国を守護する聖獣は、聖女と呼ばれた少女より嫌われ者の悪女を望む

紫宛

文字の大きさ
7 / 10

第6話 神様……仲直り?

しおりを挟む
『これが、真相だよ』
『ボクたちは……人間が好き……』

ソル様と、レヴォネ様が語った昔話に私は驚きが隠せませんでした。
御二方が獣神だと言うことも、目の前にいる小さな銀色の龍が真龍神様だということも……私はまだ飲み込めずにいました。

『人間と仲良うするなど、妾が……っ!!』

真龍神様が物凄い形相で、私に突進して来ました!突然の事で私はどうすることも出来ずに、ただただ真龍神様を受け止めようと手を伸ばすと…

『妾の愛し子に何をするのじゃっ!』

後ろから物凄い勢いで飛んで来た何かが、真龍神様にぶつかりました。

『な、なんじゃ?!』

真龍神様にぶつかった何かは、炎の鳥でした。
処刑場から助け出して下さった、炎の聖獣様です。

『なんじゃ?!では無いわ!其方!妾の愛し子に攻撃しよったな?!』
『お主には関係ないわっ!邪魔するでない!』
『なんじゃと?!』

炎の鳥と銀の龍が、絡み合って喧嘩を始めてしまいました?!

「ど、とうしましょう?」
「放っておけ」

竜王陛下であるラファール様が「気にするな」と仰いますが、罵りあいの喧嘩は取っ組み合いの喧嘩に発展していました。

(本当に放置して良いのでしょうか?!)

『全く、騒々しいぞ』
『まぁ、そう言うなって』
『……』

そこに更に、声がかかりました。
後ろを振り返ると、頭に角を生やした青髪で長身の青年男性と、頭に耳を生やした黒と白の髪をした青年男性、長い黒い髪をした長身の中年男性が居ました。……中年は言い過ぎでしょうか?ですが、他の男性よりも歳がいってると思うのです。

この方々は……


『小娘が!妾に意見するでない!』
『小娘じゃと?!年増が偉そうにっ!』
『なっ?!妾を年増じゃと?!』

喧嘩の論点が、先程からズレていますが……喧嘩は更に熱を帯び、遂に周りに影響が出始めました。2人の喧嘩で、ガシャンと何かが砕けて割れる音が響いたんです。

喧嘩する2人に視線を戻すと、龍神様の尻尾や聖獣様の羽や足が、棚や机に当たって物を落としたり書類を破いたり……被害が拡大していました。

ナファール様が頭を抱えていますが、諦めたような視線を2人に向け私と目が合うと首を振り「仕方ありません」と口だけ動かしました。

「それで、お前はこれからどうするつもりだ?」

陛下も特段気にした様子はなく話を続けます。
私は……2人の喧嘩も、その前に現れた男性達のことも気になるんですけれど……

「……仕事を、探します」

この国の獣人達は人間を嫌っています。だから、先ずはこの国を出て仕事を探すしかありません。

「この国から出て行くのか?」
「私が居たら、真龍神様もこの国の民も嫌がりますでしょう?」
「……」

『…………』
『隙あり!じゃっ』
『何をするんじゃ!小娘!』

真龍神様がよそ見した隙に炎の聖獣様が、嘴で真龍神様の尻尾に噛み付きました

『よそ見をするからじゃ!』

炎の聖獣様は翼を広げ、得意げに大笑いしました。

『……』
「だから、早々に離れようと思いまして……」
『リアがそう決めたなら、僕も付いていくよ!』
『ボクも……』
『妾もじゃっ!!』

3人の男性も頷きました。

『紹介が遅れたな、俺はヴァン。風と西を司る聖獣だ』
『我はクヴェレ。水と東を司る聖獣』
『私は、ローシュと申します。土と北を司っております』
『妾は、ラヴァじゃ。炎と南を司っておる』

黒と白の髪をした男性がヴァン様
頭に角があって青髪の男性がクヴェレ様
長身黒髪の中年男性がローシュ様

炎の鳥が人型を取ると、褐色の肌をした赤い髪の妖艶な美女の姿を取りました。

この御方は……

思い出すのは、処刑場……手に打ち付けられた杭を溶かしたあの場面でした。
辛く悲しいあの出来事は、私の心に深い傷を残しました。やってもいない罪を捏造され、糾弾されたあの日……

「っ……」
『……ええぃ!その様に重苦しい空気をかもし出すでない!』

急に声を荒らげたのは、ラヴァ様と喧嘩していた真龍神様でした。

「え?」
『妾は人間が嫌いじゃ!獣神も嫌いじゃ!じゃが、別に其方が嫌いな訳じゃない!』
『えー、僕達はファサリスの事、嫌いじゃないよ?』
『妾は、あの日の事を許してはおらぬ!』
『……ちぇ』
『グラムノートも裏切りおってっ!』

グラムノート様?

私が首を傾げていると、レヴォネ様が教えて下さいました。何でも、ソルレヴォネ様が人間についてから数年後に人間と恋に落ち結婚したそうです。
魔神グラムノート様と生きるため、奥様は半神半人になったそうです。

それよりも気になる言葉が、真龍神様より発せられた気がします。

「真龍神様?」
『お主の事は、嫌いでは無いのじゃ。……本当は分かっておるのじゃ……これでも妾は、竜王の傍で其方そなたを見てきた。嘘は言わぬ、嫌な事も嫌な顔をせず引き受ける。自身を嫌ってる獣人にも優しくする。妾は、そんなお主をずっと見て来たのじゃ……嫌いに、なれるはずないのじゃ…』
「真龍神様……」
『妾の事は、ファサリスと呼ぶが良い。其方なら許そう。……じゃが、ソルレヴォネはダメじゃ』

まだ許してはやらぬと真龍神様、いえファサリス様が言いました。

『えー!?』
『なんで、ボクらだけ……』
「そういう事だ、ラフィーリア殿。お前の存在は俺の国では認められている。だからこそ、国の民とてお前に嫌悪を抱いてる者はいない」

ソル様レヴォネ様が文句を言う中、竜王陛下がこともなげに言ってのけました。

そして、更に驚くことを言ったのです。


_____

タイトルを改名予定です。
聖女の存在が、ほぼ一瞬でしたので……
聖女の名の必要性に疑惑が出ると思いましたので(*ᴗˬᴗ)⁾
ご了承ください。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから

神崎 ルナ
恋愛
 アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。    だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。  その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。  

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。

蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。 しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。 自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。 そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。 一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。 ※カクヨムさまにも掲載しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】 ご存知なかったのですね。聖女は愛されて力を発揮するのです

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 本当の聖女だと知っているのにも関わらずリンリーとの婚約を破棄し、リンリーの妹のリンナールと婚約すると言い出した王太子のヘルーラド。陛下が承諾したのなら仕方がないと身を引いたリンリー。  リンナールとヘルーラドの婚約発表の時、リンリーにとって追放ととれる発表までされて……。

処理中です...