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第170話
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◆神坂冬樹 視点◆
登校したら、先に来ていたハルと新谷君が梅田さんとローラン君と江藤君の歓迎会の誘いを行っていた。聞こえてくる感じからしてほとんどの生徒が参加するようだ。
中には部活に熱心な印象の生徒もいたけど、今日だけは休んで参加をするようだ。
その様な歓迎会についての話題がクラス中を独占している雰囲気で、知られていないだろう塚田教諭の件が話題になることもなくいつもよりも賑わった朝の教室となっていた。
SHR時間になり高梨先生と鈴木先生が入室してきて、また雰囲気が変わった様に感じる。
「おはようございます。塚田先生がいらっしゃらなくてわたし達が姿を見せたことで何事かと思われていると思いますが、まずは話を聞いてください」
高梨先生が硬い表情で話し始めて、隣では鈴木先生が神妙な面持ちで見守っている。
「突然のことで皆さんには申し訳ないのですが、塚田先生は事情によりもう学校へはいらっしゃらなくなりました。
病気や怪我といった事ではなく、健康面では問題はありませんのでその点はご安心ください。
その塚田先生がいらっしゃらなくなったことを受けて、このクラスの担任はわたしが3月まで代理を務めさせていただきます。
鈴木先生は塚田先生と同じ数学科ですので、ご負担を考慮して今まで通り副担任として関わっていただき、また塚田先生が担当されていた数学Bについては、当面鈴木先生や他の数学科の先生に交代で授業していただきながら、新しい先生に来ていただく様に学校側で新規の教員採用を進めています。
しばらくはご迷惑をおかけしてしまうと思いますが、よろしくお願いします」
「今、高梨先生が仰ったように私はこれからも副担任として関わらせてもらいますし、数学の授業もⅡだけでなくBでもフォローさせてもらいますのでよろしくお願いします」
高梨先生に続いて鈴木先生も挨拶をしたところで、クラス内の雰囲気が少し和らいだ。
そこからは高梨先生が担任としての伝達事項を話して、最後に新谷君がギリギリに登校したクラスメイト向けに今日の放課後に歓迎会を行う旨と出欠の確認を新谷君とハルが行うことを説明してSHRは無事に終わった。
塚田教諭が急に姿を見せなくなったことで何か問題を起こしたのではないかという憶測も浮上していたけど、推測の域を出ることはなく『学校へ来なくなった』という情報だけなのものあってクラスは歓迎会のことで賑わっていた。
休み時間は既にそうなることが定番になっているかの様なローラン君と江藤君によるハルへのアピール合戦とそれを見守る僕らと言った構図になっていた。
昼休みになると、2日目にして部員となった感があるローラン君と江藤君も含め部室に集まった。昨日は姉さんとハルと美波は高梨先生のところへ行っていたので全員が揃うのは初めてなのだけど、初めてではないような気がしてくる。
「ローラン君と江藤君に紹介するね。こちらがあたしのお姉で前生徒会長の神坂夏菜」
「今春華に紹介された神坂夏菜だ。既にわかっていると思うが、冬樹の姉でもあり、美波の幼馴染みでもある。来年には卒業してしまうがよろしく頼む」
「オオッ、ハルカのオネエサマですね!
ボク、フランスからやって来ましたレオン・ローランです!
ハルカさんとは末永く仲良くさせてもらいたいと思っていますのでよろしくお願いします!」
「俺、ぼくは江藤瞬です。
北海道から転校してきました。
僕も春華さんとは仲良くさせてもらいたいと思っています・・・よろしくお願いします」
「なんだ、春華。ずいぶん好意を持ってもらっているじゃないか」
「からかわないでよ、お姉」
「ええと、失礼ですけど名前はそれぞれ季節の夏と冬と春がはいっていますけど、生まれた季節とは関係ないのですか?」
ハルへの援護で話題そらしのつもりか江藤君が質問をしてきた。
「関係あるよ。お姉は立夏の日に生まれたからそれに因んで夏菜って名前になって、あたし達はフユが冬の最後の日の2月3日に生まれて、あたしは日付が変わった4日の立春に生まれたからそれぞれ季節とお姉の名前にも含んだ植物の意味がある漢字を使ったんだって。
ズレてたらあたしは冬華とか冬華になっていたかもしれないし、フユも春樹になってたかもしれないんだよ」
「なるほど、そういうタイミングで季節がわかれたのですね。
それにしてもハルカの誕生日がこれからというのは楽しみです!
