学校の空き教室へ仕掛けた防犯カメラにマズい映像が映っていた

したらき

文字の大きさ
244 / 252

第244話

しおりを挟む
梅田香織うめだかおり 視点◆

冬樹ふゆきさんと春華はるかさんの誕生日会で、会場となる冬樹さんのお宅へお邪魔することになっていて、参加するクラスメイト達と最寄り駅に集まることになっています。
今日参加されるのは主役のお二人を合わせて10人とのことで、お二人の人望を感じます。
その参加される方のうち駅で待ち合わせているのは大山おおやまさんやローランさんといったクラスメイトの他、春華さんの元のクラスのご友人の春原すのはらさんと田井中たいなかさんもいらっしゃって駅の時点でもう賑やかになっています。

「えーと、まだ時間じゃないけどみんな集まってる感じ?」

「うん、うちのクラスは全員来てるよ」

春原さんが確認の呼び掛けをすると大山さんが代表するように答えてくださいました。

「じゃあ、ちょっと早いけど向かおうか。
 冬樹君のお家は初めてだけど、地図を見るとはるちゃんのマンションのすぐ近くだし、迷わないで行けるから心配しないでね」

わたくしも春華さんのお宅にはお邪魔させてもらったことがあるので場所はわかるものの、春原さんと田井中さんが先導してくださるので、お二人に甘えてわたくしも他のクラスメイトと一緒についていかせてもらいました。


みなさんとまとまって移動し、冬樹さんのお宅まで着きました。地図上で一致しているだけでなく、表札にも『神坂かみさか』と書かれていて間違いなく冬樹さんのお宅だろうと春原さん達も思っているようですが、インターホンを鳴らすのに抵抗感があるようで春華さんへ電話をして家の前に居ると伝え、中から春華さんが出てきて迎え入れてくださいました。

周囲に気兼ねせずパーティーができる場所ということで冬樹さんがご自身のお家を使うようにと申し出てくださって、そのお言葉に甘える形で今日はお邪魔させていただいているわけですが、思っていたよりも広いお家で驚きました。
わたくしだけでなく、他のみなさんも同様に驚かれていているご様子です。

「ねぇ、はるちゃん。冬樹君って本当に双子なの?」

春原さんが春華さんに突拍子も無いことを尋ねましたが、気持ちはわたしくも理解できます。

「なにそれ。正真正銘双子だよ」

「でも、冬樹君だけこの家に住んでるって・・・綺麗だし」

「フユは去年の冤罪事件の時に家を出てって色々あってここの家を買ったんだ。
 ちなみに、家の中が綺麗なのは去年の終わりにリノベーションの工事をしたからだよ」

「なるほどね。改装工事をしたばかりなら綺麗なのは納得だね。でも、広いよね」

「それはね、実家から近い場所で物件を探してたから間取りは気にしてなかったんだ。お金には困ってなかったし」

春華さんへ投げかけてた春原さんの質問へ姿を表した冬樹さんが替わりにお答えになりました。

「ねぇ!冬樹君!私と付き合わない!」

「すーちゃん、何言ってるの!?」

春原さんは唐突に冬樹さんにへ交際を申し込むようなことを言い出して、春華さんが驚かれました。

「だって、こんな立派なお家を持っているなんて相当な金持ちじゃない?
 将来性どころか今の時点で玉の輿でしょ!
 それに、はるちゃんとも姉妹になれるし」

「あたしと姉妹になれるというところはともかく、即物的過ぎない?」

「あはは、やっぱりダメかなぁ」

「まぁ、フユがフリーだったら止めないけど、相手がいるからね」

「そうなんだ。まぁ、派手さはないけどはるちゃんの兄妹だけあって見た目が整ってるし、優しそうだし、相手のひとりやふたりはいるかぁ」

「あのね、僕は二人以上を同時に相手するような不誠実な人間じゃないよ?
 それに・・・」

春原さんと春華さんと冬樹さんのやり取りは続いてはいるものの、冬樹さんがお付き合いしているお相手がいるということにショックを受け深層的な風景は急にモノクロになった気分になり、現実感が急になくなってしまいました。
わたくしは冬樹さんと出会って2ヶ月ちょっとしか経っていない上にこれと言って印象的なやり取りがあったわけではないですけれども、第一印象から感じていた直感は思いのほか冬樹さんに対して好意をいだいていて、お付き合いをしたいと欲していたようでした。
今日もこの誕生日会に出席したくて事務所にNGを入れてせっかくお声掛けをいただいていたお仕事もお断りさせていただいていましたし、自分の中ではあまりに自然で深く考えていませんでしたが、わたくしは冬樹さんと真剣にお付き合いをしたいと思っていたことを深く理解し、そしてそれと同時に失恋が確定してしまいました。

