ』様だと思っていました。我が主の想い人だと……ですが、実際に『ルリィ』様に会って、違うと気がつきました」

その日から、アレフ様は私を思ってくれていたそうです。

「実は…主を説き伏して、協力してもらい、歳を誤魔化して、あなたの通う学園にも在籍させて頂きました。その時には、貴方はもう奴の婚約者でしたが……っ!」
「そうだったんですか……」
「貴方が幸せなら、私は大人しく身を引きました。まぁ、在籍中は仲は悪くないように思いましたので……気付きませんでしたが…申し訳ありません」
「何故……アレフ様が謝るのですか?バルド様の事は、お気になさらないで」

アレフ様が、申し訳なさそうに頭を下げてきますが、彼から解放されたのです。
ですから、もう気になさる必要は無いのです。

そして私は意を決して、あの日の返事をアレフ様に伝えます。

「アレフ様…」
「リリィ様?」

「長く、お待たせして申し訳ありません。アレフ様の想いは受け取りました。まだ、あの時の言葉に変わりは無いでしょうか?それとも、もう私の事はお嫌いになりましたか?」
「……まさかっ!!俺が、貴方を嫌うなんて絶対にありませんよっ!!俺は、7年あなたを想い続けてきました。これだけは言いきれます。心変わりも、嫌いになる事もありません。絶対に…」

力強く否定して下さるアレフ様の言葉に、自然と涙が零れ落ちる。
あぁ、こんな私を、この方は、変わらず思っていてくれたんですね……

勉強は出来ず、家の役にも立てなかった私を、貴方は必要としてくれるのですね…

「こんな……私で、良ければ……アレフ様のお嫁さんにして、下さ…い」

涙で言葉を上手く紡げないけれど、アレフ様には伝わったようです。
アレフ様は、私の手を引き抱き締められました。その逞しい胸に顔を預け、アレフ様の胸の鼓動を聞いていました。

「貴方が良いのです。俺は、貴方が欲しいのです。リリィ、俺が必ず幸せにしますから、安心して嫁いでおいで」
「はいっ……!」



こうして、2人は一月後に結婚した。
リリィは、アレフと一緒に、王と王妃を死ぬまで守り続けたそうです。
アレフは、ルリィとリリィが仲睦まじく過ごしていても、リリィが幸せなら自分も幸せですと言って、2人の邪魔をする事はなかったそう。
(因みにジェストは、嫉妬剥き出しで毎回引き剥がしたそうです)


~完~


─────

本編はこれで終了になります。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました(´>///<`)
1部気持ち悪いシーンがあり、賛否両論でしたが楽しんで頂けたでしょうか?
あと2話、番外編を投稿し、完結とさせて頂きます。

あと少しの間、お付き合い下さいませ。

そして、余談ではありますが、「妹の激白~旦那様が、まさか─と裸で寝てるなんてっ~」が完結しましたら、お休みさせて頂いておりました「帝国に売られた伯爵令嬢、付加魔法士だと思ったら精霊士だった」を書いていこうと思います。
こちらも、良ければお読み頂ければと思います(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
長くなりましたが、ありがとうございました!
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