盛大にお祝いさせてくださいね!」
「俺も祝わせてくれ!」
「僕ももちろんお祝いさせてもらいますよ」
「わたくしは春華さんだけでなく、冬樹さんもちゃんとお祝いしますからね」
「「「あっ」」」
別に忘れられてても良かったのだけど、ハルにご執心の男子たちがハルの誕生日だけに言及したのに釘を刺すかの様に梅田さんが僕の誕生日についても触れてくれて場が和んだ。
◆高梨百合恵 視点◆
午後一の時間は授業が入っていなかったために校長先生に呼ばれ、塚田先生の事について説明をされた。
理事会も学校のこれ以上のイメージ悪化を嫌ってできるだけ穏便に済ませて欲しいという意向を示していて、わたしにもそれを受け入れて欲しいというお話から始まった。
学校のイメージを守ることは生徒のためでもあると思うしわたし自身が被害に遭ったという状況でもないので、その事については了承した。また学校側からは少なくない額の御見舞と言う名目のお金を支給されるとのことであったけど、それは辞退させてもらった。ただ、万が一何か問題あった時には助けていただければとお願いし、それを了承してもらったところでお金については保留となった・・・みゆきは怒るだろうけど、生徒や同僚の先生方のことを考えるとどうしても表沙汰にすることは避けてしまいたくなる。
また、塚田先生の今後については解雇して居所がわからないよりも目の届くところに居た方が良いだろうということで伝手のある四国の高校へ再就職をすることで、話がついているらしい。
塚田先生も職を失うよりは四国でも仕事を続ける方が良いだろうと応諾されて、今月いっぱいは有給休暇を消化し来年の頭から四国の学校へ赴任されることになったとのこと。
また、学校では理事会や校長先生など極一部の先生以外には事情を知らせず、あくまで塚田先生の都合ということで処理し、わたしにも口外しないようにとのお願いをされそれも承知した。そこまで含めて考えると先程の御見舞金は口止め料も含まれていたのかもしれない。
ついては、事情を知っている生徒にも口外しないようにお願いをしないといけないけど、事情を知っている生徒を考えると校長先生よりはわたしから言った方が協力を得やすいだろうということで、それもわたしがする事になった。
既に秀優高校の生徒ではないけど二之宮さんも事情を知っている1人なので、メッセージを送りすぐに承知した旨の返答をしてくれた。
残りの顔触れも法律研究部の部員で連絡先を知っているので、個別にお願いのメッセージを送っておいた。念押しが必要と思うような生徒はいないけど、顔を合わせた時には直接お願いをしようと思う。
登校したら、先に来ていたハルと新谷君が梅田さんとローラン君と江藤君の歓迎会の誘いを行っていた。聞こえてくる感じからしてほとんどの生徒が参加するようだ。
中には部活に熱心な印象の生徒もいたけど、今日だけは休んで参加をするようだ。
その様な歓迎会についての話題がクラス中を独占している雰囲気で、知られていないだろう塚田教諭の件が話題になることもなくいつもよりも賑わった朝の教室となっていた。
SHR時間になり高梨先生と鈴木先生が入室してきて、また雰囲気が変わった様に感じる。
「おはようございます。塚田先生がいらっしゃらなくてわたし達が姿を見せたことで何事かと思われていると思いますが、まずは話を聞いてください」
高梨先生が硬い表情で話し始めて、隣では鈴木先生が神妙な面持ちで見守っている。
「突然のことで皆さんには申し訳ないのですが、塚田先生は事情によりもう学校へはいらっしゃらなくなりました。
病気や怪我といった事ではなく、健康面では問題はありませんのでその点はご安心ください。
その塚田先生がいらっしゃらなくなったことを受けて、このクラスの担任はわたしが3月まで代理を務めさせていただきます。
鈴木先生は塚田先生と同じ数学科ですので、ご負担を考慮して今まで通り副担任として関わっていただき、また塚田先生が担当されていた数学Bについては、当面鈴木先生や他の数学科の先生に交代で授業していただきながら、新しい先生に来ていただく様に学校側で新規の教員採用を進めています。
しばらくはご迷惑をおかけしてしまうと思いますが、よろしくお願いします」
「今、高梨先生が仰ったように私はこれからも副担任として関わらせてもらいますし、数学の授業もⅡだけでなくBでもフォローさせてもらいますのでよろしくお願いします」
高梨先生に続いて鈴木先生も挨拶をしたところで、クラス内の雰囲気が少し和らいだ。
そこからは高梨先生が担任としての伝達事項を話して、最後に新谷君がギリギリに登校したクラスメイト向けに今日の放課後に歓迎会を行う旨と出欠の確認を新谷君とハルが行うことを説明してSHRは無事に終わった。
塚田教諭が急に姿を見せなくなったことで何か問題を起こしたのではないかという憶測も浮上していたけど、推測の域を出ることはなく『学校へ来なくなった』という情報だけなのものあってクラスは歓迎会のことで賑わっていた。
休み時間は既にそうなることが定番になっているかの様なローラン君と江藤君によるハルへのアピール合戦とそれを見守る僕らと言った構図になっていた。
昼休みになると、2日目にして部員となった感があるローラン君と江藤君も含め部室に集まった。昨日は姉さんとハルと美波は高梨先生のところへ行っていたので全員が揃うのは初めてなのだけど、初めてではないような気がしてくる。
「ローラン君と江藤君に紹介するね。こちらがあたしのお姉で前生徒会長の神坂夏菜」
「今春華に紹介された神坂夏菜だ。既にわかっていると思うが、冬樹の姉でもあり、美波の幼馴染みでもある。来年には卒業してしまうがよろしく頼む」
「オオッ、ハルカのオネエサマですね!