「・・・冬樹君の彼女さんって今日ここに来るの?
 それとも、岸元きしもとさんと付き合ってるとか?」

しばらく意識が彷徨ってしまっていましたが、春原さんの重要な問いかけで意識が戻りました。

美波みなみではないよ。
 そんなに僕の付き合っている相手が気になる?」

「うん。オトメは恋バナが好物なのですよ」

急におどけた口調に変えた春原さんは置いて、恐らく昨年末の上映会イベントの時に隣りに座っていた女性が冬樹さんのお相手なのでしょう。
岸元さんに限らずうちの学校の生徒はわたくしが転校してくる前にあったトラブルが原因で関係が悪化してしまわれたということでしたし、あの女性は恐らく他校の方でそれゆえに今日はこちらへお越しになられていないのでしょう。

「たしかにすーちゃんが言うように、恋バナには興味があるかも?
 ねぇフユ。美晴みはるお姉って今日予定はあるの?」

「特にあるとは聞いてないよ」

「じゃあ、参加してもらって話を聞こうか?」

「ぜひ伺いたいです!」

春華さんと冬樹さんがお話されている内容から冬樹さんの恋人さんをお招きできそうという事を察し、思わず割って入ってお伺いしたいと声を発してしまいました。

「梅田さん。そんなに大きな声を出して、そんなにお姉ちゃんの話を聞きたいの?」

とっさだったので普段は抑えている演技をする者としての発声を無意識にしてしまい、皆さんを驚かせてしまいました。
それにしても、春華さんの『お姉』呼びで察していましたが、岸元さんが『お姉ちゃん』と呼んだということは岸元さんのお姉さんが冬樹さんの恋人さんなのでしょう。
お腹から大きな声を発してしまったことはなかったこととして繕って岸元さんへ向けて返答を差し上げました。

「はい、とても興味があります」

「梅田さんの気持ちはわかったよ。
 他のみんなはどう?」

他のみなさんも特に否定的な感情はなく、特に春原さんは冬樹さんの恋人で岸元さんのお姉さんに興味があるようでジェスチャーで賛意を示してくださっています。

「じゃあ、とりあえず美晴お姉に聞いてみようか。
 ちょっとへ行って聞いてくるね」

そう言うと同時にリビングから出ていかれました。
マンションはすぐ目の前とは言え、わざわざ直接聞きに行かずとも電話をすれば良いのにと思い冬樹さんや岸元さんへその事を話そうと思ったら、春華さんはすぐにお戻りになられました。
やはり電話をした方が早いと思い直されたのかと思ったら、傍らには上映会イベントの時に冬樹さんのお隣に座っていた女性がいらっしゃいました。

「美晴お姉三銃士を
 連れてたよ

「さん?」

「はるちゃん、また何かニッチなアニメのネタ?」

昭和の終わりから平成初期にかけての時期にアニメにもなった有名な長寿料理漫画の中でも特に有名なシーンのネタを口にする春華さん。
しかし、誰もその元ネタをご存知ないようで皆さんから困惑が伝わってきます。
いつもならフォローを入れるところですが、今のわたくしにはその余裕がなく美晴さんの存在から目が離せません。

「ごめんごめん。有名なネタだから誰かしら知ってると思って。
 さすがの香織ちゃんも知らなかった?」

「い、いえ、存じてますが唐突だったのでうまく反応ができませんでした」

「そっか、ゴメンね。
 で、改めて、美晴お姉を連れてたよ。
 すーちゃんとよっちゃんとさよちゃんと香織ちゃんは初めましてだよね。
 こっちが美波ちゃんのお姉ちゃんで岸元美晴。大学3年生で、今はフユと付き合ってるの。
 美晴お姉、このが春原純恋すみれちゃんで右隣りにいるのが田井中善子たいなかよしこちゃん。このふたりは2年で修学旅行前まで同じクラスだったの。
 そして、そっちにいるのが大山小夜子おおやまさよこちゃんで、今のクラス、つまり元々美波ちゃんとフユのいたクラスで仲良くなったの。
 最後にギャルっぽい見た目のこのが去年転校してきた梅田香織ちゃん。
 見た目に似合わず口調が丁寧だからギャップがあると思うけど、いい子だよ」

春華さんは美晴さんと初対面のわたくし達へそれぞれ紹介してくださいました。
初めて間近で見る岸元さんのお姉さんは妹の美波さんより背が低くてパッと見は幼く見えますが、にじみ出てくる雰囲気が大人びていらっしゃるので年齢が高いのか低いのか判断しにくく、大学生と言われてなかったらもう少し上の20代半ばくらいに思っても不思議はないくらいで、恐らく大学もかなり高いレベルのところに通われている様に思います。
それでいて包容力も感じさせる温かみもまとっていらっしゃるので、穏やかな性格のようにも見受けられます。
さらに岸元さんのお姉さんということは生まれた時からの付き合いでしょうし、どなたであれこの方との間に割って入るなど困難な事に思えますが、自分の想いに気付いた以上は何もせず諦めても引き下がるのはわたくしの矜持が許しません。
結婚されているのならまだしも、ましてや学生なのですから自由恋愛です。今の不可能が未来も不可能であることの証明にはなりません。
最終的に諦めるにしてもやれることをやり尽くしてからにしたいものです。

更にお話を伺うと、お付き合いしていることもあってお二人で同居されているとのことで、いくらご実家のすぐ近くとは言え同居しているのはなかなかに驚かされましたし、美晴さんが強力な恋敵であることは間違いないようです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...