五人の適合者

アオヤカ

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森の監獄

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森に光が戻る。完全にカゲのケモノは気配を消し去った。いつもどおりの静かな森が戻ってきたのである。しかし、なぜ、あのカゲはここを襲ったのだろうか。狼は今もここを見ているのだろうか…。しばらくして、クロスの森の家に到着した。月姫は森の家で留守番をしてもらっていた。
「大丈夫だったの?」
月姫は家から飛び出してきた。
「クロスさんが体内エネルギー欠乏症らしいみたい…。」
天姫とアルムでクロスの肩を支えながら歩く。
「かなり、衰弱しているので、すぐにベットへ運びましょう!」
クロスは多少は意識があるがふとした瞬間に意識が飛んでしまってもおかしくない状況だった。クロスをベットまで運び終えるとロビーに3人が集まる。
「この後はどうする?」
アルムは、2人に呼びかけた。
「そうですね。あのカゲが気になりますね。」
「早く倒しちゃった方がいいんじゃない?」
二人の意見が大体一致していた。
アルムは、森の地図を広げた。
「クロスさんが少し、元気になるまではここを守る事にするのはどうだろう?」
アルムは、必死に考えた結果、カゲを倒すことよりもクロスの体調を優先する選択をした。
「それで良いよ!クロスさんなら何か作戦を立ててくれるかもね。」
月姫はすぐに納得した。
「では、私は見張りをしているので何かあったら呼んでください。」
天姫は椅子に座っていたが、そう言うとすぐに外に出ていってしまった。
「納得…してくれたんだよな。」
アルムは、少し心配になった。
「大丈夫。天姫もきっと何か考えているだけよ。」
すぐに月姫からのフォローがあった。

「カゲのケモノは、クロスさんでもすべて相手出来なかった……となるときっと私達では何も出来ないのではないでしょうか。」
天姫は扉を閉めると同時に呟いた。少し歩いたところに切り株があったので腰掛けた。あのおぞましい姿をしたケモノが今もここを襲うと考えると震えてしまう。誰よりも臆病な天姫はそれを知られることを恐怖していた。姉のように勇敢でかっこいい人になりたいと昔からそう考えていた。私と一緒なら本当に生贄になってくれていたであろう姉。私と違い、とても心の強い人だとずっと考えている。だからこそ、足を引っ張りたくないのだ。そこに彼女の本音が隠れているのだろう。誰にも言えない。彼女の本当の気持ちが…。

クロスは浅い夢を見た。それはまだ軍人時代の夢だった。
毎日走り続け、教官に怒鳴られる日々に精神も肉体も限界だったあの頃だ。しかし、そんな夢もほんの一瞬で終わってしまった。現実は近づいていく。目が覚めた時、いつもの自分の家の天井だった。身体を動かそうとしたが、まったく動かない。やはり、無理をしすぎたのだと悟った。部屋の外から足音が近づいてくる。扉が開いた時、アルムが、入ってきた。
「!?…目が冷めたんですね!」
アルムは、クロスに近づいた。
「迷惑をかけたみたいだな。すまない。」
クロスは謝罪をした。
「大丈夫です。…それより、あのケモノのことなのですが…」
アルムは、すぐに本題に入った。
「あれは、普通のカゲだ。少し、知識があるみたいだがな。」
クロスは、目を閉じる。
「普通…ですか。だとしたら、なぜあんなにも強かったのですか?」
アルムは、近くにあった椅子に腰掛けた。
「この森のことは知ってるか?」
クロスは少し、間を開けて口に出した。
「何も知らないですね。」
「この森は、監獄だ。適合者の力を抑える力が働いている。」
クロスから聴いた言葉に驚くアルム。
「どういうことですか?」
「俺は森の刑でここにいる。ある時、任務を放棄して、それが罪に問われた。………どうしても、任務を離れなくてはならなかった。」
クロスは続けて話す。
「この森は適合者を一定の間滞在させて、その間に殺させるか。もしくは、生き残るか。それが目的の森…。普段はカゲなんて現れないが、ここ最近の異変によって多種のカゲがこの森にも現れるようになった。そして、滞在の期間はあと一ヶ月ぐらいだった頃…そしたら、あの嬢ちゃんから危険を承知で訓練をしたいと申し出があった。まぁ適合者と聞いたから、心配はしていたが…」
つまり、この森では、適合者は弱体化し、森で3年前から生活し、何もないところから家を建てて、カゲを倒していたと考えられる。森の刑がどのくらい重い刑なのかは知らないが、かなり苦労しているらしい。もしかすると突然の引退にも何か裏があるのではないだろうか。そう考えていたアルムだった。
「つまり、この森は、適合者を弱体化させて、その間にカゲに殺されるか、生き残るかを3年前からやっていると言うわけですね?」
アルムは、必死に状況を整理した。
「その通りだ。俺の所属していた軍は厳しかったからな。」
クロスは話を終えると少し、また目を閉じた。
「もう少ししたら作戦会議をします。月姫が薬を持っていたので飲んでくださいね。それでは失礼します。」
アルムは、椅子から立ち上がり、部屋を出るのであった。

「……………」
クロスは、もう一度、睡眠に入るのであった。
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