ボク、フランスからやって来ましたレオン・ローランです!
ハルカさんとは末永く仲良くさせてもらいたいと思っていますのでよろしくお願いします!」
「俺、ぼくは江藤瞬です。
北海道から転校してきました。
僕も春華さんとは仲良くさせてもらいたいと思っています・・・よろしくお願いします」
「なんだ、春華。ずいぶん好意を持ってもらっているじゃないか」
「からかわないでよ、お姉」
「ええと、失礼ですけど名前はそれぞれ季節の夏と冬と春がはいっていますけど、生まれた季節とは関係ないのですか?」
ハルへの援護で話題そらしのつもりか江藤君が質問をしてきた。
「関係あるよ。お姉は立夏の日に生まれたからそれに因んで夏菜って名前になって、あたし達はフユが冬の最後の日の2月3日に生まれて、あたしは日付が変わった4日の立春に生まれたからそれぞれ季節とお姉の名前にも含んだ植物の意味がある漢字を使ったんだって。
ズレてたらあたしは冬華とか冬華になっていたかもしれないし、フユも春樹になってたかもしれないんだよ」
「なるほど、そういうタイミングで季節がわかれたのですね。
それにしてもハルカの誕生日がこれからというのは楽しみです!
盛大にお祝いさせてくださいね!」
「俺も祝わせてくれ!」
「僕ももちろんお祝いさせてもらいますよ」
「わたくしは春華さんだけでなく、冬樹さんもちゃんとお祝いしますからね」
「「「あっ」」」
別に忘れられてても良かったのだけど、ハルにご執心の男子たちがハルの誕生日だけに言及したのに釘を刺すかの様に梅田さんが僕の誕生日についても触れてくれて場が和んだ。
◆高梨百合恵 視点◆
午後一の時間は授業が入っていなかったために校長先生に呼ばれ、塚田先生の事について説明をされた。
理事会も学校のこれ以上のイメージ悪化を嫌ってできるだけ穏便に済ませて欲しいという意向を示していて、わたしにもそれを受け入れて欲しいというお話から始まった。
学校のイメージを守ることは生徒のためでもあると思うしわたし自身が被害に遭ったという状況でもないので、その事については了承した。また学校側からは少なくない額の御見舞と言う名目のお金を支給されるとのことであったけど、それは辞退させてもらった。ただ、万が一何か問題あった時には助けていただければとお願いし、それを了承してもらったところでお金については保留となった・・・みゆきは怒るだろうけど、生徒や同僚の先生方のことを考えるとどうしても表沙汰にすることは避けてしまいたくなる。
また、塚田先生の今後については解雇して居所がわからないよりも目の届くところに居た方が良いだろうということで伝手のある四国の高校へ再就職をすることで、話がついているらしい。
塚田先生も職を失うよりは四国でも仕事を続ける方が良いだろうと応諾されて、今月いっぱいは有給休暇を消化し来年の頭から四国の学校へ赴任されることになったとのこと。
また、学校では理事会や校長先生など極一部の先生以外には事情を知らせず、あくまで塚田先生の都合ということで処理し、わたしにも口外しないようにとのお願いをされそれも承知した。そこまで含めて考えると先程の御見舞金は口止め料も含まれていたのかもしれない。
ついては、事情を知っている生徒にも口外しないようにお願いをしないといけないけど、事情を知っている生徒を考えると校長先生よりはわたしから言った方が協力を得やすいだろうということで、それもわたしがする事になった。
既に秀優高校の生徒ではないけど二之宮さんも事情を知っている1人なので、メッセージを送りすぐに承知した旨の返答をしてくれた。
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